矢吹は炭次郎たちと一緒に胡蝶邸に向かい無事に着いた、行く前に炭次郎が不死川に喧嘩を売ろうとしたがそれを矢吹は止めた、まあ実の妹に刀を突き刺したのだから当然だがせっかく落ち着いた空気がまた悪くなる。
「す、すみません。」
「構わん、だがお前は少し我慢を覚えろ。」
「ホントだぞ!いきなり不死川様に喧嘩売りやがって、まじで寿命縮んだんだからな!!」
「ご、ごめんなさい。」
後ろの怒鳴り声を聞きながら塀の門を潜り中に入って行く、前には大きな屋敷があるが横を向くと広い庭が広がっている。矢吹は少しその場でキョロキョロと見渡していた。
(ここが胡蝶邸か…)
実際に来たのは今回が初めてだ、と言っても存在自体は前から知っていたがやはり病人を扱うためかかなり大きい、胡蝶自身の研究室でもあるので少し複雑だが特に問題はないようだ。入口の戸に向かい開ける。薄暗い廊下に向けて声を上げ誰かいるのか確認するが何も返ってこなかった。
(外の方か?)
玄関から出て外に出て庭に向かう、すると別の屋敷が見えた。取り敢えず適当に近場の屋敷を庭を通りながら人を探していると視界の中に蝶が入ってきた。それに釣られるように横を向くとその先にはしのぶと同じ蝶の髪留めをつけた女性がいた。
「あれはえっと…そう継子の方だ。」
「なに?継子?カナヲがか?」
「え、えぇはいそうです。胡蝶様の継子のようで…」
「あのすみません。継子って何ですか?」
「継子とは柱が直々に育てる隊士の事だ、次期柱候補とも言われその修行の厳しさから才覚と実力がなければなる事ができん…のだが。」
炭次郎から目を離しもう一度カナヲを見る。表情を変わらずただ手に乗っている蝶を見ていたがこちらの存在に気付いたのかこちらを向いていた。すると女性の隠の方がカナヲの方に向かい声を掛け屋敷への入室の許可を貰おうとしたがカナヲはただその女性を見ているだけで何もしなかった。
「カナヲ、他の人はいるか?」
そう言うとカナヲはそれに小さく頷いた。
「何処にいる?」
するとカナヲが後ろを指をさす、そちらの方を振り向くとそこには二つの蝶の髪留めをしている女性がいた。
「どなたですか!」
「胡蝶様の申しつけけが人を運んで来た、案内を頼めないか?」
「隠に暗部の方ですか、わかりました。こちらへどうぞ。」
その女性は矢吹たちの横を通り過ぎ矢吹たちの方も急いでそちらに向かう、一瞬矢吹はカナヲの方を向いたが直ぐに前を向きその女性の後を追った。その女性はある屋敷の戸の前で止まりこちらの方を振り向き着ているのかどうか確認するとその戸を開いた。
「こちらです。お入りください。」
その中に入っていきそのままついて行く、すると何かが聞こえて来た。
「五回!?五回飲むの一日に!?三か月間飲み続けるのこの薬!?こんなの飲んだら飯も食えないよ!すげぇ苦いんだけど!辛いんだけど~!ていうかこれ飲んで本当に治るわけ!?ねぇホントに治るの!?ねぇもっと具体的に説明してほしいんだけどぉ!?」
情緒不安定と言う言葉が似合いそうな嵐のような言葉が金髪の子の隣にいる小さな女の子に降りかかる、それを矢吹は冷めたような目で見ながら隠れに抱えられている炭次郎の方を向くとそっちの方は何だか驚いた表情でその男の名を言っていた、どうやら善逸と呼ぶらしい。
「静かにしてください!説明は何度もしましたでしょう!?いい加減にしないと縛りますからね!?」
(…大変そうだな。)
いや恐らく不安なんだろうか、全身ガタガタ震えながら必死に二つ結びの女の子から顔を反らしている。その女の子の方は呆れたのか少し愚痴を溢しその部屋から出て行った。そして出て行った部屋の入口の方を見て見ると暗部の一人が矢吹の方をじっと見つめていた。
「すまん、後は頼む。」
「え?ちょっ!?」
手が空いている隠に箱を渡しその部屋を退出する。そしてそのまま暗部の方について行き外に出るとその暗部が振り返った。
「お館様の指示でしばらくの間はまだ隊士の事を見てやって欲しいそうです。」
「もう何も心配はない筈だが?」
「一応の保険です。竈門の方は何故狙われているのか判明しておりません。もしかしたらここを襲うかも知れないので。」
「ここがそうばれるとは思えんが…わかった、念のために……いやこれはいいか。」
「ここの暗部は配置しないのですか?」
「俺にそして蟲柱様がおられるのだ。余程の事がなければ問題ないだろう。後で私の道具一式運んで置いてくれ。」
「…わかりました。では」
報告を終えた暗部はその場で消えた、矢吹の方は取り敢えず自分の部屋を確保するためさっきの女性に会う事にした。矢吹が屋敷の方に戻るその様子をさっきの暗部と不破が別の屋敷の上でそれを覗いていた。
「矢吹がここに暗部を置かなった?そりゃ変な話だな…」
「えぇ、あの心配症の隊長には珍しい事です。普通だったら念のため配置する筈ですが…」
「まあ胡蝶邸はここの柱から置かなくていいって言われたらしいしな、あいつ話がこじれるの嫌いだし話すの嫌だったんだろ。」
「噂では蟲柱様と隊長仲が悪いと言う話ですが本当ですか?」
「どうだろうな、けど鬼殺隊に入って矢吹と蟲柱が会ったって言う話は聞いてない。あいつの性格の問題だが一応後で俺が会って聞いてやるよ。」
「すみません、それでは自分はこれで…」
「おう、ご苦労さん。」
そう言うと一人の暗部が消えたのを見届けると不破もその場から消えた。
「さて…さっそく話をするか。」
今矢吹がいるのは胡蝶邸ではなく暗部の拠点だった、矢吹の方も流石に話し合いをしないと不味いと言う訳で一度集まってもらった。集まったのは田賀、不破、馬場、御子柴、嵩本、矢吹の全員が集まっていた。
「お前たちも知っているようだがまた炭次郎の護衛を任された。」
「ん?後はその小僧の問題だろう、何故お前がまだ着く必要がある?」
そう声を上げたのは額に傷がある体格の良い男、嵩本 填寺 彼はある重要施設を任せられている人物だ。
「まあそうなんだが…自分の方も気になる事がある。」
「気になる事とは何でしょうか?」
御子柴 昌司はその疑問を投げかける。
「…実はある奴から鬼舞辻の事を聞いた。炭次郎の所にいる奴とは別の鬼だ。」
その声に五人は思わず矢吹の方に視線が集中する。それを気にせず矢吹は続ける。
「それを踏まえた上で鬼舞辻が炭次郎に執着する理由がわからない。聞いただけで判断するしかないが面倒事は部下に任せる筈だ。」
小物で臆病、長年生きているのなら隊士の事何か気にしない筈、その証拠に今まで鬼舞辻を見たと言う話はなかった。なのに何故か目の色を変えて炭次郎に追ってを送った、一度しか送っていないが逆にそれが証拠だ。
「なるほど…鬼舞辻て意外と小物だったのか。」
「まあそう言う奴が何故追手を向けているのかわからないんだが…」
ありえるとしたら…怖いとかか?いや流石にそれは小物過ぎるか長年生きた癖に、となると野性的な本能による危険か?だとしたら自分で手に掛けるよなって話だよな。
(炭次郎の方もそうだが何故禰豆子の方をそのままにしているんだ?普通だったら殺している筈だが…)
そう言えば何故鬼舞辻は鬼を増やしているんだ?珠世の話を聞いただけだが手下に裏切られるのが怖い癖に何故増やしているんだ?いや探し物の時間をするために手下で時間を稼ぐと言うのもあるんだが…だとしたら別に数何か増やさなくても上弦を柱をあて一般隊士に下弦を当て潰しておけば未練もないし確実だが…300年も経っているのだから重要施設何か割れそうな物だし。
(何か隊長考えてますね。)
(あぁ、久しぶりに見たなあいつのあのしかめっ面、あれあいつの癖なのよ。今手持ちのある情報を高速で整理してる状態だよ。意外といい線行く事が多いぜ。)
「…おい矢吹?」
「あ…わりぃ。それでしばらく炭次郎から色々聞いておきたい。そしたら何かわかるかもしれんし。」
「そしたら俺も…あぁいやこれは矢吹だけが適任だな。」
「え?何でですか?」
「接点があるのが矢吹だと言うのもあるが…俺関わり合いたくないし。」
その事については馬場と矢吹以外の人間が同意した。幾ら矢吹のお墨付きとは言え流石に鬼と同じ屋敷には止まりたくはないようだ。
「お前よく平気だよな、普通居心地悪いだろ。」
「…まあ確かに、今思えば嫌だが襲わないと思う。」
「思うって、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、油断しなければいいだけの話だ。」
全員はそれを聞いて頭を捻るがかと言って自分はわからない事をそのままにしておくのは気持ち悪い、多少の危険はあるだろうが何となく襲われないと思うのであまりそこは気にしていない。
「とは言えこの任務はそんなに長くはしないから心配しないでくれ…それより本題に入ろうか。」
矢吹は懐からある紙を取り出しそれをみんなの前に出した。その紙にはある人物が書かれており全員がその絵を見る。
「…この絵が例の鬼舞辻か?」
「…そうだ」
「え?何でそんな疲れた顔してんの?」
矢吹がこの絵を持っているのはただ単に炭次郎に聞いただけなのだがその聞くまでの過程が大変だった。
『…すまんもう一回言ってくれないか?』
『えっと白い帽子をかぶってて髪はこう、くねくね~っとしててそして目はギラリ!としていました。』
『……??』
純粋と言うかなんと言うのだろうか炭次郎が何言っているのかまったくわからなかった。矢吹が何とか誘導して行きここまで形を持って行けたのだがこの先あれで大丈夫なのだろうかと少し不安でもある。
「にしても隊長絵が綺麗ですね。」
「そりゃこれを主軸にして探すんだから上手くなけりゃ駄目だろ、馬場お前もこれぐらいできるようになれよ?」
「えぇ!?…俺こんなに上手く書けるのかな?」
「嵩本お前付き合ってやれよ。」
「俺が絵が上手そうに見えるか?御子柴お前がやれ。」
「いいですよ、馬場君後でやろうか。」
「はい、お願いします!」
「矢吹後で少し話し合いがあるんだけどいいか?」
「構わんが…酒は持ってくるなよ?」
「…わかったよ(持ってこよ)」
「まあ取り敢えずこの絵を中心にして探してみてくれ、ただしあまり見せるなよ、足跡も残すな。」
「わかってるよ…と言うかお前がこういうの一番得意だろ。」
「確かに、矢吹がいてくれたら助かるんですけど…」
「矢吹、こっそり抜け出せよ。」
「出来るかアホ。」
いつの間にか賑やかな雰囲気になり雑談になっていた、いつも見せるあの冷たい表情は嘘のように笑顔があった。矢吹にとっては唯一気の緩める事ができる人たちでもあるのだ。その後矢吹は久しぶりに仲間たちと飲んだ。
竈門「…いい感じだ。」
炭次郎が胡蝶邸に連れて来られて二週間程たった、炭次郎は入院で衰えた体を治すために機能回復訓練をしていた。伊之助や善逸の方も最初までは一緒にやっていたのだがその訓練が厳しいのか途中で来なくなった。炭次郎も二人を連れようと説得はしたもののあまり効果はなく少し後ろ髪は引っ張られるも気を落とさず前向きに行っていた。今は呼吸を体に慣れさせる自主訓練を屋敷の屋根の上でやっているようだ。
もしも~し、もしも~し?
すると何処からか声を掛けられている感じがした。思わずその方向に振り向くとそこには蟲柱のしのぶがいたのだが距離が近く振り向いた炭次郎の顔の直ぐ目の前にあった。
「他のお二人は来なくなったのに…一人で寂しくないんですか?」
炭次郎の横に座り笑みを浮かべ話しかけてきた、炭次郎の方はしのぶが相手なのか少し頬を染めボーっとしていたが直ぐに返事を返す。
「いえ!できるようになったら、やり方を教えてあげられるので!」
相変わらずの前向きな性格だった。しのぶはその言葉を聞き心が綺麗と返す。炭次郎は集中が切れたのに気付いたのか前に向き直り呼吸を繰り返す。
「あの…どうして俺たちをここへ連れてきてくれたんですか?」
「禰豆子さんの存在は公認となりましたし、あなたたちは傷も酷かったですしね。それに君には…私の夢を託そうと思って。」
「夢?」
その言葉に炭次郎はしのぶの方に顔だけ向ける、しのぶはそのまま顔を前に向けた状態で話を続ける。
「鬼と仲良くする夢です。きっと君ならできますから。」
そう静かに告げられた、だが炭次郎はその様子に何か引っかかったのか思わず自分の鼻を使う。そしてその鼻の情報通りにしのぶに確認するため声を掛ける。
「怒ってますか?」
それを聞いて初めてしのぶの顔に変化があった、拍子を突かれたのか思わず口から声が出た。目もさっきより開かれており驚いているようだ。
「何だかずっと怒っているような臭いがしていて、ずっと笑顔だけど…」
しのぶは顔を隠すように前を向いた。炭次郎はそのまま顔を向けたまましのぶの返事をまっている。
「…そうですね、私はいつも怒っているのかもしれない。」
そしてしのぶはその怒っている訳を喋り出した。
「最愛の姉を鬼に惨殺されたあの時から、鬼に大切な人を奪われた人々の涙を見るたびに、絶望の声を聞く度に、私の中に怒りが蓄積され続け膨らんでいく。体の一番深い所にどうしようもない嫌悪感がある。ほかの柱たちのきっと似たようなものです。あの人も…」
「まあ今回は人を食わない禰豆子さんを見て気配は覚えたでしょうし、お館様の意向もあり誰も手出しする事はないとおもいますが…」
言葉を続けていくごとにしのぶの表情がどんどん沈んでいく、視線は下に落ち顔も寂しそうな表情になっていた。
「私の姉も君のように優しい人でした、鬼に同情していた。自分が死ぬ間際ですら鬼を哀れんでいました。」
私はそんな風には思えなかった、人を殺して置いてかわいそう?そんな馬鹿な話はないです。でも、それが姉の願いなら私が継がなければ、哀れな鬼を切らなくても済む方法があるなら考え続けなければ、姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やすことなく…
「だけど少し…疲れまして。」
鬼は嘘ばかり言う、自分の保身のために理性を無くし剥き出しの本能のまま人を殺し続ける。あの人も姉と似たような目線で鬼には同情していた。なのに今ではその同情も私と同じように薄れたのでしょう。
「あの…さっきから出てくるあの人って?」
「…夜船矢吹、私の知り合いです。」
「夜船さんの…」
「えぇ…私の昔からの知り合いです。とは言っても出会いはそんなによくはありませんでしたけどね。」
そう言っているが何故か嬉しそうに苦笑していた。
「彼も姉と同じような事を言っていました、『彼らは鬼になろうが元は人だ、災難に巻き込まれ一時の悪意によってやった事ならまだ救いようはある。』と、昔は鬼を斬る事もためらうような人でした。」
「でも今の夜船さんはそんな風には見えませんでした。」
炭次郎の方も矢吹に話しかけ色々聞きたかったのだが警戒心が高すぎて炭次郎があいてでも中々話してくれなかったのだ。
「…恐らくですがあの事件が関係あるのでしょう。時に炭次郎君、夜船さんが昔何をしていたのかわかりますか?」
その事について炭次郎は顔を横に振り返事をした。
「あの人、昔は警察官だったんです。」
「えぇ!?警察!?」
やけに感の鋭い人だと思ったらそう言う事だったのか、しかもしのぶの話によると捜査の方もかなり凄かったようでしのぶたちの事がばれそうになって大変だったようだ。さらに反りが合わない事も多くあって鬼殺隊の事もよく思っていなかった。
「けど人を守る事に関しては正直凄いと思いました、どんな悪人でも殺さず捕まえ身寄りのない子供たちが住む施設を援助して、些細な事にも取り組み解決していった。そのためか彼の住む所では住民の人たちからの評判もよかったです。」
「ですが彼がいた警察所である事件が起こりました、彼が見回り中にその警察所が何者かに襲われ彼を除いた隊長と隊士が殺されました。丁度姉が死んで私が部屋に引きこもっていた時です。」
「その事に気づいたのはその事件が起きてから一週間後の事でした。急いで彼がいた家に行ってもいなかった。そしてようやっと彼の所在がわかったのは、彼が鬼殺隊に入った後でした。最初の顔合わせ以外は話た事はありません。」
「もしかして鬼が?」
「多分そうでしょうね。」
私と同じように大切な人を殺した鬼を探している。それなら彼が鬼殺隊に入る理由としてしっくり来る。そしてしのぶは立ち上がる。
「炭次郎君頑張ってくださいね。禰豆子さんの事守り抜いてくださいね、夜船さんの事もたまにでいいですので話しかけて下さい。……自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと、私は安心する。私も楽になる。」
「……」
「全集中の呼吸が止まってますよ?」
「あ」
そう言うとしのぶはその場から消えた、炭次郎はそのまま訓練を続けた。
矢吹がカナヲの知り合いだったのはしのぶとは知り合いだったからです。その出会いについては過去編として出すのでもうちょっとお待ちください。