鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す――   作:silika

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第三話 クラス分け-弐

#7

離れたところで司波兄妹がはらはらしながらこっちを眺めている。私は一歩引いた所で口を挟まなしでいるが。そろそろ良い頃合いかもしれない。

第一幕は、昼食時だった。私達5人が食堂で御飯を食べていると、深雪と、それに引っつく阿呆共が来た。まあ、深雪は深雪だから、達也と同じ席で御飯を食べたがるが、ひっつきの一科生、特に相席を狙ってた連中が、それをどうにか押し止めようとあれやこれやと言い掛かりを付けてきた。そん時は深雪と達也が大人な対応をしたから。暴発はしなかったけど。

 

第二幕は、午後の専門過程見学会の最中。その時は、3-Aの実技が射撃場で行われていた。あの七草、遠隔魔法では十人に一人と言われる英才の居るクラスなもんだから、当然人は沢山来て、見れる人は限られている。勿論そこでの優先に一科二科は関係無いから、私達が前に居ても何の不自由も無い。が、前に出てるのは一科ばっかなもんだから最前列で唯一の二科生たる我々は少々悪目立ちをした。

 

そして来たる第三幕が今まさに展開している。

「いい加減あきらめたらどうですか? 深雪さんはお兄さんと一緒に帰ると言っているんです、他人が口を挟むことじゃないでしょう?」

まったく最もな意見を美月は言うが、道理が分かるならここまでの騒ぎにゃならんて。

「別に深雪さんはあなたたちの事を邪魔者扱いしてるわけでも無いじゃないですか。ついて来たいなら一緒に行けば良いんです。何の権利があって二人を引き裂こうと言うのですか!」

 

良く言った美月、GoodJob、hooooooo! よし、じゃっかん達也の方まで照れさせた。

ただまあ、それだとさらにヒートアップするよねって。

「司波さんには悪いけど、ちょっと時間を貸してもらうだけなんだから」

「はん! そういうことは自活中にやれよ、ちゃんと時間取ってんだろ」

「そういうのは先に本人の意思を取らなきゃ。そんな常識も分かんないのー? 高校生なのに」

美月はともかく、レオとエリカの言い返しは完璧に煽ってる煽ってる。

 

「うるさい! 他のクラス、それもウィード如きが僕たちブルームに口出しするな!」

ついに切れた、男子生徒その1……じゃねえや森崎の奴が暴言を吐く。一応校則違反だが……取るのは難かしそうだな。

「同じ新入生じゃないですか。あなたたちが、今の時点でどれだけ優れていると言うんですか!」

お、美月がトドメを刺した。よぉっし、じゃあこれを決闘に持ち込むか、たまたま丁度良く会長さんも来たし。

 

「……どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやるよ」

「あらそう、是非とも教えてくださいな。ただし、ちょっと待ってね。会長が来たら、決闘しましょう?」

ここで私が参加。頭に血が昇っているらしく、あっさりと承諾した。

 

そっから30秒後、生徒会長と……風紀委員長も到着した。

「あなた達、何をしているのですか?」

「すみません、会長さん。ちょっと意見がすれ違ってしまったので。決闘をお願いしたいのですが」

役員二人がなんとも言えない雰囲気を醸し出す。まあ、仕方があるまい、彼女らにとっては唐突だから。だけども、やると言っている二人がやる気だから、ルール上否定もできないでしょう。

 

「私は、生徒会長の権限により、1年A組森崎駿と、1年E組箭泉玲の模擬戦を、正式な試合として認めます」

「生徒会長の宣言に基き、風紀委員長の権限によって、二人の試合が校則に乗っ取った正式な課外活動であると認める」

よしよし。ルール確認も終わる。まあ、あれだ。校則に書かれた通りの奴だ。

「すみません、迷惑を掛けてしまって、玲」

「なーに大丈夫。私が決闘やる気じゃなかったら、森崎が動く前にレオとエリカが動いて、役員二人が出てきて終わってたさ」

 

そのまま、戦闘状態に移行する。森崎の方も、既にCADを構えており、準備は万端。森崎家の持ち味はその魔法の展開速度。たしかクィックドロウとして有名だったはず。

「それでは、試合、開始!」

開始した瞬間に踏み込む。3mを進むのに1秒も要らない。加速術式込みなら特に。そのまま魔法展開しかけのCADを持つ森崎の腕を掴んで、CADを奪う。驚愕している間に締め技に入る。思った以上にあっさり決まって少々驚き。

 

「……そこまで!」

外野が煩い。不正をしたんじゃないか、とか。

「いやいや……見物人の皆様。二科生の私が会長に風紀委員長という名立たる魔法師の前で不正な魔法の準備なんてできるわけないじゃないですか」

そこで目覚めた森崎共々阿呆な台詞が続く。

「最初っから抱き込んでたんじゃないのか?」

「隠れてこっそり発動しようとしたんだろ!」

 

……やばい、笑いが抑えられない。いやまずい、いやうん。ここで笑ったら達也に深雪、レオにエリカに美月にも変な人を見る目で見られる。

「何がおかしい!」

「……あ、もしかして私、笑ってた?」

「うん、かなりがっつりと」

「あー、そりゃマズったわ。まあでも、問題無いよね、一科生の皆様。だって貴方達被虐趣味の塊なんだからさー? ねえ」

 

「ちょっと待て、どうしてそうなる?」

論理の飛躍を感じたらしく、風紀委員長渡辺摩利が割り込みを掛ける。

「まず抱き込み発言に関しては……会長さんに委員長さんに対する宣戦布告だから置いとくとしてもさ。まずね、もーしその二人にバレないように魔法を準備して私が発動したんだとしたらさ……」

そこで発言を区切ってタメを作る。達也が若干苦笑いをして、エリカとレオは既に面白がる顔に切り替えている。

 

「私、とんでもなく隠蔽が上手ってことになるよね、一科三年トップを欺けるようなさ。そんな化け物染みた存在を二科生に認めちゃって、貴方達のプライドは大丈夫かい?」

私の言いたいことを理解したらしく、じわじわと顔が赤くなって行く取り巻きの囃し立てた一科生さん。だけど言い返す言葉も無いらしく三々五々に散っていった。

とはいえ、騒ぎを起したのは事実だから、あきらめてお叱りを受けるつもりだったけど、そこで司波兄妹のファインプレーが光る。

 

「すみません、悪ふざけがすぎました」

「悪ふざけ、か? 決闘まで話が進んでおいて」

「最初は後学の為に森崎一族のクイックドロウを見せて貰おうという話だったのですが、妙な抉れ方をしてしまって」

「では、決闘の直後に、1-Aの生徒が攻勢魔法の用意をしていたのは?」

達也が適当にぺらぺらとそれっぽい出来事を供述していく。別に嘘は言っていないのがタチの悪いところ。言い方はかなり違うけど事実ではあるんだよね、決闘のくだりは10割私が原因だけど。

 

「驚いたんでしょう、玲の動きは凄まじかったですから。それに、発動しようとしていたのは失明もしない程度の目眩しでしたし」

……おう。まじか、達也は起動式が読める、と。なんていうかぶっとんでるわ。推定高い身体能力と格闘技術、起動式から魔法を判別できる能力、すごく多い想子。術式解体を打ってるだけで役割が持てる超高スペ戦力じゃん。

「ほう、君は展開された起動式を読むことができるらしいな」

「ええ、分析は得意ですので」

適当に誤魔化す達也。まあ、常識を返す様な事ができる人の共通技能みたいなもんだしね、誤魔化し。

 

「摩利、もう良いじゃない。達也君も、ほんとうにただの見学だったのよね?」

七草会長が委員長を止める。私と達也に貸し一と言いたげな視線を寄越してから、言葉を続ける。魔法の発動には規則があるから、授業で説明するまでは避けた方が吉、という話だった。

「会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことの無い様に」

出来たら、ね。

 

そうして委員長が去っていこうとしたが、去る前に達也に名前を聞いていた。

「1-Eの司波達也です」

「そうか、おぼえておこう」

私の名前は模擬戦宣言の時に触れたから聞かないわけね。なんか目を付けられたっぽい。

 

#8

「借りだなんて思わないからな」

「安心しな、私もそんなこと思ってないから」

「そうだぞ。決め手は俺達の言い訳じゃなくて深雪の誠意だしな」

「言えてる」

若干ぴくっとした気がするが、気にはしない。

 

「僕はお前を認めないぞ、箭泉玲」

「いや知らんわ。誰が誰と関わるか、それは本人にこそ決定権があるさ。良いも悪いもないよ」

いわゆる捨て台詞の類で答えは期待してないんだろうけど。やっぱり阿呆みたいに意識してるらしく、私の一言に肩を震わしていた。ただまあ、良い加減疲れたし、さっさと帰りますか。

 

 

 

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