まだ明るい昼に街から少し外れた森の中に綺麗な花を咲かせている木があった、その咲いている花は藤の花とも呼ばれ見た目は綺麗な花だがその鼻は毒があり不用意に扱うとその毒に侵されることがある、ただし何もせずただ見るだけなら問題はなくこの周辺にはよく咲いているのでたまに花を見にくる人がいる、そしてそんな木がいくつもあるその中心に一つの屋敷があった、大きな中庭を持ちそれにまけない位の屋敷もあり塀の高さもそこら辺にある木よりも高い、そんな屋敷の廊下を歩いている人影が見えた、黒い隊服を下に着込みその上には灰色の羽織を着ておりその腰には二本の刀がある、そんな彼が歩いていくと途中で止まりそして横にある部屋の襖を開け中に入った
「お呼びでしょうか」
そう髪に白髪が交じり黒髪の男、夜船矢吹、鬼殺隊の暗部を率いている男だ、そしてそんな矢吹が見ている場所には顔が焼けただれた男が正座して待っていた
「ごめんね、こんな朝早くに呼び出して」
「いえ、お呼びとあれば」
矢吹は中に入り襖を閉めるとその場で膝を崩し頭を下げる
「実は君に頼みがあってね」
「何でしょうか?」
姿勢はそのままで頭を上げる
「実は近い内に入るある隊士を見てやってほしいんだ」
その言葉を聞いた矢吹は多少の疑問が思いうかぶがそれを顔には出さずと取り合えず疑問をぶつける
「何か厄介事の種で?」
「そういうわけじゃないんだ、ただまあ色々な事は持ってそうだけど」
そうまるで笑いごとのように話すお館、矢吹はそれを見て相変わらずだと頭を抱えそうになるが取り合えず話を進めるために口を開いた
「あまりそういう輩は入れない方がいいと思われます、そいつが何を抱えているかは知りませんが」
「そうかも知れない、けど元水柱のお墨付きだから問題ないよ」
「そうでしたか…申し訳ありません、口が過ぎました」
「いや別にいいんだ、ただ不安な要素を持っているのは確かだから」
「とっ言いますと?」
一応元柱からのお墨付きではあるのだが厄介事の種を持っているのは当たっているようだ、だが政治関係は持ってはこないだろうしそれに鬼殺隊はそこまで踏み込んだ事はしない筈、となるともっと別の…
「単刀直入に言うとその隊士は鬼を連れているんだ」
「…はい?」
その言葉を聞いた矢吹はつい気の抜けた声が出てしまった、そりゃそうだろう、鬼を殺す事を生業としている鬼殺隊の隊士であろう人物が鬼を連れているなど本末転倒もいい所だ
「その鬼はその子の妹らしい、けど普通の鬼と違って人は襲わないようだ」
「何を言っているのですか、今まで襲ってこなかったからと言って今後襲わないとは限らないでしょう」
彼がさっきから言っているのはあくまで過程だ、未来の事は誰にもわからないしそれを決める事はできない、今日は大丈夫だから明日も大丈夫等、そんな不安定な物など易々信じられはしない
「鬼殺隊は合同で任務を行う場合がほとんどです、もしその時背中から襲われたらどうします、それにだいたいの隊士が鬼に恨みを持っているのをお忘れですか?」
団体がまとまっているのは自分たちと考え方が近い事や目的が同じだからこそ成り立つものだ、それなのに自分の妹だからと言う理由で隊士が納得するわけない、隊士の中にはそのように助けようとして助けられなかった人もいるのだから、それを聞いたお館様は顔を伏せる
「確かに子供たちは不安がるだろうね、柱の子たちも反対するだろう、けど」
だがまた顔を上げた、その顔はいつものような優しい笑みを浮かべていた
「ここは僕を信じてくれないかな?」
いつものような優しい笑みで告げられた、それを聞いた矢吹は顔を渋らせあまり納得はしていない顔をしている
(ただ一言だけのろくに説明もされず、納得しろだと?)
「そんな理由で、納得しろと?」
「君には実際見てもらった方がいい、それに人を襲っていないのはホントだよ」
「だからそれが不安だと」
「その不安を無くすために私の不安と一緒に彼らを見てやってはくれないかな?柱の子たちは忙しくて頼めないんだ」
「まあ、確かにそうですが」
柱たちは周りの対処に忙しすぎて出来そうもないのも理由だろうが一番の理由はあの柱たちが納得するわけがない、恋柱ならともかく水や風等の柱が頷かないだろう、もしその鬼の非常時が起きた場合に対処でき尚且つ柱に近い実力を持っているものは俺と不破位であろう
「…」
矢吹はお館の様子を伺う、表情は前と同じで変化がなくただこちらの返事を待っている、説明には少々納得できないが今までこの人が嘘を言った事がない上人を見る目で外した事がない、それに元柱からの推薦もある
(これ以上断るのは失礼か、ただ監視しろと言うし理不尽な命令をされてるわけじゃない)
「承知しました」
「よかった、受けてくれるかい」
「不安要素があるのならそれを取り除くのは当然の事です、それを取り除くのは部下の役目」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
それを聞いたお館様は笑顔を浮かべた、それを見た矢吹は不安の息を漏らしながら開いた窓から外をみる、今日も変わらず綺麗な青空が見えそこから入ってくる日の光も眩しかった
青空が広がり太陽が森の木々を照らす中その中を駆ける人影があった、その影が木々がない開けた場所に出た、小さな村があり中々広い田んぼもある、それを避けながら目的の場所まで走っていく、場所は山の近くにある元柱の家だ、そこに向かいながら産屋敷の言葉を思い出していた
『竈門…ここら辺では聞かない名ですね』
『随分遠い場所から来たみたいでね、もうすぐ最終選別があるようだから矢吹が着いた時には選別に行ってしまった後だろうね』
『そうか、もうそんな時期か』
『君は継子を持たなくてもいいのかい?人に教えるの上手いし取っても構わないんだよ?』
『持つ気はありません、柱になる気も』
『そうか、それは残念だ』
『…すいません、前申した通り事情は話せません』
『いやいいさ、無理強いはするつもりはないからね』
『すみません』
三日前に話したあの内容、隊士の質が落ちているのはわかっている、それを補うためには自分が人に教え育手のようにするのが最も効率がいいことだ、幸い自分は中間管理職見たいな職だがそれは不破に任せても大丈夫だしそっちの方がいいのだ、だが
「…今考えるべき事じゃないな」
歩みを早め坂を駆けのぼる、すると小さな家が見えてきた
「あれだな」
走るのをやめ歩きその家の前の戸の前に立つ、古びた戸がよく見えそれが横に開かれた
「…君が矢吹か」
「お話は鴉が伝えた通りです、私の事はその竈門と言う奴には…」
「わかっている、炭次郎のためになる」
それを聞いた矢吹は首を傾げる、何故監視する事があいつのためになるのだろうか?他人から見られ続ける等気持ち悪い事だろうに、どういう事なのだろうか
「…まあいいでしょう、奴はやはり選別に?」
「…そうだ」
鱗滝から漏れたその声は震えていた、面で顔を隠していても声は聞こえるので少しはその人間の状態がわかる
「…どこか心配事でも?」
「!」
少し下気味に下がっていた顔が上に上がった、恐らく意表を突かれ驚いたのだろう、それを矢吹は目を緩ませ表情を和らげる
(優しい人だな)
「…誰かを見送る人はいつも辛い事です」
「…そうだな」
何処か寂しそうな声が返ってきた、矢吹も同じような感じを出しその後お互いに沈黙が訪れる
「今から行けば君なら十分間に合うだろうがもう遅い、炭次郎が帰ってくるまで待っているといい」
その提案を聞いた矢吹は太陽の方を見る、もう沈みかかっており綺麗な夕日が顔を覗かせていた
(…確かに夜に行動するのは危険か)
鬼は夜になると行動するので討伐依頼がない場合無理に戦いながら行く必要がない、ならここの家で明日になるまで待った方がいいだろう
「…お世話になります」
それを聞いた鱗滝は頷き中に入るように手引きする、矢吹はそれに従うように中に入っていった
「ごちそうさまでした」
そう手を合わせ自分の栄養になった食べ物に感謝の言葉を述べる、数秒黙祷をし目を瞑る、すると誰かの足音が聞こえてきた
「綺麗な姿勢だ、何処かで習っていたように見える」
「まあ作法は基本と教わりましたので」
「そうか、よい育手に教わったのだな」
それを聞いた矢吹は嬉しそうな顔をした、だが何処か寂しそうな臭いを鱗滝は感じた
「ええ、いい先生でした」
「…すまない、辛い事を聞いてしまった」
「辛いのは誰だって一緒ですよ」
それを聞いた矢吹はその笑みを消し細い目になりそれから見える黄色の鋭い眼光が浮かび上がっていた
「美味しかったですよ、料理上手ですね」
「独り身だったのでな、いつの間にか身についていた」
矢吹の向かい側に座りお互いに向き合う、矢吹は茶を飲み終えると鱗滝が会話を切り出した
「君はここにきて何年だ?」
「…三年前ですかね、ここに入ったのは」
「浅いな、年は?」
「今年で二十歳になります」
「若いな…」
「私位の年齢の人等珍しくもないでしょう」
「確かにそうだ」
ただ短く簡単な質問が来るのをただ答えていた、だが矢吹はそんな事よりもある物が気になった、この家にいる二人目の存在に
「…ここにもう一人いますな、隣の部屋に」
「…」
鱗滝はただ沈黙し座ったまま天狗の面越しにこちらを見ている、だが矢吹はそれに構わず口を開く
「隣の部屋に一人…しかも人ではない」
「よくわかったな」
「伊達に暗部をまとめてはいません」
そう隣の部屋にいるであろう存在の方を向く、殺気もなければこちらを見ているわけでもなさそうだ、これと言った敵意も感じなかった
「…隣にいるのが例の?」
「そうだ、炭次郎の妹だ」
「本当に大丈夫なのですか?」
「今の所問題は起こっていない、それどころかこの二年ずっと眠り続けている」
「二年!?」
思わず声を上げてしまった、少しして冷静になり一つ咳を入れ仕切り直す
「…もしや病人と鬼を間違えているのでは?」
「いいや彼女は間違いなく鬼だ、私が直接確認している」
「それでは何を栄養としているのですか?一応生き物なのですから取っているのでしょう?」
「いや、取ってはいない」
「それでは何を取っているのですか?」
「恐らく彼女は人を食う変わり眠っている事で補っているのだ」
「そんな事で納得できるとでも?」
少し意味のわからない回答をもらい少しイラついてしまう、生き物と言うのは別の生き物の命を奪いそれを糧とし生きている、生き物である以上それに該当するしその証拠に鬼は人を栄養にして生きている、それを防ぐために鬼殺隊が生まれたのだ
「君が納得できないのもわかる、だが彼女はここ二年何もしていない」
矢吹「それではもし起きて人を襲ったら?我々生き物は別の生き物を食べて生きながらえる事が出来る、それを取っていないという事は起きた時には飢餓状態で目覚めるのではないですか?」
「そうかも知れん」
「なら何故鱗滝様はそれを考えないのですか」
「私が信じた子の妹だからだ」
「っ!」
迷いもなく返された、顔の表情は見えずただ声が返ってきただけだがその迷いのない声に少し押されてしまった
「確かに私が言っている事はおかしい事だろう、だが私が送りだした弟子の妹だ、炭次郎が信じたのなら私はそれを最後まで信じる」
(…この人、本気だ)
長年人を探る事はなれているためかわかる、この人はその弟子の事を信じてその不気味すぎる鬼の事を信じている、ちらりと隣にいるであろう鬼の方に視線をやる
(場合によっては殺すことも考えていたが…これでは無理だな)
存在があやふやな奴程不安な事はない、何故存在するのか何故生きているのかの理由があれば生かす事も考えていた、こんな理由で納得しろと言うのも不愉快だが今はこの人の言葉を飲むしかない
「(だが確証を得たその時は…)わかりました、そこまで言うのなら見逃しましょう、けどおかしな事があった場合は…」
「その事があった場合は私と冨岡で腹を切る」
「冨っ!?…いえ、そこまで申されるのならもはや何も言いません」
(現水柱も関わっていたのか、あいつどういう風の吹き回しだ?)
まさかあの富岡までもが関わっているとは思えなかった、性格上そんな事をする筈がないのだが、一番考えられるのは富岡とその男との間に何かあった事ぐらいだがそれでも富岡が譲るとはな思えない
矢吹(俺の知らない事が多すぎる、その竈門炭次郎と言う奴に合わない事には始まらん)
「…少し外の空気を吸ってきます」
その場から立ち上がり入口の戸を開け外に出ていった、それを見届けた鱗滝はその戸をじっと見ていた
「…矢吹君には悪い事をしてしまった、鬼殺隊として当然の反応だった、やはりこんなあいまいな理由では納得してくれる訳がない、やはり信じてもらうには炭次郎がいなければ…」
隣の部屋にいるであろう禰豆子の方に目をやる、いきなりこんな説明で納得してはくれないか
「にしてもあの子、隠していたが途轍もない殺意の臭いがした、だかそれは鬼である禰豆子に向けられたものではなかった」
向かいあったあの時二年眠っていたと言う矛盾を突かれた時に怒り、殺意の臭いがした、一瞬だけ感じたものだがその匂いの濃さも相当なものだ、しかし鬼に向けられていたものではなかった
「個人の鬼に向けられたものか、それとも炭次郎と同じく無惨に向けたものかは定かではないが、少なくとも禰豆子はしばらく安全だろう」
何とか一時的に止める事が出来たが少しでも不安が勝れば消す対象にされるだろう、禰豆子がこの二年寝てくれたのが幸いだった
「あとはお前次第だぞ、炭次郎…」
天狗の面越しに出た不安の声、窓を見つめ遠くにいるであろう炭次郎にその言葉を贈った
まあ何も知らない人から言えば寝てるだけなんてありえないからね、俺も最初聞いた時え?て思ってたし今回は本当に寝ているので手は出さなかった、あと刀なんですがまんま日本刀見たいな色してます、これは自分の好みでシンプルな見た目が好きなんですよね