「見つけたぞ!追え!」
「何としても見つけ出せ!殺しても良いと言われているのだ」
この会話でなんとなく察せると思いますが、俺は今兵士に追いかけられています。
自分に向けて解説をしてしまうほどヤバい状況です。
すると俺にお姫様抱っこされている少女が。
「お兄様、私を置いて逃げてください!このままでは捕らえられて死刑になってしまいます!私の事はもういいですから‼」
「置いて逃げてもどっちにしろ死刑だし、それじゃあここまで来た意味がないだろ。こうでもしないと父ちゃんと……」
俺は疾風迅雷を発動させ無我夢中で走った。
お兄様たちと別れてから何日経ったのか。
そう思い数えてみると一週間しか経っていなかった。
私の感覚ではもう一ヶ月も前の事のように思える。
あの時は一日がたつのがすごく早く感じたのに、今では一日が長い。
私は王家だからしょうがない、一緒に冒険できていたことが奇跡。少しの間でも冒険できたんだからありがたいと思う。
そうやって自分に言い聞かせると逆に悲しくなって涙が出てくる。
「王女様、お時間です」
「分かりました」
今日は実のお兄様の誕生日。
だけれど実のお兄様は前線にいるため妹である私がパレードに出ることになった。
パレードをするとあの時の事を思い出す。
前回はお兄様が作り笑いだと見破ってくれたけど、今回も見破ってくれるかな?
たくさんの人の中からお兄様を探すと見覚えのある女性、ユウナさんを見つけた。
その隣にはもちろんお兄様とソニアさんが。
お兄様と目が合うと、私に向かってウィンクした。
「良かった、ラフィネは城にいるな」
この後の作戦の為、ラフィネには城にいてもらわないとまずい。
「でもさ、本当にやるの?」
「ご主人様危険ですよ!」
「でもやるしかないだろ。危険なのは俺一人だし、お前らもラフィネがいないと寂しいだろ?」
魔道具研究所を出た瞬間に、白衣の女性に呼び止められ売られている魔道具全種類を見せてもらった。
その中に一つ役立ちそうな物があったので高値を出して買ってきた。
初めからそうしてくれれば良かったのに…。
夜が更け道具や装備の確認をする。
王様は二日後に前線に戻るらしいので実行するなら今夜しかない。
「ソニア、俺にかけられるだけ支援魔法を頼む」
そう言うとソニアは分かりました、と返事をし俺にいくつもの支援魔法をかける。
「じゃあ行ってくる」
この日の為にハイドという潜伏スキルを覚えてきた。
このスキルを発動させている間は少し身を隠しただけで敵は相手の姿を八十パーセントから九十パーセント程捉えられなくなる。
完璧ではないのでそこは注意したいところ。
ラフィネの部屋を再確認しベランダにフック付きロープをかける。
結構な見張りの数だったが、ハイドの効果は絶大だ。
支援魔法で筋力を強化されているため、ロープを上るのもわけない。
ベランダに上がり窓をコンコンと叩く。
しばらくするとカーテンが開き、中にいる少女がとても驚いた顔をした。
少女は急いで鍵を開け上って来た少年を部屋の中に入れる。
「お兄様‼何をしているんですか⁉見つかったら大変なことになりますよ!」
「ちょ、声がでかいって!…だから言ったろ?すぐに会えるって」
「それは凄く嬉しいのですが…どうしてここに?」
そんなのはもちろん……。
「王女様を誘拐しに来ました」
「王女様が攫《さら》われたぞ!侵入者を探せ!」
早いな、もうバレたのか。
俺はラフィネをお姫様抱っこしながら逃げる。
すると場内に大きな声が響いた。
「場内にいるものに告ぐ!侵入者を捕らえよ‼殺してもよい‼」
今の声って王様だよな、計画通りだ!
俺は電光石火を発動させ思い切り走る。
すると自分の冒険者カードからピコンと小さな音が鳴った。
「こんな時に何だよ⁉」
急いで冒険者カードを確認すると、電光石火のスキルがレベルアップしていて、
『疾風迅雷』という名前に変っていた。
『疾風迅雷』・・・スタートダッシュが付き、三歩走ると速度が一.五倍になる
何で今って思うけどありがたい。
「見つけたぞ!追え!」
「何としても見つけ出せ!殺しても良いと言われているのだ」
「お兄様、私を置いて逃げてください!このままでは捕らえられて死刑になってしまいます!私の事はもういいですから‼」
「置いて逃げてもどっちにしろ死刑だし、それじゃあここまで来た意味がないだろ。
こうでもしないと父ちゃんと……。スピード上げるぞ、カリバー落とすなよ」
俺は疾風迅雷を発動させ無我夢中で走る。
一階の窓を割って外に出て城の近くの平原に向かうと、後から一人で王様が追いかけてきた。
王様はポケットからある物を取り出し使用する。
すると俺とラフィネと王様を結界が覆った。
これで俺たちは逃げられない。
「貴様!自分の欲望のままにこんなことをして、タダで済むと思ってんじゃないだろうな‼国家反逆罪にあたるぞ‼」
国家反逆罪…か。どの口が言ってんだ。
「確かにそうかもしれないけど、王様、アンタだってそうだろ。はたから見たら娘思いなだけかもしれないが、手元に置いておきたいだけでラフィネの自由を奪った」
「王族なのだから当たり前だろう!」
「だからって、何故俺とラフィネが会うことも手紙をやりとりすることも拒む?」
その言葉に王様は口ごもる。
俺はラフィネを誘拐する前に城の金庫から盗んできた紙を突き出す。
買ってきた魔道具のおかげだ。
「コレがなんだか分かるか?魔王とのやり取りの手紙だよ!アンタは娘と魔王の息子を結婚させ、和平を結ぼうとした。俺とラフィネが会うことも手紙をやりとりすることも拒んだのは、ラフィネが魔王の息子に集中できるようにだろ!」
真実を知ったラフィネはその場に崩れ落ち、王様は大剣を抜いた。
「仕方がないのだ!人類は魔王軍と竜王軍両方を相手にできん!」
「だからって魔王と手を組むのか?魔王の言うことは信用するなって事は子供でも知ってることだぞ!」
すると王様は大剣を構え…。
「貴様には関係ない、幸いここには誰もいぬ。知られてしまったのなら…国家反逆罪とし、わしが処刑する‼」
「お父様‼」
王様が斬りかかって来た!
「ピンチになったら実力行使って恥ずかしくないのかよ…オッサン‼」
短いダガーで大剣を受け止める。
そこから鍔迫《つばぜり》り合いやの剣の戦闘、口論が続いた。
そろそろ支援魔法の効果時間が危うくなってきたころ。
「何故そこまでする?命を懸けてまでやる価値があるのか?」
「価値はあるし、この国の頭が魔王軍とつながってるのをほおっておけるわけないだろうが‼」
…体力が…もう限界だ…。
「大体この国の奴らは、平和の大切さというものを知らん‼」
平和の…大切さ…?
「……それで良いんだよ…」
「何?」
「平和は…誰にとっても……特別であっちゃいけないものだ‼」
「それを屁理屈というのだああ‼」
俺のダガーが弾かれ遠くに落ちた。
武器が無ければ…………いや…ある…。
もう、支援魔法は切れた。
俺の筋力で足りるのか?
頼む…抜けてくれ!
俺とラフィネ…いや、皆の!この国の為に‼
「なあ、知ってるかオッサン。屁理屈ってのは……正論の事を言うんだよ‼」
背中にある片手剣を勢い良く抜き大剣と鍔迫り合う。
その瞬間王の持っていた大剣が半分に折れた。
勝っ……………た……。
あと一歩のところで、俺の限界が来て、その場に崩れた。
「……ふっ。惜しかったな、これも定めよ」
王は少年に折れた大剣を構えた。
「だめええええええ‼」
そこに王女が剣を抜いて飛び出した。
俺が目覚めると場所はそのままで、俺はラフィネの膝枕、目の前には王様がいた。
「目覚められたか」
何で俺は生きてるんだ?
すると王様はいきなり頭を下げた。
「すまなかった。……実はあの後娘が飛び出してきな、私の剣を飛ばして色々言われたのだ。わしも最初からおぬしらが正しいと気づいていたはずだった…それなのに認めず、自分の正しさを強情に張り続けていたのだ。だが、わしは負けた」
そうか…ラフィネがやったのか。
「いきなり言われても信用できないと思うが、わしは諦めない。魔王軍とも竜王軍とも戦う。だから、娘を…頼む」
「任せてください」
結果オーライか…。
「本当にすまなかった。わしに出来ることがあれば何でも言ってくれ」
…………。
「では一つ、お願いしたいことがあるのですが───」
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