鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す――   作:silika

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第十二話 襲撃

みんなで拍手、という陶酔を生む状況を鳴り響いた轟音が破壊する。即座に同盟メンバーを捕縛。

続いて、窓をぶち破って紡錘形の物体が飛び込んでくる。催眠弾の類でほぼ間違いは無い、爆薬じゃなかっただけセーフ。それは速やかに服部先輩の魔法で巻き戻すように屋外へと排出される。

その数瞬後に突入してきたガスマスク隊はマリ先輩が一瞬で仕留める。この場は大体鎮圧されたハズだが、本番はこっから。

 

「では、俺は実技棟の様子を見てきます」

「私は一旦裏口覗いてから、何も無ければ実技棟に向います」

侵入者のチェックをしに行く。こう派手にやったら陽動を疑わずにはいられない。正門は見張ってる人も多いから大丈夫だろうけど、裏門は使える割に使い難いせいで警備がザルだし。

 

#24

裏口へと来ると、銃器で武装した集団が入ってきていた。

「えー、風紀委員です。どちら様でしょうか?」

誰何に答える声は無く、返答は銃撃によって行われた。前方中心角120度の扇状にマシンガンを抱えた6人。銃はファブルス26,現代のAK47、なんて歴史マニアには呼ばれる傑作銃で、精度が良く、壊れ難く、整備が楽で、反動は少なく、火力は高くてジャムり難い、まあマシンガンとしては最も使い安い代物。

 

銃撃が始まる前に最寄りの一人に近づき、盾にしながら銃器を強奪、撃つのを躊躇った隙にこっちから撃ち返す。一応、始めて会った人は相手がなんであれ殺さない主義ので、銃を持つ腕を撃ち抜く。

「がぁっ……」

自己加速術式を組み合わせて、顎を蹴り抜き、6人とも昏倒させる。

 

続いて来たのは14人、一番近い二人にはドライアイスの弾丸をぶつけ怯んだ隙に銃器を乱射する。魔法師が二人居たらしく、他の人が肉壁として機能している間に防御魔法が組まれる。縦断を防ぐ単純極まりない術式ではあるが、確かに効果的。もともと、乱射しつつも被弾位置を調整して殺さないようにしてるから余計に。

なので、肉薄して真正面から打撃が来る様に見せ掛けた所で、その二人のウチ、前の奴に後ろから転がっていた礫を魔法で撃ち込む。思わず同士討ちを疑って振り返って、魔法を解いてしまったところを顎を蹴飛ばす。

 

もう一人の方がその間に攻撃に転じようと、防御魔法を切ってた故、その隙に雷撃を打ち込む。それで侵入者は打ち止めらしい。

ガムテープで捕縛することにする。手錠でも持ってりゃ良いのだけど、無いから仕方無い。ほんとは魔法師相手に普通の拘束は意味無いハズだけど、現代魔法はCADが必要だからそうでもない。思考だけで発動出来る人には関係ないんだけど……。

一応CADも押収しておくかな。

 

「で、狙いはどこさ?」

「言うと思ったか?」

まあ、そうなるよね。というわけで襲撃犯の爪を一枚剥がす。あと19回は同じ事ができる。

「言ってくれる気になった? あと19箇所は剥せるけど……」

「いっ、言うわけないだろ!」

「ごーお、ろーく、なーな……あー、あと少しで手の指終わっちゃうなあ……」

 

「い、言う……! なんでも言う! だから……!」

手の爪を七枚剥いだあたりで白旗を上げて、大人しくなった。流石に大人の靴を脱がして、足の爪剥いでくのは面倒だから助かった。

「うん、良いよ? で、今回の襲撃の目標は?」

「図書館だ。……もっ……目的は……最先端魔法研究だ」

「そっかそっか、ありがとね? じゃあオヤスミナサイ」

というわけでもっかい昏倒させてその場を立ち去る。まだ戦闘は終わってない以上、私も図書館に行こうか、破壊されたら面倒だから。

 

「壬生先輩、これが、現実です」

やっと辿り着いた特別閲覧室。そこでは達也が、壬生先輩にお説教をしていた。その奥では、"分解された"クラッキング用機械群と、少しの停滞を見せている襲撃者達が居た。

「まあ、そりゃそうだ。テーゼにしろアンチテーゼにしろ、能力主義に囚われてる間は平等なんて幻想だよ。だって、能力主義、ってのは能力を言い訳に差別を許容する言葉なんだから」

 

私はこの状況に置いて闖入者。それでも、私の言説は、壬生先輩に最後の一撃を加えるには充分だったらしく、堰を切ったように話し始める。

「誰からも、莫迦にされてきたハズよ!」

「……? 私恋人居るんだけど?」

「あの……玲? そういう問題でしょうか?」

ぷっちんしかけた深雪が、私が無意識に言った一言にすとんと沈静化される。

 

「んー、私の友達も恋人も師匠/姉/保護者も、私が魔法を使えるから好いてくれるわけでも、あいつらが魔法を使えるから好いてるわけでも無いんだよねえ……。大体、魔法の有無なんて、実際のところ、手札の枚数以上の意味は無いし……足が速いのと同程度では?」

「いや……流石に……」

私は、壬生先輩の作ったシリアスな空気を破壊してしまったようで。まあ、仕方無い。思わず、条件反射のように返しちゃったから。

 

そして、追撃するように、深雪が達也を讃え、壬生の言い分を破綻へと追い込む。あと、壬生を認めてるのはその桐原って先輩もな気がするけどねえ……。態々演武の相手をかって出たくらいなんだから。

「たった四回しか会っていない人物に何を求めると言うのですか!」

それは、壬生の意識を漂白するには充分過ぎる程に充分だった。人は、思いも寄らない事を思いも寄らない所から突き付けられた時、消化に時間の掛かるのが普通だから。

 

そこを、詐欺師は突く。

「壬生、指輪を使え!」

襲撃犯の叫びに、壬生先輩が呼応してしまう。とはいえ、壬生先輩は下に居るエリカが捕獲するだろうから関係無い。スモークグレネードの所為で白煙が広がり視界が潰れるが、相手は大したこと無いので、気配を頼りに二打撃。感触は顎と腹、私の方には二人、最後の一人が別に倒れる音がする。

これでこの場は終わり、拘束に移る。

「拘束用の道具、持ち合わせ、ある?」

「ああ、これか」

という訳で受けとって縛り上げた。

 

#25

保健室で、マリ先輩を筆頭に壬生先輩の尋問が始まっていた。曰く、侵入者は大人の領分だから、情報を取れる相手が生徒に限られる所為らしい。問題は。

「先輩、先輩、あの、さっきの騒ぎの最中に、尋問しちゃったんですが……?」

「捕まった奴の一人に、爪が剥がされている奴が居たが、それか?」

「あ、はい、それですそれです。裏口に回って、20人程居たのですけど、とりあえず昏倒させてから、どこを目的とした誰なのか聞こうと思ったんです」

 

「わーお、容赦無いのね、玲」

「うっさいなあ、襲撃犯相手で、ある程度余裕あったらどこ狙いか吐かせるのは条件反射みたいなもんなんだよ」

「……そいつ、引き渡す時に、幼女怖い、あの笑いが夢に出る、って繰替えしてたぞ」

なにそれ、っていうか幼女って誰のこと?

「あんたでしょ。一人だけちんちくりんなんだから」

「ただ単に身長が150に届いて無いだけじゃん、これ見て幼女とか言う奴は頭の悪いロリコンだけだろ」

 

……なんで3TOPがそろって目を逸らす、身長は人物の年齢を読むにあたって必要って訳じゃないんだけどな……?

そんなことは兎も角、壬生先輩から経緯を聞いたところ、色々な事実が明らかになった。特に注意すべきは、相手の中に洗脳系が混ざってる、ってことかな。強烈じゃなくても、思い込ませられる、ってだけで面倒は面倒。

「問題は奴らがどこに居るか、という事ですが」

「……達也君、まさか奴らと一戦交えるつもりなの?」

 

多分達也にはそんな気は無いんじゃないかな、私がこうだし。

「その表現は妥当ではありませんね、一戦交えるのではなく、叩き潰すんですよ」

「危険だ! 学生の領分を超えている!」

「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきよ」

マリ先輩と真由美先輩が反対する。まあ、納得の行く話ではある。特にマリ先輩は、学校の治安維持に取り組む以上、危険は可能な限り避ける必要があるわけだし。

そして、十文字先輩は、例え壬生先輩のためには警察送りにしない方が良くとも、学生に命を掛けるよう言う訳にゃいかない。

 

っていうか、これ家裁送りになるんだ。事情を斟酌してー、とか無いんだね。

「最初から、委員会や部活連の手を借りるつもりはありません」

「……一人で行くつもりか?」

「本来ならば、そうしたいのですが」

「お供します」

深雪、割り込み速いぜ。まあ、私も一緒にやるんだけどね? 当然の如く、エリカとレオも乗っかる。美月だけ置いてけぼりだけどまあ、仕方があるまい。

 

「しかし、お兄様。どうやってブランシェの拠点を突き止めれば良いのでしょう?」

「多分扉の外でそわそわしてる人が知ってるんじゃないかなー?」

深雪の質問に私がジャックして返す。達也はそのまますっと扉を開けた。

居たのは予想通りに小野先生。ただ、あまりカウンセラーという風情でもない。

 




玲の戦力レベルがかなり高いので、原作より全体的に襲撃者などの戦力も増強されるのは決定事項になります。なんか世界がハードになってしまっている気もしますがノーカンです
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