鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す――   作:silika

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第十一話 公開討論会

「やっと終わったぁ」

そっからさらに2回掛かって終了。深雪が買って来てくれたサンドイッチを受け取った千西コンビ。コイツらなんか本当、思考パターンと行動パターンが被ってると思う。

「深雪さん達のクラスでももう実習が始まってるんですよね、どんなことをやってるんですか?」

 

私は深雪と他3人より少し仲が良い分、雫やほのかとも仲が少し良いけど、他はそうもいかない。ほのかと雫が美月の質問に少し顔を見合わせている間に、深雪が半分拗ねた様に答えを提示する。

「多分、美月達と同じよ。ノロマな機械をあてがわれて、テスト以外では役に立ちそうもないつまらない練習をさせられているとこ」

かなり不貞腐れている御様子。まあ、気持ちは分からなくも無いけど。

「加重系単一工程、戦闘では使い勝手が良いじゃん」

「それはそうですけど、CADがこんななのはいただけません」

 

「ご機嫌斜めだな」

「不機嫌にもなります。あれなら、自習していた方がためになります」

「ふーん、手取り足取りも善し悪しみたいね」

エリカが言う。まあ、確かにやる気の無い奴に付きっきりで教えても仕方無いのはそうなんだけどさあ……。

「でもさ、一科二科の分けは見込みのアリナシにはなってなくない? あの森崎を見込みアリだと思える?」

 

「……あー、ちょっと無理かも、虚栄心が強過ぎ。まあでも、基本はね?」

「お説がこもっともだけどよ、俺らさっきまで達也と玲に教わってたんだぜ?」

「うっ、それを言われるとつっらいなー」

そのまま、話の流れで、両手を合わせてCADに置いただけで上手く行った理由のタネ明かしをする。聞いてみたら拍子抜けをした様子。ただまあ、大体の事は大体そんなもんな気がする。

 

「あのさ、深雪。参考までに、今タイム計ってみてくれない?」

「えっと、わたしが?」

大袈裟に頷くエリカ。実は私も気になってる、どんくらいなのか。

「いいんじゃないかな、やってみれば」

「お兄様がそう言うのでしたら」

 

一番測定器に近い美月がセットをして、測定を開始する。

それ自体はすぐに終わったのだけど、美月は驚いた表情のまま、記録を言わず、エリカが結果を催促する。

「235ms……」

「え……?」

「すげ……」

「何回聞いても凄い数字よね……」

「深雪の処理能力は人間の反応速度の限界にも迫っている」

感嘆の溜息を漏らす一同。実際、おそろしく速い。でも、何事にも例外は居るようで、達也は驚かず、深雪は不満気に顔を曇らせる。

 

「結果が不満?」

「ええ。お兄様が調整してくださったCADならもっと速くなるのに……こんな雑多な起動式を使わなければならないなんて……」

そういうこと、まあ確かにCADのハード性能に比して、個人調整無しにしても起動式がゴミなのは事実なんだよな……冗長だし、半分スパゲティ化し掛けてるし、ゴミが多いし。

 

「……アレ? でも玲、さらに速かったような……?」

「……それ、本当?」

「まあ、うん。実演するわ」

というわけでさっさと機械をセット、裏技組み合わせて更に速い結果を出す。

レディ、ゴ! 先にセットして合った変数で起動式を読み込み、魔法式展開、発動。

 

「34ms……?」

「お、本日最速記録」

「え……?」

「イカサマ?」

「というか、なんでこの記録で二科?」

そんなこと言われましても……。

 

「私、魔法の工程数と干渉力や処理速度が反比例するから。一工程ならこんなもんだけど、調整無しで12工程やったら多分学年ドベだよ。まあ、5工程あたりまでは多分一科でやってけると思うけど、7だと落ちて来て、10だと二科レベル、20超えてくると、使い物にならないレベルで遅いんだよ」

「……つまり、工程が少ない時だけとても強い?」

そういう訳である。ほんとに、喧嘩には向いてるけど、それ以外だと使い勝手はあまり良くない。日常なら逆に使うけど。

 

#22

家もしくば放課後活動に向かわんと欲っす人々を襲う割れた音。

『全校生徒の皆さん!』

すぐに音に気付いたらしく、調整が為される。

 

『僕たちは、学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』

「……有志ね」

達也が若干の笑いを潜めさせた呟きを漏らす。なんでか現状維持派な達也の発想をトレースすると、政治集団有志が過去ほんとに自発的な有志であったことはどれだけあっただろうか、というあたりじゃないかなと思う。

 

全く、教育が行き届き過ぎて少々怖い。大体の有志、特に末端は概ね、たとえ口車に乗せられていたとしても、自発的に、自分自信の良心に基づいてやってるんだけどな……。それに、有志の最初のメンバーは本当に自発だし。

『僕たちは、生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

「ねえ、行かなくて良いの?」

「直にあつめられるでしょ。少なくとも、放送室の鍵に関する窃盗はほぼ確定してるし」

もうちょっと手段を選ぼうね、有志さんや。

 

着いてみると、盤面が強行に踏み込み派と、慎重に待機派が論争していたので、間を取って内部と連絡付けて、中と連絡を取る派になる。十文字先輩があっさり乗った為、それで決定。

「おまえたちの行動は、本来ならば懲罰委員会送りだが、要求の議論の打ち合わせの為、来週の生徒集会終わりまで延期する。ただし、どんな目的だとしても手段は正当化されない。裁きは受けろ」

というのが、会議の期日が決定した直後の十文字先輩の台詞。

 

ごもっともではあるが、反体制派が、反対を行う上で、反対している物の論理に乗っかって反対しなければいけない、というのもナンセンスな話である。特に、相手に対して、話を聞いて貰えない、という印象を抱かせてる場合には。

「にしても、君も手が早いな。壬生と連絡先を交換しているとは」

「手が早いね~」

「玲が保険掛けとくように言ってたと思うが」

 

「何のことだかさっぱり分かりません!」

「……れ~い~? お、は、な、し、しましょう?」

深雪の後ろにうっすら般若が見える。まったく、深雪には正妻としての余裕が足りない。基本的に達也は深雪以外には注意を払わないんだから、殺虫剤ばら撒かなくても良いと思うんだけど。

というわけで達也達を待たせたまま、カフェラウンジで深雪とお話する。

「いやね、私別に達也と深雪を別つつもりは無いからね?」

「でしたら、万が一を起こしかねないことはしないで欲しいのですが」

「だーかーら、保険だったんだってば」

一応声を潜める。暴力的な、明確に悪意を持っている集団が一枚噛んでいるとなると、ある程度は保険的になっても仕方がない。

 

「もしブランシェあたりに乗せられたテロをやった時に、連絡が取れないのは良くないと思うのさ」

「それは分かりますが……」

というわけで適当に言い包める。……これだと私が悪人みたい、かな。どうせ達也は深雪越しにしか他の人を見ないんだから、まず大丈夫だと思うけどね。あと深雪は友達として好きだし、傷つく展開は宜しくない。そういう意味では達也と目的が被るしね。

#23

そうして始まった公開討論会当日。生徒会部活連側からは会長のみが出る。論理的整合性はあの人の場合、一人で取れるから、複数で行った場合の破綻の方が怖いし妥当か。普段のアレを見てたら少々怪しい気もするけど。おまけで、服部副会長が、立つだけの存在として行く感じ。

あちらさんの方は同盟の3年が4人。会場に居る生徒を合わせても、同盟と確定している人は合計で12人程。放送室に入った面々は居ない、彼らにとって、ここが正念場のハズなのに。

 

「実力行使の部隊が他に居るのかな……?」

「受け入れられないかも分からない状態で、ハナっから討論での目的達成を放棄するのは違くないですかね……」

「同感です」

もう少しぼやきたいこともあったけど、話が始まる故黙る。

 

話そのものは、同盟の質問に生徒会が答える形式で進んでいっている。ただ一つ。

「一科と二科の分けって厳然たるものでしたっけ……? 私はなし崩しでそうなったと聞いたのですが」

「現状は厳然としちまってる、が正解だな。本来は違ったハズだぞ」

「深雪には聞かせられないかな」

「流石にそこまで深雪は子供じゃないですよ」

「アンタが絡むと一気に子供っぽくなるんだよ、達也」

「あの……それを私の前でしてもよろしいのですか?」

あ、深雪もここに立ってたわ……。まあ、凍て付き始めてないし、ノーカンと言う事でFA。

 

そうこうしているウチに討論は、七草先輩の演説会へと変貌を遂げていた。まあ仕方あるまい、同盟の質問が傍から見たら、真由美パイセンに言いたいことを言わせる物になってたし。

演説の締め括りに行われた決意表明、差別意識の改革と、そのための生徒会の一科規定の削除に、拍手が鳴り響く。

 

 




玲の思考パターンは反体制派、革命派寄りになります。というより、強い側が、弱い側の反抗に対して、俺のルールに従わないからお前悪、って言うのが嫌いなのです
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