やる気無くなるまで頑張りはします。
おっかなびっくり、私には前世があったらしい。死ぬ間際に知らない人のお世話になり、なんか色々貰った。何とか耐性とか、エク何とかスキルとか。それら諸々が今あれば、私は間違いなくヒーローになれるだろう。抽象的な表現とかではなく、本当に。
私こと
この世界は人口の約8割が特異体質である。個性と呼ばれる超能力的な力や異形の形を持って産まれてくるのだ。何がどうなってそうなったかは知らないが、とにかくそういう世界。
とても魅力的に見える世界だが、その個性を悪用する者達が現れ始めた。個性を使って悪巧みをする人間がいるのは、まあ、人間の心理的に当たり前だ。そこで現れたのが、同じく個性を使って、個性の悪用を止めようとする人々。要するに、個性を人助けに使い始めた奴がいたってことだ。
個性を悪用する者達は
個性で人助けをする者達は
それぞれそう呼ばれ、いつしかヒーローは公的な職業と認められたそう。何でだよ、と思うかもしれないが、全ては私が産まれる前のこと。私に言うな世界の創造主様に言え。因みに、最初の個性発現者は体が光っていたらしい。周りの人驚いただろうな。あとお母さんも。自分のお腹から発光した胎児が出てきたら、私なら気絶する。よく受け入れられたもんだよ、本当に。
で、私は今何をしているかと言うと──
「はい、智慧。今日の夜ご飯はシチューよ」
「やったぁ!」
無事帰宅して夕飯中です。
目の前にコトリと音を立てて白い皿が置かれ、その中にはトロリと香りの良いシチューが入っている。
母さんは私の口に合わせた小さなスプーンでシチューを掬い、フーフーしてから口に運んでくれた。前世では猫舌だったのだが、今世ではそうではないらしい。サクサク食べられて嬉しい。
「かぁさん、わたしも!はい、あーん!」
「まぁ!ありがとう」
これでもかと言うほど愛情を注いで育ててくれている家族を、どうして嫌いになれるだろう。前世の有無関係なしに、私は家族が大好きである。おそらく将来は照れて素直にはなれないだろうから、今のうちに甘えておく。
なので、幼い子あるあるその1、マネっこで母さんに“あーん”をお返しする。何、今朝も昨晩もやっていた。恥ずかしいなど今更である。言っただろう、産まれてから四年間の記憶は消えていないのだ。前世を思い出して悶えるくらいなら、前世含めて慣れるのが一番。
母さんがシチューを食べたのを見て笑い、今度は自分で食べ始める。小さな手に合わせてスプーンも小さい。が、口も小さいので掬う量はちょうどいい。皿の壁を利用してシチューのベーコンをスプーンに乗せ、自分の口へ運んだ。
あっ、やったな私コレ。
さて、皆様お気づきだろうか。何にって?
フーフーしてないことにだよ。
いくら猫舌では無いにしても、少しもフーフーしないのは人間として命取りである。舌の火傷はマカロニグラタン(前世)で経験済み。熱が引いた後の謎のサラサラ感の気持ちの悪さったら。故に、口にスプーンを含んだコンマ1秒後、その僅かな時間で冷や汗がドバっと流れ出た。
ヤバいヤバいヤバい。水、水どこッ。
慌ててテーブル上を探すも水らしきものは見当たらない。母さんは運悪く私の方を見ていない。
と、ここまでして気づく。遅くね?え、熱くなくね?何、私の個性って非猫舌的なやつ??
《解。«
「・・・・・・」
ホワイ?
聞いたことある声である。詳しく言うなら、今日のお昼寝の時間に聞いた声である。
とりあえず、この声は私の心の声に反応したようなので心の中だけで話すことにする。いきなり一人で話し始めたら、さすがの母さんも怪しむだろう。
てか夢じゃなかったの!?
《解。個体名:龍魔智慧に魂が定着した為、記憶領域の連結が完了しました》
じゃあ能力の定着?とかいうやつは?あれは何?
《解。魂の定着と共に、保持している
スキル?何それ。
《解。現在保有しているスキルは、
ユニークスキル【
ユニークスキル【
エクストラスキル【
エクストラスキル【
保有している耐性は、
«
«
«
«
です》
とりあえず凄いらしい。なんかよくわからないけど、凄い。それだけは分かる。だって痛覚無効だよ、無効。要するに何しても痛くないってことだろ。何それ。あと、自己再生って、怪我治せる的なスキルでしょ?痛くもなく怪我も治せるって、チートでは?というか普通に会話してるけど、私誰と話してんのコレ。今更なんだけど、あなた誰?
《解。ユニークスキル【大賢者】の効果です。魂及び各スキルが定着した為、速やかな反応が可能になりました》
ふーん。獲得した時に考えていた内容が内容だから、どうしても複雑ではある。ん?あと一つユニークスキル持ってなかったっけ?
《解。ユニークスキル【探求者】です》
そう、それだそれ。大賢者と探求者って何ができるの?
《解。ユニークスキル【大賢者】の効果・・・
思考加速:通常の1000倍に知覚速度を上昇させる。
解析鑑定:対象の解析及び鑑定を行う。
並列演算:解析したい事象を思考と切り離して演算を行う。
詠唱破棄:魔法等の行使する際、呪文の詠唱を必要としない。
森羅万象:この世界の、隠蔽されていない事象のすべてを網羅する。
以上5つが【大賢者】の主な能力です。
続けて、ユニークスキル【探求者】の効果・・・
収集:あらゆる物、能力、情報を集める。ただし、それらに意識・自我が存在する場合、成功確率は大幅に減少する。
保管:独自の亜空間を作り出し、物の収納ができる。生物も保管可能。亜空間内では時間効果は及ばない。
解析:感知可能な生物か物体、又は体内や亜空間に取り込んだ物質の解析・研究をする。亜空間内に必要な物資が揃っている場合、アイテムの創造・コピーが可能。能力の解析に成功すると、対象のスキル・魔法・個性の習得及び獲得が可能である。
追求:習得・獲得したスキル等を分解・統合し、より扱いやすく改造を行う。また、亜空間内の物質を使用し、より適合した物へ改造することも可能。
万能感知:視覚・聴覚・触覚・嗅覚を最大限に底上げして、周囲を感知する。360°包囲可能。現在感知可能範囲は、半径500mまで。
以上5つが【探求者】の主な能力です》
え?えぇ?
本当にチートじゃんか。人生イージーモード来ましたわコレ。並列演算とか超便利。解析とか、追求とかは難しそうで使えなさそうだけども。
《告。【探求者】の解析・追求は【大賢者】の並列演算でのリンク可能、万能感知は森羅万象での補助及び並列演算とのリンク可能です。実行しますか?
YES/NO》
すごくいい提案を持ちかけられている!?とても凄くかなり魅力的な提案である。
それってリンクさせても、私の意思で使うことはできるの?
《解。可能です》
なら、とーぜんYES!何なら探求者の能力全部リンクしちゃってください。
《了。【探求者】の能力の全てを【大賢者】にリンク・・・成功しました》
あー良かった。小難しいことはしなくて良さそうである。てか、個性の開花とかも言ってたけど、皆もこんな風にナビゲート的なのが解説してくれるのかな。私の場合は、大賢者が色々してくれたけど。まあ、そうじゃないと無理か。皆こんなもんでしょ。
とりあえず、舌の上に乗ったままのシチューを飲み込んだ。いつまでも固まってはいられないからね。大賢者の思考加速のおかげか、そんなに時間は経過していない。
《告。個性:分身の解析及び獲得に成功しました》
また何かを獲得したらしい。吹き出しかけた。休む隙もない。食べる手を止めず、口も動かしたまま。
何、今度は何?
《告。個体名:龍魔
す、凄い。大賢者さんが淡々と探求者を活用してくれている。ていうか、個性因子って何?
《解。個性という身体における特別な仕組みの総称です。今回は個体名:龍魔離子の唾液を介してDNAより収集しました》
母さんには謎の罪悪感が生まれてきた。娘に唾液を収集されるって・・・。話さないでおこう、うん。
とまぁ、話は別として。DNAから個性を獲得できたんなら、体の一部さえあれば個性が増えるってこと?
《解。可能です。しかし、感知可能な範囲で個性を使用し、尚且つその場で個性の解析に成功した場合も獲得可能。身体的技術も同様に習得が可能です》
・・・Wow
まぁ、うん。何か、察してはいた。スキルの説明聞いた時に、ちょっっっと、あれ?って思った。
要するに、見れば強くなるんだよね。それって、テレビとかの映像媒体でもできる?
《解。時間はかかりますが可能です》
時間かかるって・・・あのね、
まあ、何にせよ私の個性はチートらしい。それを管理してくれる
《告。個性・スキルの発動・制御等は大賢者で可能です。しかし、身体技術に関しては鍛錬が必要と推測します》
え、それ、どうゆうことです?
《解。体の主導権が大賢者であれば、距離の演算や力の配分等を行い、合わせて動くことができます。しかし、そうでない場合、演算や配分を含め、自身で動かなければなりません》
あぁー。うん、分かった。体の慣れは己で掴めってことね。
私も少なからずカッコイイ動きとかには憧れあるし、頑張ってみるかぁ。
私が扱うには練習が必要なやつもあるみたいだから、どっか時間見つけて練習しないとなぁ。
食べ終わったシチューの皿を流しまでトコトコ運び、母さんに渡す。お風呂は済んでいるので、後は自由時間だ。母さんの美しい笑顔を見たあと、何もすることがないのでリビングのソファにダイブした。
今日は金曜日。明日は土曜日であるのだが、病院に行くと母さんが言っていた。父さんも休みを取ったらしい。家族総出である。何だろう、兄弟が増えるわよ的なやつか?まあ、ウチに重病抱えてる者はいないはずなので、明日を気楽に待とう。
ゴロゴロしながらウダウダ考える。もちろん議題は練習時間の確保だ。得体の知れない個性を母さん達に知らせる前に、何とか今の実力を知っておきたい。
そして私は気がついた。
母さんは父さん達が帰ってくるまでキッチンかリビングにいるだろうし、今がチャンスでは??
ハッと悟った私は、与えられただけの自室へ向かう。
未だ四歳ということで、寝る部屋は母さんたちと同じ部屋なのだ。遊ぶのは基本リビングだったし、自分の部屋を使うことはほとんどなかった。強いて言うなら、絵本の本棚やお絵描き類等々の遊ぶ物をしまう部屋かな?
母さんは私の突飛な行動には耐性がついてる。だから、数十分部屋にこもろうと、時々様子を見に来る程度のはずだ。万能感知で部屋の外の足音まで筒抜けだから、近づいてきても分かる。便利だな、ホントに。