忘れてたわけじゃないんだよ??
ほら、熱って移るじゃん?
今ね、アニメより漫画に熱入っててさ。ハニレモと暁のヨナが再熱したし、魔入間とかチェンソーマンとか。
あとホラー映画にもハマって来てもう大変。oldでしょ、SAWでしょ、グリーンインフェルノでしょ、死霊館。哭婢も見たいんだけど、誰か感想教えて。
あ、グリーンインフェルノは注意してね。グロ映画代表格だから。
と言い訳したところでボチボチ再開。(「・ω・)「ホイ
怒涛の入学初日を終えて、いざ二日目。いつも通りに支度をして、家から登校した。
学校説明にもあったが、ヒーロー科は午前が普通授業で必須科目を受ける。学生だから当然だ。午後にはヒーロー科限定科目を受ける。週二日の三・四限は実習か演習に当てられるとも書いていた。
雄英は国立ながらに学校週六日制を導入していて、主な休日は日曜だけ。土曜日は四限までで、ヒーロー科は六限まである。ちなみにヒーロー科、普段は七限まである。ハード。めっちゃくちゃハード。全力で青春を潰しにかかっている。相澤先生いわく、放課後にマックで談笑すらできない過酷さ。もうなんか、プルスウルトラが明るく見えない。さらに向こうへ!!の前に(青春潰して)という言葉が入るくらいには暗く見える。
そんなことを思いつつ、何やかんやで昼休み。響香とは別れて、私は図書室へ向かった。
私は自分の体を少々イジっているので睡眠も食事も必要ないし、なんなら排泄もしない。前者二つは全くしないわけでもないけど。でも睡眠はごくたまにだし、食事に至っては完全に娯楽。舌鼓を打つためだったり、食堂でみんなと話す団欒のためだったり。
つまりだ。昼休みに昼食を摂る必要がない。学食はランチラッシュというヒーローのご飯を安価で食べることができると聞いたけど、タダより安いもんなんて世の中にはないのである。それに、たまに食べるから美味しいのであって毎日学食は飽きる。絶対。
閑話休題。
さすが雄英。図書室もかなり広かった。色々な本を置いていたし、利用者のマナーも良いから落ち着いて読める。借りる本を選んでいると、後ろから見知った人間が近づいてきた。
「お昼はいいの?
「はい。智慧さんはよろしいのですか?」
「必要ないからね」
この子はまだ社員ではないけど、ちゃんとしたエストレーザの一員だ。感情を表に出すことはほとんどない彼女だが、紫と蒼を混ぜたような不思議な瞳の色と長い銀髪がとても美しい。それに感情を表に出さないと言っても、表情が変わらないだけで見ていれば喜怒哀楽は割と分かる。昨日の夕飯の時に入学式に私が出なかったことを心配そうにしていた時も、友達ができたと社員に嬉しそうに話していた時も、表情ではなくオーラ的な何かが代弁していた。私の部下がこんなに可愛い。
「普通科の授業はどうだった?」
「普通ですよ。ハイレベルな進学校と同じです。智慧さ・・・んはどうでしたか?」
うん、今のは少し危なかったね。
イトメもエストレーザだからか、気づいたら様付けで私を呼んでいた。学校ではやめて欲しいと頼んだら二つ返事で了承を得られたが、癖が抜けずにいるらしい。申し訳ないけどもう少し頑張って欲しい。変な勘違いされるのは嫌だ。
それにしてもイトメすごいな。雄英高校はかなりレベルの高い進学校だ。ヒーロー科が有名なだけで、普通の授業自体がかなりレベルが高い。それなのにハイレベルな
「私は一年生の教科書類はOKかな。実技は暗記じゃないから」
「さすがです。ということは、図書室にいらしたのは勉強目的ではなく・・・」
「そ、暇つぶしの本探し。イトメのオススメある?」
私が本を暇つぶしに選んだのは割と最近、中学に上がってからだ。イトメは私よりも先に本を趣味にしていたから、私よりも詳しい。だからこうしてオススメを聞いているのだ。
本の内容を教科書みたく覚えないのは単純に面白みが半減するからで、本のページをめくるのも何気に結構好きだったりする。もはや暇つぶしは趣味として私の生活の一部になっているわけだ。そしてそんな私の趣味である読書は、学校で借りた本を学校で読むことに限定される。
何故学校に絞るのか。これには深いわけがある。
忘れもしないあの中一の春。読書を暇つぶしにしようと一度本屋で本を買ったら、それを見たエストレーザの者に一時本をプレゼントされまくったのだ。絵本から小説にマンガまで色々貰ったが、量多すぎて読むのが大変で大変で。普通に嬉しかったが量が量。毎回プレゼントされては困るし、せっかくの給料を私の暇つぶしに使われるのは忍びない。地区の図書館から借りれば図書館に本か金を寄付しようとする始末。しかもわざわざ海外から取り寄せたり、図書館に無い本を休み返上で探したり、明らかにやりすぎで私が白目になりそうなことばかりする。何でそうなる・・・と何度頭を抱えたことか。さすがに厳重に注意させてもらった。
結果的に、貰った本を急いで読んだあとからは学校で借りることにしたのだ。しかし、中学の図書室では限界がある。しまいには地域の成り立ちや年表一覧なんかまで借りて読み始めた。いや他に読む本がなかったんだから仕方ないでしょ。
雄英高校はさすがにそんじょそこらの中学とは比にならないくらいに本がある。読んだことない本がたくさんあると、少し楽しみにしていたのだ。実は雄英を選んだ密かな理由の一つだったりする。
イトメにオススメされた中から一つ選んで借り、図書室でイトメと別れた。思ったよりも本の数が多かったのもあるが、イトメが嬉々として紹介してくれるのが可愛かったのもある。というか七割くらいはそれ。普通に面白そうだったし、可愛かった。私の部下がこんなに可愛い(二回目)。
教室に戻ったあとは残りの時間お楽しみタイム。席について本を読みながら、午後のチャイムがなるのを待った。
「わーたーしーがー!!」
「来っ」
「普通にドアから来た!!!」
うるせぇよ。普通にドアから来たって叫びながら勢いよく入ってくるな。それは全く普通じゃない。
とまあ、辛口はひとまず置いといて。目の前にいるのは現在世間を騒がすNO.1ヒーロー、オールマイトだ。今年度より雄英で教鞭を執ることが話題を呼び、今はどこのニュースも目の前のウサギ触覚の筋肉ダルマでいっぱいなのだ。
ちなみに私、かなり辛口だが別に嫌いなわけじゃない。見た目が受けつけないだけで。だって、画風っていうか顔の彫り深すぎて怖いんだよこの人。普通そんなに顔に影つかないよ。相澤先生は顔怖いけど、この人の顔も私は怖い。ていうかこの人の方が怖い。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ!!」
ヒーロー基礎学は単位数もヒーロー科の中では一番多い課目でもある。ヒーローとして動く場面で一番目立つのはヴィランの捕縛だ。だから個性や体を使うのがヒーローの仕事として定着しつつある。そのための訓練だろう。
「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」
「戦闘・・・・・・」
「訓練・・・!」
もう不安しかない。前方で顔が不穏な輩が一人、顔が不安なやつ一人。特に前者、戦闘って言葉に口角上がるか普通。と思ったけど、割とワクワク顔多かった。やめてよみんな、こわいよみんな。
「そしてそいつに伴って・・・こちら!!!入学前に送ってもらった“個性”と“要望”に沿ってあつらえた・・・
「おおお!!!」
オールマイト先生が手元のリモコンのボタンを押すと、壁が動いて番号が書かれた箱がケースに入った状態で出てくる。自分の出席番号が書かれた箱に、自分のコスチュームが入っている仕組みなようだ。
金かかってんな、雄英。どこに金かけてんだよ。
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
「はーい!!」
グラウンド・βに着くと、半分くらいがもう着替えて来ていた。私、というか女子皆で移動した感じなので、女子が来たところでほとんど集まったのかな。
「始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」
「響香のコスチューム、ロックでかっこいいね」
「智慧のもかっこいいよ。けど、厚着してたしマフラー暑くない?」
「あぁ、私暑いとか寒いとかないんだよね。冬でも半袖短パン余裕だし」
「何それ、ちょっと羨ましい」
「良いじゃないか皆、カッコイイぜ!!」
画風違うアンタにゃ負けるよ。
それにしても、皆のコスチュームすごい。皆のコスチュームすごいヒーローっぽい感じするし、個性(性格の方)出ててカッコイイしカワイイ。自分で考えたんだよね皆。私なんか兄貴に考えてもらったのに。
私のコスチュームを作ったのはもちろんエストレーザだ。普通の白いシャツに黒いズボン、黒いジャケット風の防具に暗い色の紺?黒?のロングコート、それから白いっぽいマフラーの様なものとそれらに合う色のブーツみたいな靴。武器には刃の無い刀が鞘に入った状態で入っていた。
過度な装飾はないが、そこらにいる格好でもない。シンプルでとても動きやすいので、兄貴とエストレーザのサポート班と衣類班に感謝だ。袖や靴の履き口なんかにフサフサが着いてるのは、装飾を全くしないことに耐えられなかったからか、最初からそういうデザインなのか。何にせよ満足である。モフモフ好きだし。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
「いいや!もう二歩先に踏み込む!屋内での
考えてみれば、少なくともウチでのヴィラン捕縛は屋内と屋外だったら屋外の方が多い。しかし、解決レベルは屋内の方が圧倒的に高い。個性やサポートアイテムの制御とコントロールもそうだが、相手の手を読む力なんかも相当必要になってくるからだ。あくまでヒーローが行うのは捕縛で、大技で建物を壊したりヴィランを殺したりなんかは当然ダメ。ブッパでKO解決とは違うのである。
「監禁・軟禁・裏商売・・・このヒーロー飽和社会ゲフン、真に賢しいヴィランは
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知る為の実践さ!ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか・・・・・・・・・?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」
「このマントヤバくない?」
「んんん〜〜〜聖徳太子ィィ!!!」
もう許してやって皆。この人ヒーローのトップだけど、教職ついて最初の授業だから。あと爆豪に関しては話聞いてたのかお前。ブッ壊せばOKじゃないって言ってたでしょうが。
その後オールマイトは小さなカンペを出して、ヒーローの核兵器回収を想定した演習であることを説明した。設定が明らかに海の向こうの米国である。
「コンビ及び対戦相手は
ランダムか、なるほど。誰とでも仲良くやれってことだよなこれ。あったばかりでよく知らない人とペア組んで・・・ペア?ん?
確かこのクラス奇数だった気がするんだけど。
《解。A組の生徒数は21名、奇数です》
だよね。あまりはどうするんだろ。
くじを引くと、周りはアルファベットなのに私だけ何故か☆だった。これ明らかに私があまりだよね。ペアいないよね。
「ちなみに、このクラスは奇数だから一人
「はい、私です」
「龍魔少女!君の試合は最後だ。一通り試合が終わったあとで、一番余裕があったチームと対戦してもらう。ペアはもう一度対戦したい皆でくじだ。対戦する時の組み分けは、相手の立場が変わるようにして対戦してもらうぞ!」
「分かりました」
要するに相手の一試合目がヒーローだったらヴィラン、ヴィランだったらヒーローになるように相手の役を変更して対戦するってことだ。たぶん。言うこと別になしである。
しかし、気になるのは私とペアになるのは誰かということだ。あの小さいブドウ頭は絶対嫌なのだが。こればかりはくじ運。仕方ない。諦めろ私。
「さて、最初の対戦相手はこいつらだ!!」
二つの箱に両手を突っ込み、アルファベットが書かれたボールを掲げた。左手はA、右手はDと書かれている。
「Aコンビがヒーロー!!Dコンビがヴィランだ!!ヴィランチームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」
「智慧、モニターこっちだって。行こ」
「うん」
最初のA対D戦は、結果的にAのヒーロー側の勝利。とはいえ、派手に建物ブッ壊したり、核に向けてコンクリの破片うち飛ばしたりと色々やらかしたので、結局MVPはヴィラン側の飯田だったんだけど。
その後も着々と対戦は進み、ついに最後の私の番になった。
「今一番余裕があるのはBチームだな!Bチームにはヴィラン側になってもう一度対戦をしてもらうぞ!そして龍魔少女のペアはその他の皆で希望者のみでくじだ!やりたい人ー!!」
「「「「はい!!!」」」」
めちゃくちゃ手上がるじゃん。元気かよ。
小学校低学年の授業参観バリの挙手に少し引いた。
「おっしゃーー!」
くじで当たりを引いたのは赤髪の熱血の男子。名前は確か切島鋭児郎だったかな。たしか頭を使うよりも個性と拳でゴリ押しする戦闘スタイルだった。
ちなみにブドウ頭は歯ぎしりをしながら切島を睨んでた。執着エグイな。
「よろしくな龍魔!」
「こっちこそよろしくね切島」
移動しながらニコニコと親しみやすい笑顔で話しかけてくれた。明るく人が寄り付きやすい笑顔。ヒーロー向いてるよ、この笑顔。
「作戦どうしようか。多分だけど、私らが建物に入ったらあの氷来るよ」
「だよな。あ、そういやお前の個性何だ?言いたくなかったら別にいいんだけどよ」
「私?私の個性はね───」
No-side
「どうだ?」
「今入った。二手に分かれてる。だが足音の数が合わない。片方は二人・・・いや四足歩行の何かを連れてるな。個性か。二と一に分かれて進んできてる」
「・・・あとは下がってろ。また俺がやる」
轟は再び右の個性を使い、自分たちがいる階より下の階を一気に凍らせる。轟音と共に冷気が下の階を襲い、すべてを氷づけにした。
「あとはテープを巻いて「やってくれたね、轟」っ!!」
背後から聞こえた声に轟はすぐさま振り向き、右手をかざした。当然直ぐに個性を発動させるためである。
「障子!!」
「分かってる!!」
声の主は障子の後ろの智慧だった。窓に悠々と座って笑っている。ただしその笑みはひきつっているし、手に持つ刀は抜かれた状態でいつでも交戦できる姿勢を示していた。とても智慧に余裕があるようには見えなかった。
轟から見て障子と重なるように窓があり、そこに智慧がいたせいで氷の個性を発動することができなかった。直ぐに障子は避けたが、それに合わせて智慧も轟から隠れるように移動する。おかげで直線上の氷結攻撃はできず、ワンテンポ行動が遅れる。
智慧が一人で来たことを確認し、部屋にある入口や窓を全て氷で塞いだ。初手の氷を避けたのは智慧だけだと考えたからである。智慧はそれを見ても焦ることなく、今度は手に持つ刀で二人への攻撃を始めた。障子を挟んで轟を牽制する姿勢から、自分が二人の中間に立つことで轟の直線攻撃を牽制した状態で刀を振るい出したのだ。初めに障子の複製腕で増えた耳やその他の部位を全て刀で叩き、複製腕を封じた。そして背中を見せた隙を即座に攻撃しようとする轟の右腕を蹴り飛ばす。
「くっ」
「轟!」
氷を作りかけていた右に重心が片寄っていたせいで、蹴られた腕と一緒に体が後ろへ傾いた。智慧はついでとばかりにもう一度、今度は腹を蹴り飛ばす。それを見た障子は咄嗟に轟に向かって手を伸ばした。
「人の心配、してんなよ」
しかし、その腕は智慧に抱え込まれ、障子の勢いごと背負い投げをされてしまった。体格差は重力操作でカバーしたのでかなり軽々と投げられ、床に叩きつけられる。智慧は即座に障子の腕に確保テープを巻き付け、ついでに亜空間から氷を出して床に固定した。
「ぐっ」
「障子!」
「だから、さっ」
体制を整えた轟が向かってくるのを刀を投げつけて牽制する。
ここまでの一連の流れで轟は核兵器から離され、智慧が核兵器を背に庇う形になっていた。加えて、障子はもう智慧によって拘束され、行動不能である。
「人の心配してる場合?」
刀は轟の体の右側へ飛んできたので、咄嗟に体を捻りそれを回避する。智慧はその隙に轟との距離を一気に縮め、近接戦に持ち込んだ。不安定な体制をもう一度立て直すために距離を取ろうと、轟が後ろへ下がる。その時、氷で塞がれていた入口の氷が砕け散った。
「なっ」
「っしゃオラァ!!!」
「お待たせしました主様」
「待ってたよ切島、ソウセイ」
入ってきたのは切島とソウセイである。入口を塞いでいた氷を個性の硬化で破ってきたのだ。それは、氷で行動不能になっているとふんだ轟の判断は間違っていたことを意味している。
(クソっ・・・そういうことかよっ!)
それを見て動揺すると同時に、なぜ先に障子を拘束したのか轟は理解した。感知に長けた障子を先に行動不能にすることで、切島たちが向かっていることを悟らせないためだったのだ。だから真っ先に障子の複製腕を攻撃し、音を探らせないようにした。つまり、全て作戦通りということで、自分の行動は全て想定内だということ。
察した瞬間に、轟は後ろに両腕を固定した状態でうつ伏せに倒されて確保テープを巻かれた。切島は部屋に着いてから一目散に核兵器の回収へ向かっているので、轟が確保されたと同時に核兵器にも触れられた。
「「ヴィラン確保/核兵器回収ぅ」」
「「完了/完了だ!」」
切島は作戦を立てることに向いているとはとてもじゃないが思えない。そもそもこの作戦自体、轟たちを一人で相手にして確保すること前提だ。智慧は全てできると踏んだ上で
「ヒーローチーム・・・
戦闘訓練☆対B 結果☆勝利
智慧-side
『私?私の個性はね───“エネルギー”っていうんだ。自分が持つエネルギーを色んなものに変換できるの。火とか水とか、あっ浮いたりとかもできる。ゲームでいうMPみたいなのがある感じかな』
『すっげー個性だな。デメリットとかあんのか?』
『もちろんあるよ。持ってるエネルギーが一定ラインよりも減ったら何日か動けなくなるとか、他にも色々』
『難しい個性なんだな。ま、訓練でそんなことにはなんねぇだろ!勝とうな龍魔』
『もちろん。ね、作戦考えたんだけどさ───』
あれはもちろん嘘である。全部ではないけど嘘である。
それにしても上手くいったものだ。正直ここまで上手くいくとは思わなかった。二・三個くらいはズレが出るかと思ったのだが、不意打ち作戦は思った以上に効果的だったらしい。講評もあるし、とりあえずさっさと帰ろう。そこらじゅうにある氷は便利そうなので貰っとこうかな。
大賢者、氷全部回収してちょうだいな。
《了。建物内の氷を全て回収し保管します》
一瞬で氷が消え去り、元の綺麗な建物に戻った。もちろん障子を拘束していた氷も無くなったので、動けるようになったはずだ。
「ご苦労さまソウセイ。戻っていいよ」
「かしこまりました」
影にソウセイを戻し、私は切島たちとモニタールームに戻った。約一名にめちゃくちゃ睨まれたけど無視した。だって別に悪いことしてないし、訓練で勝っただけだし、私悪くないし。
私らの対戦の講評も流れで八百万が解説してくれて、オールマイトからも高評価を貰った。MVPも貰えた。素直に嬉しかった。
「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業・・・何か拍子抜けというか・・・」
言ってやるな。相澤先生だって私らのこと考えてくれてんだから。真っ当かどうかは別だけど。
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!!」
オールマイトはそう言って爆速で帰って行った。走っただけなのにものすごい風が出てるもの。脚力どうなってんだよ。
何はともあれ、ヒーロー基礎学はこれで終了。初めての戦闘ということもあり、皆の興奮はまだまだ収まらないみたいだ。めちゃくちゃ興奮気味に話し込んでいる。一部静かなのがいるけど、私には関係ないことである。勝手にしてください。
更衣室で着替えていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。振り返るとぷにっと頬に指が突き刺さった。後ろから来たのは知っていたが、まさかそんなお決まり事をしてくるとは思わなかった。
「んむ」
「おわっ、ほっぺやぁらかいね!私芦戸三奈!さっきの凄かったよー強いんだね!」
「ありがとう。私は龍魔智慧、よろしく」
「そうだ、ねーねー自己紹介タイムにしよーよ!私は葉隠透!見ての通り透明人間だよ!」
三奈が私に話しかけてきたことで、女子更衣室が完全に仲良しムードになった。それぞれ個性含めた自己紹介してってるし、私ももう一度言うべきだよなこれ。
「んじゃ改めて、私は龍魔智慧。個性は“エネルギー”。自分が持つエネルギーを色んなものに変えられるんだ。よろしくね」
「龍魔?・・・・あ、あの龍魔さん」
「何?百」
「百っ」
名前呼んで振り向いただけなのに、何かすごい衝撃受けてんだけど。え、もしかして呼び捨てダメだったのか。
「あ、ゴメン。呼び捨てヤだった?」
「いいえ!嬉しいですわ!これからも呼び捨てでお呼びください!」
「え、あ、うん、わかった」
めちゃくちゃお嬢様言葉だなこの子。もしかして、もしかしなくてもお金持ちの箱入りお嬢様か。呼び捨てで呼ばれるの初めてだったのかな。嬉しそうでよかったけど。
「それで?どうしたの百」
「は、はい。あのもしかしてですが、龍魔賀重さんの妹さんでは?」
「?そーだけど」
「やはりそうなのですね!」
また顔をキラキラさせ始めた百。両手握りしめて興奮気味なのがとてもカワイイが、こうなる要素あの兄貴にあっただろうか。
いや兄貴自体はいい物件だけど、モデルとかしてる訳でもないし。個性使用の免許持ってるからたまにヴィラン捕まえてるけど、ヒーローじゃないから名前公開されないし。ここまでキラキラされる要素ないと思うんだけど。
「なになに?智慧ちゃんのお兄さん有名人なの?」
「え、そうなの?」
「業界では有名も有名ですわ!龍魔賀重さんは、あのエストレーザの副社長ですもの!」
「「「「ええええええ!?!?」」」」
「そうだけど、え、副社長ってそんな有名になる?」
エストレーザが有力企業であるのは私が胸を張って保証しよう。色んな事業に手を出しているのもあるし、実績を積んできたのだから当然だ。
しかし、会社の代表格らが有名かと言えばそうでもないと思っていた。メディアに出るのは歌手やモデルや広告担当、本当にたまに総括とかで、目立つ役どころは限られてくるのだ。事務職に近い副社長が目立つとは思ってなかった。
「あ、あのエストレーザ!?」
「副社長!?智慧ちゃんって副社長の妹なの!?」
「す、凄い」
「何歳何歳?」
「七歳差だから、今年で二十三歳だね」
「「わかっ!?」」
その後質問攻めにされたのは言うまでもない。別に隠してなかったからいいんだけど、すごい勢いだった。
しまいには兄貴の写真も見せてしまって、めちゃくちゃ顔褒められてた。嬉しかったけど、兄貴が同級生にキャーキャー言われるのは不思議な気分だった。ていうかイケメンならA組にもいるのに。何か大人の色気?余裕?が違うらしい。分からなくはないけど、うん、複雑。
そんな心持ちのまま教室へみんなで戻った。
「ごめん、今回はパスさせて」
放課後にクラスの皆でヒーロー基礎学の反省会を行うことになった。せっかくなので私も参加したかったが、近々大事な用事があるのでその準備をしなくてはならない。
用事があるからと断ると、皆に残念な顔された。みんないい子ばかりだから、罪悪感すごい。次の機会があればその時は参加しよう。そう決意して、教室を後にした。
エストレーザ本社ビル、その会議室には幹部全員と社内の関係者、そして私が楕円の大きなテーブルを囲んで座っていた。定期的に行う定例会議のためである。
「──。で、よろしいでしょうか」
「私は問題ないと思います」
「俺もだ」
「右に同じ。智慧様はどう思われる?」
「私からも特にないかな。意見や質問が他になければ次に移るよ。・・・・・・・・・・・よし、次は──」
皆いつも丁寧に整理してから資料を持ってきてくれるから本当に助かってる。口頭での説明も要点を捉えて簡潔で分かりやすいので、会議がとてもスムーズだ。
「本日の会議は以上で終了です」
「よし。今日も司会進行ありがとう、メティ」
「はい智慧様、お役目をくれてありがとうございます」
白い絹のような髪と星空のような瞳を持つとても美しい人形のような女性、それがメティ。
彼女は普段商業部の販売課でアクセサリーを担当している。デザインセンスが高いし、手先がとても器用なのだ。商業部のまとめ役として一役かってくれている。ちなみに、社内の付き合いたい女性ランキング堂々たる一位である。分かる、私も付き合うならメティみたいな美人で可愛くて気が利く子がいい。はいそこ、理想高すぎとか言わない。
ビオラ?ビオラは踏まれたい女性ランキングの一位だよ。
「他のみんなも私の帰りに合わせてくれてありがとう。今日はこれで解散!」
いつものように解散し、私も社長室へビオラと兄貴と一緒に戻った。社長室に入ってすぐにビオラはコーヒーを入れに給湯室へ、兄貴はソファに座って脱力し始めた。
「つっかれたぁー」
「ハイハイ、ビオラのコーヒーで復活してね」
何か今日の兄貴は散々だったらしい。ウチでは保育施設もやっているのだが、そこに顔を出したところ大喜びされて数時間遊びまくったのだとか。無論、鬼ごっことかそういう遊びである。若々しい二十代前半も、十歳やそこらの子供に比べれば年寄り同然のようだ。現に今も虚空を見つめながら「若いっていいなぁ」と呟いている。二十三になる若者が何言ってんだ。
これだけならまだイイ話で片づくのだが、その帰りに強盗グループに遭遇してしまったのだからまぁ大変。精神的にも身体的にも疲れているのに、最終的にヴィラン捕縛までしたのだからそりゃあ疲れる。私から見れば、強盗グループを二分かからず全員拘束した兄貴が本当にそれで疲れたのかは疑問なのだが。
ていうか絶対疲れてないだろ。
心の中でボヤきながら机上の書類を手に取った。
「そういや、今日はどうだったんだ。戦闘訓練だったんだろ」
「ん?あー、普通だったよ。個性使用の初歩の初歩って感じのやつ」
「うわ、戦闘訓練なめてやがる」
「違うよバカ。建物の中で使うための知識だったり、人に使うことを前提にした訓練なんて、高校生でやるには遅すぎるでしょ」
「コーヒーをお持ちしました」
「さんきゅ」
「ありがとう。ビオラ、今日はもう上がりな。片付けは私がするから」
「・・・かしこまりました。お先に失礼します」
「うん、お疲れ」
「お疲れ」
部屋を出ていくビオラを手を振って見送る。パタンとドアがしまったところでため息が漏れ出て。なんかすごいイライラする。
ビオラが入れてくれたコーヒーを飲みながら、私は眉をしかめた。
「相変わらず良い上司してんのな」
「話そらさないで。愚痴聞いて」
個性は身体機能の一つだ。使えば体に馴染み強くなるし、使わなければ弱く脆くなっていく。発現して直ぐにとは言わないが、なるべく早めにコントロールの仕方と制限の仕方を理解し、体の成長と共に育てるのが一番安全で世の理解も得られやすい。
確かに個性使用を制限することで、個性の悪用は減るだろう。しかし、個性の暴走や冤罪、その被害は減るどころか少しずつ増えているのだ。何かあった時、自分で自分を守れる手段。
何かあった時、他者と合わせようとする力。
それらが明らかに欠落している。
個性を特別視する今の社会構造は、強い個性、弱い個性、異形の個性、はたまた無個性まで、あらゆる個性が差別や区別をする、される風潮にある。身体機能の一部によって、だ。
前世で例えるなら、人より背が高いとか顔が良いとか、足が速いとかジャンプ力があるとか。そういう一人一人が持つ、何か少し秀でた魅力の延長線にあるのが今世の個性という力であると私は思っている。
あくまでも私の認識の話だから押し付ける気は無い。けど、思うところはあるのだ、たくさん。
「仕方ないだろ、国の方針だ」
「そもそも個性なんて特出するもの、日本人に合ってないんだよ。ただでさえ普通じゃないことを嫌うのが人間で、日本人はそれが馬鹿みたいに顕著なんだから。ヒーローにでもならない限り、個性は嫌な差別ばかりになる」
「キリねぇな。にしても日本の国民性全否定かよ、ウケる」
「ウケないよ。あぁぁもう悔しいぃー。こんな無駄な暗黙の了解なんていらないのに」
「言っても仕方ないのは分かってるだろ。暗黙は暗黙なんだから。・・・・精神疲労溜まってきてるみたいだな。今日は寝ろよ」
「・・・・・・・はぁい」
手の書類全てに目を通し終わったので、机にある残りの書類は明日に回すことにする。
中学までならここまでコンを詰めることもなかったのだけど、これから通うのはあの雄英のヒーロー科だ。何が起きてもいいように少し先の仕事まで手をつけているので、ここ二ヶ月くらいは少し忙しかった。そうしているのは私だけで、他の社員の業務はいつも通りだったから社内がてんやわんやになることはなかった。けど、私と一緒に仕事をする主にビオラや兄貴なんかは大変だったはずだ。申し訳ないことをした。
「申し訳ないとか思うなよ?会社を考えてのことなんだし、俺も他の奴らもそれがいいって納得してんだから」
「・・・・・おもってない」
「いーや、絶対思ってたね。俺にゃわかる」
「思ってないったら思ってない!!もういい!愚痴終わり!寝る!」
読まれて居心地悪くなったので、思わず勢いよく立ち上がった。そんな私を見てニヤニヤと笑う兄貴。私が体いじってなければ絶対顔赤くなってる。くっっっそ!!!
大賢者!!!今日寝るから、いつもみたいに準備お願い!
《了。明日の朝までに回復可能な魔素を逆算します。・・・完了しました。亜空間内にて魔素を消費し、その後準備ができしだい
兄貴の飲み終わった空のコーヒーカップをソーサーごと亜空間に回収し、私のも亜空間に入れる。中でささっと洗って乾かしつつ足早に給湯室へ向い、洗ったそれらを定位置に戻す。
最後に兄貴の顔を見て、
「愚痴聞いてくれてありがと!おやすみバカ兄貴!!」
そう叫んでから社長室を後にした。