異世界と馬車と盗賊の里
そういやそうだった…。
俺、敏捷力バグりだったわ。
自分の唯一のとりえでありながらそれをほとんど活かさずに戦っていた。
せっかくのバグなんだからこれからはもっと活かそ…。
「アニキー!」
宴会の数日後、今までの行動を反省しているとルイがやって来た。
「ルイか、またいい情報を持ってきたのか?」
「今回は結構な情報だからね、十万ベクタもらおうか」
十万⁉……いくら俺が金持ちでもそれは高すぎる気が…いや高すぎだろ‼
「あ、この情報はルリテの情報だぜ。もちろんアニキのパーティメンバーのな」
俺はすぐに財布から十万ベクタを取り出しルイに握らせた。
「ルリテは幹部を倒したパーティーにいるから力が認められて盗賊の里に呼び出されてるらしいんだ。帰ってくるのが遅いのは、その街に悪徳貴族がゴロリといるからさ。…行くなら気をつけろよ」
盗賊の里…か。
俺たちが行って出来ることはあるのだろうか。
どっちみち心配だし、何か少しでも手伝ってやりたい。
「…………ルイ、この街からその里までどのくらいだ?」
「ねえ、本当に行くの?盗賊の里って言うくらいだから治安が悪いのは目に見えてるんだけど」
それはそうなんだろうけどなー。
「じゃあ行くのやめるか」
「行きます行きます!」
時間的にはまだ朝なので荷造りをして馬車の待合所に行く。
「盗賊の里に行きたいんですけど…」
「盗賊の?……ああ、カゼンナの事かい?」
………カゼンナ?
「お客さん、カゼンナを知らない人ですかい?カゼンナは貴族が多く住む街でしてね、だけど住んでいるのは悪徳貴族ばかり。だから盗みが多いので、盗賊が集まる場所があるんです。それが盗賊の里ですよ」
なるほど…じゃあルリテたちは悪徳貴族から盗んでるから義賊みたいなものなのか?
「じゃあおっちゃん、そこまで送ってくれ」
馬車は景気よく走り出す。
時々の振動が長らく乗っていない電車のようで心地いい。
「そういえば、ここしばらく他の街に行ってませんでしたね」
「修行してマサトと再会したのがもう一か月も前か…早いね」
俺が思いついた作戦が賭け事だったおかげで、一ヵ月を無駄にしてしまった。
「っていうかユウナもマジックシェード使えたのか」
「せっかくあの町にいたんだからね。オールドのおじさん、元気にしてるかなー?」
「ここにいる皆様はっマジックシェードを使えるのですか…」
オールドじいさん、あなたの教えてくれたマジックシェード、今のところあんまり使ってません。でも頑張って活躍させたいです。
街を出て数時間、馬車から見える変わる景色を眺めながらボーっとしていると。
「うおっ!こりゃいけねえ。お客さん、馬車止めますよ」
何かあったのかと気になり馬車の外に出る。
外にはシャープクックと言われるニワトリが列を作っていた。
「すいませんお客さん、いくらモンスターでもひき殺すのは可哀そうですからね」
ひき殺すのは可哀そう…。
時刻は昼近く、そろそろお腹が空くころ。
シャープクックはトサカが刃物になっていて頭突きで攻撃してくるが基本は臆病。
そして卵がうまいと評判だ。
「なあおっちゃん、ここらでお昼にしよう」
昼食を済ませもう数時間馬車を走らせると街が見えてきた。
中に入ると街は活気にあふれていた。
「お客さん、ここですよ。盗賊の里はこの路地をまっすぐ行けばつきます」
「ありがとうおっちゃん。これはとっといてくれ」
そう言いながら普通の値段よりも高いお金を渡す。
「ありがとうございます。お客さんもご武運を」
なんて優しい人なんだ…。
今度馬車に乗ることが会ったら、同じ人に頼もう。
狭くて暗くじめじめした路地を進むと。
「おお!」
そこには街の中にあるとは思えないほどの田舎なまさに里があった。
「この中にルリテさんがいらっしゃるんですよね」
「早く探そうよ」
ルリテを探すべく里に入ると………⁉
「何者だ?」
俺達の首に冷たいものがあたった。
「お、俺たちはルリテのパーティ仲間だ。最近帰ってこないから心配できたんだ」
すると首に刃物をあてていた三人は素早く手を戻し。
「本当か?……いや、本当ですか?」
おっとここではかなり偉いようで、ルリテ様。
「あの…ルリテ様のお客様がお見えになられていますが」
「あたしに客?たっくこんな忙しい時に誰だよ…?」
家の前で待っていると、ルリテが出てきた。
「久しぶりだな」
ルリテは俺たちの姿を見ると凄く驚いた顔をする。
「お、お前ら何でここに?」
「ルリテあんまり遅いから来ちゃったのよ」
「ルリテさんがいないあいだ大変だったんですからね」
「このお方がルリテ様ですか?よろしくお願いします」
「え?あ…、うん?」
混乱しているルリテに俺達の今までを説明した。
「そんなことが……悪かったな、大事な時にいなくて。お前らだけは巻き込みたくなかったんだ」
「何で俺らだけは巻き込みたくなかったの?」
俺とユウナはニヤニヤしながらルリテをつつく。
「それは、その…………だあああああっ!もうっ‼ここに来たからには、手伝ってもらうからな!」
「もちろん、そのつもりで来たんだ」
そう言ってお互い笑いあった。
狙うはこの街一番の悪徳貴族の宝である王冠。噂では神器と言われている。
神器と言われるものは王都で保管しなくてはならないにも関わらず、それを持っている貴族から盗んでくるというわけだ。
「やっぱり義賊だったのか」
「うるせー、続けるぞ」
その貴族の屋敷には俺とルリテとラフィネで行く。
ルリテは本業だから当たり前。ラフィネは戦闘があった時の為。俺は…特に高くない知力を活かせとのこと。
足が速いからバレにくいというのも理由の一つだ。
「今夜おこなうから、仮眠とっとけよ」
そう言われたので俺は用意されたベッドに向かう。
「お前らは寝ないのか?」
「私たちは馬車の中でほとんど寝てたからね。女子会ってやつだよ」
「ほら、ソニアさんもですよ」
「え?私もいいんですか?じゃあ喜んで」
久しぶりの再会だ。積もる話もあるんだろう。
「そうか。じゃあお休み」
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