「マサト、おい!起きろってば。おい!」
「んあ……?」
「寝ぼけてんじゃねえよ。時間だ、行くぞ」
眠い目をこすりながら辺りを見回す。
目に入ったのはこの前手に入れた剣。
…そういえば何故俺はあの時剣を抜けたのだろう。支援魔法は切れていたしレベル的にも足りないはずだ。
ふと気になり自分の冒険者カードを見る。
この前はゆっくり見てる暇なんてなかっ………?…⁉
俺の筋力と知力がレベルに比例していなく大幅にステータスアップしていた。
どうしてだ?
…………俺が今考えられる一番の仮説としては、ステータスバグりにとどめを刺したやつはそのステータスが大幅に上昇する。
簡単に言えば今俺がソニアにとどめを刺せば俺の器用度が大幅に上昇するって事だ。
いや、兆が一でもそんなことはしないけど。
「何やってんだよ。早く行くぞ!」
ルリテに呼ばれたので外に出る。
「知ってるか?スキルってのは使ってるやつに触れるとその恩恵を受けられるんだ。例えば千里眼を使ってるやつに触れると触れた本人がそのスキルをもってなくても千里眼が使えるって事だ。この意味分かるよな?」
なるほど…それは便利だな。
つまりハイドスキルを覚えていないラフィネがスキルを使っている俺やルリテと触れることでラフィネにもハイドスキルが適用されると。
「じゃあルリテとラフィネとが手を繋ぐと…守りは任せろ」
俺の言葉にラフィネが少し怒った顔をする。
「何言ってんだよ…ラフィネの勇者のくせに。いざって時にラフィネ担《かつ》ぐんだからマサトとだろ?ラフィネもそっちの方が良いだろうし…な?」
ラフィネは顔を赤くしながら高速で首を縦に振る。
「良かったなマサト」
……?
「それってどういう意味だ?」
「分かんねえなら良いんだよ」
…………?
準備も整ったので貴族の屋敷に向かう。
「…で?どうやって侵入するんだ?」
「さあどうしようか?こういうのを考えるのがマサトの仕事だろ」
マジかよ。ノープランで来たんか。
………あ!簡単に入れる方法があるじゃん。
「よし、ついてこい」
俺達は屋敷の見張りに話しかける。
「あのー今からここに侵入してもよろしいですかね?」
「泥棒だ!捕らえろ‼」
俺達はあっという間に捕らえられ屋敷の中にある地下の牢屋に入れられる。
「入れたぞ?これからどうする?」
「ふざけんな‼どーすんだよ、出られねーぞ!おい、出せ‼」
ルリテが騒いでることに気づいたのか地下に一人しかいない見張りが来る。
「何だって?おっと悪い悪い、この牢屋は外からの声は届くけど中からは届かない特注品なんだよなー」
そう言って見張りは笑いながら戻っていった。
マジかよ…!まさかここまで脱獄対策がされてるとは思わなかったわ。
どうにかして見張りを金で買収するつもりだったのに…。
しばらくすると太った男がやって来た。
「わしがこの屋敷の主のエルカリーだ。……ほう、女が二人に男が一人。そっちの暴れている方に興味はないがもう片方の金髪、お前は美しいな。後でゆっくり遊んでやるよ。ははははは‼」
そう言うとおっさんは帰った。
あいつ…………殺してもいいかな?
「どうすんだよ!このままだとラフィネが……!」
この牢屋は外からしか開けられず鍵がない。
電気を流した棒を外側についているパネルに当てることで開閉するという最新式だ。
つまり…………?
「こうすれば開くって事か?」
鉄でできている扉に手を当てる。
「『マジックシェード・サンダー』」
鉄は電気を通すため、向かい側のパネルまで電気が届き…。
「開いたぞルリテ!」
「な!お前ら一体どうやって⁉」
「『バインド』」
見張りを縛って牢屋に入れ扉を閉じる。
すると中にいる見張りだった人が何かを訴えかけている。
「何だって?おっと悪い悪い、この牢屋は外からの声は届くけど中からは届かない特注品だったんだっけなー」
俺はわっはっはと笑いながらその場を後にした。
「絶対ここだろ」
牢屋を出て一階に上がりしばらく進むと頑丈過ぎるほどの扉があった。
「『マジックシェード・サンダー』」
ここも最新式だったおかげで楽に開けることができた。
「あったぞ。……この王冠、どこかで見たような…?」
宝物庫の中央にはガラス消すで覆《おお》われている王冠があった。
「まあいい、こんなガラスは一撃で───‼」
ルリテが持っていたダガーで勢いよくガラスに刃を立てると、ガラスではなくダガーが粉々になってしまった。
「いっつう…!こいつ硬すぎんだろ。…どうする?」
どんなに強度の高いガラスでも、この世界なら簡単に割る方法がある。
「『フレイムバレッド』『フリーズショック』」
熱してから急速に冷やすのを何度も繰り返すことで初級魔法でも硬いガラスも綺麗に割れる。
「おお!さっすが」
王冠をバックに入れてその場を立ち去る。
「待ってくれ…」
屋敷を後にしようとしていた俺達をルリテが止めた。
「どうした?」
「この屋敷のおっさんを倒せばこの街の悪徳貴族たちはほとんど死んだようなもんになる。今が絶好のチャンスなんだ……」
ケリをつけたいって事か。
「俺も丁度そうしたいと思ってたところだ。悪いなラフィネ、危ない橋を渡らせちゃって」
「いえいえ、私には何の問題もありません。お兄様と一緒ならなおさら…」
最後の方は小さくて聞き取れなかったが、優しいいラフィネは快く了承してくれた。
ハイドで見張りをかいくぐりながら階段を上がるとまたもや大きな扉があった。
「気をつけろ、開けるぞ」
重い扉をゆっくり上げると大広間に出た。
「すごく広いですね───⁉誰かいます‼」
ラフィネの言葉に俺とルリテが身構える。
「ようやく来たかい。早く王冠とその少女を私によこしたまえ」
「黙れ。それ以上近づいたらぶっ殺すぞ」
俺の物騒な即答にその場の全員が驚く。
「おっと怖い怖い、落ち着きたまえ。目には目を歯には歯を、盗賊には……盗賊を」
そのセリフと共に四人の人影が見える。
「その王冠は魔王様にあげるものだから返してもらおうか」
「──っ!てめえ、魔王軍の関係者か‼」
確かこの街はどちらとも関わらない中立の街だったはず…。流石は悪徳貴族と言ったところか。
「王冠を渡せば幹部にしてくれるらしいのでね。さっさと冠と少女をよこせ‼」
二つのもどかしさにエルカリーはキレる。
「………ラフィネは下がっててくれ。ここは俺たちでやる」
一発あいつをぶん殴らないと気が済まない。
「お兄様、私は───!」
「いいから下がっててくれ!……お前が大切なんだ…」
そう言うとラフィネは静かに下がった。
「ルリテ、行くぞ」
言いながら俺のダガーをルリテに渡し背中から剣を抜く。
「ああ任せろ」
「くっ…‼お前ら分かってるんだろうな‼さっさと金髪少女以外を殺っちまえ!王冠は無傷でな。そうしたら報酬は倍だ‼」
その言葉で四人の人影が前に出てきた。
「…おいおい、倍だってよ?」
この時は、思いもよらなかった。
「こりゃまじめにやるしかねえな」
まさかこいつらが人殺しに慣れていて。
「人殺しなんて懐かしいね」
あいつらだったなんて事を。
「久しぶりね…………ルリテちゃん」
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