【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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前回のラギアクルスについてですが、元からこの作品にモンハンのモンスターを登場させるつもりでした。なので本当は「魔物」呼称ではなく「モンスター」呼称の方がいいと思うのですが、何故か「魔物」に統一させてしまいました。なんでや昔の俺。
今更変えるのはどうだろうなぁという事で、まぁこのままで行くかもしれないし、改訂出すときにサイレント修正しているかもしれません。
というのはさておき、本編をどうぞ


12話 アイゼオン

「ふぅっ…お疲れ様、君たち!」

 

 艦橋から降りてきたマリンはスメラギ達を労う。

 

「海竜が来た時は少し驚いたけど…何とかなって良かったよ」

 

『APRILの貢献度は28%。十分な成果であると言えます。』

 

「いや、君最後しか仕事してないよね…?」

 

 それはさておき。

 

 目標を討伐し、あとは依頼主に報告するだけだ。

 

「依頼は終わったね。依頼主はどこにいるのかな」

 

「近くの町にいるって。さっさと報告してアイゼオンに行こ」

 

 マリンはデバイスからホログラムを投影し、町の場所をスメラギに見せる。それほど遠くなく、1時間足らずで着きそうだ。

 

「依頼の報告が終わったらすぐアイゼオンだから、もうそろそろお別れだね」

 

「もうか…。短い間だけど、すごく助かったよ、マリン」

 

「もー! まだ早いよっ。ま、疲れただろうからさ、アイゼオンに着くまでテキトーにくつろいでてよ」

 

 これは照れ隠しだろうな。スメラギは思わず頬を緩め、そして昔を思い出した。6人で過ごしていた、青空のように澄み切っていて、そして儚いあの頃を。

 

 一瞬、やるせない気持ちが込み上がってくるが、それを抑える。

 

 そして、自分の仮の居場所である医務室へ向かうべく船室へ下りた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、スメラギはいつの間にか船が止まっていることに気づいた。

 

 おそらく、依頼主のいる町へ着いたのだろう。スメラギはベッドから立ち上がり、甲板へ向かう。すると、その道中、通路にたむろしている船員たちがいた。

 

「あんなにデケェのを倒したってのにそりゃねぇよなぁ」

 

「あのオッサン、足元見やがって…!」

 

「ったく、これなら海竜を捌いて売った方がまだ金になりそうだぜ」

 

「どうしたんだい?」

 

 口々に不満をたれる船員たちに、スメラギは声をかける。

 

「どうもこうも、ようやっとあの海竜を倒したってのに、しょぼくれた金しか渡しやがらねえんだよ、依頼主のオッサンは! たったのこれだけだぞっ!」

 

 船員の1人が人差し指を立て、報酬をこっそりスメラギに教える。

 

「俺たちが海賊だからってケチってるのさ。舐めた野郎だよ!」

 

「まぁまぁ…。でも、フリーの依頼だとしても少ないね、これは…」

 

「傭兵のアンタから言ってやってくれよ! そんなにケチだと犬も雇えないってなッ!」

 

「だはっ! なんだそりゃ!」

 

「こうしてグチグチしてると気が滅入って仕方ねぇ! お前ら、エアるぞ!」

 

「おぉ、それがいい! じゃあな、傭兵!」

 

「あ、あぁ…。またね…」

 

 と、勝手に盛り上がっては勝手に去ってしまった。しかし、不思議と不快感はなく、むしろその無邪気さにスメラギは好印象すら抱いた。海賊とは言っていたが、船長のマリン含めこの宝鐘海賊団に悪い人はいないようだ。

 

(マリンは昔から何だかんだお人好しだったなぁ。ここの人たちもそんなマリンに惹かれたのかもな…)

 

 そんなことを思いつつも、スメラギは甲板へ向かう。

 

 

 

「ん、スメラギ。アイゼオンはまだだよ」

 

「やぁ、マリン。もう依頼主から報酬はもらったのかい?」

 

「あぁ…ま、一応ね〜」

 

「さっき、君の仲間が不満を口にしていたよ」

 

「たはは、あいつら…。まぁ、リスクの割にリターンが少ないのは確かだけどね。でも、こんなの今に始まったことじゃない。こんな事であたし達の冒険の道を終わらせることはできない! ってね」

 

「あはは、たくましいね、マリンは」

 

「まーねっ。ナヨナヨしてちゃ海賊は務まらないよ!」

 

 マリンはない力こぶを見せつけ、力強く応える。

 

 

 

「そういえば、アイゼオンって内陸にあるんだよね? どうやって入るんだ?」

 

 ギエルデルタからアイゼオンまでの道は沿岸部も通り、海に近い。しかし、肝心のアイゼオンは海岸から離れた内陸にある。ここからどうやってこの船をアイゼオンへ入るのだろうか? 

 

「あー、それはねぇ……まー見てなっ!」

 

 マリンはニヤッと笑い、

 

「反重力エンジン作動!」

 

「エネルギー伝達回路、反重力エンジンへ接続!」

 

「エンジン、正常に作動している!」

 

「よーし。ローエングリン、飛行モードへ移行! 変形だ!」

 

 飛び交う声達に合わせ、ローエングリンは海上を航行する船から形を変えていく。船の側面からは大きな翼が展開し、艦橋が船体へ引き込まれる。

 

 それはまるで、空を翔ける巨大な飛行機だ。

 

「この船…飛べたんだね」

 

「そ! 電力食うからあんまり使わないけどね。でもカッコいいでしょ? 男の子ってこういうの好きなんだよねぇ〜?」

 

「あはは…。否定はできないかな」

 

「俺らも最初の方はそりゃあ興奮したものよ!」

 

「けどよぉーせんちょぉ。エネルギー食うんだから動力炉だけでも買い換えた方がいいってぇ!」

 

「今時飛べない戦艦なんて無いが、年代物にしてはよくやってる方じゃないか?」

 

「君たちさぁ…。普段のそのやる気の無さというか、ネガティブなの、もうちょっとどうにかならないの〜?」

 

「でも、やる時はやるよね。さっきの戦いとか、みんな凄かったよ」

 

 マリンの呆れたような言葉に、スメラギはフォローを入れる。

 

「そうそう、メリハリだよメリハリ!」

 

「つけすぎ! 温度差で風邪引くわ!」

 

 

 

 そうこうしているうちに空中遊覧が終わる。アイゼオンの、飛空艇用の港が見えてきたのだ。

 

 あと少しで彼女らとも別れる。そう考えると、少し寂しさを感じる。今まで感じなかったわけではないが、この船の、賑やかな雰囲気がどこか昔を思い出させるのだ。

 

 だが、忘れてはいけない。自分は世界の為にも、そして彼女たちの為にもやらねばならないことがある。感傷に浸る暇はないはずだ。

 

 

 

 

 

「長いようで短かったね〜、キミとの時間は」

 

「助けてくれてありがとう、マリン。本当に」

 

「どうってことないよ。人を助けるのに理由がいるかい? …ってね!」

 

 マリンは照れくさいのか、少しふざけたような態度で返す。

 

「楽しかったよ。いつかまた、会えると良いね」

 

「もち! 飲みにでも行こうよ! じゃあね、スメラギ!」

 

 

 

 さて。

 

 アイゼオンに着いて、スメラギはまずアルヴィアス支部に向かった。

 

 

 

 アルヴィアス支部は大きなビル一棟をそのまま使っている。それは、異世界からの来訪者の窓口として様々な行政機能が内包されているからでもあるが、何より、アルヴィアス本来の機能が半分以上を占めている。つまり、世界で起きる「異変」解決を中心とした依頼。その仲介や、傭兵への様々な物資の提供、他世界との連携連絡エトセトラ。

 

 これだけの機能を一挙に内包しているアルヴィアスは確実に都市の生命線の一翼を担っていた。

 

 

 

 しかし、スメラギがこの巨大インフラ設備に来たのは、何も調べ物の為だけではない。

 

 スメラギはアルヴィアス所属の傭兵向けの窓口へ向かった。

 

 

 

「僕の相方が壊れてしまったんだけど、直せるかな」

 

「アンドロイドですか?」

 

「いや、少し大きい機動兵器なんだけど…」

 

「MEMAでも大丈夫ですよ。データと機体を送っといてください。技術部に渡しますので。あ、あと修理費は自動で口座から引き落とされるので注意してくださいね」

 

 正確にはメタトロンで動いている為、MEMA(魔導力機動兵器)ではないのだが。まぁ修理してもらえるなら変わりはないだろう。

 

「あぁ。ありがとう」

 

 それと、とスメラギは付け加える。

 

「僕の知り合いに…えーと、フリーの傭兵がいるんだ。食い扶持が多くて、直接の依頼だけだと苦しいんだ。できれば、彼女たちにアルヴィアスで請けた依頼を融通してくれないかな?」

 

 決して同情からではない。これが、マリン達にしてやれるせめてもの恩返しだ。

 

「分かりました。スメラギ様のお願いなら、問題ありませんよ」

 

 受付の人は快く引き受けてくれたが、最後の一言が余計だった。

 

「何と言ってもあなたは『エース第3位』なんですからっ! 無理でも通しますとも!」

 

「あ」

 

「おい、エース第3位って言ったか、今…?」

 

「あのエース第3位がこの世界に…」

 

「一体どんな奴なんだ…⁉︎」

 

 スメラギは全身──特に顔が熱を帯びるのを感じる。全く、これだからこんな肩書きなど要らないというのに…

 

 

 

 何を隠そう、スメラギ・カランコエは傭兵組織「アルヴィアス」の『エース第3位』なのだ。

 

『エース』という呼び名は、アルヴィアス内にいる傭兵の中でも屈指の強さを誇る者たちに対する、言わば羨望と畏敬──そして少々のやっかみ──の言語化である。

 

 公式に発表されているものではないため『エース』が何人いるかは明確には定まっていないが、スメラギはその中でも上から3番目という序列を保持している。

 

 比類ない魔法の使い手や並々ならぬ操縦センスを持つMEMAのパイロットなどはアルヴィアスにいくらでもいるが、その中でも、若くして第3位という称号を与えられているのは、スメラギ自身の優れた身体能力や戦闘のセンスだけでなく、APRILの存在も確かにあった。

 

 まぁそれはさておき。

 

 現状として、スメラギはその称号のおかげでマリン達に密かな恩返しをすることができたものの、同時にこの称号のせいで要らない注目を浴びてしまっていた。

 

 スメラギは早々にこの場を去り野次馬どもからの脱走を試みるつもりだったが、忘れていたことがあった。『あの』件についてだ。

 

「あっ…と、そういえば、他世界との連絡はつくかい?」

 

 目で急ぐように何となく伝えつつ、受付にそう尋ねる。

 

「他世界とですか。それが実は…全ての世界と連絡がつかなくって」

 

「全ての世界と?」

 

 以前いた世界から起きていた現象。異世界へ往来するどころか、連絡すら不可能になっているのだ。

 

「どうやら世界を覆うように結界が張られているらしくて、それが「回廊」を閉ざしているようです」

 

「結界を破る方法はないのかい?」

 

「その結界についてなんですけど、どうやら科学でも魔法でも説明がつかないらしいです」

 

「科学でも魔法でもない…。神々の秩序ってことか…?」

 

「今のところ、アルヴィアスはそう判断しています。ただ、天界と連絡が取れなくてこれ以上のことはちょっと…」

 

「分かった。ありがとう」

 

(前の世界と同じ…進展は無しか)

 

 これがゼノクロスと関係があるかは分からない。だが異世界から救援が期待できないというのは、苦しい状況でもあった。何せ、相手は世界を滅ぼす程の相手なのだから。

 

 それにしても、実質この世界はヒステラルムから孤立しているというのに、アルヴィアス支部の中はあまり慌ただしい様子も無く、平常運転だった。この世界はターミナル02、03両方から離れている辺境にあり、来訪者がほとんどいないからかもしれない。

 

 スメラギはそこまで聞くと、急いでアルヴィアスのビルから出た。

 

 

 

 世界を覆う結界について、解決の糸口は結局見つからなかった。アルヴィアスが調べてあれだけしか分からないのだから、自分だけで解決できるとは思えなかった。

 

 

 

 結局のところ、諸々のことはゼノクロスを倒してから。優先順位はそうならざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──アイゼオン、都市境。

 

 

 

 街というよりかは、ほぼ村。畑以外は数軒の家と、あとはただっ広い平原が地平線の向こうまで伸びるのどかな風景に、一台のジープが置かれていた。そこには屈強な男が数人と、2人の可憐な少女がいる。

 

「さて、あの男を……どうやって探そっか?」

 

 騎士のような容姿をした豊満な胸を二つ携えた少女──白銀ノエルはそう尋ねた。

 

 あの男、というのは依頼主のアンドロイドのことだ。

 

 現時点でノエル達は、依頼の討伐対象であったスメラギ・カランコエを白、つまり『スターク』ではない──かなりグレーだが──と判断している。元々この依頼に何か裏があることを感じていたノエルは、「依頼の不成立」をもって依頼主を追い、問い詰めようとしているのだ。

 

「アイツと会ったあのビルに行ってみようよ。何か足取りが掴めるかもしれない」

 

 そう答えたのは、コートをだらしなく羽織っているライオン耳の少女──獅白ぼたんだ。

 

「でもよ、その依頼主が俺たちを嵌めようとしてるって可能性はないのか?」

 

 つまり、対象が『スターク』ではないことを知っていながら、ノエル達に討伐を依頼し、逆にノエル達を警察に突き出す。そういう可能性もないわけではなかった。

 

 しかし、プラチナブロンドの髪色をした、どこかインテリの印象を与える男──シェラードは即座に否定した。

 

「それはないでしょう。嵌るなら、我々がスメラギ・カランコエと戦っている最中にするはず。我々が騙されたと気づいてから警察を動かすのでは遅い。逆に自分が逮捕される危険性もありますからね」

 

「じゃあ、私たちは依頼主を追いかけることだけ集中してればいいってこと?」

 

「あまり時間をかけることもできませんが」

 

 ノエルの言葉にシェラードは肯定する。

 

「じゃあ行きましょうよ、団長。そのビルに」

 

 

 

 

 

「キース、どう? まだいる?」

 

「んー…熱も二酸化炭素も出さないアンドロイドを探知するのは難しいけど…多分いないと思うっす」

 

 万が一襲撃されるだろうと想定して警戒していたが、どうやら杞憂だったようだ。

 

 ノエル達は廃ビルの中へ進み、依頼を請けた部屋へ辿り着く。

 

「一見何も無さそうだけど…」

 

「こういうのは手っ取り早く〈映像時間操作(リバイド)〉を使ったらいいんだよ」

 

 ノエルの提案を受け、キースは〈映像時間操作(リバイド)〉を使う。

 

 

 

 余談だが、キースは元は警察官だった。犯人捜索のための様々な魔法を使うことができ、同僚の中でも特に有望視されている存在だったが、とある事故がきっかけで退職し、それから数年して白銀騎士団と出会い今に至っている。

 

 

 

 〈映像時間操作(リバイド)〉によって、およそ数時間前のこの部屋の映像が映し出される。ちょうど、ノエルとぼたんが部屋を去った直後だ。

 

「おい、壁からなんか出てきたぞ!?」

 

『回りくどい事をするわね、ヘーミッシュ。私達だけで殺してしまえばいいのに』

 

 何もない壁から1人の女がぬっと現れた。

 

「仲間がいたようですね」

 

『奴は弱い。だが、力だけは強い。前の個体は愚直に奴のみを狙った為に敗れた。故に俺たちは策を講じる必要がある』

 

「前の個体…やっぱり、何か裏がある。コイツらは以前からスメラギ・カランコエを狙っていたんだ」

 

 と、映像の男──ヘーミッシュはホログラムを映し出す。

 

「! キース、止めてください」

 

 それは、30人ほどの少女の写真と、簡単なデータだった。

 

「アレ…! 団長とぼたんちゃんだぞ⁉︎」

 

「私たちの他にも何人もいる…。知らない子ばかり…」

 

「何だこりゃ。美人ブロマイドか?」

 

「これは…所在地に所属? 何の為に?」

 

「キースくん、進めて」

 

 ノエルに言われ、キースは再生を続ける。

 

『戦闘員は…20人か。その全てを回収できないとしても、この中の半数以上が戦力になると仮定すると、充分ではあるか』

 

『対象が彼女達を殺す可能性は?』

 

『これまでの行動から、その可能性は限りなく低い。作戦の成功確率は高い』

 

 

 

「戦闘員…どういうことだろ」

 

「スメラギ・カランコエに対する戦力でしょうか。しかし、彼1人にこれほどの人数を用意するとは…」

 

 ここで、いくつものホログラムの中から二つの写真がピックアップされる。

 

「私とノエルだ」

 

『まずはこいつらだ。どうせ依頼は失敗するだろうが、それは構わん。それよりも、どちらか、あるいはどちらともが俺を追うことになるだろう。そうしたら次のフェーズだ。頼むぞ、マーシェ』

 

 

 

「なーんか私たちの行動、読まれてない?」

 

 ヘーミッシュとマーシェ──と呼ばれた女アンドロイドは、ここで部屋を去っている。<映像時間操作(リバイド)>を止め、ノエルは不機嫌そうに呟いた。

 

「だけど今回の依頼、俺たちを捕まえる罠である可能性は無くなったっすね」

 

「とは言え狙いが掴めませんね。我々にこのヘーミッシュを追わせることが、彼自身に何の利があるのでしょうか」

 

「でも、何も分からないわけじゃない。コイツらの目的は多分、スメラギを殺すこと。そしてその為に私たちを集めること、だね」

 

 ぼたんは簡潔に、彼らの会話をまとめる。

 

「しかしですよ、何であのリストの子たちなんすかね。しかも団長もぼたんちゃんも入ってるし」

 

 さらに気がかりなのは、あのリストの全員が戦闘員ではないことだ。中には学生も混じっている。戦力を集めて殺害することが目的ならば、一般人など真っ先にリストから除外されるべき存在のはずだ。

 

「うーん…なんだろうね。結局、本人に問い質さないと分からないってこと?」

 

 ノエルは首を傾げ、形のいい柔らかな頬を人差し指で支えつつ、そう呟く。

 

「そうなりますね。しかし、マーシェというアンドロイドも気になります。彼女はヘーミッシュとは別行動を取っているようですから」

 

「じゃあ、ヘーミッシュを追う組と、マーシェを追う組で分かれた方がいいね」

 

「私とぼたんちゃんでヘーミッシュを追うよ。後のみんなはマーシェを追うってことで。いいかな、みんな?」

 

「私は構わないよ」

 

「団長の仰せの通りに」

 

「団長がそう言うんなら従うけどよ、2人で大丈夫なのか?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ! 私たちなら何とかなるさ!」

 

 ノエルはグッと腕に力を入れ、上腕二頭筋を見せつける。

 

 が、

 

「それに、あえてヘーミッシュの言う通りにして出方を窺う…もあるよね?」

 

 ぼたんの言葉に、ノエルはぎくっとする。

 

「あう、バレてたか…」

 

 それを聞いて、シェラードはあまりいい顔をしなかった。

 

「あまり無茶はしてくださるな、団長。貴女をしてこの白銀騎士団があるのですから」

 

「心配性だなぁシェラードくん。もしもの時なんて起こらないように気をつけるよ」

 

「お心遣い、感謝致します」

 

 

 

「ヘーミッシュは魔界に行くっぽい」

 

 〈映像時間操作(リバイド)〉を辿って行くと、ヘーミッシュは魔界と人間界の境界へ、マーシェは人間界の都市部へそれぞれ進んでいった。

 

「私たちは列車で行った方がいいね」

 

 魔界へ行くには徒歩や自動車などといった陸路か、空中を走る列車の2つの手段があるが、もっぱら利用されるのは空路の方だ。

 

 陸路の方はというと、物資の輸送などが主要だが、その際に貨物の中に忍び込み、密航する者もいた。恐らくヘーミッシュはその方法で魔界へ入っていったのだろう。

 

「あ、そうそう。みんな、一つお願いがあるんだけどいいかな」

 

 と、唐突にノエルは切り出す。

 

「いかがされました?」

 

「あのね、私たちの目的はもちろんヘーミッシュとマーシェの捜索なんだけど、道中で()()()()()に会ったら、できるだけ保護してもらいたいんだ。アイツらの狙いはリストにあった子たちを集めること。その為には手段を選ばないかもしれない。だから、その時に備えて対策しておいて欲しいんだ」

 

 確かに、相手をよく知らない以上、どの程度なら実行に移さないか、どのような手段を用いるかというのは確証がない。狙いを知っているのならば、対策はするべきだ。

 

「御意」

 

「そういう事なら全然。やるだけやってやりますよ」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 気を取り直して。

 

 大破した十万隊長(ミーレ・センチュリオン)のデータを工廠に渡したことで、アルヴィアスでの諸々の用事は終わった。

 

 次はノエル達を追い、その依頼主について聞き出さねばならない。

 

 さっきの野次馬たちに白銀騎士団について尋ねようかとも思ったが、それはすぐに誤りだと気づいた。無闇に情報を拡散させ、彼らに今回の件が知られてしまったら、ノエル達は違法な依頼を請けた事で逮捕されてしまうかもしれない。()()()()()()()()

 

 だから、他の方法で探る必要があった。

 

「しかし、どうしたものかなぁ…」

 

『衛星の映像から分析してみます。少しお時間を要しますが、それまでくつろいでいてください。』

 

「え、APRIL?」

 

 APRILはそう言うと、スリープモードに移行し、それきり黙り込んでしまった。

 

「…じゃあ用事を済ませておくか」

 

 

 

 スメラギがE-ロッカーステーションに登録し、予備のナノマシンなどを保管していたところで、デバイスがヴヴヴッと震えた。

 

『解析完了しました。ノエルさん達は二手に分かれているようです。』

 

「別行動を取っているのか」

 

『ノエルさん、ぼたんさんは魔界へ。他の白銀騎士団の団員は他の都市へ移動しています。』

 

(どっちが依頼主に向かっている…?)

 

 少し考えた末、こう結論づけた。

 

「ノエル達のいる方へ行こう。多分、そっちに依頼主がいると思う」




どうしてもスメラギとノエル達が魔界へ向かう所までは書きたい!という鋼の意志を発揮していたらいつのまにか1話並みに長くなってしまいました。でも更新が遅いのは長いからではないんですよね()
ところで、次回からは魔界編。魔界と言えば、あの子やこの子も出てきますね!僕も楽しみ!
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