「では、これにて失礼。」
「はい、またのお越しを。」
そう宿の門の前で一礼し宿主のおばあさんに礼を言う、おばあさんの方は同じく礼で返しそれを終えた矢吹はその場を後にした。炭次郎はまだ宿にいるだろうが少し経てばもうすぐここを出て行くだろう。だが彼が彼らより先に調べるには訳がある、と言うかこれは癖なのだが予定の時間より早めにやるのが彼のやり方だった。予定の場所と思われる那谷蜘蛛山に到着した次第いつもの調査を始めていた。
(30…いや40以上、報告で向かったのはやく四日前。昨日向かったのは多分25くらいだな……昨日の昼に5、夜に20か…全員癸だと聞いているがこの様子だと誰も帰って来てないのか…)
まず昨日ついた足跡を確認してどれくらいの隊士が向かったのかを調べる。そして山の入口に入り付近を調べ始めた。
(嫌な空気だ…それに風に乗ってくるこの血の臭い。かなり死んでるな。)
少し入口入っただけなのにこれだ、少し以上だな。
(ただえさえ数が少ないのに…)
一度山の入口付近に戻り口笛を鳴らす。鷹を呼ぶ、それに答えるように鳴き声が返され矢吹が腕を前に出すとそこに鷹がとまった。
「どうだった?」
鷹は教え込んだ通りに伝える、足の叩き方、翼の広げる回数、鴉とは違って声帯を使った会話は出来ないが手話等の似たような会話はできる。彼の言う限り山の周りに異常は無し、ただ山の中央付近に家と思われる物を一つと木の陰に糸で吊るされた謎の塊を見つけたそうだ。
「相変わらず目がいいなお前は、もう少し頑張ってくれるか?」
そう顎を撫でてやり鷹は飛び立った、そして矢吹の方は振り返り山の中に入っていった。木が茂り昼の光が入らなくなってきた。
(…別れたな。)
地面にある薄れた足跡が三つに分かれている。一つは真っ直ぐ上に昇っていき二つは左右に分かれている。
(最近来た奴は左に曲がっている。痕跡が残っているうちに先にこちらを探すか。)
恐らく最初に来た連中の痕跡は消えている筈、なら最後に来た奴が何処でやられたのかを調べる必要がある。人が通らなさそうな茂みの中に行き痕跡を探りながら行く、地面の方は歩きづらく本来なら木々を渡った方がいいのだが痕跡は全部地面にあるため地面を探りながら行く必要がある。
(そこら中に蜘蛛の糸か…気持ち悪い。)
蜘蛛と名がついているのでそんな気はしていたが少し気味が悪い、不気味な程に白くそれに赤い点模様がそれを際立たせている。だがそこで矢吹はあることに気づいた。
(下調べの時こんな蜘蛛いたか?)
自分が調べた時はだいたい黒とか黄色模様が入っている奴は見かけたがこんな真っ白の奴は資料を探っていた時見た事がない、と言っても少し古いやつだったので信用性は薄いがそれでもこんな真っ白で赤い模様が入っている蜘蛛がこんなにいるものだろうか?こんな目立つんじゃ鳥の餌のような物だが…
(…まさか)
嫌な予感がし一応その蜘蛛目掛けて刀を振り下ろし斬って見る、するとその蜘蛛は炭となり消えていった。
(まさかここにいる奴全部!?)
そう言えばその蜘蛛も全員日差しの場所に行こうとせずただ日陰にいる、しかも日差しが入りそうな場所には蜘蛛がおらず日陰の場所に同じ所に五~六匹いるようなところもある。蜘蛛は本来あまり群れない筈なのでこれはおかしい筈だ。それに気づいた矢吹は一度日差しがある場所で止まり鴉を呼んだ。
「先にあの宿にいた癸の三人にこの事を知らせろ、その後お館様にもな。」
それを聞いた鴉は飛び去っていった。矢吹は取り敢えず周りに最新の注意を払いながらなるべく情報収集を軸に先に進んでいった。
森は暗く染まりもはや人の視界では数メートル先は何も見えなかった。鳥の鳴き声も聞こえずそれどころか虫のさえずりも聞こえない不気味な森が出来上がっていた。だが空には雲一つないので木々の影から差す月日が多少不気味ながらも美しい光景が広がっていた。そんな光景の中一つの影があった。肌は真っ白で来ている服も真っ白、だがその目だけ違って赤かった。背の方は160で細身の男が木の根に腰を下ろしていた。
「…虫が騒がしい。誰かいるのか?」
幼さが残る顔からとは思えない殺意が出始めさらに歯ぎしりもし始めた。
「うっとおしい。」
虫に命令を飛ばし周りを調べ始める、地面や木々に蜘蛛が走り始め小さな白い点が風景を少しだけ乱す。
「どこだ、どこだ。累の機嫌を損ねる前にやらないと…鬼殺し連中がまた来やがったのか。」
前はここまで来ずにほとんど姉弟たちが片付けた。俺が出るまでもなかったがこっちも人間を食わないと不味い。たとえ一人だけでも確保しなければ…
「累も累だ、こんな場所に閉じ込めやがって。」
ここは人がいる里とは反対側の方向にある、だからだいたいの獲物は姉弟たちに取られ俺は残りかすだけを貰うだけだ。奴には力を貰った借りがあるがそれでもこれはあんまりだ。
「いづれここを出ないといけないのに、こんな所で躓いてられるか。」
俺の術は虫を操る、そして糸の武器を作りだす事ができる。これでも鬼になる前はある流派の一番弟子だったのだ。
「さて何で殺そうかな?槍か?刀か?それとも鎌か?どれでもいいな~」
不気味な笑いが響くと同時に自分の心が躍っていく、久しぶりの狩りだゆっくり楽しみながらやろう。
「…みーつけた。」
木の上にいる蜘蛛から共有された視界に映ったのは白髪まじりの男だった。男はこちらに向かって全速力で向かってきており蜘蛛がいない所を通って来ている。
「へぇ意外と賢いじゃないか、ここに来た連中何かほぼ全員引っ掛かって終わりなのに。」
とは言えこのままこちらに通す訳には行かない、蜘蛛に命令を飛ばし相手の道を塞ぎ仕掛けていた罠を起動させる。糸で出来上がった罠が襲い掛かるがそれを相手は避け続ける。それに着地地点で蜘蛛に襲わせても避けられこちらに真っ直ぐに向かってくる。
「こりゃいい、強い奴は中々見つからないからな。」
どうやら俺がここにいるのがばれているようだ。どうやって見つけたのかは知らないが俺が出て相手をした方がいいだろう。相手が通る場所の蜘蛛をどかし素直に通させしばらくすると木の影からさっきの隊士が現れた。
「良い目だ、前殺した奴とは違う。気も抜けていない怯えてもいない上にピリピリ来るこの殺意、今回は楽しそうだ。」
そう事前に用意してあった鉄の鎖鎌、鎖の部分は糸で代用しそれ以外は使い込まれた鎌で出来ている。それ以外にも鞭や刀等もできるが少し鎌で様子見をしたい。鎌を回し準備をするが相手は刀を下げた状態から動いていない。
「行くぜぇ!!」
そのまま糸から手を離し鎌を飛ばす、相手はそれを身を屈めた状態のままこちらに向かって来る。すぐさま鎌を戻しその下がっている姿勢に向かって鎌を下ろすがそれを最小限の足さばきだけで抜けて来た。
(鎖じゃだめか。)
こちらの手元に戻しこのまま接近戦に移行する。だが相手が最悪だった。
「っ!」
下げたあった刀が気づいていたら目の前にあった。すぐさま鎌でそれを防ぐが相手はそのまま刀の逆刃を自分の腕で押して来た。そのまま押され木の方に押し付けられさらにそのまま押された刀が肩事切り裂かれそのまま腹を切られる。
「ぐぉっ!?」
逃げる隙を作るために反撃を行ったが相手は手を交互に使い回転させ腹を切った勢いを利用してそのまま鎌を持っている腕を切り飛ばした。
(何ぃ!?)
片手で糸を展開すると相手はそのまま横に移動してやり過ごしそのまま切り替えしてきた。だが鬼の方も負けずにそのばから逃げ出し自分の腕を回収し元に戻していた。
(雷?いや稲妻が走っていない。だがあれと同じくらい早い技などない筈…)
出だしが早い上にまるで横にスライドしたような移動、この技には鬼は見覚えがあった。
(あれは上半身を動かさず脚だけを動かした事による錯覚、間違いない。薄っすら覚えているだけだが生前対峙した殺し屋の剣士が使う足運びだ。)
この技は下半身だけを動かす事によって起こる錯覚による動揺だけじゃなくほぼ姿勢は保たれているので攻撃する速度が速い。だが相手のその運び方はあの時の比じゃない。そのため避けられたらほぼ避けられない。
(…仕方がないな)
周りにいる蜘蛛を呼び寄せ相手の周りを囲ませる。そして自分は糸を使って鎌を回す。
「こっちも負けられないのだ。死ね。」
少し食う部分は減るが正直接近戦を仕掛けたくはない。と言うより恐らく次に攻め込まれたら負ける。蜘蛛を相手に向かわせて自分は構える。相手の身体能力を考えれば木の上に飛ばれる可能性もあるがこっちには鎖鎌がありその飛んでいる最中を狙えばいい、例え飛ばれてもこちらには何の問題もない。
(あーあ、森が騒がしいし、累の所に顔を出さなきゃかねぇ)
もはやこっちの勝ちだ、後は相手がどう動くのかを待てばいい。蜘蛛にそのまま食われてもいいし逃げて俺に落とされてもいい。相手の方は周りに囲まれている蜘蛛をゆっくり見渡すと最後にこちらを見た。その瞳には焦りも絶望もない、最初の頃よりもさらに殺意が増した。
(な、なんで動かない?)
相手の方はゆっくりと刀を自分の脇に降ろし片足を後ろに下げた、そしてゆっくりと目を閉じ息を吐き自分を落ち着かせ、後ろの足に力を入れそのまま”水平にこちらに飛んできた”
(な!?)
しかも上半身はあまり動いておらずほぼ構えた状態で水平に綺麗に蜘蛛の上を通り過ぎて行っている。まるで氷の上を滑っているようにこちらに向かって来た。鬼の方は慌てて鎌をこちらに飛ばしたがもう遅かった。相手の足元には蜘蛛はおらず着地すると同時に加速し鎌潜り抜けて鬼の懐に入るとそのまま脱力から繰り出された袈裟切りが繰り出され腕ごと首を斬り飛ばされた。
(ば、馬鹿な、お、俺がこんなあっさり!?)
「…居合を使うまでもなかったか。」
血を振り払い少し嫌だがこのまま刀を収める。鬼の頭をそれと同時に地面に落ち数回転がって行き止まった。
「き、貴様のような殺し屋が、鬼殺しをやっているとはな、お前も同じか?」
鬼は残された時間を使ってこちらに疑問をぶつけて来た。そしてその相手矢吹はその声に耳を傾けていた。
「時代と共に錆びていく技、どいつもこいつも、ただ学ぶだけで終わらせて行く。それが気に入らなかった。」
人が作り上げた技、だが今ではただ心構えとして扱われ学ぶ方もそれを受け継ぐ気もなく終わらせていった。
「ここに来た連中もそうだった。極めもせずただ学びそれを持っているだけで終わらせていく。古代から受け継がれた呼吸も錆びつかせる屑を殺すのは本当につまらなかった。」
ここに来た連中はそうだった。何をしに来たのかまったくわからずその技術を生かす所か生きる術すら学ばず死んでいった。それのせいか人を殺すのが楽しくなくなり食っても不味くなるだけだった。
「だがよかった、呼吸だけではなくまさかこのような技を見られる何てな。」
最後に強い奴に会えてよかった、最後に日の国が残した剣術で殺されたよかった。だができれば…
「鬼になる前に…戦いたかった。」
ああそうだ、何故忘れたいたのだろう。自分は技を競い合う相手が欲しかったのに、何故こうなったのだろうか。
(こうなるのだったら、同じように刀を持っておけばよかった。)
そう後悔しながら鬼は消えていった、蜘蛛の方も同じように消えていき炭が風に舞い消えていった。
「…ありがたく受け取っておこう、名も知らない鬼よ。」
己ひとつだけで生きた男だったが気持ちはわからなくもない、それに技は錆びつかせる気などもうとうない。それに自分には目的がある、それを達成するまで鍛錬をやめる訳には行かないのだ。
「隊長、ご無事で?」
すると後ろの木から誰かがこちらに飛んで来た、どうやら暗部の者のようで矢吹の方に向いて頭を下げている。
「お前たちどうして?」
「不破様の命令でこの山で鬼の掃討を任されました、どうやら柱もいるようで現在単独で行動中のようです。」
「…状況を聞かせろ。」
「不破様と田賀様はそれぞれ鬼を倒し現在小数の隊士を引き連れ後処理に当たっています。蟲柱と水柱のお二方はわかりませんがどうやら十二鬼月の相手をしているかと。」
「なに?ここに鬼月が?」
十二鬼月、鬼の中でも上位の存在で下弦と上弦で分かれている。下弦の方は柱や矢吹のような人なら問題はなくよく倒されるが上弦は柱が数人がかりで相打ち覚悟でようやっと倒せる化け物だ。
「それは上弦か?」
「いえそれは低いかと、それでしたらまだ山が騒がしい筈です。恐らく下弦の方ではないかと…」
確かに上弦が相手だと柱も全力を出す筈だ、今は夜でしかも山だ。上弦が相手なら戦闘音がここまでくる筈だ。
「待て聞きたい事がある。金髪と猪の皮を被った隊士と顔に痣がある奴は何処にいる?」
「金髪の方は蟲柱様が手当したようです。猪の方は木に吊るされていたようです。痣の隊士はわかりませんが恐らく十二鬼月の方にいるのでは…」
それを聞いた矢吹はその場を駆けだした。暗部の隊士も慌ててそれに着いて行く。
「蟲柱が通ったと言うのなら恐らく隠も来ているな?それの手伝いをしてやれ、不破には帰路確保に田賀には隠の護衛と病人の輸送準備をさせろ。」
「矢吹様は?」
「私はその痣の隊士の所に向かう、色々面倒な事になりそうなのでな、いけ。」
「承知」
それを聞いた隊士は矢吹から離れる、矢吹はそのまま耳を澄ませながら炭次郎がいるであろう場所に向かう、しばらくすると静寂に包まれた森の中から鉄がぶつかる音が響いた。
「遅かったか!」
すぐさま方向転換をし問題の場所に向かう、そこではあの妹の鬼が誰かに追われていた。サイドテールの髪で蝶の形をした髪留めをしている。その姿を見た矢吹は木の上で固まってしまった。
「あれは…カナヲか?」
間違いない、少し見違えたがあれはカナヲだ。だが何故あの子がここに?色々疑問は浮かぶが止めなくてはいけない。木の上から降りて近づきカナヲの動きを止めた。
「カナヲ、やめなさい。」
「…え?」
腕を掴まれ誰がやったのだろうと視線を移したのだろう、その時に見えた紫の瞳は大きく開かれておりカナヲも驚いているのが目に取れた。
「取り敢えずやめなさい。あの子は敵じゃない。」
「…鬼は切らなきゃ。」
「駄目だ、これはお館様の命令なんだ。」
これはあながち間違ってはいない。恐らくお館様はこの鬼が死ぬ事は望んではいない筈、あの人にどういった考えがあるかわからないが俺もこの子達の見張りを任されているため同士討ちをさせる訳にもいかない。
「ともかくこの鬼を殺すかどうかはお館様のご意向を確認する必要があるからやめなさい。」
「……」
カナヲの性格は聞いた程度だが自分では物事を決められない性格だ。そのためかいつもはコインを投げて決めるそうだがもしそれで決められたら少し不味い。殺すか殺さないかで決められてもし最初の案だったら矢吹は対立違反を起こさないといけないのだ。だがその問題も直ぐに解決した。
「伝令!伝令!カー!炭次郎、禰豆子!両名ヲ拘束!本部へ連レ帰ルベシ!」
「!」
(鴉の伝令か…)
どうやら難は逃れたようだ。これなら流石にカナヲは手を出さなくなるだろう。それがわかったのかカナヲは何処かに行こうとその場を離れようとした。
「カナヲ、何処に?」
「…隠の指揮、任されたから…」
「なら私も手伝おう、今田賀の奴がけが人搬送の準備をしてくれている。田賀には私から話を通した方がいいだろう。」
「……」
それを聞いたカナヲはその場で礼をして立ち去った、竈門の方を見ると隠が運ぼうとしているので特に気にする必要はないだろう。カナヲは恐らく田賀とは話せないし早く行った方がいいので自分もその場を後にした。
周りには包帯巻きにされた人たちが転がっておりそれを隠れが運んでいる。それを暗部たちは周辺を警戒しながらその手伝いをしておりその指揮をある男が行っていた。身長は170とやや大きく髪は黒髪の短髪で顔は少し強面だ。上からは黒い色が強い緑の羽織を着ており腕を組んでその場で指示を出していた。
「手ひどくやられたものだ。」
そう包帯巻きにされた人達を見て田賀 正瀬はそうぼやく、流石に癸とは言え少しやられ過ぎだ。向かった隊士の9割が戦線復帰ができない見込みでありその残り一割も重傷を負っている。
「まあ最近の腑抜けってこんなもんよ。」
そう木の影から不破が現れた、不破の方はタバコを吸いながら田賀の横に立つ。
「最近隊士の質が悪くなったって柱も愚痴ってたからな、しかもほとんど鬼の姿を確認する事なく殺されてる。」
「呼吸だけしか取り柄がないんだよ、そういう手合いは」
そう木の上から声がしその人が木の上から降りて来た。
「鬼を殺すのは呼吸だけで十分、とかいう考えだったんだろ?殺す事を考えてもその過程を考えなかっただけの話だよ。」
茶髪の長髪を後ろで結んでいる男がそう評価した。不破の方も苦笑いしながらそれに頷き田賀の方は渋い顔をしている。
「おい馬場お前搬送準備はどうした?それともここで愚痴を言いに来るのが仕事なのか?」
「ちょちょ怒んないでくださいよ田賀さん、もうそっちは終わりましたよ。後は隠の方が準備できるのを待つだけですよ。」
自分の前で手を振る。田賀の方はため息を吐きながら後ろにある木に体重を預けた。
「それより矢吹さんはどうしたんですか?久しぶりに指示を出したようですけど。」
「うちの隊士の話じゃ柱の方に向かったらしいぜ。恐らくあのお館から何か頼まれたんだろ。」
「その話か、確かある一人の隊士を見てるって噂だがホントなのか?」
「あぁ前街で見かけた時市松模様の羽織を着ていた隊士を見ていやがった。」
「市松模様?それってさっき鴉の伝令であった鬼を連れた隊士か?」
「そそ、あいつこっちに向かって来るらしいし色々聞きたい事がある。丁度いいしこのまま固まっていようぜ。」
全員その場で頷きここで待つことにした。その様子を見ていた隠の方は作業をしながらその三人を見ていた。
「おいあの人たちって暗部の人だよな?」
「そうだよ、情報収集、迅速な鬼狩りができこんな後処理もお得意な精鋭部隊の人たちさ。少人数で構成されていて鬼殺隊の重要施設の護衛を任せられているって噂。どうやって入るのかもわからない上にどういった経緯で出来上がったのかもわからない不気味な所だけどね。全員顔を布で隠してるのが余計に怖い。」
「あそこにいる人たちは?」
「暗部は一番上が矢吹さん、二番目がそこにいる三人と後二人ほどいる副隊長、三番目に隊士たちで構成されてるからあのひとたちは副隊長だよ。俺もこうしてみるのは初めてだな。」
暗部はそもそもこうやって隊長が出る事はそんなになくそもそも暗部の任務で隠が出る事がないので見かけるのが少ない。
「どう言う人たちなんだ?」
「知らないよ、下手したら柱より見かけない人たちだし…」
そんな会話をしていると自分たちの視界にある奥の木の影から矢吹が出てきた。それを見た隠の方は指を差しながら会話を続けた。
「あの人が暗部の隊長の夜船矢吹、何でも柱とほぼ同等の実力らしいぜ。」
「んじゃ何で柱にならないの?」
「知らないよ、何でも柱になるのを断っているらしい。まあ詳しい話はお館様とあの人しか知らないけどな。」
そう言いながら隠の二人は仕事をするためにその場を離れた。そして矢吹の方は例の三人の方に向かって行く。それに気づいた馬場 誠司は矢吹の方に手を振りながら矢吹に声を掛ける。
「矢吹さ~んこっちですよ~!」
それに軽く手を振って答えながら三人と合流した。
「揃っているな、嵩本と御子柴は?」
「その二人は今回来てないよ、嵩本はそもそも動けないしな。」
「そうか…まあ二人には後で話すとして、お前たちにもそろそろ話してもいいだろうと思って久しぶりに顔を出した。」
「例の市松模様の隊士の事か?」
「そうだ、まあ鴉の報告である程度は知っているとは思うが…俺はその隊士の事をお館の命令で監視していた。」
「鬼を連れていたからか?」
それに田賀が答え矢吹はそれに頷く。
「不破に俺の代わりを任せるその前日にお館から呼ばれた、内容はその隊士と鬼を見張る事が任務だった。」
三人はその言葉に静かに耳を傾ける、不破の方はタバコを吸いながら、田賀は木に体重を預けた状態で、馬場は腕を組みながら田賀が質問を出す。
「何か変わった様子とかあったんか?」
「鬼の方はあったな、鬼の方は何故か人を食わず今まで隊士と行動を共にしていたようだ。」
それを聞いた三人は流石に驚いたのか目を見開いていた。
「ちょっと待て、人を食わないって言ったか今?」
「そうだ、それについては俺が確認済みだ。」
「いやおかしくないか、んじゃ何喰ってんだよ。」
「いやそれがな…寝れば食わなくていいそうだ。」
「「「はぁ?」」」
やはりこう返されたか、いや自分もそんな風に鱗滝に詰め寄った時があったが今思えば何故自分も納得したのだろうか、かと言って鷹や鴉、そして俺で監視はしたが一回もそんな素振りは見せなかったのだから。
「いやいやありえないだろ、んじゃ何か空気でも食ってんのか?」
「わからん、それが気になっているのだが調べようにも専門的な知識はないからな。」
「…まあ夜船が言うのなら、そうなのだろうな。」
そう田賀の方は渋々納得した。不破の方はため息を吐きながら頭を掻き馬場の方は頬を掻いている。まあこれでいきなり納得しろと言うのが難しい話なのだが。
「ま、まあともかく、矢吹さんが言うなら大丈夫ですよ。それに襲ったらその時始末すればいいんですから。」
「そうだな、それにお館の産屋敷殿からの指示なのだ。何か考えがあるのだろう。」
「んなこと言っても他の隊士が納得するか?普通こんな事言われて柱とかぜってぇ首縦に振らないだろ。」
そう不破は矢吹と同じような事を言い矢吹は一度切り替える。
「まあおいおいその話は会議で片付けられるだろう、それにこれで俺の護衛任務も終了だ。」
「そうだな、どうする?久しぶりに飲み行くか?」
「いいですねそれ、そのめんどくさい任務の詳細も聞いてみたいし。」
「まあ一度お館様に報告をする必要があるがいいだろう、俺もお前たちの任務の詳細も聞きたいしな。」
ここで暗部の情報交換は一度中断された。四人は搬送の準備ができるまでその場で世間話をして時間を潰していった。
その搬送に使うための運搬車の方ではある女性がその護衛に着いていた、紫染まった毛先のショートロングをカナヲと同じ蝶の髪留めをしており蝶柄の羽織を隊服の上に羽織っている。蟲柱である胡蝶しのぶは隠れの指示を行いながら護衛をしているとその後ろで隠がしのぶに駆け寄って来た。
「胡蝶様、暗部の田賀様のおかげで搬送準備は完了、いつでも出発できます。」
「そうですか、なら出発しましょう。恐らく護衛は暗部が付いてくれてるので安心ですから休んでいてください。」
「で、ですが…」
「思ったより人数がいて疲れたでしょう?家での仕事もあるので大丈夫ですよ。」
そう優しい笑みをみせながらそう指示を出す、隠の方はそれを渋々受け取り運搬車の方に入っていった。
「カナヲ~帰りますよ~」
そう木の上で周りを警戒していたカナヲに声を掛ける、するとカナヲの方はしのぶの前に降りて来た。
「もうここでの仕事は終わりです。帰りますよ。」
それにカナヲは頷くが一度周辺を見渡した、その視線の先には暗部がおりそれに疑問に思ったしのぶは声をかける。
「どうしました?」
「……」
「誰か気になる人がいましたか?」
「……矢吹さんがいたから」
「っ!」
するとしのぶは目を見開いたが直ぐに顔を戻した。
「…そうですか。取り敢えず帰りますよ。」
「…はい。」
特にその事については喋る事はなくけが人の搬送する運搬車の方に向かった。カナヲの方は表情は変わらなかったがしのぶの方は何故か寂しそうな顔を浮かべていた。
と言う訳で山で後処理を行っていた矢吹さんでした。そして暗部の隊士である田賀、不破、馬場の三人の登場。残りの二人はまあ登場するのですがかなり後になりそうですね。