異世界超加速   ~異世界と魔王と超加速~   作:Ryuu65

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異世界と目覚めと口撃力

 何の見えない暗闇の中、声がしたんだ。

声のする方を頼りに進むと、視界が明るくなってきた。

────気づくと俺は自分の部屋のベットで横になっていた。

「お兄様、朝ごはんですよ」

ラフィネは俺と目が合うと、持っていたおかゆを落とし泣きながら俺にしがみついてきた。

 

 

 「極めて危険な状態です。怪我をしているわけではないので回復魔法は効きませんし、死んでいないので蘇生魔法も効きません」

倒れたマサトを急いで街に運び、神父に見せるとそんな答えが返ってきた。

生命力を削ってまで魔法を放ってしまったものの命はとりとめたのだが、いつ目を覚ますのか分からず、一歩間違えれば一生目を覚ますことがないという。

「残念ながら、私には出来ることがありません。一応食事はしますので自宅で介護されるのがよろしいかと…」

マサトと同じパーティ―メンバーである二人は絶句した。

それをほかの冒険者たちに伝えると、魔王軍幹部を倒したといえども喜ぶ人は誰もいなかった。

屋敷に戻った二人は、部屋にマサトを寝かせ今後の事を考えていた。

「ルリテはいないし、ルイにも頼んでみたけど十中八九駄目だろうし…」

「…こんな時お兄様なら簡単に解決したくれるのでしょう……。もし、もし目覚めなかったら…!」

「絶対そんなこと考えちゃ駄目よ!絶対マサトは目覚めるから、毎日変わりばんこでご飯あげましょう」

だがそんな二人の願いも虚しく、一ヵ月経ってもルリテは帰ってこずマサトが目を覚ますこともなかった。

  

 ある日のラフィネが食事担当の日。

部屋に入った彼女は返事をしない少年に向かって話しかける。

「お兄様、そろそろ起きてくれてもいいんじゃないんですか?…もうお兄様の大切さは私達にも先輩たちにも伝わりましたよ。……お兄様がいないと…寂しいです、つまらないです。…だから起きて、目を覚ましてよ…!………お兄ちゃん…………!」

少女は少年に抱き付き静かに泣いた。

 それから三日後に奇跡は起きた。

────泣きながらしがみついてくるラフィネの頭を優しく撫でながら言う。

「ごめん…心配かけたな。自分でもまあまあ長い間寝てたのが分かるよ」

「全然まあまあじゃないです!でも本当に…本当に良かったっ…!」

「ラフィちゃん?どうしたのー?」

ラフィネの泣き声が聞こえたのかユウナが下から上がって来た。

「久しぶり…ユウナ」

俺と目が合ったとたんユウナも涙を流し飛びついてきた。

「うわああああん!よがった!目を覚ましてくれてっ……!」

「ごめん。……あれ、ソニアとルリテはいないのか?」

俺の質問にラフィネとユウナは困った顔で見合わせる。

「実はマサトが倒れた日にどこかに行ったきり帰ってこないの。ご主人様が目覚めると信じて次こんなことが起きないよするって言ってたけど」

「あのお方はどなたなのですか?」

器用度バグりの魔王軍幹部だけど、抜け出してきて追いかけられたところを俺が助けて、亜人族の掟に触れて今の状態というわけです。

「また命の恩人か」

「別に悪いことじゃないぞ。っていうかまだルリテはまだ帰ってきてないのかよ…」

二人が心配だがどこに行ったのか分からないからどうしようもない。

「そうだ!ギルドの皆もすごく心配してたから顔出しに行った方がいいよ!」

「そうですよ。ルイ先輩はお兄様を目覚めさせるためあちこちまわったのですから」

確かに心配させたままじゃ悪いな。

皆の不安を解くため冒険者ギルドに向かうことにした。

 

 

 久しぶりにギルドの扉を開けると中が騒がしかった。 

「返しやがれこの泥棒が‼」

「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。俺は良かれと思ってやったんだぜ?」

バイエルと男性冒険者が喧嘩していた。

「バイエル、これはどういうことだ?」

「マサト⁉よかった!再開を喜びたいところだが助けてくれ。あいつが俺の酒を盗みやがったんだが…口がうまくて言いくるめられちまってよ」

おい、感動的な再会じゃないのかよ…。

「やべっ!あいつ屁理屈の得意なニートスピーダーじゃねえか。ここで言いくるめられんのは不味いな……よし」

チンピラがボソボソと独り言を言っているが何を言っているかは聞き取れなかった。

「あんた俺と勝負してくれよ。石をお互い二回ずつ投げてキャッチできればいい。あんたが勝ったら酒代を払うが、俺はちゃんと理由があって良かれと思ってやったことだからな。俺が勝ったらもう一杯奢ってもらうぜ」

いきなり何だこいつ…?

俺の感動的な再会を邪魔しやがって…。涙目にしたるわ。

 ギルドの外に出てお互い石を二つ持つ。

「最初はニートスピーダーさんからでどうぞ」

忘れられてたと思ったのに!煽り散らかしてやるわ。

「…ふっ‼」

投球は全く上手くないが変な回転がかかり相手のチンピラ野郎は捕れなかった。

「あーっ!今の俺なら絶対捕れたわー。俺なら絶対捕れた」

俺の煽りにチンピラは歯ぎしりする。

「今度は百七十キロ出してやるよ!おらっ!」

そういいつつも投げるのはチェンジアップという遅い球。投石《とうせき》はチンピラの手前で落ちた。

 良かった…地味に野球に詳しいのが役に立った。

「あーあっ!今のも俺なら絶対捕れたわー。俺なら絶対捕れた」

チンピラの頭に血が上る。俺って結構煽るの上手いのか…⁉

 チンピラのターン

「おらよっ!」

チンピラの投げた石にはカーブがかかっていたためギリギリ捕れなかった。

「今の捕れないの⁉あーあっ!今の俺なら絶対捕れたわー」

さっきの俺の煽りをパクって反撃してきた。

そっくりそのまま返されるのは想定内だ。

 「でも俺はお前じゃない」

「⁉」

「人には個人差というものがあるんです。それを他人に共有させるってどういう事だか分かってんのか?わざわざ俺なら捕れたとか言ってるけどそんなもん自慢にもなんねーから。マジでなんなんですか?まさか自分が出来ることを人に共有させないと生きていけない人なんですか?本当に個人差を分からない人ってマジでやだわー」

俺の即答からの反撃にチンピラはオロオロしている。

「いや、そのセリフはお前が最初に───」

「そもそもだ!相談に乗ってやるから酒奢れって言ったくせに相談に乗らない?まあお前は良かれと思ってやったんだよな?俺のパーティメンバーにこの国の王女様がいるから頼んで裁判してもらおうぜ。裁判に負けたら死刑な!まあ大丈夫だろ⁉お前は良かれと思ってやったんだもんな?テレポート代は俺が払ってやるから王都に行こうぜ!…な?」

そう言いながらチンピラと肩を組むと。

「すいませんでしたあああああ‼」

財布を地面に投げ捨て泣きながら走って逃げってった。

 

 

 「いやースッキリしたぜ!ありがとな」

「無事に目覚めてくれて良かったよ。なんの解決情報もなかったからさ」

「よかったよおお‼私、男友達少ないし、頼れる人もいないからさあ」

「まだ約束守ってもらってないからね。死なれたら困るよ」

「エレノ…お前そんなことどうでもいいから目覚めてって教会にお祈りに行ってたじゃんか」

「それは言わないで‼」

 …………そうだよ。これが異世界だよ!

職業に就けなくてニートとか、スライムが全然斬れないとか、ゴブリン美味しいとかそういうことじゃない。

幹部倒して頼られて、死にかけたらいろんな冒険者に心配される。それが異世界ファンタジーってもんだろ‼

「皆、心配してくれてありがとう!せめてものお礼として……今日このギルドのメニューは全部俺が払うから、どんどん食べて飲んで盛り上げてくれ‼」

「「「「「うおおおおおおおおお‼」」」」」

 

 

 「なあ、なんかこのギルドぼろくない?」 

最初はこんなもんかと思っていたが、今思うと結構ぼろい。

「こんな駆け出し冒険者の街のギルドなんて誰も支援したがらねえよ。こういうのは本来この街の領主様がやることなんだが…一体何やってんのかねえ」

そんなたわいもない話をしながらギルドで騒いでいると、ラフィネとユウナがやってきた。

「うわ!すっごい盛り上がってんじゃん。ちょっとマサト、そういうことなら呼んでよね!」

「悪い悪い。…で、俺を迎《むかえ》えに来たのか?」

「それもだったんだけど、王都から手紙が来てたんだよね。マサト様ご一行へってあったから開けずにとっておいたんだけど」

「手紙…?」

俺はユウナから手紙を受け取り中身を見る。

 

 

 拝啓、カヤマサト殿

娘が世話になっているな。魔王軍幹部を二体も葬《ほうむ》ったと聞きとても嬉しく思う。

そこでだ、娘の話やマサト殿の武勇伝などを聞きたい。

いつでも良いので王都においで願いたい。

わしの仕事である最前線は幹部を倒され魔王軍の圧力が抑《おさ》えられているため息子に任せてきた。

娘の命を救ってくれたとも聞いた。先日のような守りの薄いことは無いから心配には及ばない。

いつでも豪華な食事を用意して待っている。今、そなたは英雄だ。

 

  ガドーレ・フォンルート・エテルネル

 

 

 …………マジですか?

この国の王様…キング直々《じきじき》に?

「お父様がこんなにもお兄様の事を気に入っているとは」

「すごい!早速 明後日《あさって》行こうよ」

「明日じゃないのか?」

「今日は朝まで盛り上がるから明日は無理かな」

可哀そうな王様…宴会に負けるなんて。

でも俺が英雄ですか、無双しませんよ?

「朝まで飲むぞ!」

「「「「「おおおおおおおおお‼」」」」」

 

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