鬼才を誇る劣等生――イレギュラーは舞台を返す―― 作:silika
#17
「なぜ、お前がここにいる」
「何故もなにも、風紀委員だからだけど?」
再会第一声がそれで良いのか、森崎。完全に言動パターンがかませ犬だぞ……。しかも試合で完全に叩きのめされた相手に対してさ。
「やかましいぞ、新入り!」
マリ先輩の一喝であっさり押し黙る。まあ、自業自得だから突っ込まない。そのまま、席につかされていた。マリ先輩の表情は少々罪悪感の滲んだモノで、立場に物言わせるのはあまり好きではない。腰を降ろしたのは私の前の席、面倒な気はするけど、気にするのも阿呆らしいし、放置一択で。
そのまま、小説片手に待っていると、2,3年生がばらばらとやってきて、室内の人数が15人になったところで、先輩が立ち上がる。
「そのままで聞いてくれ、今年もあの莫迦騒ぎの一週間がやってきた。風紀委員会においては、新年度最初の山場になる。この中には、去年、自分から大騒ぎした阿呆も、騒ぎを静めようとしてさらに大きくした莫迦もいるが、今年こそは処分者を出さないように動いて欲しい。
いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はしてくれるなよ?」
その台詞に、首を竦めるのが半数以上……いいのか、それで。風紀委員は厄介者の集まりとか言われてもオカシくないんじゃ……。
「幸いにして、今年は補充が間に合った。紹介しよう、立て」
打ち合わせされて無いんだけどなぁ……。まあ良っか、無難に行こう、無難にね。
っていうか、対極的だなぁ……。生徒会推薦側の私と達也に比べて、教員推薦枠の森崎他1名、無駄に緊張してるじゃん……。そんなに緊張すること無いだろうにさ、命狙われた訳でもなし、単なる高校の話だし。
「1-Aの森崎駿、1-Dの利賀慶太、1-Eの司波達也と箭泉玲だ。今日から早速パトロールに加わって貰う」
ざわめいたのは……私らのクラスの所為か……。流石に取締り総本山らしく、紋無しの発言は聞こえなかったが……。
「ウィード……?」
をいをい……風紀委員がして良い発言じゃないねえ……。マリ先輩は頭を抱えながら注意を発しようとしているようだけど、ここは私が盤面を取る。
「知ってますか? 早咲きの桜はその分早く散るんですよ、ブルーム先輩?」
「まあ、確かに、19か20で死んでしまうなら今咲かないと咲く時無いですしね……、成長出来ないって認めてしまうんですね、ブルーム先輩。そんな向上心の無い人がこの学校に居たなんて……私吃驚しました」
適当に煽ってみる、思い付きの台詞が言えて少し幸せ。あ、マリ先輩の頭痛が悪化しているよう、御苦労様です。
「おまっ……巫山戯るな……!」
「良いんですかブルーム先輩、ここ、それを取締る場所ですよ?」
「その辺にしとけ、玲。それからお前も、今処分しようか……?」
「で、そいつら役に立つんですか?」
マリ先輩に言われたので引き下がる。いやー、正直舌戦なら負ける気がせんわ、何せ私の方にルールは分がありトップがあれだし。
「ああ、心配するな。箭泉、司波の腕前は私が確認している。森崎も資料は見せて貰った。それでも心配なら、お前が森崎に付いてやれ」
間違っても私らを心配しない。仕方無いね、戦力的にはこっちのが余っ程上等だから。
「他に何か言いたい奴は居るか? ……居ないなら、レコーダーを持って行動に移れ。1年4人には私から説明しておく、他の者は直ちに出動」
上級生の皆様が踵を揃えて立ち上がり、握り込んだ右手で左胸を叩く。曰く風紀委員式敬礼との事だったけど、私の連想としては軍だな。どっかの軍隊がよく似た敬礼を採用していた気がする。私が普通の学校生活を送れる日は来るんだろうか。
レコーダーの操作と、CADの携帯に付いて説明を受ける。
「質問があります」
「許可する」
「CADは備品を使用しても良いでしょうか?」
達也が質問しているが……あれ? そう言えば確認してなかったわ、普通に使える前提で考えてたんだけど。
「構わないが、理由は? 釈迦に説法かもしれんが、旧式だぞ?」
「それは無いですよ、マリ先輩。アレは、最新型の一種です。非接触スイッチのあるCADの中では最高ですし、速度の遅さは、燃費悪化に目を潰ればどうとでもなります。ちゃんと使える子ですし、売ったらかなりの高値が付きますよ」
あんまりにあんまりなマリ先輩の発言に思わず突っ込んでしまう。っていうか、あずさ先輩は知ってそうだけど。
「あいつは怖がって降りてこない。……にしてもそうか、そんなモノを我々はガラクタ扱いしていた訳だな、片付けは偉大だ」
そんな訳で達也は二個持っていくそうだ。発想がまる被りでウケる、笑える、草生える。森崎の視線は気にしない。ただ敢えて言うなら、出来る奴は出来る訳で……2個操作出来ない奴による負け犬の遠吠えとしか言えない。
「ああ、言い忘れてましたけど、共用と名札の付けた箱に入れた奴、個人調整しないでも使えるように調整してあります。魔法リストはそっちの端末に入れてあるので、一応確認しておいてください」
「は? いやちょと待て……氷炎地獄!?」
お、一番のキワモノを見つけたらしい。達也もびっくりしてるし……ちょっと笑える。あの達也もこれくらいすれば驚くのか。ただ、個人調整をしてないCADでインフェルノ使える奴はそんなに多くないから、あまり意味は無いけど。
というわけで巡回に向かう。
#18
兎に角、行く宛のあるわけでも無いので、適当に回る。改めて思うけど、学校の敷地って広いもんだね。大きな校舎と、2号校舎、さらに体育館が4つ、プールが二つ……。普通の学校という奴を知っているわけではないけど、ここがとても大きいのは分かる。なんというか、軍の基地みたいだな、と思う。
そんなわけで、私が騒ぎに行きあたったのは、グラウンド。なんかヒートアップしている二集団が居る。
「ちょっと、あんたら後半でしょうが!」
「は? どうせ魔法使ってない連中活躍してねーんだから関係無いだろ」
「年がら年中魔法頼りの連中がよくも大口叩くわね!」
いや喧しい。規定に沿うならまだギリセーフだけど、乱闘になったら割り込むか。
っていうか、漏れ聞こえてくる発言が、積年の恨みとか、二週間前の云々とか、なんか部活が、っていうよりは、個人の恨みの総集編のような……。は、いや、6股? おう、男女問わずか……凄いな……今のご時世日本にそれする奴居るんだ……。
まあ、それはともかく、槍投げの槍やら砲丸投げの弾を明かに武装として持ち出してきているので仲裁に入る。
「そこまでにしてください! 争いは平和的に行いましょう、じゃないとしょっぴきます」
メガホン片手に、若干音が割れるくらいの音量で怒鳴る。ちゃぁんと風紀委員の腕章が見えるように掲げながら。驚いたらしく、投げる準備をしてあったらしい槍と砲丸が飛んでくる。きっちり加速と移動の魔法を使ってある。が、狙いが雑なため躱す必要すらない。硬化魔法を使って相対位置を固定してから、それによって掛かった前向きの力をベクトル反転でもって慣性と相殺させ、槍、砲丸を地に落す。
あきらかに視線は、二科生如きが出てくんな、というものだけど。陸部、半数二科生だよなぁ……。
「なんだお前」
「風紀委員です。今のは見逃がしますが、次からは取締ります」
吃驚したようではあるが、私が無視して話を続けたことで、自分達のやりかけた事に気付いたらしく、大人しく、道具を手放す。みんな理性的でとても助かった。
#18
陸上部の方は、警告だけで止まったから良かったけど……こっちは駄目だな。
「バスケットボールは砲丸じゃないと思うのですが? 魔法の不正使用に付き、そこの3名も検挙します」
現在第三体育館、バスケットボールやソフトボールあたりの競技が主にやられる体育館である。事の発端はなにだか知らないけど、私が割り込んだ時点で既に殴り合いの喧嘩になっていた。
喧嘩しているのはマジック・バスケット部とバスケットボール部。前者は、相手やボールに掛ける以外の魔法が許可された魔法競技、後者は魔法の使用が原則禁止の通常競技。MB部の方もボールには魔法を掛けないハズだけど、私の方には、まるで砲丸の様に、加速魔法が掛けられたボールが飛んでくる。
ボールは避け、殴り掛かってきた奴は、脚を引っ掛け投げ技を多用する事で同士討ちに持ち込む。
「はい、大人しく検挙されてください」
魔法不正利用者全員に検挙バッジ--この人は風紀委員のお世話になってるけど、まだ罪状を清算していない状態を意味するバッジ--を付け終わる頃には、体育館は死屍累々になっていた。
ギャラリーをやっていた一科生の皆様方は、これをどう見るべきか悩んでいる様子。まあ、阿呆な行動をしなきゃノーカン。
それよりやばいのは、赤と青で縁取られたリストバンドをしている阿呆が居る事……エガリテの構成員であることを大っぴらにするのはあかんでしょ。
まあでも、校則違反ではない、というか、風紀委員の管轄じゃない、というか、あまり表に出てない情報だから見なかったことにしておこう、うんそれが良い。
玲は、自信過剰な相手、人を無闇に侮る相手を煽ってマウント取ってぼっこぼこにするのが大好きです。まあ、性格は悪いですね