「ただいまー」
ユウナとソニアは屋敷で待たせていた。
「遅いよ!心配したじゃん」
「無事で何よりです。それでラフィネ様は…?」
その言葉に俺の後ろからラフィネが顔を出す。
「えっと……た、ただいま…です」
「ラフィちゃああん!」
ユウナは喜びのあまりラフィネに抱き付く。
「よく許してもらえましたね」
「まあ、ひと悶着《もんちゃく》あってな。これからも今まで通りで大丈夫だ」
時刻は午前三時を回ったころ、十一時頃に出発したのに気絶などでもうこんな時間になってしまった。
「本当に良かったよ…。私達心配でまだ寝てないんだからね」
「ふわああ……。ラフィネ様のお祝いをしたいところですが、今日は寝かせてもらってよろしいでしょうか?」
ソニアの言葉にラフィネが慌てて言う。
「もちろんです、どうぞごゆっくりお休みください。皆さんにはご迷惑をおかけしました」
挨拶をすると二人は自室に戻った。
「じゃあ俺達も寝るか。お休みー」
俺も自室に行こうとしたところを…………ラフィネに抑えられた。
「どうした?」
「お兄様……今夜は…一緒に寝てもいいですか?」
…………え?
「別にいいけど…」
妹はたまに兄ちゃんと寝たくなるもんなのかな?
俺の部屋のベッドに俺とラフィネが寝転がり布団をかける。
このベッドはもちろん一人用なため二人で寝ると結構な距離だ。
「でもいきなりどうしたんだよ?この状況が恥ずかしくないって言ったら噓になるけど結構落ち着いてる方だぞ、俺」
「ごめんなさい。けど……またこうして一緒にいられるのが夢みたいで……嬉しくて…ありがたくて……」
急に私の中にある気持ちが爆発した。
何故か今だけはいつもよりお兄様の事が大事に思える。
私は涙を流しながらお兄様に抱き付いた。
すると何も言わずお兄様も優しく抱き返してくれた。
「お兄様、もう…どこにも行かないで…ください!もう、あんな思いはしたくないです‼」
「ああ、俺はどこにも行かないよ、兄弟なんだからさ。それに王様も褒めてたぞ、娘がこんなに強くなってくれて嬉しいってさ」
「ふふふっ……お父様から褒められるなんて…。それに、やっぱりお兄様とお話しするのは楽しいです。一緒にいるって、約束しましたからね」
そう言うとラフィネは俺の頬に顔を近づけ…………。
「⁉」
「メインは…ユウナさんの為にとっておいてあげますけど…あんまり遅いと、私が盗っちゃいますからね?」
その時のラフィネの顔が嬉しそうな、泣きそうなような顔だったことを…俺は忘れないだろう。
俺が王様に頼みごとをしてから数日、王様の手際の良い手配により俺の願いは叶えられた。
「えー…ではただ今より、リニューアルギルドをお披露目《ひろめ》します。では職員の皆さん、扉を開けてください!」
職員たちが扉を開け、たくさんの冒険者たちが中に入っていく。
この通り俺の頼んだ事とはプレロイのギルドの改装だ。
テーブルやイスは冒険者な感じを残しつつ王都から取り寄せた座り心地バツグンの高い木材を使っている。
三つしかないおかげで列ができてしまう受付の数を増やし、中には職員の休憩スペースなど職員に優しい仕様に。
料理室は駆け出し冒険者にはもったいないくらいのキッチンを取り付け食材を集めて置ける倉庫には足りなくなったら王都から良い食材を取り寄せることができる。
まあ、取り寄せる金は俺が出すんだけど。
ギルドの端の方には売却場やポーション、薬草など冒険者に役立つものが少し売っている。
冒険者たちが大好きな酒やおつまみの種類を豊富にし、バーカウンターを取り付けた。
そして何と言っても冒険者ギルドに欠かせない腕相撲をする台もまとめて三つ取り付けた。
もはやリニューアルじゃなくて建て替えたかのようなギルドの姿に冒険者と職員は興奮しぱなっしだ。
「やべええ!すげええ!こりゃ王都のギルドと同じくらいなんじゃねえか⁉」
「うお!このキッチンめっちゃ良いやつじゃん!こりゃ俺の腕が鳴るぜ!」
「俺…バーテンダーに憧れてたんだ…!これからはマスターとしてやってくよ!」
「酒の種類多っ‼こんなにあるなんて結構な金かかったんじゃねえか⁉」
「クエストの掲示板もめっちゃ分かりやすくなってる!」
「何だこのイス⁉木じゃねえだろ⁉」
「まさか職員にまで気を使ってくれるなんて……」
いやーこんなに喜んでくれるとは思わなかったわ。
今は夜だし、こりゃ朝まで騒ぐな。
「では、職員代表のレネが、このギルドリニューアルに大きく関わったと噂のマサトさんにお話を伺いたいと思います!」
え…?そんなの台本にないんだけど。
酒を飲み始めた冒険者を見るとやはりルイがウィンクした。
「では、まず初めにどうしてギルドがリニューアルされたのでしょうか?」
「えっと…あまり掘り下げないでほしいけど王都でひと悶着《もんちゃく》あった後に王様に頼んでリニューアルしてもらったんだ」
俺の言葉に冒険者が盛り上がる。
「さすがマサト!俺たちの事考えてくれてる‼」
おうおう、嬉しいなあ。
「そうなんですね。ではギルドに調達される食材やお酒などの消耗品は王都からタダでお取り寄せされているんですか?」
「いやいや、流石にタダじゃないです。俺が払って取り寄せてあるんですよ」
その言葉を聞いた瞬間冒険者たちの飲食の手が止まった。
「そうだったのか…。つまり俺たちが食ったり飲んだりするたびにマサトの金が減ってくって事か」
「命を懸けて稼いだお金で私たちは騒いでるんだね」
……ヤべー何か変な空気になっちゃった…。
「でも俺の四億は先払いしちゃったし、もう戻すこともできないから皆が食べたり飲んだりしてくんないともったいないんだよ。四億もあれば大丈夫だから、逆に俺の為に皆食べて飲んで騒いでくれ‼」
「「「「「…うおおおおおおおおおお‼」」」」」
ギルドは再び歓喜を取り戻した。
「まったく…マサトはお人よしすぎるよ」
「でも、そんなところがお兄様の良い所なんじゃないですか?私やソニアさんも、そのおかげで今を楽しく生きてますから」
「そうだけどさー…あんなことばっかりしてて他の女性冒険者にマサト盗られたらどうしようって思っちゃって」
「確かに!それは一大事ですね…」
ユウナとラフィネの言葉にソニアが安心している声で言う。
「大丈夫ですよ、ご主人様は私たちの事を一番に想っていますから」
「そうだね…でも明日からクエストかー」
ギルドの売り上げが俺にくるわけじゃないから儲かっても関係ないし、ギルドは特にお取り寄せする必要はないから当分黒字経営なわけだ。
「おいマサト、お前財産全部使っちまったのか?」
ユウナたちと飲んでいた俺にバイエルが訊いてきた。
「まあしょうがないだろ」
「しょうがなくねえよ!お前たちこれからどうすんだよ」
「大丈夫だって、まだアレがあるから」
「「「「アレ?」」」」
何でお前らまで驚くんだよ…。
「それではマサトさん、こちらへどうぞ」
レネさんに呼ばれたので受付に向かう。
「それでは少し遅れてしまいましたが魔王軍幹部、知力バグりのシングラの討伐により、五億ベクタを差し上げます‼」
「う……?…おおおおおおおおおお‼」
五億か…ブリッシュより一億も高いのか。てか俺、大金にも驚かなくなったな…。
「「「「あ‼」」」」
思い出したか。
「すっかり忘れてた!マサトが二体目の幹部倒したんだった」
「あの後色々ありすぎましたね」
「ですがこれでお金には困らないですね」
「そういうことか…それじゃ心配いらねえな」
そう言うとバイエルはほかの冒険者の元に戻っていった。
「これで一件落着だね」
「そうですね。ですがルリテ様はまだお戻りにならないのですね」
確かに遅すぎるとは思うけど、どうしようもないからな。
多分幹部を倒した盗賊とかで人気者なんだろう。
「お兄様、お兄様」
ラフィネが小さい声で話しかけてきた。
「昨日の約束、絶対に守ってくださいね?」
「もちろん。俺はラフィネを追い抜かないし置いてかない、隣で一緒に歩いてあげるよ。…ていうかむしろこっちが頼みたいね」
俺の世界一の妹は世界一可愛い笑顔を見せた。
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