【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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14話 魔物暴走

 スメラギは襲ってくる魔物を撃破しつつ、街中を駆ける。

 

 基本的に魔物は、自分より強いと判断した敵には襲ってこない。にも関わらず、スメラギを見つけた途端襲いかかって来た。どうやら、視界に入ったヒトを手当たり次第襲っているようだ。

 

 だから、これは明らかに異常なことだった。

 

 

 

「アルヴィアスだ! 状況は!?」

 

 同じく街で魔物と戦っている魔族の1人に声を掛けた。

 

「傭兵か! 街の南西から魔物が来てる! 援護に向かってくれ」

 

「分かった!」

 

「あぁ、それとこのチャンネルを使うと良い。戦況を見れる」

 

 彼が教えた回線に接続すると、デバイスにベルナバイドの詳細な地図や現在の戦況などがアップロードされた。

 

『ダウンロード完了。…マッピング完了。まずはP7地区に向かうことを提案します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場数を踏んでいるだけあって、混乱した戦況においても、ノエルとぼたんは素早く自身の目標地点を定めていた。

 

「私たちはS4地区に行こう。前衛は任せて」

 

「おけ。私は上から狙撃するよ」

 

 短くそう言うと、2人はすぐに〈飛行(フレス)〉で目的地まで向かった。

 

「それにしても、何で突然魔物が街に…」

 

「さぁ…でも明らかに普通じゃない。魔物が街に入ってくるなんて」

 

「何か原因があるってこと?」

 

「かもしれない。単に街を襲いたかったのか、それとも別の目的があるのか…」

 

 そこまでは分からなかった。だが、何かしら裏があるのは間違いない。

 

 2人は何となく、そう確信していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 P7地区、その次にR5地区と来て、現在スメラギはS4地区に向かっている。

 

 スメラギが各地区を転々としているのは、救援に向かっているだけでなく、ノエルとぼたんを探すためでもあった。

 

 彼女たちが魔界に来ているのなら、この危機を無視するはずがない。

 

2()()()()()()()()()()スメラギは、そう確信していた。

 

 そして、それは的中した。

 

「見つけた! 獅白ぼたん!」

 

「げっ…! スメラギ・カランコエじゃん…」

 

「君たちに危害は加えるつもりはないよ。それより、ここは大丈夫かい?」

 

 そう言うと、ぼたんは少し警戒を解く。

 

「見ての通り。さすが魔界だね。個々の戦力が人間の比じゃない。もう盛り返してるよ」

 

 ぼたんの言う通り、APRILが投影したホログラムには、防衛軍が徐々に魔物を追い詰めている様子が見て取れた。

 

「とりあえず、この魔物の襲撃をどうにかする気があるんなら、うちの相棒と合流してよ。そっちの方が盤面を維持しやすい」

 

「ノエルと?」

 

「そ。というか私たちのこと、調べてたんだね。もしかして捕まえるつもりで追ってたの?」

 

 ぼたんは冗談めかして言う。だが目は笑っていなかった。

 

「…まさか。君たちの依頼主を知るために調べただけさ」

 

 対するスメラギは心で汗を拭きながらそう答えた。もちろん別の意味で、だ。

 

「それより、彼女はどこに?」

 

「散歩でもしてなければここら辺にいるはず。まぁ…あの子は嫌がると思うけど」

 

 ぼたんはデバイスでノエルのいるであろう場所をマーキングする。

 

『目標地点、設定しました。』

 

「じゃあ、また後で」

 

「…後で?」

 

「言っただろう。君たちには依頼主のことを聞きたいんだって」

 

 スメラギはそう言い、ビルの屋上から飛び降り、ノエルのいる所へ向かう。

 

「はぁ…厄介なやつに出くわしちゃったな。一応、ノエルに連絡入れとくか…」

 

 

 

 

 

「スメラギが…!?」

 

『分かってるとは思うけど、攻撃しないでね。団長さん』

 

「…分かった。殺さないでおく…」

 

「ちょっと、頼むよ? 本当に」

 

 一瞬、復讐に来たのかと思ったが、そんな事はないようで、単にこの魔物の襲撃を止めに来ただけらしい。

 

 しかし、ノエルの心中は穏やかではなかった。一度刃を交えた相手と共闘しろだなんて! 

 

 それに、あの時はああ判断したが、彼が『スターク』じゃないなんて言い切れない。本当なら、続きをやりたいところだったが、ぼたんに釘を刺されてしまったから抑えざるを得ない。

 

 悶々としながら、魔物を叩きのめしていると、横から襲いかかってきた魔物が上空からの光線で蒸発した。

 

「…ちょっと。キミに助けてもらいたいなんて言ってないんだけど」

 

「あはは…。元気そうで何よりだよ…」

 

 スメラギが地面に降りると、ノエルはずかずかと彼の方へ歩いていき、さらに文句を言う。

 

「それに! あんな敵、私1人で倒せたんですけど!」

 

「い、いや、君、あの魔物に注意向いてなかったし…」

 

「何か言った⁉︎」

 

『ちょっとちょっと、ケンカしてる暇あったら魔物倒してよ、2人とも。狙撃(わたし)だけじゃ効率悪いって』

 

「むう…!」

 

 と、そこへぼたんが通信で仲裁に入る。それで少し頭が冷えたノエルは、さっさと魔物の方へ行ってしまった。

 

「そ、そういえば…他はどうなんだい? かなり安定してきたようだけど」

 

『そうだね…大体はギリギリ何とかなってるかな〜…っと1つ、S8地区。魔界学校のところだ。学生が防衛に出てるっぽいけど、ちょっと押され気味』

 

「学生が…!」

 

「スメラギ、行くよ!」

 

 その話を聞き、ノエルはすぐに〈飛行(フレス)〉で飛んで行き、続けてぼたんも目標の地区へ向かっていくのが見えた。学生と聞き、一刻も早く助けに行くべきと考えたのかもしれないが、スメラギに先を越されたくないという思いもあったのかもしれない。スメラギはそう推量し、苦笑するが、前者についてはスメラギも同じ気持ちだ。スラスターを噴かし、スメラギはノエル達と共に魔界学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街を襲う魔物は小型が主だが、大型の魔物も少なくない。その為、大型の魔物のいる地区に戦力を集中せざるを得なくなり、必然的に人手は不足していた。

 

「あやめちゃん、こっちにもっと人増やせないの!?」

 

 魔界学校の生徒であり、あやめの先輩でもあるヴァンパイアの女生徒──夜空メルは、あやめにそう尋ねる。

 

「無理だ! どこも手一杯で余たちに割ける戦力がない!」

 

 が、あやめは愛刀──妖刀羅刹(ようとうらせつ)で魔物を両断しながら、そう答える。

 

 その横でシオンが〈魔黒雷鉄槌(ジラズ・ノア)〉を放ち、柱の如き極太の雷撃で一度に数十匹の魔物を消し炭にする。

 

「ねぇちょこ先。アレ使っていい?」

 

「アレって…<獄炎殲滅百砲(ジオ・グレイダート)>のこと? ダメよっ。街ごと滅ぼす気?」

 

「だって数が多すぎるよこれ! 〈魔黒雷鉄槌(ジラズ・ノア)〉じゃ一度にそう多くは倒せないし」

 

 そう。単純な強さならば、シオンを始め高い魔力と技術を持つ魔族が魔物程度に遅れを取るはずがない。

 

 ただ、市街地という特殊な環境が、彼らを縛り苦戦させていたのだ。

 

「シオン。私たちはここを守ってるだけでいいの。防衛軍は確実に押し返してきてる。時間が経てばこっちに救援が来るはずよ」

 

 

 

 生徒会長であるあやめは、保健医の癒月ちょこ、生徒の夜空メル、紫咲シオン、潤羽るしあと共に魔物と戦っている。

 

 魔界学校には、彼女たちより強い生徒などいくらでもいたが、前衛、撹乱、後方支援といった要素のバランス、そして何より彼女たちの仲の良さから生まれる優れた連携はこの5人でしか実現できず、それが故に彼女たちは魔界学校一のパーティと称されていた。

 

 実際、数的には圧倒的に不利であったが、幾度となく襲ってくる魔物の波を何度も食い止めていた。しかし、倒しても倒しても無限に現れるモンスターに、少しずつだが押されている。

 

 

 

 そうは言っても、こうも相手の物量が多くては防衛ラインが突破されてしまうのは時間の問題だった。

 

「るしあのネクロマンスで魔物を操っていますが…流石に限界があるのですっ…!」

 

「他の生徒は皆、他の方面で忙しそうだね…でもそろそろメル達も…」

 

「2人とも頑張って! あたし達だけで何とか食い止めないと…!」

 

 心身共に限界を迎えようとしていた時、

 

「みんな! あれを見て!」

 

 ちょこが指さした先に、3つの点が見えた。それは徐々に大きく、形がはっきりしていき、ヒトだと分かった。

 

「救援…!」

 

 メルが思わずつぶやく。彼女たちは間に合ったのだ。

 

 

 

 

 

「いた! アレかな!?」

 

「多分そうっ。狙撃ポイントにつくから2人とも前衛よろしくー」

 

 ぼたんはノエルとスメラギから離れ、狙撃ポイントへ向かう。

 

 そして2人は魔界学校の生徒が戦っている場所へ急降下する。

 

「破砕鎚、秘奥が壱」

 

 〈飛行(フレス)〉を解き、自由落下しながらノエルは魔力を無にし、構えを取る。

 

「〈轟崩打連(ごうほうだれん)〉ッ!!!」

 

 ちょうどノエルの真下にいた金獅子に、刹那に2度、渾身の打撃を与える。金色の魔物はこの二撃をまともに食らい、瞬時に身体が粉砕された。そればかりでなく、秘奥の衝撃で周りにいた小型の魔物も同時に叩きのめされる。

 

「僕、こんなの食らってたのか…」

 

 今生きていることに本当に胸を撫で下ろしつつ、スメラギは足にバタリング・ラムを形成し、加速をつけて迅竜の頭へ突撃する。まさに飛びかかって、生徒たちに襲い掛かろうとしていた迅竜は、脳天に予想外の一撃をお見舞いされ、力なく地面に落ちる。

 

「大丈夫かっ!?」

 

「ありがとう人間様…! えっと…」

 

「僕たちは傭兵だ。僕はスメラギで、こっちはノエル。あと、少し離れたところにもう1人ぼたんという子がいる。なんとか間に合ってよかったよ」

 

 礼を言うあやめに、スメラギは自己紹介をする。

 

「スメラギ…?」

 

 生徒の1人、るしあはスメラギの名前を反芻する。

 

 聞き覚えがある。いや、無いはずなのに、何故か懐かしさと、そして悲しさを感じる。初めて会うはずなのになぜ…

 

「今のところ、学校の他の区域は大丈夫そう。ここが設備的に1番弱いところだから、魔物が集中しているんだと思うの」

 

「ベルナバイドの他の地区も押し返して来てる。後はここさえどうにかすれば襲撃は抑え込めるはずだ」

 

 

 

 状況説明をするちょことスメラギの声で、るしあは我に帰る。まだ戦いは終わっていないのだ。この違和感を問い正すのは今じゃない。

 

 そう思い直し、るしあは新たに加わったスメラギ達とともに魔物の群れへ立ち向かった──




るしあの感じた違和感の正体は果たして…
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