遅くなってごめんなさい。
ストック作ってたんですホントに申し訳ない許してくださいお願いします。
入試 1
人は、生まれながらにして平等じゃない。
それは紛れもない現実。
そしてそれは決して能力に限ったことじゃない。
それを知っている人間は何人いるのだろう。
目先のことに囚われている奴は、きっと少なくない。
見慣れた玄関。履きなれたスニーカーのつま先でトントンと床を打つ。何気ないこれはタダの癖。直す気もない。めんどいし。
玄関口の床と家の中の床との段差に座って、横のカバンを漁る。
必要なものは全部入れたはずだけど、大丈夫かな?
《解。必要な物品は全て収納されています》
あ、そ?ならいいや。
カバンのチャックを閉めて、もう一度立ち上がる。膝上のスカートが揺れて、太腿がこそばゆい。肩にカバンをかけて、準備完了。
「行ってきまーす」
返事はない。
扉の閉まる音だけが、後ろから聞こえた。
「デカ・・・何でH型?意味あんの?」
圧倒的な威圧感のH型──改め、国立雄英高等学校。
通称、雄英。
その校舎を立ち止まって見上げる。周りにもその大きさに驚いている奴はチラホラいる。だよね、ビックリするよね。
本日、2月26日は雄英の一般入試。私が受けるヒーロー科は実技もあるらしい。まあ、大賢者いるし、それなりに鍛えてはいるし大丈夫大丈夫。見た目は細いけど、素早さと瞬発力は自信あるし、力は個性でカバーすればいいしね。
筆記は大賢者いるし論外だわ。全部満点とってやるよ。
余裕だよね、大賢者。
《解。入学試験の筆記試験範囲は学習済みです。応用への対応も問題ありません》
よっし、ズルかもしんないけど楽勝だね。
ニシシと悪い笑顔で、私はもう一度歩き出した。
筆記の後、大きな部屋にヒーロー科受験生は集められた。もちろん実技のため。頭使って体使って、大変だな、受験生。
〔今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!〕
──シーン──
誰か反応してあげろって。私はしないけど。
にしても個性的な先生だな。声デカいし、着てるものも奇抜だし、プロヒーローかな。大きな声が特徴のヒーローと言えば、プレゼント・マイクだ。
先生もしてたのか、凄い。この人ラジオもしてるだろ。先生とヒーローとメディアの両立ってどうしてんだろ。
頬杖をついて欠片も関係ないことを考える。前置きなんて、みんなそんなもん。と、思って周りを感知してみるけど、皆割とちゃんと聞いてた。真面目しかいないのかココは。つまんな。
おもむろに資料を手に取り、パラパラと捲る。大賢者のおかげでスイスイ頭に内容が入ってくるので、熟読の必要はない。
大まかな内容は、主に3種類のロボットを行動不能にする、というものらしい。それぞれのロボットに振り分けられたポイントは1P〜3P、行動不能にしたらそのポイントが自分の点数になる。正確にはロボットは4種類だけど、その内1つは0P。対峙する意味は無いから、逃げの一手を勧める。
そんな感じのことが書いてある。
いや、これ、どう考えても裏あるでしょ。不自然すぎるわ。
ただ点数で見分けるだけなら、0Pなんて無駄なもんに金かけないだろ普通。高度な回避力なんて、中学でも独学でもなかなか学ばんわ。
かといって、このポイントが蔑ろにされるわけでも無さそうだから、別枠のポイントでも用意してるのかな。もし、別枠だけで合否決まるなら明確な振り分けポイントなんて説明も記載しないだろうし。
大賢者、どう思う?
《解。説明と書類記載以外の判定基準がある確率は非常に高いです》
だよね。
それは確定だとして、どんな基準なのか。情報力、戦闘力、判断力、機動力など、これらは先程のポイントに影響する。あとは、協調力、思考力、精神力、競争精神・・・考えたらキリないな。まぁ、協調力は除外決定。ポイントサドンデスだから、他人に構ってなんていられない。
いや、案外それを逆手にとって・・・という可能性もある。
というか、ヒーローとは本来そういうモノだ。自分の何かを賭して他を助ける。それがヒーロー。まぁ、そんな定義は職業化されてから薄らいできてはいる。
しかしここは天下の雄英。お決まりのごとく受験生に無理難題を押し付けたところで、入りたいやつは五万といるのだ。ぶっちゃけた話、少しでも可能性がある生徒というのを点数で見分け、上から切り取っていけばいいのだ。
切り取った者に素質がなければないで別の道を歩ませれば、それでいい。ヒーローというのは狭き門なのだから、多少挫折する生徒だっているだろう。そうなったとしても卒業さえすれば、雄英卒業という箔が付くのだから。
〔俺からは以上だ!!〕
オット、説明は終わったらしい。途中で受験生から質問は出たものの、滞りない。公開処刑されてたモサモサくんは可哀想だけど。
〔最後にリスナーへ、我が校の“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!【真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者】と!!〕
“
〔それでは皆、良い受難を!!〕
さて、煽っているのか、背中を押しているのか、両方か。そのいずれにしても成功していることには間違いない。
私の口角は、校門前の時と同じように上がっていた。
普通学校の敷地内バスで移動する?模擬の街ある?
しないよね。無いよね。どんだけ広いんだっつーの。
目の前には大きな門。その奥には本物そっくりの無人の街。
周りには深呼吸をしている奴や、この短時間で仲良くなったのか親しげに話している奴ら、緊張をなんとか解こうとしている奴、様々だ。
因みに私は屈伸や伸脚などの柔軟中。途中までは自分で動いてみたいんだよ。これでも、それなりに動きの分析とか(大賢者に手伝ってもらいながら)したからね。試してみたい。単なる興味だ。
軽く伸ばし終わって、できるだけ門の近くへ移動する。そろそろだろうし、ここからでも少しはロボットの配置分かるし。
大賢者、できる範囲で試験会場の脳内マップ作って。
《了。万能感知で把握可能な範囲を脳内に表示します。移動に応じて内容を更新しますか?
YES/NO》
YES。あと、途中から個性に切り替える。五分経ったら教えて。
《了。試験開始から時間測定を始めます》
ありがとう。
入り口付近のロボットの配置を確認する。普通に目視できる範囲では見えないけど、私にはバレバレ。そのまま感知を続けた。
周りには未だに話している奴ら結構いるけど、大丈夫かアレ。知らんぞ、出遅れても。
〔ハイスタートー!〕
気の抜けたスタートだなオイ。
そう思いつつ、私は走り出した。入り口の門を中心に半径約500mは脳内マップ完成してる。あとは動きに合わせて大賢者が脳内マップを更新してくれるし、奇襲に引っかかることはまず無い。
とりあえず一番近いロボットへ向かう。手っ取り早く作ったから、どこにいるかは分かるけど、ポイントまではさすがに分からない。
〔どうしたあ!?実践じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?〕
え、何、まだ入ってない奴いんの?遅いぞいくらなんでも。大丈夫か。・・・結構いるな、やる気ある?
感知圏内だから、同じ試験会場の奴らなら分かる。私以外まだ会場外。え、ホントに大丈夫?
<目標補足!!ブッ殺ス!!>
「ワォ、音声付いてんの?」
動くものに反応するセンサーに加えて、音声付き。金かけてんな雄英。
デカデカと1と書かれたロボットが出てきた。予め亜空間に入れて置いた合金の竹刀を右手に出す。合金良きよ、組み合わせによっちゃ硬くて軽いから。
ロボットが分かりやすくアームを振り上げたので、初手を避けて足場にさせてもらう。アームを足場に首元に回り込んで、弱そうな連結部をぶっ叩く。一度叩いて、二度目は一度目の勢いを殺さないように回転を加えて叩く。簡単に見えるでしょ?でも、体幹鍛えてないと結構キツイのよ。
二度目に叩いた反動に合わせて後退すると、ロボットは崩れ落ちて機能停止する。
「意外と脆いね」
入試だからか、そんな頑丈に作ってはいないらしい。弱点もあるみたいだし、思ったより難易度は低そうだ。
「案外楽かも、次々行こう」
合金竹刀を肩に乗せて、次の目標へ小走りで向かった。
<目標ほs──>
「聞き飽きた」
3Pを破壊して、無事着地する。怪我しても痛くないし、すぐ治るんだけどさ。何かカッコ悪いじゃん。キメる時はキメたいじゃん。
《告。試験開始より五分経過しました》
これで五分。意外と倒せた方だと思う。
特に疲れてもないけど、フゥと一息ついた。切り替えるように足を止めて、改めて周りを感知してみる。すると、私が壊したの以外にも、まあまあ壊されていた。思っていたより鍛えてきてる奴らが多いみたい。凄いな。
とは言っても、やはり受験生の中には怪我をした奴や、個性のキャパを超えた奴が出てきたらしい。座り込んだり蹲ったりしてる奴がいる。
周りは周りで自分のことに手一杯で首が回らないようだ。ロボットに向き合ってばかり。破片とか残骸とかが派手に散乱して、動けない奴にもお構い無しに降り掛かっている。
・・・しゃーない。加点減点の基準が分からない以上、見ないフリはしてられない。時間も持ち点も問題なさそうだし、個性解禁といきますか。
もう少し詳しい情報が欲しいので、感知の精度を底上げする。もちろん、脳内マップも照らし合わせてだ。
試験会場の脳内マップはほぼ完成してるから、万能感知の感知範囲を試験会場全体まで広げる。最初はだいたい500mだったんだけど、今はもう少し広げれるんだよ。つまり、縮小可能。名前の通り万能だ。
五分使わなかったのは、個性を制御した状態で動きたかったから。万能感知は500mくらいまでなら意識しなくてもできるし、個性を制御する個性がいてもオートで放っとけるくらいにはレジストできるし。
探すのは、より開けていて広く、建物の倒壊の可能性が低い場所。
・・・うん、ある。あとは人手、広範囲攻撃得意そうな奴とかいたら拾ってこう。それはついででいい。
分身を五体作成して、それぞれ行動不能の奴らの所へ向かわせる。足をやられた奴は抱えて、歩けそうな奴は自分の足で歩いてもらうことにする。人手不足なんだから仕方ない。歩行不能が複数人いたら、往復か、他の受験生の手を借りるかの二手。後者は無理そうだから、前者だな。
途中、ロボットと二回遭遇したが、どっちも風の刃を飛ばしてバラバラにしておいた。この技、殺傷力強すぎて人間には使えないから、こういう時しか攻撃には使えないんだよね。
「はい、到着ぅ」
走り出して一分弱、目的地到着。
ここにも戦っている奴らはいる。最初から知っていたし、障害にはならないだろう。それはそうと、場所作りだ。
大賢者、私中心に半径2mに広がってる残骸、全部収集して亜空間に。
《了。半径2mに存在する、生物と建築物以外の物質を収集し、保管に移ります》
次、空気圧操作して結界を作成、同時に物理攻撃耐性とリンク。範囲はさっきと同じで高さだけ3mに変更。
《了。半径2m及び上空3mに空気結界を作成し、物理攻撃耐性を付加・・・完了しました》
よし、とりあえず準備は終わり。建物のすぐそばだから、横になるのが辛ければ寄りかかって座れるはずだ。敷物はさすがにないから、地面に直になってしまうが、我慢してくれ。さすがにそこまで面倒見きれん。
ひと仕事終えて、改めて周りを感知する。さっきよりも少し戦闘不能者が増えているが、着実にロボットは減っている。分身の方も問題なく救助に入っているし、ここに私がいなくても大丈夫だろう。
念の為、言伝役と宥め役は置いておくが。
「いるね、
「えぇ、もちろん」
私の呼びかけに応じ、影から大きな何かが飛び出してくる。
それは大きな猫。
黒く長い綺麗な毛並み、月のように黄色く光る瞳。額部分には月色の三日月がクッキリと浮かんでいる。
いつ見ても綺麗だね、お前。見た目はメインクーンに近いけど、大きさが別格。何かもうライオンとか虎に近い。これでも小さくなってるんだから凄いよホント。ちなみにメスだ。
「万が一の時の為にここで待機。目視できる範囲で戦ってる奴らが限界そうだったら、連携か手助けをして。トドメは本人にさせて、お前は刺すなよ」
「承知しました」
「もう一つ、もうすぐ私の分身体が怪我人を連れてくるはず。結界内に入れて休ませてやって。本人が出たいと言ったら出して構わない。強制はしないで、本人の任意ね」
「承りました。回復した者は、いかが致しましょう」
「それも任意。出たがったら出して、そうでなかったら結界内に入れたままでいい。入り切らなかったら呼びに来て」
「承知しました」
「よし、頼んだよ」
結界の中にソウセイを待機させ、私は近辺の救助に向かう。でも、闇雲に動くのは効率があまり良くない。ので、試験会場を区切って、助けが必要な所から順に回っていく。
大賢者、ロボットの停止速度が減ってる区域を割り出して、手助けが必要な順を教えて。
《了。試験会場を区域分け、“
脳内マップに印と数字、その他の情報が分かりやすく表示された。あとは、これを見ながら回るだけだ。
本当はハイキュー!!見てました。
(´。✪ω✪。`)
あ、やめてもの投げないで!
すんませんっした!!