鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す――   作:silika

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第五話 生徒会

#11

お昼、生徒会室に遊びに行く時間である。野暮用が入ったので、そっちを潰してから生徒会室に入ったもんだから、少々出遅れることになった。

「失礼しまーす。……ああ、深雪と達也は先に来てたのね」

「あの……玲さん? その左手に引き摺っているのは……?」

「魔法不適切利用者……ですかね? ちょっとお昼に来るのが遅くなった原因です」

 

古式なラブレターで呼び出されたと思ったら、まさかの決闘申し込み。ただし、正式な承認はなく、一方的に言われて私の承諾もなかったっていう。

「とりあえず脳震盪で気絶させてあるので、あとで事情聴取お願いします。屋上を映すカメラに一部始終映ってると思いますんで」

状況が状況だけに呆れた目でみられる私。仕方無いじゃん、このあと生徒会室寄る事考えたら態々通報するの面倒なんだもん。

 

「……ま、まあ玲さんも席に座って」

というわけで、私も持参の弁当を広げる。うん、おいしそう。

「随分と可愛らしいお弁当ですね」

「そうでしょう? 作って貰ったんです」

お弁当を作ってくれたのはリー。正しくはユリーカ・ローレライ、だからつづめてリー。とっても可愛くて優しくて美人でかっこよい、私の一番大事な人である。というか、リーに手を出されたら、ガチでキレる自信がある。

「よっぽど作ってくれた方が好きなんですね」

 

おっと、幸せオーラが沢山出ていたらしい。あんまり人に見せるもんでは無いよね、うん。

「では改めまして……深雪さん、私たちは生徒会にあなたが入ってくれることを希望します。受けてくださいますか?」

「会長、貴女は兄の入試の成績を知っていますか?」

「ええ、勿論。正直、私も解答を見せてもらった時、自信を無くしかけました」

「成績優秀者、有能な人材を入れるなら、私よりも兄の方が優れていると思います」

 

「ええ。確かにその指摘は正しいわ。そして、それなら私はまず、玲さんにこの話を持っていったでしょう。一年生で最も成績優秀ですから」

おっとここで私に飛び火するか。でもまあ、それは不可能だよね。

「生徒会権限に対する数少ない制限の一つが、生徒会役員を一科生からしか選べないこと、でしたよね?」

「その通りです。これは規則ですので、改訂には生徒総会で三分の二以上の賛成が必要ですが、一科と二科が同数の現在では、ほぼ不可能と言っても差し支えないでしょう」

 

会計の市原先輩が残念そうに言う。やっぱし妙な規則だよね、コレ。

「申し分けありませんでした」

「では、深雪さんには、今後の生徒会で、書記として加わっていただいてよろしいですか?

「はい、精一杯務めさせていただきますので、どうぞ宜しくお願い致します」

これでまあ、話は終わりかと思われたのだけども。

 

「まだ時間はあるな……。風紀委員の生徒会選任枠のうち、前年度卒業生の二枠が埋まっていない」

「それについては、人選中だと言ってるじゃない。摩利、そんなに急かさないでよ」

真由美先輩が摩利先輩を嗜めるが、それには摩利が無視ぶっこいて話を続ける。

「生徒会の縛りは、生徒会長以外の役員は一科から、だな?」

「そうね」

「つまり、副会長、会計、書記だけだよな? 縛られてるの」

続けて真由美が首肯する。摩利先輩は悪い笑みを浮べると。

 

「つまり、風紀委員には二科の生徒を選んでも構わない訳だな?」

その発言に、真由美、市原先輩、あずさ先輩が驚愕の表情を浮べる。突拍子も無いアイデアらしい。割と見た目通りな、悪巧みの好きな人らしい。

「ナイスよ、摩利。ああもう、どうして自分じゃ思いつかなかったのかしら! 摩利、私は風紀委員に、1-Eの司波達也と箭泉玲を推薦します」

「ちょっと待ってください! 俺の意思はどうなるんです? 大体風紀委員が何をする仕事か説明を受けてないのですが」

「妹さんにも、具体的な説明は何一つしていませんが」

達也の決死の抵抗も虚しく、市原先輩に出鼻を挫かれ、深雪に追い打ちを掛けられる。

 

「つまり、実社会で言う警察力ですよね? 喧嘩を力で止めさせる」

「そうだな。魔法は使用前に止めるのが望ましいが」

「あの、俺実技が苦手だから二科なのですが」

まあ、それはそうなんだろうけどね。迂闊だよ達也、昨日起動式を読み取れることを知られた時点で負けてた。

「構わんよ、力勝負なら私が居る。……っと時間だな、続きは放課後にしようか」

そんなわけでお昼はおひらきになった。

 

#12

一時期、学校不要論が流行った事がある。ネットが使えるなら、態々学校に人を集めて授業する必要もないだろう、それは資源の無駄だと。だけどそれは流行りにならなかった。なぜなら、学校とは別に勉強をするための場所ではなく、共同生活を送るための場所だからだ。他の人と一緒に過ごす、というのはそれはそれで難かしいことであるから、それを学ぶ場として打ってつけっと。

あとは、実習が圧倒的にやりやすいってポイントもあるが。

 

私らも、そんな実習授業を正にやっていた。

「っくっそ……。加速移動減速を6セット計18工程の魔法式ともなると発動が遅い……」

さっきまでホイホイ高速で魔法使ってたろって? 私工程増えると致命的に遅くなるから……。自分用にがっつりチューンナップしてやっと12、3工程使える程度……。

 

本日の課題は、魔法を使って台車を3往復させること。ようするに、学校の魔法の授業用の端末のガイダンスなわけだ。先生は居ないので、履修の目安は課題の提出、すなわち台車3往復をさせることである。私は一応これで終わりなわけだけど……。タイム取ってないからはっきりとは分からんけど、私まず速度はビリだろうな……勢いもあんまりよくないし。

 

「玲、生徒会室の居心地はどうだった?」

エリカが聞いてくる。レオと美月も興味津々と言った風情。

「なんとも。深雪は生徒会に入るのが決定。私と達也に風紀委員になれ、だとさ」

「いきなりなんなんだろうな、あれは」

達也とエリカは首をかしげる。レオも突然に感じてるらしい。

 

「でも凄いじゃないですか、生徒会から勧誘を受けるなんて」

他のクラスメイトが少々ざわめいているのもそういうことだろう。

「そうか? 多分に妹のオマケだが」

達也の頑固な態度にエリカの苦笑が突き刺さる。

「で、どんな仕事内容なの?」

「騒ぎの物理的仲裁とか」

 

一気に同情の視線が増える。まあ実際面倒そうな仕事だしね。約1名、別方向に思考が飛んで不機嫌になっている奴も居るけど。

「……全く、勝手なんだから」

なんとなーく、誰の事を言っているか分かる気はするけども。敢えては触れない。そして達也に取っては少々嫌な方向に話が進んでいる。まあ、一科生にいきなりしゃしゃり出てこられるより、仲間に注意される方が許しやすいだろうしね。

 

妬み妬みもなく、頑張ってねー、と応援される。有り難いかぎりだけど、なんか妙な表情をしている奴がいる。まあ、本意ではないだろうし、仕方無い。どうせ短い学校生活なんだから、楽しまなきゃ損だと思うけどなぁ。

 

というわけで生徒会室。なんとなく流れで私が扉を開ける。達也的には既に達也のIDも扉に登録されているのは不本意だろうけど、気にしてもねえ。

「失礼します」

私と達也に敵意が飛ぶ、3,7くらいの比率か。深雪が入った瞬間にそっちに意識が向いて敵意は薄れる。発信源は昼は空いていた服部副会長の席。

 

「よ、来たな」

「いらっしゃい、深雪さん、玲さん。達也君もご苦労さま」

完全身内扱いなマリ先輩に扱いの差が明らかな真由美。そして真由美はあずさに、深雪の世話を投げる。如何にも後輩使いの荒そうな先輩である。

 

「じゃあ、あたしらも移動しようか」

「どちらへ?」

「消防法に喧嘩売った階段から、風紀委員会本部に、な。この真下だよ」

「……だれが考えたんです、マリ先輩」

「知らん。自分で調べたらどうだ、玲」

お、砕けた呼び方が許された。じゃあそれで通そう。

 

「渡辺先輩、お待ち下さい」

「なんだ、服部刑部少丞範蔵副会長」

 




なんとなく気付いてるでしょうが、風紀委員の枠が拡大されています。まあ、世界線が違う、パラレル世界とでも解釈してください
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