「何で…お前らがそこにいるんだよ…?何で……何であの時あたしを置いていったんだよ‼」
ルリテの叫びに盗賊たちはクスクスと笑う。
「まだ分かんねえのか?俺たちはあの時から魔王軍の関係者だった。その王冠を持ってくるように言われたんだ。助かるチャンスを逃すわけねえだろ」
「ごめんねー。ルリテちゃんの命は保証されないから殺さないといけないの」
……こいつらがルリテの昔話に出てきたやつらか。
「…だったら、あたしもタダでやられる訳にはいかねえ。マサト、いくぞ…」
「ああ!」
二人で四人に突っ込む。
ちゃんとした人間との戦闘は初めてだがしょうがない。
「『アクアボール』!」
「うわっ!何だこれ……ただの水…?」
「今だルリテ!」
「『バインド』!」
初級魔法で牽制《けんせい》し、一人捕らえることができた。
「なっ⁉」
その間に俺はもう一人の後ろに回り背中に触れる。
「『マジックシェード・スパーク』!」
「ぐあああああ!か、体がっ…動かねえ‼」
「『バインド』!」
唯一覚えた中級魔法を相手の体に流しなんとか二人目も捕らえることに成功した。
あとは二人、とうとう同じ人数になった。
「くっ…!おいルリテ!こんな奴らとつるんでるうちに忘れちゃったんじゃねえのか⁉おとりになった時の痛み!苦しみ!寒い!」
「ひっ…………!」
あいつらルリテの弱点を突いてきやがった。
一人の男の言葉にルリテは怯え、知らない、知らないとつぶやいている。
「そうだよなあ!もう怖くない、しっかりあの世へ送ってやるよ‼」
その男は武器を構えルリテに斬りこみに行った。
「やめろ!」
そう叫ぶが男は止まらない。
雷属性の中級魔法じゃあいつは止めることはできない。
どうする…いや、迷ってる場合じゃない!
俺は…仲間を守る。
俺の生きている間は……仲間を殺させないと…誓った‼
仲間を守る為なら俺は…………人を殺す‼
「うおおおおおおおおおお‼」
しまいかけていた武器を素早く抜き疾風迅雷を発動させ全力でルリテのもとへ。
間に割り込み男に向かって剣を突き出す。
「ああああああっ‼」
鋭い俺の剣は、柔らかい男の体を勢いよく突き抜き貫通した。
「ぐっ……ゴハッ!…やっちまったなあ……人…殺……し……」
吐血をしながらその言葉を残し倒れ、死んだ。
あとはエルカリーを…。
「きゃああああ!」
その悲鳴に振り向くと、最後の一人がラフィネを担いで逃げていく。
「待て!おいルリテ、うなだれてないで追いかけるぞ」
俺が一瞬目を離した隙《すき》に女盗賊は消えてしまった。
「やっと連れてきたか。さあさあ、こっちへおいで」
「私はあなたのモノにはなりません。既にお兄様のものです」
エルカリーはうるさいと呟くとラフィネの頬に殴りかかる。
「王族を、甘く見ないでください!」
ラフィネはそれを簡単に受け止めエルカリーを突き飛ばした。
「この…小娘が!やってしまいなさい‼」
そう言うも誰も反応しない。
さっきまでいたラフィネを連れてきた女盗賊は縛られてた。
「俺はお前を許さない」
こいつは悪徳貴族の親玉だ。情けなんて一ミクロも無い。
「ルリテから聞いたぞ。お前はいろんな場所から女をさらって弄《もてあそ》び、最後には殺す。今まで何人の人たちを殺してきた……?」
「そんなことは関係ないだろ!」
関係ない?
同じ種族でありながら魔王並みに、魔王よりもクソな事をしている奴に関係ないなんて言ってること自体関係ない。
「俺の最終的な目標は魔王討伐だからな。こいつも殺すか……何人殺した⁉」
そう言いながらエルカリーの両腕を斬り落とす。
「ひっ…ひゃあああああああああ‼頼む!殺さないでくれ、答えるから‼…きゅ、九十人くらいだ!」
「マサト、あたしにやらせてくれ。自分の手で決着をつけたい」
「ああ」
ルリテはダガーを構えエルカリーに向ける。
「殺さないでくれ!もう悪さはしないから!神に誓ってもいい‼」
その言葉にルリテはためらいを見せた。手も震えている。
ルリテは人を殺したことが無い。だからしょうがないんだろうが、先程人を殺したばかりの俺は殺す前から非情になっているためためらいはない。
俺は自分の冒険者カードを取り出し貯めていたポイントで中級魔法を習得する。
「うわあああああ‼」
隙を見せたルリテにエルカリーのかかとに付いていた刃物をルリテに振る。
「『フレアブレス』」
「ああああっ!熱い!ああああ!ああああああああああああ‼」
新鮮な俺の魔法がエルカリーの体を焼き払った。
「俺はお前を殺すことに…何のためらいもない」
俺たち三人は無理やり働かされていた人たちと屋敷を出て、盗賊の里に戻った。
「お帰り!大丈夫だった?」
「なんとかな」
「マサト、ちょっと話がある」
ルリテに二人で話したいと言われ、ルリテの家らしき場所に入った。
「ごめん……本当にごめん」
「急にどうしたんだよ?すぐにラフィネを追いかけられなかった事なら気にしなくていいぞ」
そう言うとルリテは首を横に振る。
「本当は…お前が手を汚す必要なんてなかったんだ…二回とも!あたしが…私が覚悟を決めていれば…!しかも二回目なんて、あたしが自分からやらせてくれって頼んだのにこのザマだ!……本当にすまない。許してくれとは言わない、でも───⁉」
言い終わる前にルリテの頭をなでた。
「そんなこと気にしてたのか?俺は絶対に仲間を殺させないって心に決めてたんだ。俺はルリテを守れた。それだけで十分…ていうか、むしろ良かったよ」
「でも───!」
泣きそうな顔で言うルリテの言葉をさえぎって言う。
「誰にだって、忘れたい過去や決められない覚悟だってある。それはしょうがないことだ。もちろん俺にだってある。でも出来ることと出来ないことは人それぞれ違うから、それを補い合って進んでいくのが仲間だろ?俺たちはもう、信頼しあいながら背中を預けられる仲間なんだからさ!」
「……うっ……っうわあああああああん‼ああああああああん‼」
ルリテは、俺の胸に飛びつきしばらくの間大声で泣いた。
「…マサトありがとうな。おかげでいろんなことが吹っ切れたよ、あたし」
「そうか…。それなら俺が今までやったことは無駄じゃなかったってことだ…!」
そう答えるとルリテは先程から何かを言いたそうにしていた内容を話した。
「あたし、この街を発展させようと思うんだ。マサトと冒険して、大事なものがハッキリとしたよ。ここにはあたしを頼りにしてくれる人が沢山いるから、その期待に応えようと思う!だから……マサトとは……」
寂しいけどルリテの決めたことだ、止めるつもりはない。
「頑張れよ!プロレイにも、ルリテの事を頼りにしてるやつは沢山いるからな。特にその街に住んでる四人は…な?」
「っ…へへへ。たまには遊びに行くからさ。本当に……ありがとうな、マサトと会えて良かったよ」
こいつ…良いこと言うじゃんか!
最初に会った時とは大違いだ……でも、それが成長って言うんだろうな。
他の三人とも別れの挨拶を終わらせ、プレロイへの馬車に乗り込む。
「それじゃあ出発しますよ、お客さん」
「またな」
「ああ、また」
朝日を背にどんどんカゼンナの街が離れていくなか、ルリテが大声で叫んだ。
「マサト───!大好き───────‼」
「…ありがと──────‼」
他の三人と同じ
優しい水色短髪で義賊の少女は、俺たちが見えなくなるまでずっと手を振った。
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