元!海賊王の航海   作:りむっち

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第15話

クオレマ島、通称''死の島''。偉大なる航路(グランドライン)前半に存在するその島は、海賊の中で降りてはならないと忌避される程に危険を持つ。島を囲む暗い雲は人の正気を奪い、精神を破壊させる効果を持つ。現在その危険な島にて、伝説のロジャー海賊団の元船員(クルー)達が集まろうとしていた。

 

「ふむ、うらが最初のようだな」

 

浜辺に降り立った影の薄い男は辺りを見渡し、そう口にする。船が無いのを確認し最初にやってきたのが自分であると分かったその男は、まだ来ていないであろうかつての仲間に勝ち誇ったようなニンマリ顔を浮かべた。しかし、それは上から落ちてくる人物によって直ぐに否定される事になる。

 

「ギャハハ!!残念だったなぁー!お前は6人目だぞ、ユーイ!」

「な、なんだと……!!」

 

笑ってユーイを馬鹿にするのは元ロジャー海賊団船員(クルー)が1人、ロジャー海賊団斥候'' デビルハンター・ドリンゴ ''。13億ベリーという懸賞金が掛けられ、頭に巻くバンダナと背中から生えているコウモリの翼が特徴のお調子者である。ドリンゴはかつて世界政府によって滅ぼされた種族、コウモリ人族の末裔であり、さまよっていたドリンゴを面白がったロジャーが仲間にしたのだ。

 

「ムフォッフォッフォ!ちなみに1番は私であーる!」

「分かったから!もうお前が1番なのは分かったから!」

 

ユーイが1番ではないことにガッカリしてその場で打ちひしがれてるいると、浜辺のすぐ近くに太い真っ黒な血管のようにうねり生える木から、これまた騒がしい声がユーイの耳へと届く。特徴ある笑い方に貴族のような服装をした男こそ、ロジャー海賊団狙撃手'' 死のキューピッド・ピータームー ''である。懸賞金13億8千万ベリーがかけられているピータームーは、自尊心が高くなんでも1番を好む性格でどんな事でも1番になる為の努力を惜しまない。しかし、そんな1番に固執するピータームーだが、自身の船長であるロジャーに対しては別である。ロジャーを誰よりも信頼し尊敬しているからこそ彼はロジャーを1番にする事に、躊躇いや自身のプライドなどもかなぐり捨てている。強い忠義の持ち主である。

 

「よぉ!ユーイも来たか!」

 

そんな、ピータームーの隣でうんざりしながら歩いて来るのは、大きな身体に似合わない苦労人の気配を感じさせるロジャー海賊団仲介人'' <質問者>・ミュグレン大佐 ''である。老いてなお、その体に宿る筋肉は衰えを見せず現役の時のようにパンパンに膨れ上がっている。彼が岩を握ろうものなら覇気を纏わずして簡単に砕け散る。そんな常人離れの怪力を持つ男だが、世間からはロジャー海賊団きっての苦労人と呼ばれていた。しかし、苦労人と呼ばれているだけでその実力はロジャー海賊団でも上の方である。そのせいか、苦労人である彼に関わらずかけられている懸賞金18億1千万ベリーという破格の額である。

 

「でも、こうやってまた皆と会えるなんて嬉しいねぇ〜」

 

そう言ってのけるのは、いつの間にか浜辺で日光浴に勤しんでいた2人のうちの1人だった。小柄な彼は、ロジャー海賊団知将'' 凍てつく支配者・エリオ ''という策略家である。馬鹿ばかりをするロジャー海賊団がまともに海を航海できたのは彼のお陰といっても過言ではない。彼の頭脳と緻密に練られた作戦を行えばどんな人物であろうと成し遂げられると、海軍きっての知将センゴクに言わせる程、彼の頭脳に適う策略家はこの世にいない。ちなみに、懸賞金の額は集められた6人のうち最も高い20億ベリーである。

 

「そうダスなぁ〜」

 

特徴ある語尾で同調してきたのは、隣でサングラスをかけ一緒に日光浴に勤しんでいた、ロジャー海賊団槍使い(スピアラー)'' 海血刺し・魚人サンベル ''である。懸賞金10億ベリーをかけられる彼は、自身の異名に似ても似つかない程に朗らかな性格の持ち主である。誰にでも優しく気遣いのできる彼はロジャー海賊団の癒しでもある。そんな個性がありすぎる彼等はエリオとサンベルの近くに行くと同じようにサングラスをかけ日光浴にいそしんだ。コイツらは、雲が出ていて太陽の光が指して来なかろうが関係なしだ。現に、雲行き怪しくなり雨が降り始めても変わらず日光浴を楽しんでいる。老人だという事に自覚が無いのだろうか⋯⋯

 

「なぁ、エリオ」

「どうしたんだい、ドリンゴ」

「ギャバンから送られてきたあの手紙ってなんだったんだろうなぁ〜」

 

それは、ドリンゴだけに関わらずエリオを除いた4人も気になる事だった。困った事があればエリオに聞くのが1番と言われているエリオにドリンゴが聞くと他の人も耳を傾けた。

 

「私もそこが気になってね。この半年間、調べてみたよ。そしたら、驚くべき事に気づいてね!いやー、知った時は喜びすぎてはしゃぎ回ってしまったよ」

 

そう言って語るエリオは目を輝かせていた。傍目からでも分かるほどに喜びを表しているエリオに皆が続きの言葉をゴクリとして待っていた。一刻も早く聞きたいのだ。自分達が何故こんな所に集められ、マリージョアに行くのかを⋯⋯

 

「もったいぶってねぇで教えろよ」

「まだ、言わないよ〜。楽しみはとっておかなきゃね」

 

雨に打たれニヤニヤしているジジイほど気持ちの悪いものは無い。ドリンゴがエリオに馬乗りになってキャメルクラッチを決めようとするもエリオは笑うだけだった。ちなみに、周りにいたメンバーはドリンゴにやれやれ!と笑って言葉を飛ばしエリオを心配するものはいなかった。

 

「聞かせろよー!!」

「ははははは!ちなみに、何故呼ばれたのかは直ぐに分かるよ」

「何故分かるのかね?」

 

聞いてきたピータームーの問いにエリオは目線を視界の悪くなってきた海へと向けた。雨が降り荒れ狂う海に皆も同じように遠くに映る景色へと目を向ける。

 

「ほら、あそこを見てみなよ」

 

エリオが指を指し、見えてきたのは大きな影だった。船の形をした影に皆が?を浮かべ静かに臨戦態勢に移る。しかし、それに対しエリオは尚も無反応だった。

 

「「「「「……船?」」」」」

「おーい!みんなぁ〜〜!!!!」

 

遠くにいてあまり聞こえてこなかったが、こちらを知っている様な声が6人へと届けられる。だんだんと近づいて来る影の正体に6人は目から目ん玉が飛び出して驚き、オーバーリアクションを行った。

 

「「「「「「オーロ・ジャクソン号ッ!?!?」」」」」」

「これは、私にも想像つかなかったねぇ〜」

 

流石に見えてくる影がオーロ・ジャクソン号だとはエリオも思いつかず同じように笑って驚いていた。荒れ狂う海の中近づき、浜辺へと船の錨をおろしてきたオーロ・ジャクソン号に皆が警戒を解かない中、船から全員の見覚えのある人物が勢いよく降りてきた。エリオは予想が当たったかのように嬉しそうにその人物へと駆け寄ると、他の皆もキョトンとした目を浮かべた後、舞った砂埃が消えその影の正体を知ると、涙をたらし年甲斐も無くその人物、ロジャーへと抱きついた。

 

「元気にしてたか、おめぇら!」

「「「「「⋯⋯」」」」」

 

抱きついたにも関わらず、確証が欲しかった5人はエリオをウズウズとした目で見る。それにエリオは、仕方ないなぁ〜とでも言うかのように皆の期待していた言葉を言い放った。

 

「元気にしてたよ、ロジャー船長」

「「「「「おぉー!!!!!!!」」」」」

 

 

「お前がドラゴンの言ってたモーリーか」

 

ウォーターセブンの出航から幾許かの月日を経て、ロジャーの船には革命軍''西軍''軍隊長モーリーが乗っていた。マリージョア突撃までの時間が間近に迫っているためである。オーロ・ジャクソン号を囲うのは革命軍の船でありロジャー達と一緒にマリージョアへ突撃する人員達である。その中には、別れたはずのコアラやハックがモーリーと共に船に乗ってきてサボを大いに驚かせた。

 

「なんで、来たんだ!」

「サボくんが行くって言うからね。部下である私達が行かない訳には行かないよ」

 

サボが幾ら、帰るようにと催促しようがコアラとハックは耳をかさず無視を決め込んでいた。強情なコアラとハックにサボがごうを煮やして怒鳴ろうとするもそれを図っていたかのようにドラゴンからの電伝虫で許可をもらっていた。それもサボの前である。

 

「正気ですか?ドラゴンさん!」

「もう1つの作戦も絡んでるんだ。それに、ロジャーとの取り決めで戦うような事にはならないから安心しろ」

「⋯⋯わ、わかりました」

「一杯食わされたな!ワッハハハハハ!!」

「みたいですね⋯⋯」

 

恨めしそうな目でコアラとハックを見るとプイッと視線を避けてくる。上司が我儘なら部下もまた上司に似るのも組織ならではかもしれない。

 

「とりあえず、革命軍の人数は揃ったな!」

「はい!作戦はどうするおつもりですか?」

 

3隻の船を見渡したロジャーにコアラがマリージョア突撃の作戦を聞くとロジャーはコテンと傾ける。

 

「えっ?」

 

嘘でしょ?と顔が青くなっていくコアラを安心させるかのようにギャバンが肩を優しくたたいた。

 

「安心しな。そういうのが得意な奴がもうすぐこの船に乗ってくる」

「おい、ギャバン!それってまさか!」

 

今にもウズウズして興奮が止まらないロジャーにギャバンが親指を立てて肯定を示した。

 

「さてと、その為にも私は少し用意をしなくてはな。ロジャー!少し船を空ける。早くアイツらを連れて戻ってこい!」

 

そうレイリーは言うと、オーロ・ジャクソン号から革命軍の船へと降りた。マリージョアまでの道のり、海軍本部マリンフォードを避けるためコーティングする為だ。此度の騒動の最初の作戦として侵入も撤退するときも赤い土の大陸(レッドライン)の壁中を通り海中に忍ばせてあるコーティング船へと乗船する。表には船を一切出さず忍べるように、また海軍達に船を取り押さえられないようにする算段である。

 

「任せとけ」

 

そいういとロジャーは、ギャバン、サボ、モーリーを連れてクオレマ島へと向かった。

 

 

「おいおい!なんだよ!なんで、ロジャー船長が若返って生き返ってんだよ!」

 

涙を流しながら、嬉しそうに強く言い放つドリンゴにロジャーは嬉しそうに頓珍漢な事を言い放った。

 

「天国の神に嫌われたからだ!」

 

キョトンとした顔をした後、彼等は吹き出して大笑いした。皆が思ってる事は一つである。船の上から聞いていたギャバンも6人と同じ気持ちである。

 

「「「「「「アッハハハハハハ!」」」」」」

「「船長は」」

 

エリオとサンベルが

「「天国じゃなくて」」

 

ピータームーとミュグレン大佐が

「「地獄な!」」

 

ドリンゴとユーイが笑ってロジャーに言葉を返す。ロジャーに指を指して砂浜に笑い転げる6人にロジャーの目は点となる。

 

「⋯⋯なんだと、てめぇら!!」

 

剣を浜へ投げ捨て暴力に走ろうとするロジャーに呼応するかのように拳を構えた6人はニヤつきながら向かってくるロジャーへと走る。この悪ノリが皆、楽しくて懐かしくて⋯⋯、誰もが笑顔だった。残忍な顔でなければ尚更⋯⋯

 

 

「なるほどねぇ。それで私に作戦を立てろってことかな?」

 

あちこちに怪我を負ったロジャー海賊団の面々はオーロ・ジャクソン号へと乗り、円形に座っていた。これ迄の経緯をギャバンが説明し、革命軍と協力をとったとロジャーが言ったところで事の成り行きを察したエリオが口をはさんだ。

 

「話が早くて助かる」

「じゃあ、この金髪君は革命軍って事かな?あと、聞きたいんだが革命軍は此度の作戦にどれだけの人員を出せるのかな?」

 

サボを見ながら値踏みするエリオの目は鋭かった。エリオには人には無い能力がある。それは見た人の能力値を正確な数値まで読み取れる。長年培った経験により得た能力であり、ロジャーやレイリーが持つ当て勘とは別の絶対的推察をその目に宿している。

 

「革命軍参謀総長'' サボ ''です。よろしくお願いします!」

「よろしく頼むよ」

「革命軍でマリージョアに直接出せるのは1人だけです。革命軍西軍軍隊長モーリーさんって人です。」

「そうか。それ以外は奴隷解放の為に船で待機って所かな?」

「⋯⋯はい。まだ何も言ってないのに⋯⋯」

 

そう、今回のマリージョア侵攻の革命軍最大の目的として暴れるロジャー海賊団に注目を集めさせる事で天竜人に捕まっている奴隷を革命軍が極秘に解放する事なのだ。これはロジャーが最初にドラゴンに頼まれた事である。元々、目的の天竜人に会うこと以外に暴れる事も予定に入ってるロジャーとしては注目を集めるなど朝飯前なのだ。

 

「それ位分かるさ。ならば、チームを分けるとしよう。それと、一様聞いておきたいのだが、君はマリージョアに行って暴れるつもりはあるかい?」

「最初からそのつもりです!」

「そうか!それは良かったよ。じゃあ、4つのチームに分けるとしようか。第壱団はロジャー船長、サボ君、ピータームーの3人。第弐団にレイリー副船長、ドリンゴ、サンベルが。第参団をギャバンさん、ミュグレン大佐、モーリー君に任せるとしよう。」

「任せろ!」

「ムフォッフォッフォ、久しぶりですなロジャー船長とするのは」

皆が皆、伝えられたメンバーと闘志を燃やしていると呼ばれなかったユーイがエリオに自分を指さして悲しい目で見る。元々、影が薄い自覚がユーイにはあるがせめて、どれかのチームに入れて欲しいと思っている。ユーイだって暴れたいのだ⋯⋯

「⋯⋯うらは?」

「私達、第肆団は残った革命軍と共に奴隷の確保とその護衛さ。それに第肆団はこの作戦の頭と言ってもいい。ユーイ、君には期待しているからね!」

 

第肆団はこの作戦の要と言っても差し支えない程に重要な役割を担っている。革命軍の最大目的の奴隷解放は第肆団の頑張りにかかっていて、解放された奴隷の護衛にユーイが、全ての指揮をとるエリオが第肆団の中核を担う事でその目的の成功率は大幅に上がる。

 

「フッ、うらに任せろ!」

「そうかそうか!では、後は革命軍と合流してから話すとしよう。私もまだ作戦が練りきれてないからね」




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