【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
まぁ授業なくても更新速度に変わりはないんですけど(つまりはおs
時間は少しさかのぼり。
都市アイゼオンの郊外にあるバーに、2人の少女が入ってきた。片方は騎士の格好をした銀髪の少女──白銀ノエル、そしてもう片方はフード付きのコートをだらしなく羽織っているライオン耳の少女──獅白ぼたん。一見何の縁もなさそうな2人は、揃って席に座っている数人の男達の方へ向った。ノエルはそのうちの1人に声をかける。
「あれ? 他の団員さん達は?」
「彼らなら団長を待ちきれずに出かけましたよ。ギャンブルをしに」
「も〜、すぐ帰るって言ったのにぃ」
「彼らは長時間じっとしているのは苦手ですから。今いる私達だけで済ませてしまいましょう」
そう言い、プラチナブロンドの髪色をした容姿端麗の男──白銀騎士団副団長 シェラード・アッシュフォードは立ち上がる。
「しかしよ、何でバーで
「それじゃあレンタル料かかっちまうだろ。そんなとこで無駄金使えねぇよ」
「そりゃあキースやアレンのバカ共が事あるごとにギャンブルで散財しちまうからだろうが! それに…バーだと酒飲んじまうだろ⁉︎」
「バカはお前もだよ…」
不満を垂れながら、残った2人の団員も立ち上がり、簡単なブリーフィングを始める。
「今回の目標はこれ」
ぼたんはデバイスからホログラムを出し、1人の男の写真とそのデータを写す。
「名前はスメラギ・カランコエ。アルヴィアス所属の傭兵で、序列は『エース第3位』。その殺害が今回の依頼」
「殺害? 何だってまたそんな依頼を…」
「ちゃんと合法なんだろうな、団長?」
「うーん…正直、ギリギリかなぁ…」
ノエルは苦笑いしながら応える。
「目標は『スターク』だって言われたんだ」
ぼたんのその言葉に、団員の間を衝撃が走った。それまで弛緩していた空気が、その一言で途端に引き締まった。
「それほど重要な依頼を何故我々に…?」
「さぁ? クライアントは私達じゃないといけないとか何とか言ってたけど」
「何でも、確定情報じゃないらしいよ。依頼主は確信持ってるっぽいんだけどね」
シェラードの疑問にぼたんとノエルが答える。
「本当はそんな危なっかしい橋を渡りたくないんだけど、一応『スターク』が相手だからさ。無視はできないかなって」
「分かりました。では、どのように進めますか?」
その問いに、ノエルはきっぱりと断言する。
「正直、あの依頼主は信用できない」
突然ノエル達やぼたんの前に現れ、傭兵組織を介さずに、そして確固たる情報も与えない。何もかもが不自然すぎた。
「だから、私達で証拠を掴み取る」
つまり、スメラギ・カランコエが『スターク』であるという確証を。
「その結果、目標が『スターク』じゃないって判ったら、依頼は取り止め。依頼主のアンドロイドを直接問い詰める。これが私達の基本方針だよ」
ノエルの言葉に、シェラードは同意する。相手がただの傭兵であったなら、殺害するのはまずい。だが『スターク』だとしたら、見逃すわけにはいかない。
最良ではないが、これがノエル達にできる最善だった。
「具体的に、どのように証拠を見つけますか? 仮に『スターク』であったなら、これまで正体を隠して生き延びてきた男です。魔眼では見通せない程深淵に力を隠しているのでしょう」
そこでノエルはう〜ん、と唸る。
「考えたんだけどねぇ…何とかしてボロ出してくれないかな〜」
「とっ捕まえて尋問でもしてみる? …ってそんな事したら流石に刑務所行きか」
と、ぼたんがそう言ったところで、シェラードはこう切り出した。
「団長、ぼたん殿。私に考えがあります」
*
スメラギはサーカス団のテントを去り、アイゼオンに向かっていた。
アイゼオンで情報を集めたら、次はどうするか。
今のところ、それは考えようもなかった。ゼノクロスの手下がこちらに向かっているわけでも無いし、今起きている異変についての情報を集める以外、スメラギがやれる事は無さそうだった。
手詰まりな現状にやるせなさを感じながらも、スメラギはアイゼオンへと伸びる街道を進む。
ここで諦めてはいけない。手がかりが掴めないだけで、ゼノクロスは確かにこのターミナル02 haに存在している。だからいつかきっと、ゼノクロスと接触する事ができるはずだ。
そう思案に耽っていると、
『11時方向。高速で接近する物体あり。回避してください。』
ヴヴヴッ‼︎、とデバイスから早口でAPRILが警告する。
「ッッッ!!?」
ほぼ反射的に体を捻ると、ッヒュンッッ! と胴体のあった空間に、突き刺すように弾丸が撃ち込まれ、遅れて風を切り裂く音が聞こえた。
「狙撃…⁉︎APRILの索敵では何もいなかったはず…!」
APRILの索敵範囲はおよそ半径4km。その外から撃ってきたとすると、相当の腕を持ったスナイパーだ。
「うわ、あれを避けるか。さすが『エース第3位』、化け物だなぁ」
ぼたんはそう言いつつも、次弾を装填し、スメラギへ照準を合わせる。
「さて、幕は開けたんで後頼むよ、白銀騎士団」
『7時方向。接近してくる複数の物体あり。人間です。』
再びAPRILが警告音を鳴らし、スメラギはそちらの方を向くが、誰もいない。
「姿を消しているのか…!」
『魔力探知にも反応ありません。〈
しかし、どれだけ魔力と姿を隠そうとも、動けば空気の揺らぎや足音が発生する。
スメラギは『超電磁砲』を発動し、微弱なマイクロ波を周囲にばら撒く。例え幻影を見せられても、電磁波の反射なら、確実に相手を捉える事ができる。
「あいつ…こちらを捉えているぞ…⁉︎」
「流石にこの程度の目眩しは効きませんか」
『私が前に出ます。貴方がたは後背から叩いてください』
シェラードは冷静に〈
「……来るッ‼︎」
直後。
近距離にまで近づいてきた動体が、恐るべき速さで持っている武器を振り下ろした。『超電磁砲』によって、それが剣だという事は分かっている。
ギギギギッッッ‼︎‼︎と、スメラギは瞬時にギザギザ刃のブレードを右腕に構築し、その一撃を受け止める。
「なるほど、ソードブレイカーですか。確かに剣相手には有効ですが」
声の主は魔剣を防いでいるブレードを膂力で逆に叩き折り、スメラギに肉薄する。
「私には無意味です、スメラギ・カランコエ」
(声色から判断するに)男は、へし折った返しで斬り上げてくる。
「っっ!!」
スメラギは地面を蹴って後ろに飛び退き、寸前のところで回避する。
その瞬間、何かが後ろから迫ってくるのをスメラギは捉えた。
「くっ!」
左腕に構築したシールドを、身体を捻って後ろに構え、それを──正確には振り下ろした斧を防御する。
「おいおい見えてねぇんじゃねぇのかよ! 『エース第3位』は伊達じゃねぇってことか!」
「僕を知っている…⁉︎」
「ハッ、知らずに襲う奴がいるかよ!」
後ろには1人だけではない。恐らく、前にいる男は囮だ。であるならば、
(まずはこの包囲網から抜ける!)
スメラギは前髪から雷撃の槍を放ち、前方の男を牽制する。と、同時に両足と背部にスラスターを形成し、空中に跳んだ。そのまま後ろに飛び、逆に彼らの背面を取る。
スメラギはパワードアーマーを全身に装着し、そして右腕に形成したプラズマキャノンを構え、言う。
「何故僕を狙う! 暗殺者か⁉︎」
姿は見えないが、襲撃者達はこちらを振り向いたまま動いていない。姿を捉えたというのに未だ〈
「確かめたい事があるの」
「団長」
襲撃者のうちの1人が前に出る。聞いたことのある声だった。
この中で1番小柄だが、メイスを持っているようだ。
ダッッ!! とその襲撃者はスメラギに向かって真っ直ぐ駆ける。
「…!」
スメラギはプラズマキャノンを発射するが、弾は空中で消えることなく、そのまま遠くへ飛んでいってしまう。
スメラギは左腕のシールドを構え、防御に移る。
胸がザワザワする。ぺこらやわため達と会った時とは違う。何か重大な過ちを犯してしまったかのような。その不安が、襲撃者の撃退という本来すべき行動を阻害していた。
ガッッッッゴォォォン……‼︎‼︎‼︎
「ぐっっ…!!?」
小柄でありながら何という腕力か。
想像以上の衝撃にスメラギは呻く。と、同時に不安の正体が分かった。分かってしまった。
(メイス…あの声…この馬鹿力…。うそだ…ッ‼︎)
「なんでっ…⁉︎」
小柄な襲撃者は静かにこう尋ねる。
「あなた、何か隠し持ってるよね?」
パワードアーマーの筋力補助があるにも関わらず、スメラギはメイス使いを押し返すどころか徐々に圧されていく。
「つっ!」
スメラギは右腕のプラズマキャノンを後ろに回し、左側方に向けて最大出力で放つ。無論、そこには誰もおらず弾は虚空に消えていったが、その衝撃で自ら吹き飛ばされ、スメラギはメイス使いから距離を置く事ができた。
(ノエル…どうして君が…‼︎)
幸い、すぐ近くに海がある。海に潜れば逃げ方など何とでもなる。ただし、あるのは砂浜ではなく、断崖絶壁の先にだが。
「逃がさない!」
メイス使い──ノエルはスメラギが退くのを察知し、再び距離を詰めようとする。
と、崖の方へ後退するスメラギへ銃弾が飛び込んできた。
「そんな弾は!」
素早い反応速度で、スメラギはその銃弾を防ぐ。が、
「づッ⁉︎」
ガヅンッッッ‼︎‼︎
ただの銃弾にしては大きすぎる衝撃に、スメラギは思わずよろける。
「そりゃ、打撃力を高めたからね。貫通力は低いけどその分衝撃はすごいんだよなー」
遠くでぼたんが独りごちた。
わざわざ打撃特化の銃弾を使ったのは、ノエルを援護する為だけではない。そもそも、殺すのが目的ならこんな回りくどい事はせず、最初から脳天を撃ち抜いているだろう。
「しかし、殺さずに追い込むなんて。殺すより難しいじゃん。インテリ副団長は無理難題をおっしゃる」
*
「つまり、
「なるほど。ま、私達じゃ尋問なんて無理だし、
「もし最後まで力を隠し続けられたら? 『スターク』を見逃す事になっちゃうよ?」
シェラードの提案に、ノエルは懸念を示す。
「確かにそうなりますが、相手がただの傭兵だった場合、それ以上戦っても無意味でしょう。相手が『スターク』であるという証拠は、邪神の力を使う事しかない。何をしても力を使わないのであれば、どこかで区切りをつけておかねばなりません」
「……妥協しろってこと?」
ノエルはカリスマもあり指揮もできる優秀なリーダーだ。しかし、所詮は十八そこらの娘。まだまだ詰めの甘いところもあるし、何より人々を守りたいという理想が先走ってしまう傾向がある。
今回の依頼を断れなかったのは、おそらくそれが原因だ。シェラードはそれをどうこう責めるつもりはない。
シェラードは役職柄、そんな理想主義な団長を抑える事が多い。だから、打算的に考える。
もし、この依頼がガセで、目標がただの人間だったら。騎士団のメンバー全員が刑務所へぶち込まれるだけでなく、その長であるノエルには更に重い刑罰が下されてしまうだろう。
ノエルはそのリスクを負ってでも、この依頼を請けたのだろうが、そんな結果にはさせない。団長の主義に逆らってでも、この騎士団を、ノエルを守る。それが、副団長であるシェラードの役目だった。
「団長…どうか賢明なご判断を」
ピリピリした空気が漂う中、ややあってノエルは返答した。
「…分かった。ただ、目標が『スターク』かどうかは私が判断する」
「構いません。ありがとうございます、団長。ぼたん殿もそれでよろしいですか?」
「私は構わないよ。リスクはできるだけ減らしたいしね」
*
(この
ぼたんの狙撃で足が止まった所を、ノエルが追い詰める。
「おりゃあっっ‼︎‼︎」
ノエルはメイスを薙ぎ払うように脇腹を狙う。
スメラギは飛び退き、その一撃を間一髪でよける。
(とにかく逃げないと…‼︎)
「逃しませんよ」
「くっ⁉︎」
先程の剣士がスメラギの背後を取り、斬りかかる。
スメラギはソードブレイカーではなく、エナジーブレードで防御する。ソードブレイカーは防御用の剣だが脆く、特に魔装相手では簡単に折られてしまうからだ。
「貴方ともあろう者が防戦一方とは。何か
「やめてくれ! 僕には戦う理由がない…!」
「命を狙われている。これだけでは理由になりませんか? スメラギ・カランコエ。それとも戦ったらまずいことでも?」
剣士の明らかな挑発。そして、ノエルの先程の言葉。
彼らが知っているはずがない。この世界に来てから一度も使っていないのだ。だと言うのに、こう考えずにはいられなかった。
(まさか、僕の力を知っている…!?)
なんかぶつ切り感あるなー笑
白銀騎士団なのですが、本当は聖騎士団なんですねー(おい
まぁ聖騎士団にすると傭兵にできないし、こうして戦うこともなさそうなので、この世界では騎士団で良いかなって思ってます