鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す――   作:silika

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第四話 クラス分け-参

#9

そんなわけで帰り道なのだけど、少々面倒な……というか微妙な空気を纏っていた。私、司波兄妹、レオエリカ、美月はまあ分かる。だがしかし、さらに、1-Aの光井ほのかと、風紀委員長に睨まれた時に彼女を支えていた北山雫。まあ、第一声が謝罪だったのもちょっと笑えるけどねえ。

「じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整しているのは達也さんなんですか?」

「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」

 

得意気に深雪がほのかに答える。そして、達也はかなりのレベルのCAD調整能力を持っているらしい。この優秀な妹は、良くも悪くも、兄に対して虚偽に当たる様なお世辞が使わないから。

「少しアレンジしてるだけなんだけどね、深雪は処理能力が高いから、メンテに時間が掛からない」

「それにしたって、デバイスのOSを理解できるだけのスキルが必要ですよね」

「基礎システムにアクセスできるようなスキルもな」

達也の弁解は美月とレオの発言によってかき消される。が、私には気になることがある。

 

「……あのさぁ。CADって自分で面倒見るもんじゃないの?」

変なものを見る目で見られる。なんてこったい。

「いやいやいや、それは無い」

「うん。普通はプロに見てもらうもの。ウチじゃ雇ってる」

加えての総スカン。かなり異常な発想なのか……

「だって私の知り合い大体自分でできるしやってるタイプだったし」

 

微妙な空気を察したのか、エリカが微妙に矛先を変える。

「じゃあさ、達也くんに玲、私のホウキちょっと見てくれない?」

エリカのCADはその警棒のストラップ、すなわち伸縮自在な武装一体型CAD。つまり。

「無理。そんな特殊な形態のCADをいじる自信はないよ」

「同じく。流石に今日明日じゃ無理」

「やっぱり分かるんだ、これがホウキだって」

柄の長さに短縮された警棒をくるくる回すエリカ。

 

「え、その警棒、デバイスなの?」

美月がさっくりとエリカの思惑通りの答えを返す。エリカが満足そうに頷く。まあ、全員に気付かれてたら普通に悲しいよねぇ……。

「あー? それだと強度はどうすんだ? 物理的な伸縮ギミックだと中空洞だろ、脆くねえか?」

レオが向くのそっち側……ってか気にするのそこかよ。まあでも、タネは簡単な気もするけどね……エリカ、明らかに剣術得意そうだし。

 

「大丈夫よ、刻印型の術式で強度を上げてるから、硬化魔法、得意なんでしょ?」

「刻印型ってーと、アレか。術式を紋様にして、感応性の合金に刻み、サイオンを注入して発動する。 そんなモン使ってたらすぐガス欠になるだろ、そもそも刻印型自体燃費が悪過ぎってんで殆どすたれた技術のハズだぜ」

「お、流石に得意分野。でもまだ不足ね。実のところ強度が必要なのって振り出しと打ち込みの瞬間だけだし、そこを掴まえてサイオンを流せば充分よ。ようは兜割り……ってみんなどうしたの?」

 

呆れと感心の混ざった目で見られてたじろぐエリカ。深雪が代表して追い打ちを掛ける。

「兜割りはそれこそ奥義に分類されると思うのだけど……。単純にサイオン量が多いよりもっと凄いわよ」

単なる事実の指摘ではあったが、エリカの動揺は収まらないどころが増していた。

「玲ちゃんも達也さんも深雪さんも凄い人だったけど、エリカちゃんも凄い人だったのね……。ウチの高校は普通の人の方が珍しいのかな」

「そもそも、普通の人は居ないと思う」

だけど、美月のボケた発言と、雫の痛烈な返しで、なんかよくわからない妙な空気は雲散霧消した。

 

#10

一高生が使う駅の名前は「第一高校前」、駅から学校までは一直線。なにが言いたいかと言うと、登校中に友達と会う、という事象は他所と比較してかなり起き易くなっているということ。にしたって、コレはないと思うけど。

「玲、会長と知り合いだったの?」

「うんにゃ、入学式が初めてのハズ。むしろ達也は?」

エリカのキラーパスを達也に回す。

 

「一昨日が初対面のハズ……なんだけどなぁ」

そうは見えないと美月とレオ。まあ、仕方がないね。呼び掛けながら走ってきてる訳だし。

「……深雪を勧誘に来てるんじゃないのか?」

「お兄様と玲を呼んでるように聞こえますけど」

「だよねえ……」

 

最早いつもの、と評しても許されると思う達也、深雪、エリカ、レオ、美月のメンバー、ここまでは良い。だが、後ろから掛かってきたあざとさ満点の声、これは無いと思う。恥ずかしくてこんな台詞は言えんよ。

「達也君、玲さん、オハヨー、深雪さんもおはようございます」

挨拶の丁寧さが全然違う。ここまで露骨で良いのか生徒会長兼十師族。…………まあ、良いからやってるんだろうなー。

「お一人ですか、会長」

「うん、朝は待ち合わせはしないんだよ」

ああもう、引っついてくるのね……なら利用すること考えた方が建設的か、やっぱり……いやそれは最初っからそうか。態々好いてくれる人を邪険にする必要も無し。

「深雪さんと少しお話ししたいこともあるし……ご一緒しても?」

 

「良いですが……お話とは生徒会のことですか?」

深雪がほいほい踏み込んでいく、まあ仕方があるまいよ。お兄様との時間を邪魔する無礼者、が正直な感想だろうしね。

「ええ、一度ゆっくりお話ししたいと思っていて。お昼はどうする予定かしら?」

「食堂で食べる予定ですが……」

「達也君とは一緒に?」

「そうしたいのはやまやまですが……」

「たしかに、妙なことを気にする生徒も多いですものね」

 

生徒会長がそれを言うのか、という雰囲気は若干あるが、まことにその通りである。

「じゃあ生徒会室で一緒に食べない? ランチボックスなら自配機があるし」

呆れた話である。ダイニングサーバーが生徒会室にあるってことは残業山盛りじゃん、マジで何をしてるんかな……。

「生徒会室なら、達也君や玲さんが一緒でも構いませんし」

私深雪からの好感度はそんな高くないと思うけどなぁ……。一昨日が初対面だし。

 

「問題ならあるでしょう……。副会長と揉め事なんて嫌ですよ、俺は」

副会長……ああ、昨日の男子生徒。名前は服部刑部……だっけか。

「はんぞーくんのことなら気にしなくても大丈夫、お昼は居ないし」

気持ちは分かるけど、渾名それで行くのかぁ……やっぱりこの先輩、強いぞ。

「何だったら皆さんで来ていただいても結構ですよ」

「あたしたちは遠慮させて貰います。折角ですが」

 

なんかエリカが嫌いな人でも居るのかな、妙に尖ってるし。まあ、気にする程のことでも無いような気はするけれど。

「そうですか。玲さんは来てくれますよね」

「勿論。おもしろそうですし」

なんか昨日からホントに良く引かれている気がする。マジで酷いと思うわ……。私そんな妙なことは言ってないでしょうに。ただ単に、学校に遊びに来てるだけなんだからさ……。

 




感想・質問等お待ちしております。次回は生徒会での一幕の予定です
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