「何があった?」
そう目の前で起こっている状況を確認する。炭次郎はさっき鬼の血鬼術から抜け出したばかりだ。妹の禰豆子のおかげで炭次郎は一番に起き上がる事ができた。だが他の四名はまだ目覚めてはいなかった。そして炭次郎は繋がれていた四名に繋がっていた縄を燃やし目を覚まさせようとするとその縄に繋がれていた子供たちが炭次郎に襲い掛かって来たのだ。小さな睨み合い、それが発生した時突然、矢吹に繋がっていた子供が叫びだしその場でうずくまったのだ。
(これは…怖がっているのか?)
炭次郎はそう臭いで判断する、だがそれだと少しおかしい事になる。この中で一番幸せな臭いを出しているのは矢吹だ。その証拠に嬉し泣きをしている。なのにその繋がれていた子供は体を丸めてその場にで固まっている。歯を鳴らし顔に恐怖を浮かべていた。
「ちょっと何やってんのよ!いつまで震えているの!?」
「何があったんだ?」
鬼の仲間とも思われる女の子がそう声をかけるが少年はそれが聞こえていないのか怯え続けている。他の子供もその少年の事が気になるのかそっちの方に意識が取られている。炭次郎はその瞬間を逃がさなかった、その間に子供たちを気絶させる。少し不意打ちに近いがこの状況下ではそうも言ってはいられない。その子供たちを安静にさせた後その怯えている子供に声をかける。
「君、大丈夫?」
「あ、あれは、あれは。」
「落ち着いて、何があった?」
「うぅ、あぁ。」
何度も声を掛けるがこの距離でも届いていないようだ。
「僕に任せて。」
そう後ろから声を掛けられる、恐らく炭次郎に繋がれていた子供だ。
「…恐らくあなたが探している奴は一番まえの車両にいます。」
「先頭車両か…」
「はい、それとごめんなさい。こんな事をしてしまって…」
「気にしないでいいよ。君の弱みに付け込んだ鬼が悪いんだから。」
誰にでも弱みは存在する。金銭、生活など人間にとっては日常的に行う事や生活をしていく上で何かしらの不足、あるいは不運による障害など人によって何かしらの弱み等がある。この子達がそうだ、病気等により普通の人より寿命が短くなってしまう。それだけじゃない、病気などに余命等は存在しない。容体が急変しそのまま亡くなる事がある。いつどんな時、いかなる時に亡くなるのかわからない、それが病人。だからこそ誰よりも幸福を望む者である。
だからこそ炭次郎は許せなかった、人の弱みに付け込んで汚れ仕事をさせた鬼が憎い。
「君はここでじっとしていて、ここにいる鬼を倒して安全を確保したら迎えに行くから。」
「うん、お気をつけて…」
炭次郎はそれに頷きで返し禰豆子に護衛を託しこの場を後にした、鬼の臭いが強いのは少年が言っていた通り一番前の車両にいる。なら止めなければ、こんな人の弱みに付け込んだ外道のような事とてもではゆるされるわけがない。
「楽しみだな~矢吹の行きつけの店…どんな所なんだろ。」
そう水卜がつぶやく、今日の夜は組の隊長たちと矢吹の行きつけの店に行く途中だった。瀬戸、岩神、水卜と矢吹にもう一人、赤髪の長髪を後ろにまとめている、身長は矢吹より少し高い明るい印象を受ける男性がいた。その男の名は
「別にただの普通の飲食店ですよ。」
「でも矢吹がこの仕事をやる前にいた所なんだろ?今まで行く機会がなかったから楽しみなんだよ。」
「そうか、水卜は初めてだったな。」
「俺も初めてなんすよね、何を食べられる所なんですか?」
そう篁が聞くと矢吹が答えた。
「天ぷらと蕎麦を出す店ですよ。そこまで珍しくありません。」
「天ぷらか~そう言えば最近食ってなかったな~。」
「結構種類があるぞ、その上熱くて噛むといい音がするほど触感もいい。」
それを聞いた篁はおいしそうなイメージを頭の中で浮かべている。香りそしてそれを噛んだ時の気持ちのいい音、そして口に広がるつゆと天ぷらの味。まだ食べる前だと言うのに楽しそうにしている。矢吹は相変わらずだと思いながら先導していく。ここは街の中心より少し外れにある飲食店のエリア。和食が中心で洋食も一応ありはするがそれでも本格的な物はない。
「ここら辺も大分変ったな。」
「外国の技術がかなり浸透していますね。流石に都会外はそこまで変わってはいませんが街の中心となると街外れでも街灯や車等は見かけますね。」
技術の急激な成長によりその恩恵を受ける事が出来た場所は革命的な変化が起こった、雨に弱く燃えやすい家は今では強固な石のような物でできた家になっている、しかも恐ろしい程に綺麗な形で作られている。それだけじゃなく街の方では夜でも明るく裏路地等を除けば明かりがない場所などないと言っていい程暗い場所がない。昔の時代を知っている人にとってはまるで別世界のような感じだ。
とは言えすべてがその恩恵を受けている訳ではない、田舎や山が隣接している場所等は昔の日本のままだ。やはり都会と言うだけで集まる情報も技術も桁が違うらしい。
「着きましたよ。ここです。」
矢吹が止まった場所は他よりも少し大きな場所だった。日本風の建物で外側から見て恐らく二階建て程だ。中に入って行くと中も広く厨房が見えそれを囲むようにカウンターが並んでいる。そしてその厨房には一人の中年男性がいた、髪は白髪が交じり少しシワの多さ、目の細さから強面の印象を受ける。そんな老人がこちらを見た、するとその細い目が少し広がり笑みを向けた。
「よお夜船、久しぶりだな。」
「久しぶりって、まだ四日しかたってませんよ?」
「何言ってんだ、可愛い弟子が毎日顔を出すのは当然だろ。」
「だからもう弟子は引退しましたよ。新しい人を探してくださいね。」
「お前より筋がいい奴が中々いないんだよ、それと何でか来てくれない。」
「顔のせいでは?」
「うるせぇ。」
いつものやり取りを終えカウンターに座りついてきた隊長たちも座っていく、水卜と篁は少しソワソワしていた。
「佐伯の大将、お久しぶりです。」
「おう瀬戸、今日は結構いるな。見ない顔も…」
「あどうも、篁です。よろしくお願いしやす。」
「水卜と言います。」
この二人はまだここに来た事はなかった、瀬戸と岩神は矢吹を誘った際に知っていたが二人の場合、矢吹とは数年間程会う機会もなかったので今まで行く機会もなかったのだ。
「瀬戸の組のもんか、にしては若いな。」
「若いと言っても水卜はもう二十後半ですけどね。篁はここに来た時に入った新人ですね。」
「となると矢吹と同期?」
「いえ篁が三年早く入ってきてますね。歳も五つ程上です。」
「てことは二十歳か、そうか…もう夜船は15歳か…」
「あ~、そうなりますね。」
篁は瀬戸たちがこの街に来た際に入って来た、矢吹は彼が入って三年経ってから入隊した。その時には既に篁は隊長になっていたので矢吹とは会う事はなかった。矢吹と篁が知り合いになったのは半年前ほど、ある事件の際に出会ったのだ。
「今思えば15歳で見習い隊長ってすごいよな。その上料理が出来る。」
「そのせいか篁と同じでよく女性から声をかけられる事が多いんだよな、いわゆる色男って奴かね。」
「やめてくださいよ、別にそんなんじゃないですって…」
「何言ってんだよ矢吹、褒め言葉はちゃんと受け取らないと駄目だぞ。ねっ瀬戸さん。」
「そうだぞ、そんな素直の性格じゃないからしのぶちゃんにも素直に気持ちを言えないんだ。」
それを聞いた佐伯が厨房から身を乗り出し驚きの表情を矢吹に向ける。
「何だお前、色恋沙汰何て興味ないと思ったら見つけたのか!?」
「違いますよ!ただの腐れ縁みたいな奴です!!」
矢吹はそう否定するが周りのニヤニヤが止まらなかった。
「んで?どんな感じなんだ局長さん?」
「そうだな、しのぶちゃんと言う子は仕事上であった女性なのだがこれまた美人な人なんだ。矢吹は一応仕事上でよく会うため頻繁に会うんだが中々微笑ましい光景が見える事が多い。しかも今日何てあんな事をしたから…なぁ?」
そうすっごい嫌な目を向けてくる瀬戸、この人絶対わざとやってるでしょ。
「ただたんに身長の話をしただけですよ!気になっただけで特に意味はありません!」
「え?でも一昨日何てしのぶちゃんと話をしていた時赤面させてたろ?」
「な!?」
「『綺麗なんだからおしゃれでもしたら』だっけ。」
それを聞いてまた思わず声が出てしまった、しかも周りからの目もさらに嫌な目になっている。
「へぇ~いつも口喧嘩だけをしていたと思ったらそんな口説きも入れてたわけか…」
「あ、あれは違う!ただカナエさんがしのぶはおしゃれしないとか言ってたから気になって聞いていただけです!!深い意味何てありません!」
「矢坊、いいんだぞ素直になって、そしたら俺の女性口説きの方法でも教えてやる。」
「何ですかその卑猥な方法は!」
「うぅ、夜船にもようやっと気になる子が…」
「おじさん!そんなんじゃないですから!はいはいもうこの話終わり!そろそろ注文しないと営業妨害になりますよ!」
そう無理矢理中断させるように話を切り上げるように注文をする矢吹、佐伯も客としてきた以上注文をされたら品を出さなければいけないため仕方なくそれに応じた。
「そうだな、大将いつものやつとそれにエビを二つほど追加してくれ。」
「あ、それじゃ俺は…」
それぞれが好きな物を注文していく、矢吹はそれを見てほっとしてそのまま食べる事に集中する事にした。
「にしても矢吹に女性がらみの話とはな。」
「違いますよ!まったたく、俺はそんなんじゃないのに。」
瀬戸を含む隊長たちは食べ終わり次第家に帰って行った、矢吹の方は少し残り周辺の情報を聞いていた。事件の事もあるが一応鬼の情報がないのかも調べる意味あいもあった。
「いや何嬉しいんだよ、あんだけ女っけがなかった弟子にそんな話があった何てな。」
「別に仕事上の一環ですよ、そこまで珍しいことでもないでしょ。ここで働いていた時もそんな感じだったでしょ。」
「いやいや違う違う、俺たちは客と話す事はあっても注文か世間話が主だったろ。けど今の感じからすると仕事上の関係ではあるがかなり身内の話をしてるんじゃないのか?」
矢吹はそれを聞き少し顔を鈍らせる、一応しのぶたちが会う時は仕事上での関係ではあるが確かに自分の事を話した事がある。けどだからと言ってそんな話に発展すると言うのはない。
「にしてもよかったな、最初は刀狩りの警察何かに入って心配だったが…今のを見るとどうやら楽しそうだな。」
「まあやりがいもありますし…楽しくもあります。」
そうお茶を飲みながら軽く微笑んだ、やはり仕事と言うのもあって辛い事もあったがそれでも仲間が出来そして自分のしたい事ができるのは嬉しい、例え悪人であろうが正し更生させ世に出す。罪が重く死刑を与えられる人もおり亡くなる事もありその時は悲しく感じてしまう。確かに悪は悪い事だろう、人を傷つける、物を壊す、それが一時的な衝動でやった事でもやられた方からすれば文句やり返し等は当然なのかもしれない、それを死で償うのも妥当だろう。
だがやはり人が死ぬのを見るのは嫌だ、ただ死を待ち精神をすり減らすだけの人生などそれは償いなのだろうか?償いとは死で払うものではなくそれを自分の人生を使いどんな形であろうと世の中、あるいは被害者に返すのが打倒ではないのだろうか、自分は一時の衝動に駆られ悪事を行い死刑を与えられた人間を見た事がある。
ある夫婦の話だった、仕事で忙しい夫に愛想をつかし別の男性と関係を持っていた。しかもその男性には自分が既婚者だと言う事を打ち合掛けないでだ、その事を知った男は怒りだしその二人を襲った。男性の方は何のことかさっぱりわからず打ちどころが悪かったのかそのまま死んでしまった。その結果は悲惨そのものだ、男の方は殺す気はなかったとは言え殺してしまった。ならば罪は免れない、発端になった女性は軽い罰で済まされた。殺害を侵した男性はそのまま死刑を言い渡されそのまま処刑台に連れていかれ死んでいった。
そしてその男性を逮捕したのは紛れもない、矢吹だった。
「…ねぇおじさん。罪って何なのかな。」
「ん?」
「確かに罪の重さとなれば命を奪うほど重い物はない、だけど人の心って生きているうちでしか持てないんです。なら人の心を傷つける事ってどうなんですか?障害と何も変わらない。言葉だけでも十分人にとっては辛いのに…」
それだけじゃない、その言葉だけで人が死ぬ事がある。あの時は言葉ではなくただの裏切りだったがそれでも人を傷つけるには十分だ。体に残る事のない傷、それが見えないからと言って罪を軽く必要があるのか?それがわからない、あの時に残っている記憶と言ったら牢獄の中で後悔している男性、反省もせずに陰口を叩く女性、そして処刑台に連れていかれる男性の顔が思い浮かぶ。
「…まあ難しい事はわからねぇな、確かに心の傷も体の傷も重いも深いもねぇ。人の大切な所であることには変わりはない。人に心があるからこそお前のような奴が生まれる、まあ逆もあるがな。そして体を傷つけられる、まあ確かに人の体を傷つけられて動かなくなる奴もいるしな。けど確か俺の知り合いの話なんだが精神に異常をきたして体が動かなくなったりする人間もいるからどっちが重いとかはないな。強いていうならどっちも同じぐらい駄目な事としかいえねぇ。」
「おじさんもそう思う?」
「あぁ、結局は人を傷つけている事には変わりはないからな。例え目に見えないからと言っても喰らってる本人からしたら痛い事には変わらない。けど人ってよ、心の傷何か見れるわけないだろ?それを法で守れだの察しろだのの方が難しい。」
確かに、心の傷など外から見てわかる訳がない。だが体についた傷は見える。それに心の傷などそう簡単に見ていいものでもない。人の心は自分にとっての生き方そのものだ、自分の道を決めるのも、そして自分のからだを動かすのもそれがなければなりたたない。そしてそんな重要な物なのに、簡単なことで傷ついてしまう。
「それを守るのは自分かそれかその人の友人かなんだよ、生きてりゃ辛い事もあるだろう。進んで進んでその分傷つくこともあるが、その分心も強くなんだよ。ほらよく言うだろ?武闘家とか武士とかの手見たことあるか?分厚い手をしてるんだ。心も傷つくことはある、けど決してそのままって訳じゃない、それを癒してくる人がいればその心も強くなるんだよ。」
「…そうなのかな。」
自身の手を見る。厚くなった手、自分が築き上げた嫌な物。けどそれを慰めてくれた人がいる、自分に優しさを教えてくれた人がいる。自分が嫌いで嫌いでたまらなかった心の声を、矢吹と言う人物を認めてくれた人がいる。自分に居場所をくれた人物がいる。自分に生き様を、生きる理由をみせてくれた人がいる。自分一人じゃ見つけられなかった物、それを見せてくれたものを、明るい未来を作ってくれた。
「俺たちは一人じゃなにもできない、だからこそ助けてくれる人が必要なんだよ。心に傷を負っても、体に傷をおっても、友人に癒してもらえればいい。あまり変な法やら何やらをしく必要はないんだよ。」
「…けど、俺は…」
「やめな…もうお前は昔とは違うんだからよ。」
「…そうだね。」
そう言いつけるかのように叱るまるで親の会話をする二人の姿があった。
迷っていてもこうやって答えてくれる人がいる。
優しく、楽しく、そんな人生を生きてきた。
生きてきた。
なのにどうしてだろうか、幸せな日にあの時の光景がちらつく。
地獄のような
あの日が…
目が覚めた、いい夢を見ていた。懐かしい夢を、どうしてこんな非常時にあの夢を見ていたのであろうか。それは何となくわかっていた、目の前に肉塊がある、周りにはもう誰もおらず自分一人だけ。まるであの時のようだ、血で塗られた壁、横たわる死体、そしてそこに立っていただけの自分、しばらくの間ただ目の前を見ていた。その肉塊も今は動かずただ炭になって消えて行く、どうやら寝ている間に終わっていたようだ。
「…はは」
思わず笑ってしまう、何だ結局俺は、何も変わっていなかったのか。
「はははは!!!はっははは!!」
笑い続ける、忘れたつもりでいた、もうあの頃には戻れないと、だからもう昔の自分ではないと、そう思いながら今まで生きてきた。昔のことなど思いださないようにしてただ目の前の者を切り伏せてきた。そうすれば何も後悔などしない人生を今度こそ行けると信じて。なのに結局俺はあの時から何も変わっていなかった。その結果がこのざまだ。
何も振り切れずただ過去のことだけを考え生きていただけの案山子、幸せな過去を忘れられなかったただの女々しい男、それを今突きつけられた、しかも鬼にだ。
「哀れな生き物なのはどっちなのだろうか…」
周りに誰もいないのは幸いだった、こんな醜態など見せたくもない。
「夜船さん!!」
と思っていたら善逸が慌てた様子で近づいてきた。どうやらさっきの笑いを聞いて駆け付けたようだ。
「どうしたんですか何か今すごく、苦しそうな音が聞こえました。」
「…苦しいっか。」
そう呟く、今の笑いは苦しいと聞こえたようだ。
「…大丈夫だ、ただ…良い夢を見せられただけだ。」
「そ、そうですか。」
「…心配をかけたな、状況はどんな感じだ?」
「えっと炭次郎と伊之助が鬼を倒しました、ただそのせいで列車が事故を起こしちゃって今民間人の救助を行っている最中です。」
「そうか、なら俺もやらねばな、何もできなかったがせめてそれぐらいはやらないとな。」
座席から立ち上がり自分にそう言い聞かせる、いや善逸に悟られたくなくその場を離れたかったのだろうか。そのまま外に出ようとする。
「あの…」
「…どうした善逸?」
「無理しないでくださいね、苦しいことがあったら聞きますから…」
「!………あぁ」
思わず返事をしてしまった、初めて見せた弱さ。今まで隠していて見せるのも嫌だったのに何故だろうか、そんな気持ちなど一つもなかった。ただ懐かしい感じがしたのだ。あの時と同じようなものが…
善逸、伊之助、炭次郎、この子達は瀬戸組の皆と似ている。優しくて、素直で、そして自分の言ったことを曲げなくて…だからだろうか訓練をつけ鍛えるなどど言ったのは、俺もあの人たちのようになれるかと思ってあの三人を鍛えたのだろう。やはり俺の見た通り、俺よりも良い子たちだ。
(前ほどではないが居心地がいい、弱みを見せるのは悪いことでもないんだな。)
気を取り直して取り敢えず、今は自分のできることをしよう。善逸に効いた所どうやら二人はあまり動けるようではなさそうだ。なら自分が列車に残っている人たちを助けよう、それが今の俺の仕事だ。
「これで最後か…」
列車内にいる人たちはこれで全員だろう、まさか吸収されたのが一人もいないのが驚きだが流石は柱と言う所だろう。自分がいればもっと軽傷で済んだだろうに…そう言う後悔はあるが振り返った所で意味はない。
「夜船さん、これで全員です。」
「そうか、すまんな善逸。」
「いえ、これも仕事ですし。」
「お前はもう休んでいなさい。後は俺がやっておく。」
善逸はそれを聞き少し離れた場所に腰を下ろした。流石に疲れていたのだろう、だが後は事務処理のようなものだ。鬼の脅威は去った以上援軍を待つだけだ、炭次郎の方も柱がついているだろうし安全…
「!?」
そう思っていた、だがそれも謎の気配によってかき消された、全身が潰れそうなほどの威圧、それが炭次郎がいるであろう方向から来ている。ただことではない、このような気配は生まれて初めてだった。
「まさか!…」
嫌な予感がする、列車を飛び越え炭次郎がいる場所を見るとそこには、刀を構える柱と謎の鬼がそこにはいた。
結局最後まで残った矢吹、彼にとってあの日の光景が焼き付いて離れていない感じです。幸せな光景ほど忘れにくいし残りやすいものです。