無限列車 過去戻り
「さて、周囲は特に異常は無し。」
駅周辺を探し特に異常が無い事を確認した矢吹、今日はしのぶから言われた通りその翌日に鴉からの指令があった。矢吹はその事を知っていたので準備は既にしており炭次郎たちが鴉から聞く前には既に駅についていた。これは矢吹が警察にいた頃の癖なのだが怪しいと思われる場所は調べて置く事と別の可能性を考えて周辺に怪しい所が無いか調べていたのだ。
(無限列車の車庫は既に手をつけた後、車掌の検分もしている。流石は柱と言ったところか…)
となると列車自体に問題はない、運航を再開したのも鬼による被害によるものなので列車には問題が無いとされたためであろう。
(とは言え鬼の情報を聞くとどうも炎柱の言う通り被害の数が合わんな、殺された数の日数にバラつきがあるのも少し引っ掛かる。)
とは言え車庫や整備所は既に調べ済み、駅の方には特に問題は無いし不審な影を見かけたと言う情報も無い。やはり鬼が活動する夜にならなければ掴めそうにない、そうなると相手の得意場所で戦う事になる。暗部を送って調べさせたい所だがそれで逃げられでもしたら困るし隊士の話では炎柱がいるのでその必要はない、それにあの三人もいる上に自分もいる。多少過剰戦力な感じがするが不明な点を考えると丁度いいだろう。
「それであの三人はまだか?まあ列車が出る数時間も前に来る自分が悪いのだが…」
流石にそこまで厳しくする必要はないだろう、前の自分だったらこの事でやじを飛ばしていただろうが流石に大人げない。まあ矢吹が待っている理由は単純に伊之助と炭次郎が車両に乗るまでの手順を知らなさそうだからこうして入口前で待っているだけなのだが。
(過保護になってしまったものだな俺も。)
そんな事を入口前で考えていると炎柱が来た、矢吹はそれを確認すると炎柱の方に向かう。
「こんばんは炎柱様、今回はご同行させていただきます。」
「うむ!今日はよろしく頼む!」
そう相変わらず大きな声が返ってくる、ちなみに矢吹が柱の中で一番話しているのは蟲柱を除くと炎柱である。矢吹が鬼殺隊に入ってからの活躍に目をつけ継子にならないかと誘われた事もありそれを矢吹は断っている。その後も暗部を持つようになってからも積極的に話しかけられてきた。とは言え軽い会話程度だったが…そんな事を考えていると近くで弁当を売っていた親子が炎柱に話しかけて来た。
「あの…この人たちは?」
「昨日鬼の騒動の時に巻き込まれてしまった人たちだ。何でもおばあさんの方は昔父に助けられた過去があるらしい。」
「そうなんですか、そのような偶然もあるんですね。」
煉獄家は代々から鬼狩りを続け柱を存続し続けた名門である。そのため実力はかなりのもので速度以外ならほぼ煉獄の方が上である。
「これをどうぞ、私らにはこんなものしかないのですが…」
「おお!実は昨夜は食べ損ねてな、これは何よりうれしい!
しかし代金は払おう。」
「いえ、お気持ちだけで…」
「そうか、ではこれを頂くとし、そこにある分を全部買おう!」
「…はい?」
弁当屋の方は驚きの声を上げ矢吹の方も思わず声が漏れてしまった、今から鬼を倒そうと言うのにその弁当をどうすつと言うのだろうか…まさか全部食べる何て言わないよな?
「夜船もどうだ?まだ食べた事はないが味は保証する!」
(食べてもないのに保障はしてないでしょ…)
そう心の中でツッコミ弁当の方を見つめる、見るからに牛肉弁当と言う腹に溜りそうな物で激しい動きをする前には食いたくはない、だがこの後来る炭次郎たちが腹を空かしてくるかもしれない。それに自分も夕飯を食べていないし今ここで食べるのもいいかもしれない。
「…それでは四つ程頂けるか?知り合いの分も買っておきたいのだ。」
「よし!それなら今回は俺のおごりだ!」
「いや別に自分で…」
「遠慮するな!君の情報にはいつも助かっているからな!」
そう言うと直ぐに弁当を買い占め四つ程こちらに綺麗に包まれて渡された、結局流される形で奢られた。
「俺はもう乗るが、一緒に乗らないか?」
「え?」
「君とは少し話して見たくてな。いやならそれで構わない、私はゆっくり弁当を食べる事にする。」
「…わかりました。私も流石に暇ですしね。」
多少炭次郎たちが気になるが流石に列車に乗るぐらいはできるだろう。待つのは過保護過ぎるしそんな事をするなら打ち合わせでもした方がいいだろう。煉獄の方はうむ!と頷き煉獄の後ろに続くように矢吹が着いて行く。そしてそこで切符を購入し車両の中に入る。
念のため列車の中を確認しながら移動していく、煉獄も同じように確認しながら移動しているが自分の不安があるため一応だ。とは言え今の所以上は感じられない。鬼の気配も特にないただの列車のように見えるが何処か妙な感じがする。煉獄はずんずんと進んで行きそして席につく、自分は一応話をするためその横に座る。
「さて早速だが俺が話たい事なのだが最初は竈門と言う少年について聞きたかったのだが、それより気になる事を見つけてな。」
「と言いますと?」
「君の雰囲気が変わったのが気になってな、前は話かけても冷たかったが今ではかなり柔らかくなっている。何か良い事でもあったか?」
それを聞いた矢吹は少し罪悪感に駆られた、矢吹は基本的には自分の隊および身内以外にはかなり冷たかった、例え任務で他の隊士と同じになるような事があっても反応は冷たくなにより効率を重視していた。とは言えそれでも隊士には無理はさせず戦えないと判断した場合は無理に引かせるなどをさせていたので冷酷ではあるが多少飴をあげる事はあるのでそこまで評判は悪くなかった。だが当の本人はたんに邪魔だったと言う理由だったので口数が少ないせいでできた誤解と言う理由でできたただの偶然だった。
柱にも同じような事はしないがそれでも無駄な話はしなかった、煉獄が話かけて来た時もただ要点だけを話それ以外の情報伝達は鴉を通して行った。そのため柱と矢吹の間では多少の間があり特に胡蝶とは前日の屋敷以降話した事もなかった。
だがそんな冷たかった彼が普通の人のよう反応をしさらに他人に笑みを見せなかった彼が気にせず見せた上に他人に優しい一面を見せた。そんな変わった所を気になり聞きたかったのだ。
「…そうですね、良い事はありました。」
「それは例の少年か?」
「ええまあ、成り行きで受けた仕事でしたがあの子とは知り合えてよかった。」
ただの仕事であり出会って数カ月程ではあったが良い出会いではあった、伊之助も善逸も負けず劣らずの良い子であり中々楽しい時間ではあった。昔を思い出してしまったためであろうか懐かしさもあり居心地も悪くはなかった。
「正直俺は今の君の方が好きだ、前はろくに話もできなかったからな!」
「そこを掘り下げられると何も言えませんね…」
「それにしても君を変えた少年、竈門炭次郎…今から会うのが楽しみだ。」
「良い子ですよ、多少真っ直ぐ過ぎるのが心配ですが。」
「そうか?俺は好きだ。自分の気持ちを真っ直ぐに伝えるのは気持ちいいしな。」
「…そうですね。」
確かに捻くれ過ぎる人よりましな気がする。それに気持ちを伝えない何てもやもやするし自分もこっちの方が気が楽だ。そして煉獄はと言うと早速大人買いした弁当を取り出し食べ始めた。
「うまい!!」
「うぉ!?」
煉獄の突然の声に思わず驚き変な声を出してしまう、当の本人は気にせず食べ続け同じように感想を述べる煉獄であった。
「矢吹さん、お待たせしました。」
「いやそんなには待っていない、もう少しゆっくり見て行ってもいいんだぞ。」
矢吹は煉獄と多少話した後席を離れ炭次郎たちと合流していた。理由はただ弁当を渡すためなのだがそれとは別に気になる事がないか聞いているのだ。炭次郎たちは矢吹とは違い五感に優れている、矢吹は鋭い勘や気配などがあるがそれでも感知できない所がある。そのため炭次郎たちに何か気になる事がないか聞いているのだ。
「いえ特に気になる事はありませんでした。二人は…」
「うぉぉぉすんげぇ!!」
そう炭次郎の視線の先では伊之助が窓に張り付いて外の景色を眺めている。本人曰く山育ちなため列車に乗る事なんてなかったのだろうから仕方がないがそれにしてもかなりのはしゃぎようである。それを必死に止めている善逸がいる。
「ばっかお前いいから落ち着けって!」
「…はしゃいでるな…後で聞くか。」
「すみません。」
「いやいいさ、お前たちが特に違和感を持っていないのならいいだろう。」
彼らの五感に引っ掛からないのなら大丈夫だろう。取り敢えず伊之助たちにも一応渡して置く。
「弁当を買っておいた。これで腹でもためとけ。」
「ありがとうございます。」
「おお!丁度小腹が空いてたんだ!」
「牛肉弁当かぁ、美味しそう。」
「先に食ったが上手かったぞ。」
「そうですか、それじゃ早速。」
そして三人とも渡された弁当を食べ始まる。三人ともいい笑顔で食べてくれているのが見れて少し笑みを浮かべてしまうがそれをかき消すが如く煉獄の弁当の感想が聞こえる。と言うより響いている、かなりの大声なので炭次郎たちも少し驚いている。
(感想を溢すのはいいのだが…客がいるのだから声量は絞ってほしかったな…)
そう心の中でツッコミ食べ終わった炭次郎たちと一緒に煉獄の元に向かう。
「そう言えば煉獄様に何のようがあるんだ?」
「少し聞きたい事があって、矢吹さん火の呼吸と言うのに聞き覚えは?」
「火?炎なら聞くが火は聞かないな。」
「そうですか…」
呼吸には基本となるのが五つ、水、雷、炎、風、岩が存在する。火となると意味的に炎の発生だろうか?とは言え矢吹は呼吸の歴史は知らないのでそこまで詳しくは知らない。
「私が周囲を見ておこう、お前はゆっくり話すといい。」
「ありがとうございます。」
そう丁寧に礼を言い早速煉獄の元に向かう。
「あの…煉獄様?」
「うまい!!」
「いやあのそれはもうわかりました、それより私と同行する三名が合流しました。」
矢吹が珍しく困惑しておりそれぞれが挨拶をする、炭次郎の方は煉獄と話があると言う事で隣に座り矢吹たちは別の席に着席している。伊之助の方はよほど興奮しているのか窓の外をみながらそれをバシバシ叩いている。
「こら割れるだろうが!落ち着けって!」
「余程嬉しいのだろうな、伊之助。壊さないようにな。」
「わかってるって!うぉ今の何だ!?」
そうまるで子供のようにはしゃぐ伊之助、善逸の方は必死に止めていたため疲れている。だが矢吹は炭次郎が話している間に少し確認する事があった。
「善逸、それに伊之助、この列車に関して特に気になる事はなかったか?」
「いえ特には、ただ乗客の人たち疲れてるのか寝ているようであまり音は聞こえません。」
「この主の事か?別に。」
「あの…どうしてそんな事聞くんですか?」
「何、鬼が出るからに決まって入るだろう。」
「え!?鬼出るんですかこの車両!?」
矢吹は少し不思議そうに頷きそれを見た善逸は伊之助とは違う意味でうるさくなってしまった。
「い~や~!!俺降りる!」
「大丈夫だ、お前たちはあの那谷蜘蛛山の時よりも強くなっている。それに俺だけじゃなく柱の一人もいるんだ。そう簡単にやられはせん……まあもっとも、上弦の鬼となれば話は変わってくるが…」
「上弦!?炭次郎が戦った化け物みたいな奴より強い奴の事でしょう!?そんなの相手じゃ無理だよ~!」
「大丈夫だ、恐らくこの仕業は少なくとも上弦ではない。上弦の鬼そもそもの居場所を掴む事すら困難だ。しかも遭遇例があるにも関わらず柱が殺されている。と言う事は隠れるのが上手い奴らだ、そんな奴らがこんなへまをするとは思えん。」
下弦の鬼ならよく柱が相手をする事が多く倒される事があるが上弦に関してはそもそも聞けるかどうか怪しい、そして柱が殺されるとしたら上弦の鬼に殺されているのだがそれでも姿に関しての情報はまったくつかめていなかった。そのため今回のこの事件は上弦が起こしたとは思えなかった、だがそこいらの鬼が起こしたとも思えないので恐らく今回も下弦によるものだろう。
とは言え油断はできない、暗部の隊士を連れてはいないがそれでも見込みのある三人と柱がいる。そこまで心配はしなくてもいいが一応備えて置く。
「ふむ…柱がいるから手を出さないのかあるいはまだ活動していないだけか。そのまま気を抜かないでくれ、私も切符を切ったら少し見て回る。」
「切符を切る?」
「列車に乗る際にこの切符が有効かどうかを確認をするために車掌が来て有効と判断した場合切符に切れ込みを入れる。ちなみに切符は持っておけよ、後で使うからな。」
善逸はある程度知っているようだが伊之助や炭次郎は恐らく知らないので一応の補足しておく、伊之助はふーんと興味がなさそうに聞き善逸は頷いていた。そうこうしていると車掌が来た、二人は切符を差し出し切られる時に見た車掌の顔を見て矢吹は少し不思議に思い声をかける。
(顔色が悪い、目にクマがあり脚もふらついている。それに目の焦点が合っていない。)
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ。大丈夫ですのでその…切符を」
「…無理はしないように。」
恐らく列車騒動で働き詰めなのだろう、早めに休ませるために切符を切らせる。
「…ん?」
そこで何か違和感を感じた、空気が変わったと言うかなんというか雰囲気が変わった。それを感じた矢吹はすぐさま戦闘態勢に入る。
「三人とも…なに?」
そう炭次郎たちに声をかけた先には炭次郎どころか二人の姿も、柱である煉獄の姿もなかった。それを見た矢吹は後ろにいるであろう車掌に声をかけるがその車掌の姿もなかった。
(まさか殺され!…いやそれはない。三人はともかくあの煉獄が簡単に死ぬとは思えん。)
とは言え恐らく自分と同じように分断されてしまっただろう、とは言えどう分断したかは何となくわかる。恐らく車掌も一枚噛んでいる。車掌の様子、何か何処か見たような事があったのだがあれは精神病を患っている人の様子だ。脅しか操らているのかはわからないが油断していた。まさかこんな形になるとは…
(流石に抜けていた。)
いつもの自分ならあの車掌の様子に気づいていたのに…流石に浮かれていたか。とは言え現段階で鬼の気配は無い、今の所は取り敢えず皆と合流する事を考えた方がよさそうだ。
だがどうやった?列車は特に違和感などなかった、それにみんながいなくなるまで俺が気づかないのもおかしい。まるで本当に消えたような…そんな気が…
「こら。」
「!」
そう後ろから掛けられた声に反応しそれと同時に刀を抜く、だがそれよりも早く相手の攻撃が当たる。矢吹はそれに来る激痛に耐えようとしたがきたのは軽く響いた乾いた音が聞こえた。
「……い!」
それと同時にその場で頭を押さえながら倒れてしまう。その時に何故か懐かしい額当ての感触があり自分を攻撃をしたであろう人物の方を向く。
「何呆けているんだ矢吹、何か変な事でも考えてたか?」
「……え?」
矢吹は固まっていた、列車にはない地面の感触よりも、さっきと違う風景よりも、前にいる人物の方が信じられなかった。目の前には中年の男がいる、黒髪は後ろにまとめ海を思わせるような青い羽織を着ていた。
「お前がしたいって言うから久しぶりにやってるのに、何呆けてるんだ?」
そこには懐かしき顔があった、もはや見る事はないと思っていた懐かしき顔、瀬戸組の隊長、瀬戸恭司の姿があった。
「何してんだ?口を開けて、今日様子がおかしいぞ。」
「瀬戸あれじゃないか、あまりにもあっけなく一本取られたから驚いているんじゃないか?」
そう瀬戸とは別の人の声がする。その声の方に向くとそこにはまた中年の男がいた、髪はまとめておらず少し長めの散髪で少し髭が生えている。体格も瀬戸より少し大きめな男がタバコを吸いながら苦笑していた。
「そうか?矢吹がそんな事で驚く奴には見えないが…」
「
そう笑いながらそう矢吹に声をかけるこの緑色の羽織を着ている人物は
「あ、いやえっと、その…その」
何を声に出したらよかったのかわからなかった。と言うよりも何故か声がでなかった、何かを声に出そうとすると何故か目から何かが出てくる。みっともないかもしれない、だけども矢吹にとっては今一番出したい事でもあった。
「矢坊?」
「お、おい矢吹何で泣いてるんだ?」
「あ~あ~隊長が矢吹泣かしてら~。」
「矢吹が?珍しいな。」
そう子供のように泣きじゃくる矢吹、それにあたふたする瀬戸、それを遠目で見ている三人、だが矢吹にとってはこの光景はとても嬉しかった。
矢吹が鬼殺隊に入る前に所属していた警察機関「瀬戸組」の隊長、武士の家系であり自身の流派を教えるために道場を開いていたのだがそこに所属していた人たちと一緒に組を立ち上げた。
瀬戸が開いていた道場の頃からの付き合い、矢吹の事を