元!海賊王の航海   作:りむっち

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第13話

「次はここか……」

船を求め、無事にウォーターセブンに着いたロジャー達は荷物を持って酒場へとやって来た。ウォーターセブンに昔から住んでいるとある人物に会う為だ。その人物とはロジャー達の船を作ったトムの秘書である、ココロという名の女性だ。昔からお酒が大好きな女性であり、そのココロがお気に入りな酒場を手当たり次第に街の住人から情報収集をして、何件か探し回った後、''BLUENO'S BAR''という酒場にロジャー達はやって来た。

「んががが!!おら、ブルーノもっと酒を持ってきなぁ〜」

酒場に入ってきたロジャー達が最初に聞こえた言葉だった。昼間にもかかわらず飲んでいる陽気な声音と、元気な緑髪の女性がカウンターで飲んでいた。それをロジャーが発見すると嬉しそうにその女性の方へと歩みをすすめた。

「ばあちゃんばあちゃん!こっちになんかやって来るよ?」

ココロの孫であるチムニーがココロに連れられ、その隣でジュースを飲んでいると真っ直ぐこちらにやって来るロジャー達をいち早く発見する。街では見たことも無い男達にチムニーは少し怖がり、ココロの服を掴んでいた。

「なんらぁね〜?」

チムニーからそう言われ、昼間から飲んで陽気なココロは後ろを振り向くとひどく懐かしい顔馴染みの顔をみて、目をまん丸にして驚いていた。

「元気にしてたか?ココロ…」

「あんた!いや、でもアイツは……。それにお前らまで…」

そんな訳ないと……、アイツはもう死んだんだと、酔っ払っていても残っている小さな理性がそう訴えかけているのに、目の前の男の存在がそれを壊していく。笑顔で語りかけてくる男こそ、トムが全身全霊で作った船の乗船者であり、世界一周を唯一成し遂げた男。

「ロジャー……」

かつて、自分達に船を作って欲しいとせがんできた若き日のロジャーが今、目の前にいた。

 

 

「あんらぁが、生き返ったとはねぇ〜。長生きはするもんらねぇ〜、悪魔の実を食べてれぇらのにこんな事が起きるらんて。んがががっ!!」

「俺も驚いたもんさ。ワッハハハハハハハ!」

カウンターに座っているココロの隣にロジャーは座り、これ迄の経緯を話した。信じられない現象にとても驚いていたココロだったが実際にロジャーが目の前にいて、生き返っているのだから信じざるおえなかった。それに、一緒にいたレイリーやギャバンまでもがそこにいる男をロジャーたらしめんとする証拠になるのもロジャーと信じる一手のなった。そこから一転、ロジャーが生き返った事実があるのならばココロのする事はただ1つ、昔のように一緒に笑って酒を飲む事だった。それに、レイリーやギャバンも乗っかり近くのテーブル席に座って、サボに寄りかかって悪酔いしていた。それを見たチムニーが口には出さ無かったが、心の中で不憫な兄ちゃんと認識されるようになった。

「ばあちゃんばあちゃん!この兄ちゃんと知り合いなの?」

「にゃ〜」

「ばあちゃんの昔の友達らよ!すっごく強いんらよぉ〜?」

そう自慢げに言うココロは本当に嬉しそうだった。今まで酒を飲んで楽しそうにしていた事はあったが、今日程ココロの顔が笑顔だった事はない。トムと酒を飲んだ時以来の心の軽さがロジャー達にはあった。

「へぇ〜!兄ちゃん、強ぇんだ!」

「まぁな!ワッハハハハハハハ!」

ロジャーは酒を片手に持ちながら、腕を曲げチムニーに筋肉をみせる。そのはちきれんばかりに表に顕る筋肉にチムニーと猫(ホントはうさぎ)のゴンベが大はしゃぎし、その上がった腕にぶら下がった。喜ぶ2人をみて、調子に乗ったロジャーは2人を更に喜ばせるかのように勢いよく腕を上げ下げしながら酒場を走り回った。酔っ払っているせいか近くにあるテーブルに当たりそれを吹き飛ばしているがロジャーは一切気にしなかった……

「おめぇらがここに来たってころはよ、あれを取りに来たんらねぇ?」

「おおともよ!預けてた船を取りに来たんだ」

尚も走り続けるロジャーに、ロジャー達が来た目的を理解したココロが酒を飲みながら胸を張り、ココロが肌身離さず持っているとある鍵をネックレスから取り外した。それは、ロジャーの目的である船オーロ・ジャクソン号が眠る、ウォーターセブンに存在する隠し倉庫の鍵だった。

「おめぇらがまた、この時代で旗あげるとはねぇ。世界が荒れるらよォ!ンがががっ!」

そう言って鍵を握りしめまた、豪快に笑った。ロジャーが船を取りに来た、それはつまりこれから世界が荒れるという事を意味するにほかならない。それでも尚、ずっと豪快に笑うのはトムの秘書だからか、世界の行く末が楽しみなのか……。

「それでよぉ、トムと同じ位の腕のある知り合いの船大工紹介してんくねぇか?」

「任せときなぁ!あんらたちの為だ。とっておきの奴、紹介してやるらよぉ〜」

「助かるぜ、ココロ!ワッハハハハハハハ!」

そう言うと、ロジャーは走るのをやめてBARのマスターであるブルーノにココロの飲んだ酒の酒代も含め渡す。いくら、ロジャーが海賊であろうと無銭飲食はしない。ただ、ギャバンがロジャー海賊団のお金を管理しているため、お小遣いが無くなればロジャーは偶に無銭飲食をする。ロジャーは自由に生きる男だ。お金を払うのも払わないのもその時の財布次第なのだ。

「んらぁ、行くよ!チムニー、ゴンベ!」

「はーい!」「にゃ〜」

ココロやレイリー達が立ち上がると、BARを荒らすだけ荒らしてBARから出ていく。そう、BARを荒らしたのはロジャーだけではない。レイリー達もなのだ。ロジャーが走り回った事でテーブルは大きく吹き飛び、近くにいたお客さんも一緒に吹き飛んだ。それにレイリーやギャバンも便乗して酒場を宴の如く荒らして飲んだいったのだ。ちなみに、気絶したお客さんも多数出て、レイリーがちゃっかりとそのお客さんの財布の中身をとったのを猫のゴンベはしっかり見ていた。

「いい酒だったぜ〜!」

「アハハは。」

勘定を払うため最後に残っていたロジャーは、ブルーノへ酒の感謝をした。そして、その時にロジャーは先程から気になっていた事をなんて事もないかのように最後の一言を言い放って帰ってしまった………

 

「あと、お前。政府の人間ならもうちょっと隠れる努力した方がいいぞ。動きが分かりやすいからな!ワッハハハハハハハ!」

 

「ッッ!!!!」

目の前で起こる酒場の惨状に一切の動揺をしてこなかったブルーノが初めて顔に出して動揺を露わにしていた。ロジャーが生き返っている事は政府の人間として知らされていたので、ロジャーが来ても動揺はしなかった。しかし、細心の注意を払い努めて冷静に振る舞っていたはずの自分を意図も簡単に看破された。看破されてなおあの振る舞いをしていたと考えるとブルーノは、政府の人間である自分に背中を向けて出ていくロジャーに体の震えが止まらなかった。そして、出て行くロジャーのニヤッとした一言にブルーノは背筋が凍った。

「あばよ、CP9さん」

 

 

「おい、ココロ。俺は船大工を頼んだんだぞ?ここには、造船会社はおろか大工のだの字もねぇじゃねぇか」

ココロの紹介する船大工に会う為、ココロに連れてこられたロジャー達が来た場所はウォーターセブンの市役所だった。中心に建つ市役所は街の風物詩とも言われ、島の観光客やこの島をまとめる重要な役割を担っている。

「安心しなぁ〜。おめぇらも見たことあるはずらねぇ」

そう言って市役所に入っていくココロをロジャー達は追い、やって来たのはこの市役所の市長室だった。途中に市役所内の役員から胡乱な目を向けられたロジャー達だったが、ココロと一緒に歩いていたおかげで特に憚られることなくたどり着けた。

「邪魔するよぉ〜!」

「ンマー、いきなりどうしたんだココロさん」

積み上がった紙に囲まれて出てきたのはこの街の市長であるアイスバーグだった。アイスバーグとココロは昔、トムズワーカーで一緒に働いていた事があり、トムの一番弟子でもあったアイスバーグは秘書であったココロと旧知の仲である。

「お前に頼みがあってねぇ。今すぐ来てくれるかい?」

「随分急だな。それはココロさんの後ろの人達が関係してるのか?」

アイスバーグが見るのはココロの後ろに並ぶ4人の男達だった。一人一人が只者ではない雰囲気を醸し出し、広い筈の市長室が狭く感じる程に圧迫感があった。

「そういうことらぁよ」

ココロが脅されている可能性を少し考えたアイスバーグだったが、親しげに話すココロ達を見てそれは無いと直ぐに悟った。それに、酒を片手に持って酔っ払っている事から余計な心配だったとアイスバーグは心の中で苦笑した。

「分かった。カリファ、後の仕事は全部パスしてくれ」

「分かりました。では、行きましょう」

「ンマー、カリファはここに残ってくれ。俺だけで行く」

出て行こうとするアイスバーグに秘書のカリファが当然のようについて行こうとするがそれ止めたのはアイスバーグだった。これ迄のアイスバーグは、どんな事があろうと秘書と離れて仕事をする事は無かった。船大工の仕事然り市長の仕事然りだ。カリファにとって、ついて行こうとする自分を初めて止めるアイスバーグに、秘書という仕事に就いて初めて少しの動揺を示していた。

「承知しました」

ただ、その目に見えて動揺をした事はCP9のスパイであるカリファにとっては他人を騙す演技に他ならず本気で動揺はしていなかった。アイスバーグ達が部屋を出るのを最後まで見届けると懐に持っていた電伝虫に手をかける……

 

 

「それでココロさん、頼みってのは?」

「その頼みってのは俺達の事なんだ」

ココロが答えるまでもなく先に答えたのはすぐ近くにいたロジャーだった。

「そういや、名前を聞いていなかったな。ココロさんとは随分仲が良さそうに見えたが……」

「それは、後で教えてやるよ。俺達からの頼みってのもな。とりあえず、ついてきてくれて」

市役所を出たロジャー達が次に向かったのは町外れにある小さな海岸だった。木材やゴミが散乱しており綺麗な街の景観を破壊するほどに汚く薄汚れている。市が綺麗にしようと掃除をした事もあったがゴミが減った事は無かった。

「ここ臭ーい!!」「にゃっ!にゃ〜!」

ロジャー達はそのゴミ溜まりの上を歩いていくと、目的地であったゴミ溜まりの中心までへとたどり着いた。

「??」

その中心でロジャーが手で積み上がったゴミをものすごい速度で払い除けると、約1分程で地面へと到達した。そこから、シャベルを持ったレイリー達も加わり更に地面を掘り進めていく。それに終始?を頭に浮かべていたアイスバーグだったが、掘り進めることで浮き彫りなってきた大きく頑丈な下扉に絶句した。土に埋もれていたせいか扉は余り錆び付いておらず綺麗な状態で出てきている。

「ンマー!こんな下扉がウォーターセブンの、それもこんな小さい海岸にあったなんて!」

「扉だ!ばあちゃんばあちゃん、扉だよ!」

「んがががっ!アイスバーグ、お前には教えていらかったねぇ〜」

何十年もウォーターセブンに住んでいて、初めて目にする扉にアイスバーグは驚きが隠せなかった。そんな驚いているアイスバーグを横目にココロは持っていた鍵を下扉の鍵穴に挿すと扉は、ガチャンと大きな音を立ててゆっくりと開いていった。そして出てくるのは海岸の更に下へと続く暗い階段だった。

「よし!」

ロジャーは持っていたシャベルを勢いよく投げると元気に階段を降りていき、レイリーやギャバンもそれに続けて子供のようにはしゃぎながらロジャーへと続いた。

「ほら!アイスバーグ、私らもいくらよぉ〜」

恐る恐る、ロジャー達に続いてアイスバーグ達も暗く長い階段を降りいていく。暗い階段を慎重に降りていくアイスバーグだったが、半分位経つと階段の奥からボンヤリと蒼白い光が見えてきて、その蒼白い光の帯が少しずつ太くなっていった。

「すげぇなぁ〜」

「ンマー!ウォーターセブンにこんな所があったなんて」

「わぁー!綺麗!!」

そこでアイスバーグ達が階段を降りていって、見たのは蒼く光る神秘的な洞窟だった。いくつもの鍾乳石が垂れ下がっており、蒼く発光する貝や虹色に光る石などがこの洞窟を照らしており幻想的な景色が広がっていた。それに、サボ、アイスバーグ、チムニーが感嘆の声をもらして感動していた。広がる幻想的な景色に見蕩れているアイスバーグの肩をココロが叩き、洞窟の先へと視線を促した。

「ほら、アイスバーグ!あれを見てみな」

「あれは!」

ココロの視線をアイスバーグがたどると、洞窟の更に奥に大きな湖が広がっていた。その中央には、デカデカと赤を基調とした1隻の海賊船が浮かんでいる。

「お、オーロ・ジャクソン号…。こんな所にあったのか…」

それはまさしく、かつてロジャー海賊団が使用していた船だった。ふと、アイスバーグが湖の辺りを見渡して船の出入口なるような所を探してみるが、それらしい所は見当たらなかった。ならばどうやって来たのか…。それは、とても簡単な事だった。アイスバーグは湖の水を舐めてみるとそれは淡水ではなく海水だと言う事を理解した。湖の水に頭を突っ込み目を開けてみると湖のさらに奥深くに続く穴が見つかった。そう、ロジャー達が船を地上から運んだのではなく、海の中から潜水艦のようにこの湖まで運んできていたのだ。

「分からないわけだ………」

まさに、ここの湖は自然に隠された天然の隠れ場だった。政府がどれ程の時間をかけて、オーロ・ジャクソン号を探しに来ようが海の中をつたって行くことでしか辿り着けないこの場所には、どうしたってたどり着く事は出来なかったのだ。

「これが俺達の依頼だ!」

「依頼……」

「20年近く放ったらかしにしていたこの船の整備をお前に頼みたい」

「この船を俺に整備しろってのか……」

「あぁ!ココロがどんな奴を紹介すんのかと思えば、お前。大人になってて気付くのに遅れたが、トムの弟子のアイスバーグだろ?なら、この船の整備を任せられるのはトムの弟子のお前しかいねぇ!」

「………」

暫く会う船に気分が高揚して、話しかけてくるロジャーだったがアイスバーグはそれを静かに聞いていた。

「俺はこの船の船長、ロジャーだ。訳あって生き返ったんだ。これから俺達はマリージョアにいく!その為にこの船が必要だ!だから、頼む!」

「お前がロジャーだって?ココロさん、あいつの言ってる事は本当なのか?」

「間違いねぇらよ。あたしが保証する」

人が生き返るなど、ありえないと思っていたがココロが言うのではあればアイスバーグは信じるおえなかった。悪魔の実が存在する世界なのだ。多少の不思議な事があったとしてもそれをドーンと受け取る器量をアイスバーグは持ち合わせていた。ならば、アイスバーグのロジャーに対する返答は1つだった。

「そうか、なら俺はその頼みを受けない!」

「……え?」

「話は終わりだ、俺は帰る。この場所は誰にも言わないから安心してくれていい。ではな」




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