元!海賊王の航海   作:りむっち

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第16話

時刻は太陽が真上の位置に昇った頃、赤い土の大陸(レッドライン)付近の海中にて、およそ5隻のコーティング船が壁に船繋りされていた。壁に錨を差し、海流に流される事の無いようしっかりと固定されている船は安全且つ逃げるのに最適な位置だ。また、壁に差さっている錨は特注品で出来ており、大きな鉄のトンネルの様な形をしている。錨の中の空洞を通れば船から直接赤い土の大陸(レッドライン)の壁中へと行けるようになっていて、これは革命軍西軍軍隊長モーリーの能力を用いた事でなし得た事だ。海を泳ぐことなく、トンネルを通り船へと直接走って行けるように工夫された造りは解放される奴隷達に大いに役立ち、時間の大幅な短縮となる。

 

「じゃあ、作戦を見直すよ」

 

縦に掘り進められた赤い土の大陸(レッドライン)の中部地点にてロジャー達は、マリージョア進撃の最終確認を行っていた。中部地点に設けられたそこは、革命軍幹部のイワンコフが侵入している世界一の海底大監獄インペルダウンのレベル5.5フロアと似たような造りになっており、大きなスペースとなっている。

 

「大まかな指示は、この場所から随時伝えるから各自配られた電伝虫には気を配るようにね」

 

エリオがそう言うと円卓のテーブルに大きな地図を出した。それは、マリージョアの地図である。本来、海賊や革命軍がマリージョアの地図を手に入れようとしても簡単に手に入れることはそう簡単じゃない。ましてや、今広げられた地図は細かな裏路地や抜け道など抜かりなく描写されている。

 

「これを、一体どこで⋯⋯」

「秘密さ」

 

目を見張るサボ達にエリオがお茶目な反応を返し、円卓を囲うメンバー達に視線を一巡すると、エリオの纏う雰囲気が一転する。

 

「では、これから最終確認を行う。これから我々は世界に攻撃を仕掛ける。皆、準備できてるかな?」

 

皆が静かにエリオを見る。その視線には不安な気持ちが大部分を占めていた。しかし、ロジャー海賊団の面々や革命軍の幹部達は違った。興奮する者もいれば武器を手に持つ者もいた。ただ、皆の抱える思いはひとつ⋯⋯

 

「出来ているようだね。では、ロジャー船長」

 

皆の真剣な視線がロジャーへと移る。ニヤリと笑った後、ロジャーは覇王色の覇気を出しながら皆に暴れる許可を出す。

 

「あぁ!てめぇら、思う存分暴れて来い!」

 

先頭を歩くロジャーを筆頭に各々が武器を手に持ちマリージョアへ歩き出す。革命軍悲願の為の先手が今、マリージョアへ打たれる!世界政府をぶち壊し、世界を変えようとする革命軍と虚の玉座を守り世界政府中心とする世界意志との戦いの火蓋が切って下ろされる。

 

 

━━序幕<混乱>

闇夜ではなく、あえて昼に侵入したロジャー達は3つのチームに別れて行動を開始した。それぞれ、地図に記された裏路地を使い、最短で3つのポイントへと向かう。地図にて記されたそのポイント点とはマリージョアの中心部分に建造されているパンゲア城を中心として、正三角形に取り囲んだ頂点である。

 

「こちら、サボ。目的のポイントへ着きました」

 

エリオが推測するマリージョアの手薄な警備網を掻い潜り、見回りをする海兵や世界政府の警備が薄いその場所へとロジャー達はたどり着く。その間、昼間な事もあり天竜人が奴隷に跨ったり、公衆の面前で奴隷をいたぶるといった好き勝手をしていた事がロジャー達の隠密行動に拍車をかけた。

 

『では、始めるとしようか!船長、ピータームー準備を!』

「出来てる!」

「任せなさい!」

『よし、聞けみんな!これから船長達がマリージョアを混乱の渦へと変える!第弐、第参団の人達用意を!』

『『さぁ、やろうか⋯』』

「いくぞ⋯⋯」

 

ロジャーは、腰にさしてある剣''エース''を抜き放ち、両手にて構える。全身から溢れ出る覇王と武装色の覇気を剣に込めると、パンゲア城のある一点を狙う。黒と紫の紫電がロジャーの周りに鳴り響き、強い暴風がロジャーの周りを囲む。あまりの風圧と圧力にサボは吹き飛ばされないよう、踏ん張る事に全力で力を注いだ。

 

「派手に吹きとべッ!神木脈(クグノチ)!!

 

木の脈の様にうねり広がる紫色の斬撃はただある一点とその周りを巻き込んでぶつかる。ロジャーが狙うは、パンゲア城の城壁の核の部分。その核を壊す事でパンゲア城の壁は綺麗に崩壊するだろう。

 

「たった、一撃でッ!!ここまで⋯⋯」

 

鍛錬をつけてくれた時のロジャーとは違う。初めてみるロジャーの全力の斬撃はパンゲア城の城壁を全て壊す事に成功した。壁の核を壊す事はもちろんだが、核にぶつかった斬撃は木の脈のようにうねり広がっていき瞬く間に壁全部を壊す事に成功した。

 

『す、すごい⋯⋯』

『け、桁違いッ!』

『人間業じゃ、ない⋯⋯』

『おれ、ロジャーさん達と仲間で良かった⋯⋯』

 

電伝虫越しから革命軍達の伝わる絶句した声にロジャーはしたり顔をした。ロジャーは褒められたと思っている。それは半分正解であり、半分間違いである。ロジャーの全力の攻撃を見た革命軍達の面持ちは''引いた''が正解である。とても、人間とは思えないその実力に恐怖する者やその実力者が仲間だという事に安堵している者もいる。中には、これからロジャーと相対するであろう海兵やCP達に憐れみを送るものまで出る始末。マリージョアにいる海兵達を混乱させるつもりで放った攻撃は

、その威力に味方さえも少しの混乱を招く事態となった⋯⋯

 

『ほらほらー!ぼっとしてないで皆も直ぐに取り掛かれ〜!もう作戦の第1段階は成功してるんだよ!』

 

ロジャーの攻撃に少なからず混乱した味方に安心を与える声音でエリオが指示をだすと、呆けていた人達が正気に戻る。

 

『混乱してる今がチャンスだ!』

 

今、マリージョアは突如おとずれたパンゲア城の城壁崩壊によって混乱の渦にいた。中心に建造されている故に、ドゴンと崩れる重圧のある重低音と目に見えて崩壊していく城壁に、外に出ていた天竜人や家の中で寛いでいた天竜人達を一瞬で混乱させるに至った。天竜人故に他人に攻撃される、ましてやその住処であるマリージョアが攻撃されるなど思ってもみない事である。鳴り響くサイレンの音、海兵やCP達が忙しなく動き、そこには上官が統制を取れないほどに天竜人の奴隷含め、カオスな事態となっていた。

 

『第弐団のレイリー副船長は、そのまま目的の天竜人の捜索を頼みました』

『了解したよ、エリオ』

『第参団のギャバンさんは、革命軍の人達と一緒に奴隷解放を!』

『あぁ。予定通り進める』

『第壱団のロジャー船長は、自由にやって下さい』

「流石エリオ!分かってんじゃねぇか!」

 

━━第1段階<成功>

 

 

パンゲア城の広間にて、世界政府の中心と言われる五老星達が突如やってきた襲撃者の対策会議を開いていた。五老星の他に海兵の上官である海軍中将や世界政府の守り人のCPもいる。

 

「襲撃者は誰だ?」

「ロジャー一味だと思われます!」

 

分かりやすく頭を抱える五老星にその場に集まっていた海軍中将達の1人の内の男は憐れむ目で見ていた。正直、海軍という職に就き天竜人の悪行を見てきた彼からするとこの出来事はストレス発散になっていた。自分の正義を貫く彼はどうしても天竜人の悪行が正当化される日々に納得が行かなかった。

 

「現在の状況は?」

「大まかに3つの場所にてロジャー一味が暴れ回っております」

「ふむ。ロジャー一味の誰がそれを取り仕切ってる?」

 

誰が作戦を仕切っているのか、五老星達の心の内はこれでいっぱいだった。暴力だけに走るロジャーならば頭を使い、食い止める事も出来なくはないが、ここに知性が入るのではこの襲撃を抑えるのは容易じゃなくなる。

 

「ハッ!海賊王のロジャー、ロジャーの両腕レイリー、ギャバンを確認しました!」

「それだけではありません!革命軍参謀総長の男もロジャーと一緒にいる所を目撃した部下がいました。奴らは革命軍と手を組んでいます⋯⋯」

 

ここで予想外の人物に五老星達は目を見開いた。いつかやってくるであろう革命軍に五老星は気を配ってはいた。しかし、まさかこんな早く来るとは考えもせず、それに加えて海賊の、それもロジャーと手を組んでいた事に五老星の1人は腰が抜けていた。

 

「革命軍だと!?」

「それに⋯⋯」

「それに⋯⋯?なんだ、早く言え」

「ロジャー海賊団解散と共に消息を絶っていたロジャー一味の精鋭達を4人ほど目撃したと⋯⋯」

「誰だ」

「斥候のドリンゴ、狙撃手ピータームー、仲介人ミュグレン大佐、槍使い(スピアラー)の魚人サンベルの4人が確認されました」

「ふむ、奴は居ないようで安心した」

 

奴とは、ロジャー海賊団一の頭脳派であるエリオの事だ。エリオにはロジャーと同じ位の苦渋を飲まされた。奴の危険度はロジャーやロジャー海賊団両腕のレイリーとギャバンに匹敵する程だ。

 

「ならば、至急海軍本部マリンフォードの海兵をマリージョアに集めさせろとセンゴクに伝えろ」

「ロジャーの進撃にマリージョア駐在の海兵だけじゃ正直いって話にならん!」

「ハッ!了解致しました!」

「それまではお前達中将が何とか食い止めろ!こちらから兵は出すつもりだ」

そう言って出てきたのは集まってきた中将達の中でも一際大きな体を持つ男。仕込み刀を携えた藤色の着流しに下駄を履き、和装の上に海軍コートを羽織っている。

「ならば、あっしに任せてもらいやす」

「おいおい!お前だけじゃねえんだぜぇ〜海軍ってのはよぉ!ここは俺に任せて下さい。俺はロジャーを食い止めて赤犬さんに褒めてもらうんだ!」

 

ズシズシの実の能力をもち、自身の正義を貫く任侠のような慇懃無礼な口調で話す大男、名を藤虎。中将でありながら大将にも劣らぬ実力を持ち、海賊にさえも仁義を通す男だ。そんな藤虎に負けじと出てきたのは胸に書かれた'死川心中'の文字が目立つ、たらこ唇の軽い口調で話す男。藤虎と同じ位の強さを持つ、モリモリの実の能力者である。海軍大将の赤犬を心底心酔しており、海軍の中でも自由人な人物である。

 

「全員、全員でかかれ!」

 

 

「直ぐに兵を集めて、マリージョアへ向かう!今いる大将にもこの事態を伝えて呼んでこい。あと、胃薬も頼む⋯⋯」

 

海軍本部マリンフォードの元帥室にて、てきぱきと指示をだすこの男は海軍元帥センゴクである。急遽、情報部から知らされる伝令にセンゴクは頭が痛くてしょうがなかった。

 

「この半年間、何をやっていたかと思えば!ロジャーの奴め⋯⋯、こんな大それた事をしよって!」

「そこで弱音ばっか吐いてないでシャキっとせんか!」

「分かってるよ、おつるちゃん。それで、今マリンフォードに居る大将共に連絡はしたか?」

 

指示を受け、息を切らしながら元帥室に戻ってきた海兵にセンゴクが確認をとる。ちなみに、その海兵の腕にはしっかりと胃薬が握られており、速やかにセンゴクの手へと渡った。

 

「ハッ!現在、任務を終えたばかりの黄猿(ボルサリーノ)大将と赤犬(サカズキ)大将が直ぐに動けると連絡を受けました!」

「そうか⋯⋯。なら、直ぐにソイツらの部隊をマリージョアへ行かせろ!あとは⋯⋯」

「失礼ですがセンゴク元帥!」

「なんだ⋯⋯」

「マリージョアに出たのがロジャーなら、ガープ中将を呼ばない手はないかと!」

 

若い海兵にも知れ渡る程にガープの英雄伝説は海軍に浸透している。その英雄伝説の中でも、ガープといえば長年ロジャーを追ってきた最強の海兵であり、''ロジャーに太刀打ちできる唯一の海兵''というのが全海兵の共通認識である。若い海兵も例外ではなく、何故ガープ中将を呼ばないのかが不思議でならなかった。

 

「それは、無理だよ」

「何故ですか、つる中将!」

「ガープの奴は天竜人を嫌ってるからじゃ。それだけで行く理由は消える」

「それに、彼奴の行方は不明だ。あのバカを呼ぼうと思うても、呼ぶ手段が存在しない」

「そう、ですか⋯⋯」

 

ガープが居ないのが心許ないのか、元帥室に来ていた若い海兵はガープが来ない事に不安を感じていた。別に大将の実力を信じていないわけでない。ただ、それ以上にロジャーという大海賊に恐れを抱いているのだ。何故なら、この海兵は大将青雉(クザン)と共にロジャーと1度、応戦した事のある海兵だったからだ。そんな不安を感じていると、突如元帥室の扉が開かれる。

 

「面白い話を聞いた⋯⋯」

「お、お前は!鷹の目ッ!?」

 

 

「おいおい、いきなりなんだってんだッ!?」

 

マリージョアの離れで、生まれてからずっと世界政府に監視をされ続けられた1人の女の子がいた。桃色の髪に丸い帽子を被り、身に合わないダボッとした服を着ている小さい女の子。その子が今、厳重な監視を逃れマリージョアから脱出しようとしていた。それは、その子が前から練っていた作戦であり慎重に脱出の機会を伺っていたのだ。昼頃の午後1時、それは警備兵達が昼食の為に、その女の子から目を離す時間が僅かにできる時間帯。

 

「今日は、絶好の脱出日和だってのに!何処のどいつだよ!俺の計画を邪魔した奴は!」

 

彼女は監視され続けられる生活に嫌気がさし、何時も見える広い海へと出たい欲があった。そして、その欲を満たすため小さい頃から練っていた作戦の決行日が今日であり、運が良くか悪くか、その決行日とロジャーのマリージョア進撃日が重なってしまったのだ。

 

「ん?あれは!」

そして、茂みから顔を出した彼女は見てしまう。マリージョアに駐在する海兵でも警備兵でも無い人達が、天竜人の家から奴隷を解放している姿を⋯⋯

 

「ラッキー!」

 

 

「ドリンゴいたか〜?」

 

マリージョアの上空を自身の翼を使い飛んでいるのはドリンゴである。第弐団チームがエリオから言い渡された、指令というのは奴隷解放の手伝いと襲ってくる海兵達の相手をするというものである。ただ、それはあくまで本作戦の副産物でしかなく、本当の目的というのは、とある天竜人を探すというものだ。それは、以前ロジャーが笑った天竜人の事である。

 

「なぁ、副船長ー!探してる天竜人って毛むくじゃらで厳つい顔の奴であってるかー?」

「あってるぞー」

「ここより、数キロ西にそれらしき人物発見ー!」

「聞いたか、ロジャー」

『あぁ!直ぐに向かう!』

 

電伝虫でロジャーにドリンゴから伝えられた情報をロジャーへと伝えると、向こうからロジャーとは違う声が2つ聞こてくる。ドスの効いた声と能天気な声がレイリーの持つ電伝虫から響き渡る。

 

『あんたがロジャーでござんすね。みすみす、あっしが行かせるとでも?』

『らはは!俺も居るのを忘れんなぁ!』

『今度は強そうな奴らが来たな!ワッハっハハハ!!』

「⋯⋯早く、片付けておけよ」

 

レイリーは溜息でロジャーに言葉を返すとそのまま電伝虫をしまい、向かってくる海兵の相手をはじめる。ロジャーが楽しそうに戦っているのだ。なら、レイリー達も派手に暴れなければロジャー海賊団の名折れである。

 

『分かってるって!』




感想と評価本当にありがとうございます!筆者はそれが嬉しくて涙が出そうですよ、、、
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