【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
意外と本編のほう時間かかったので、少しずらしました
都市アイゼオン。とある寂れたビルの一室にて、2人の少女が男性型のアンドロイドと話をしていた。
「お前たちに依頼したいのは、ある人物の暗殺だ」
外見は中性的。捉え所のないその顔は、声と口調によってどうにか男であると判別できていた。
「暗殺? 私たち、
黒いファー付きコートをだらしなく羽織っているライオン耳の少女は、怪訝な様子でそう言った。
傭兵はヒステラルム統一法によって、殺害を目的とした依頼を請けることを禁止されている。だからというわけではないが、そうした依頼は裏業界の
「暗殺者でも、ただの傭兵でもいかん。
男の意味深な言葉に、ライオン少女はさらに訝しんだ。
(フリーだからというわけじゃ無さそう…。何か裏がある?)
しかし、彼の真意は少女の想定の遥か上にあった。
「統一法には違反しない。なぜならお前たちのターゲットは、『スターク』なのだからな」
それを聞き、2人の少女は衝撃を隠せなかった。
「まさか…! この世界に『スターク』が…⁉︎」
『スターク』といえば、「世界の災厄」と呼ばれるほどに強大で危険な存在だ。それ故、各世界で指名手配されており、表向きは捕縛するよう指示されているが、発見次第殺す事がヒステラルム全体での暗黙の了解となっている。
「こいつだ」
男は指先からホログラムを投影し、一枚の画像を見せる。
「スメラギ・カランコエ。アルヴィアスの傭兵だ」
「アルヴィアスの? 流石にそんな奴を暗殺するのはやばくない?」
アルヴィアスと言えば、傭兵業界の中でも最大手の組織だ。そこに『スターク』が所属しているとなれば、アルヴィアスが黙っていない。外部の干渉を避け、極秘裏に処理しようとするだろう。
当然、外部であるこの2人はアルヴィアスに依頼を阻止されるだろうし、むしろ秘密を知った事で命を狙われるかもしれない。
「しかし
毅然とした態度で、男はそう返す。
「まぁ確かに…。でもだったら、私達だけじゃなくって大勢の人に声をかけたほうがいいんじゃないかなぁ?」
騎士の格好をした銀髪の少女はのんびりと、しかしどこか緊張感のある声色でそう尋ねた。
「大人数で刺激すれば奴は暴走するかもしれん。そうなる前に殺すんだ」
「わかった。もう1つ聞かせてもらいたいんだけど…この人が『スターク』だって確証はあるの? 間違いだったらあなたも私たちも裁かれちゃうんだよ?」
騎士の少女はぴしっと男に指を指し、懸念を口にする。
「奴は過去に一度『力』を使った。その波動を感知してここまでやって来たが、今はそれを隠している。だが、奴を追い込めば、必ず正体を表す。そうなれば奴を殺す正当な理由ができよう」
「…『力』を出させなきゃ『スターク』かどうかわからないってことか。あまり気は進まないけど、とりあえずはあなたのこと、信用するよ」
渋々ではあったが、ライオン少女は男の依頼を承諾する。しかし、男に対する不信感は拭いきれなかった。アンドロイドにしては根拠が薄く強引な依頼内容だが、本人はよほど確信を持っているのかもしれない。
「奴は今エルフの森付近にいる。どうやらギエルデルタに向かっているらしい。街に着く前に殺すんだ」
「はいはい情報ありがと。じゃ、行ってくるよ」
「少人数って言ってたけど、私の団員さん達にも協力してもらうからね?」
「構わん。迅速に、そして誰にも気付かれぬようにな」
少女達がいなくなり、男1人だけになったところに、
「回りくどい事をするわね、ヘーミッシュ。私達だけで殺してしまえばいいのに」
1人の女が壁から
「奴は弱い。が、力だけは強い。前の個体は愚直に奴のみを狙った為に敗れた。故に俺たちは策を講じる必要がある」
ヘーミッシュは指先からホログラムを投影する。それはおよそ30人ほどの少女の写真。それに所在地や戦闘記録など多様なデータが載っていた。
「戦闘員は…20人か。その全てを回収できないとしても、この中の半数以上が戦力になると仮定すると、充分ではあるか」
「対象が逆に彼女達を殺す可能性は?」
「これまでの行動から、その可能性は限りなく低い。作戦の成功確率は高い」
映し出されたデータの中から、2人を拡大する。それは、先程この部屋を訪れた少女達であった。
「まずはこいつらだ。どうせ依頼は失敗するだろうが、それは構わん。それよりもどちらか、あるいはどちらともが俺を追うことになるだろう。そうしたら次のフェーズだ。頼むぞ、マーシェ」
女性型アンドロイド──マーシェはニヤリと笑い応える。
「分かったわ、ヘーミッシュ。移動が面倒だけれど、まぁ、私は直接戦闘よりこっちの方が得意だからありがたいわね」
ビルから去り、少女たちは街中を歩く。
「…捕獲じゃだめなのかな?」
騎士少女は浮かない顔をして、ライオン少女にそう聞いた。
「あいつも言ってたでしょ? 『スターク』は生きていちゃいけない。それに、邪神の力を使われたら捕獲したところですぐ逃げられるよ」
「そっか…」
それは決して人情からではない。そんな事で躊躇うほど、彼女は甘くない。
「とはいえ、ターゲットが本当に『スターク』かどうか証拠はないままなのは頂けないねぇ」
「うーん…。やだなぁ、こういうの」
こんなよくわからない依頼に仲間を巻き込むのは忍びないが、もし本当に『スターク』だったら2人だけでは絶対に敵わない。
釈然としないまま、2人は喧騒の中を進んでいく。向かう先は街外れの小さなバー。そこに仲間が待っている。