【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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今回また難産でした
とは言え、時間がかかったのは細かいどうでもいい所だったりする( ´・ω・`)
この回は前からずっと書きたいシーンの1つだったので、いつもより少し長いと思います。ご了承ください orz


7話 さくら舞う神社

「おはよースメラギ!」

 

「おはよう。朝早くありがとう、ぺこら」

 

 早朝──都心部でもまだ街の営みは完全には始まっておらず、出勤する人々を乗せる電車や車ばかりが活発に行き交う中、スメラギ達は辺境に近い郊外で穏やかな朝を迎えていた。

 

 スメラギはギエルデルタより内陸にある都市、アイゼオンへと向かう。ここにしばらく滞在するというぺこらとは、ここでお別れであった。

 

「ギエルデルタまで一緒に来てくれてありがとぺこ、スメラギ」

 

「こちらこそ、案内してくれて助かったよ」

 

「ぺこーら、ホントは人見知りだから、初めて会った人と旅するの無理だったんだけど…スメラギは、全然大丈夫だったっていうか、初めて会った気がしないぺこなんだよね」

 

「……もしかしたら並行世界では友人だったのかも知れないね」

 

 スメラギはぺこらの言葉に、心で汗を拭きながら応じた。自分は今笑えているだろうか。

 

「えへへ、そうかもしれないぺこね! …じゃあ、いつかまた会おうね、スメラギ!」

 

「あぁ。いつかまた…平和な時に」

 

 スメラギは心の底からそう願った。他のみんなとも。

 

 そう願うのは、きっとおかしなことではないはずだ。誰だって平和を望んでいる。

 

 そう、誰だって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギエルデルタを出て、最初はパワードアーマーで飛行していこうと思っていたが、それはAPRILに止められた。有事の際以外でパワードアーマーを使うことは街道でも禁じられていたからだ。

 

 なかなか上手くはいかないな、とスメラギは小さく笑い、徒歩で向かうことにした。

 

 ギエルデルタからアイゼオンまでは、歩くとたっぷり1日はかかる。夜は移動できないことを考えると、最低でも2日くらいはかかるだろう。ぺこらから餞別としてもらった携帯型テントが役に立ちそうだ。

 

 しかし、とスメラギは考える。

 

 数千年も眠りについていたゼノクロスが今になって目覚めた理由。そして()()()()()()()

 

 

 

 恐らく「あの力」のせいだ。その存在自体は異世界大戦期から既に確認されていた。ゼノクロスが脅威と認識していても不思議はない。

 

(もしかしたら僕のせいで皆が……)

 

 その考えが頭に浮かんだところで、スメラギはその先の言葉を思考の海底へと沈め、考えるのをやめた。たとえそうだとしても、自分に何ができるものか。そんなものを考える事に意味はない。

 

 

 

 それよりも、スメラギはアイゼオンへ着いた時のことを考える。アイゼオンへ向かうのは()()()()の為ではない。もちろん、大破したミーレ・センチュリオンを修理するというのもあるが、重要なのはそれではなかった。

 

 

 

 いくら新現代といっても、この世界はヒステラルムの辺境にある。辺境ほど発展途上の世界は多いが、魔法世界と科学世界では、その()()()()()というのはまた異なる。

 

 そして科学世界に属しながら、魔法世界にも近いという特殊な立地条件を持つこのターミナル02 ha-01は、都市部こそ他の科学世界と同等の発展具合を見せてはいるが、中央政府の権力が弱い為に、各都市・地方はそれぞれの首長が統治するという中世の封建制を採用していた。そのため、各地のネットワークは十分に整備されておらず、外世界とのネットワークも「回廊」のある都市でしか利用できない。

 

 

 

 ギエルデルタで「ある事」について調べられなかったのも、それが原因だった。無論、調べた結果()()()()()()である可能性はあるが。しかし、手がかりくらいは見つけておきたかった。

 

 

 

 

 

 思考にふけりながら、街道をひたすら歩いていると、

 

「うわあぁぁぁ〜〜〜ん!!! 助けてぇぇぇぇ〜〜〜〜!!!!」

 

 遠くから()()()()()()()の悲鳴がした。

 

「!!」

 

 その声を聞き、APRILは素早く周囲の索敵をする。

 

『北西に生体反応が二つあります。』

 

 目を凝らしてみると、街道から大きく外れたところに人間と鳥らしきものがいた。鳥と確定できなかったのは、人間と同じサイズ比だったからだ。

 

 今は緊急時だから、法に触れることはない。

 

 脳裏で瞬時にそう判断すると、スメラギは胸のナノマシン・パッケージを軽くタップし、脚と背中にナノアーマーを展開する。

 

 構築が完了すると、スメラギはスラスターを噴かし、人のいる方へ飛行する。

 

 近づくと、鳥型の魔物──シームルグが白い服に金髪、そして何より頭に2本のアモン角をつけた少女に襲い掛かろうとしていた。

 

「…! わためか…⁉︎」

 

「わ、わため…食べても美味しくないよぅ!!」

 

「離れて!!!」

 

 突然後ろから大声で言われ、戸惑いながらも少女は左に跳んでシームルグから距離を取る。

 

 スメラギはスラスターを減速させず、左腕にアームハンマーを形成させ、そのままシームルグに突っ込む。

 

 シームルグは少女に気を取られて反応が遅れ、高速で迫ってきたハンマーをもろに喰らう。

 

 ガッッッギョッッッ‼︎‼︎‼︎と鈍い音が響き、スメラギがシームルグと共に地面を削りながら着地する。

 

「君、大丈夫だったかい?」

 

 ナノアーマーをパッケージに収納しつつ、スメラギは立ち上がり少女に声を掛けた。速度を乗せた重い一撃を喰らい、シームルグは完全に絶命していた。

 

「ふぇ…? あ、だ、大丈夫ですっ…! 助けてくれてありがとうございます〜…」

 

 脅威が去り、安心したのか気の抜けた声で少女は礼を言う。

 

「ここは街道から随分と離れているけど、何か用事でもあったのかい?」

 

 人のいるところには魔物は出ないとはいえ、街道から外れれば魔物は普通に生息している。それにしても、都市部だというのに都市と都市の間がこれほどだだっ広い何もない土地だというのも不思議ではあるが。

 

「実は、サーカスの公演中に曲を弾いてほしいって頼まれてて、それで成功祈願のために近くの神社へ行こうとしてたんだけど…」

 

「その途中で魔物に襲われた…ということだね」

 

 恐らくは道なりに進んでいけば魔物に遭遇する事なく劇場へたどり着けるのだろう。しかし、この見るからにひ弱な少女が、安全を捨ててまで立ち寄ろうとしているということは、それだけその神社はご利益のある所なのかもしれない。

 

「あ、あの! 助けてもらってこんな事言うの、不躾だと思うんですけど……一緒に神社まで付いて来てもらえますか…?」

 

 ここから神社がどのくらい離れているのかははっきりとは分からないが、少し遠くの小高い山に見える鳥居がそれだとすると、そんなに近くはないはずだ。そんな道のりで、早々に魔物に襲われたとあっては、1人だと道中不安で仕方ないだろう。

 

 スメラギとしても、これくらいの寄り道を許容するくらいの余裕はあった。もちろん彼女について行く理由はそれだけではないが。

 

「構わないよ。神社に寄ってから、そのサーカス劇場へ行けばいいんだね?」

 

「ありがとうございます! えと、私、角巻わためって言います、よろしくです!」

 

「スメラギ・カランコエだ。よろしく、わため」

 

 

 

「スメラギさんって、アルヴィアスの傭兵なんですよね?」

 

「え…? あ、あぁ、そうだよ」

 

 何も言っていないのに、アルヴィアスである事を言い当てられ、スメラギは一瞬動揺するが、今着ているものはアルヴィアスの制服なのだから、本来分かって当然のことだ。今までアルヴィアスを名前だけしか知らないか、そもそも存在自体知らない人ばかりと会ってきたので、完全に失念していたのだ。

 

 しかし、「二つ名」については知られていないようだ。自分でつけた訳でもないが、いざ他人の口から聞かされると恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。

 

「だからそんなに強いんですねぇ〜。魔物が全然近づこうとしないですもん」

 

「魔物が賢くて良かったよ。戦いながら向かうとなると時間がかかるからね」

 

 敵が全く来ないからか、もしくは人と一緒にいるからか、わためは楽しげに平原を軽やかな足取りで進む。

 

「ところで、わためはアーティストか何かなの?」

 

 わための右手に持ったハープを見ながら、スメラギはそう質問する。

 

「はい〜! わためは吟遊詩人ですよっ。色んなところに行って演奏して回ってるんです〜」

 

 神社へ向かう道中、スメラギとわためは互いにこれまでのことを話し合った。

 

 数日前にこの世界に来たこと。とある依頼を受けアイゼオンに向かっていること。10年ほど前から傭兵をやっていること。

 

 対して、わためは街で弾き語りをしているところを偶然サーカス団のメンバーが目をつけ、その演奏技術を買われたという。

 

 わためが持っているハープは、魔法によって自在に音色を変えることができ、それを駆使することで一つの楽器で何重奏もできるらしい。もちろん、それをこなすには高度な処理能力と技術とを必要とするのだが。その辺り、わためはぽやぽやしているように見えて実はとてつもない才能の持ち主なのかもしれない。

 

 

 

 山の麓から頂上まで続く長い階段を登っていくと、大きな鳥居が見えた。遠くからでも見ていたが、近くで見るとそのスケールに圧倒されそうだ。

 

「ここが…」

 

「そうです。桜がとっても綺麗な神社なんですよ〜」

 

 鳥居の向こうには、参道を挟むように桜の木が並び立っていた。風に舞う花びらが精霊のごとくスメラギ達を迎える。

 

 桜並木に彩られた参道を進み、しっかり手水舎で身を清めてからスメラギとわためは拝殿へ向かう。

 

 拝殿へ近づくと、境内を掃除していた巫女装束に身を包んだピンク髪の少女と赤いメッシュの入った黒髪のケモミミ少女がこちらに気づき、近づいてきた。

 

「あー! 久しぶりのお客さんだあ!」

 

「え? ほんとだ。どうもこんにちは〜」

 

「わ! 巫女装束かわいい〜! お2人はここの巫女さんなんですかー?」

 

「そう! みこがここの神社の巫女のさくらみこだよ! …ん? みこが…みこのみこ…?」

 

「アハハ…巫女さんをやってるみこちゃんだよね? ウチは大神ミオだよ。でもウチは巫女じゃないんだ」

 

「そうなの? 私はね〜、角巻わためっていうの!」

 

 久しぶりの参拝客に昂るみこ達と、巫女に興味津々のわためはすぐに打ち解け、わいわいと賑やかに話している。

 

「…先輩」

 

 分かっているつもりだった。ぺこらやフレアがいたのだから、当然ではあった。ましてや会うのは()()3()()()()

 

 しかし、自分より年下になってしまった先輩はいつ見ても慣れなかった。たとえそれが見た目が同じの赤の他人だとしても。

 

「えっと、そっちの人は?」

 

 ミオに目を向けられ、スメラギは意識を現実に引き戻す。

 

「あぁ、僕はこの子の付き添いなんだ。スメラギ・カランコエだ。よろしく」

 

「ふぅん…。よろしくね、スメラギ!」

 

(スメラギ…カランコエ…)

 

 その名前に心当たりがある訳じゃない。

 

 しかし、何かを。不思議な何かをみこはその青年から感じ取っていた。

 

 

 

 みことの話に夢中になり本来の目的を完全に忘れてしまっているわためを連れ戻し、スメラギ達は拝礼する。

 

「公演が成功しますように…。今後も食べられませんように…!」

 

 なんだか後の方を強く願っていた気がする。

 

 

 

「……」

 

 スメラギは、神に願うのは好きではなかった。だがいざ神前に立つと、色んな願いが水泡のように湧いて、しかしすぐに消えていった。

 

 結局スメラギはわため達の公演の成功を祈り、一礼をして終わらせた。

 

「スメラギさんは何をお願いしたの?」

 

「まぁ…特に無かったから君達の成功を祈ったよ」

 

「わぁ! ありがとう〜!」

 

「わためぇ、口から願い事漏れ出てたねぇ」

 

「ちょっと〜! 何で聞いてるのぉっ?」

 

 みことわためがじゃれつき、再び目的を忘れそうになっている。しかし、ここはあえて放置しておき、スメラギはミオにダメ元で尋ねる。

 

「ねぇ、ミオ…はゼノクロスという兵器について何か心当たりはない?」

 

 APRILは闇雲に調べるのは非効率的だ、と言っていたが、やっぱり少しでも情報は欲しかった。それが足取りすら掴めていない焦りからなのか。

 

 あるいは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのか。それはスメラギにも分からなかった。

 

「うーん…聞いたことはないけどぉ…でも確か倉庫の方にそれっぽいのはあったような気がするなぁ」

 

「もし良かったら見せてくれるかな?」

 

 依頼のために情報を集めていると説明するとミオは、

 

「うん、いいよー。と言っても、ここはウチのじゃなくてみこちの神社なんだけどね」

 

 そう言いながら、スメラギを倉庫へ案内する。

 

 ミオが見せてくれたのは一冊の手帳だった。

 

「これは…日記?」

 

「パイロットの日記だったかな? 確か」

 

「…一応、データ保存しても良いかな?」

 

「いいよ。でも、悪用とか広めたりとかしないでねー? けっこう古いものだから、これがどんなものなのかウチらもよく分かってないんだ」

 

「もちろん。丁重に扱うよ」

 

 ミオの了承をもらい、スメラギはAPRILに日記の内容を読み込ませ、データに書き換え保存した。

 

 拝殿前に戻ると、2人はまだじゃれ付いていた。わためはおしゃべり好きらしく、こちらが席を外していたことに気付きもしていないようだ。そろそろ切り上げておかないと、ずっとここで立ち話していそうなので、スメラギはわために声をかける。

 

「そろそろ行こうか、わため」

 

「はっ…! そうだった! わため、行かなきゃいけないとこあるんだ」

 

「ありゃ、もう行っちゃうのかぁ」

 

「もうすぐこの近くでサーカスするんだ〜。わためも演奏するから、見に来て欲しいなっ!」

 

「そりゃあ是非! 2人とも階段の下まで送ってくよー」

 

 ミオがそう声をかけた時、

 

「あ、ミオちゃんとわためぇ先行ってて。みこ、スメラギと話があるから」

 

 みこは2人にそう返した。

 

「? 良いけど……じゃ、先行ってようか、わためちゃん」

 

「おっけぇ〜」

 

 

 

 2人が参道を進み、鳥居に差し掛かったところで、みこはスメラギに話しかける。さっきとは打って変わって真面目な顔つきだ。

 

「話って何だい?」

 

 スメラギは少し警戒しながら、そう尋ねた。

 

「みこ、君から何かを感じたんだ」

 

 その一言は、スメラギを動揺させるには十分すぎた。『それ』は、スメラギが誰にも明かすまいと必死に隠してきたものだったからだ。

 

「…っ!」

 

「まー、普通の人だったら気のせいで済ますんだろうけど。巫女だからさ、そういうの気になっちゃうんだよね。…もちろん、都合が悪いなら忘れるよ? でも、良かったら教えて欲しいな」

 

 本音を言うと、全てを話したかった。誰かと分かち合い、この重荷を軽くしたかった。

 

 

 

 でも、それをするにはまだ勇気が足りなかった。

 

「…うん、そうだ。僕は…。言えないけど、強大な力を持ってる。自分でも恐れてしまうほどに…」

 

 正体を知られてしまったら。恐ろしい存在だと気づかれてしまったら。何よりも仲間に拒絶されるのが怖かった。

 

「僕は怖いんだ…。こんな力を持ってる自分が」

 

 そう呟くスメラギに、みこは優しく応える。

 

「みこは、スメラギのこと怖いだなんて思わなかったよ? たった十数分くらいしか会ってないけど、君が優しいってこと、分かるよ。怖いのは力であって、君自身じゃない」

 

「……」

 

 年下だというのに、みこは年長者のようにスメラギを優しく宥める。

 

「優しい君なら、その怖い力もきっと正しく使えると思うな」

 

「みこ…」

 

「…本当はヤバそうだったら封印でもしようかと思ってたんだけど、君ならその必要はないかもだね」

 

「…だと、嬉しいな」

 

「みこのお墨付きだぞ! そんな顔しない!」

 

 みこは明るく笑い、スメラギを元気づける。

 

「さて、そろそろミオ達のとこに行かないと。きっと待ちくたびれてるよ」

 

「…そうだね」

 

 スメラギはぎこちなかったが微笑み、みこと一緒に参道を進んだ。




以前から出ていた都市アイゼオンですが、らっくぅのクソザコ記憶力のせいで初回の登場以降ずっと名前ミスってたので、サイレント修正しました
ちなみに今回もミスってました(書いてる途中に気づきました
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