【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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15話 終息、新たな陰謀

「妖刀羅刹、秘奥が壱…」

 

「〈白南風(しらはえ)〉ッ!」

 

「わっ、魔界学校の生徒って強いなぁ。私も負けてらんない!」

 

 あやめが神速の一撃で同時に2体の大型魔物を上下に両断するのを見て、ノエルが奮起する。

 

「破砕鎚、秘奥が弐」

 

 目の前の魔物が鋭い爪をノエルに振り下ろすが、ノエルはメイスでそれをいなし、回転を加えつつ魔物の土手っ腹に一撃を叩き込む。

 

「〈衝流撃破(しょうりゅうげきは)〉!」

 

 桁外れの膂力から繰り出される攻撃は魔物のあばら骨を容易に砕き、さらに衝撃が身体中でのたうち回って内から破壊していく。

 

 スメラギ、ノエル、ぼたんが加わった事で、この地区も劇的に盛り返して来た。攻勢とまではいかないが、それでも確実に魔物の数は減っていっている。

 

 しばらくして、

 

『S8地区! 魔校の生徒! 魔法障壁を街全体に張った! 後はお前達だけだ。一気にやっちまえっ‼︎』

 

 他の地区で戦っていた魔族から〈思念通信(リークス)〉が届いた。どうやら他の地区は大体片付いたようだ。

 

「! …よーし、魔力が切れないうちにやっちゃうか…!」

 

 シオンはそう呟くと、〈思念領域(リクノス)〉でベルナバイド中の魔族に伝える。

 

「みんな、空へ飛んで!!」

 

「え? 何で?」

 

 メイスを振り下ろし、魔物を地面に陥没させながら、ノエルはあっけらかんとした様子で訊ねる。

 

「アレをやるのね…。傭兵の方々も、消し炭になりたくなかったらとにかく空へ逃げて!」

 

 そうして、全ての魔族とスメラギ達が空へ飛ぶと、

 

「〈獄炎殲滅百砲(ジオ・グレイダート)〉ッッッ!!!!」

 

 100門の〈獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)』が集束し、1つの巨大な魔法陣が構築される。シオンはその砲門を地面に向け、目を灼くほどの光を放つ漆黒の炎を照射する。黒炎は地面を走り、ベルナバイド中の魔物を瞬時に消し炭にしていく。

 

「うわ、魔法障壁が軋んでる。威力高すぎでしょ」

 

 ぼたんの言う通り、建物に張られた魔法障壁が、漆黒の炎に晒されギシギシと悲鳴を上げている。魔法障壁が無ければ、ベルナバイドは一瞬にして魔物ごと消し飛んでいただろう。

 

 

 

 〈獄炎殲滅百砲(ジオ・グレイダート)〉の照射が終わると、辺りに魔物の姿はもう見えなかった。

 

『ベルナバイドに侵入した魔物は全て撃滅しました。防衛成功です、マスター。』

 

 APRILのその報告を聞き、スメラギはふっと肩の力を抜く。

 

「ふぅ、何とかなったね〜」

 

「もうちょっと持久戦続いてたら危なかったな〜。弾、あれだけ持ってきたのにけっこうギリギリだったよ」

 

 と、そこへ後方支援をしていたぼたんが戻ってきた。ノエルもぼたんも無事なようだ。

 

「うげぇ…もう動けない…。ちょこ先助けてぇ〜」

 

「あらあら、よく頑張ったわね。保健室、行きましょうか」

 

 〈獄炎殲滅百砲(ジオ・グレイダート)〉の行使でシオンの魔力はすっかり空になり、その場で倒れてしまう。そんなシオンを、ちょこは介抱し、校舎へと連れて行った。

 

「最初からこうしてれば良かったのに…」

 

「敵が多すぎて障壁を張る余裕がなかったんだよ。突然の事だったしね」

 

「…さて」

 

 刀を納め、あやめはスメラギ達の元へ近づいていく。

 

「助かったぞ、人間様たち。余はこの魔界学校の生徒会長を務める百鬼あやめだ」

 

「いえいえ。私、白銀騎士団団長の白銀ノエルです! よろしくね」

 

「私は獅白ぼたん。フリーの傭兵だけど、今はノエルと一緒に行動してる」

 

「改めて…僕はスメラギ。アルヴィアスで傭兵をやっているよ」

 

 それぞれ自己紹介を済ますと、

 

「疲れただろう、傭兵様。窮地を助けてくれた礼に、校舎(ここ)で休んでいってくれ。少しウチの生徒がやかましいかも知らんが、そこは多めに見てやってほしい」

 

 あやめがそう提案してきた。確かに、スメラギはギエルデルタを出てからちゃんとした休息はほとんど取っていない。少しでも身体を休めたいという気持ちはあるが、

 

「それはありがたいけど…」

 

「何で魔物が街に襲ってきたんだろう。魔物は人のいる所には近付かないはずじゃ…」

 

 と、ノエルが訊ねる。どうやらノエルも同じことを思っていたようだ。

 

「うむ、やはりそれが気になるか…。では先に、余に着いてきてもらおうか。余はこれから元老院とその事について協議するのだ。会議が終わったら傭兵様にいち早く伝えよう」

 

 ノエルの言葉を受け、あやめは3人を校舎へ案内していく。

 

 と、ぼたんがノエルの耳にそっと囁く。

 

「ノエル」

 

「うん、分かってる。()()()()だ」

 

 

 

 

 

「あっ…」

 

 遠ざかっていくスメラギに、るしあは手を伸ばそうとするが、すぐに引っ込める。

 

「るしあちゃん? 早く教室に戻ろ。先生たち、心配してるよ?」

 

「あ、はい、メル先輩。すぐ行きます…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あやめが会議室で元老院と会議している間、スメラギ達は隣の生徒会室で待つ事になった。のだが。

 

「……」

 

「……」

 

(き、気まずい…)

 

 話しかけてくるな、と言わんばかりの雰囲気を醸し出し、口を真一文字に結んでいるノエルに、デバイスをポチポチと弄り続けるぼたん。空気は最悪だった。

 

「あ、そういえば」

 

 と、しばらくしてぼたんが口を開く。この空気の中でも平然としているぼたんはやはり肝が据わっている。いや、マイペースといった方がいいのかも知れないが。

 

「私たちに依頼主のこと聞くんじゃなかったの?」

 

「…その依頼主に会ったんだ」

 

「ヘーミッシュに…⁉︎」

 

 と、今まで会話を拒んでいたノエルが驚いて返す。

 

「何で依頼主だと分かったの?」

 

「自分から言っていたよ。ヘーミッシュだったか…彼は僕と戦うことが目的のようだった。そして、この魔物の襲撃も知っている素振りをしていたよ」

 

 その言葉に、ノエルは疑問を抱いた。

 

(どういうこと…? ヘーミッシュは、自分だけではスメラギを倒せないと知っていたはず。だから私たちを集めようとしていたのに…)

 

「有り得ないよ。ヘーミッシュはベルナバイド方面に向かってたし、奴を追ってる間アンタには会っていない」

 

 ぼたんは別の疑問を口にする。

 

 そう言われてみればそうだ。2人はずっと〈追憶(エヴィ)〉を使ってヘーミッシュを追い続けてきた。スメラギが自分たちを追ってきたのならば、途中でスメラギに会っていなければおかしいのだ。

 

「彼とは駅の入り口で会ったんだ。魔界行きの列車を降りてすぐ。見間違いじゃないのかい?」

 

「別人…とは思えないな。ん〜、どういう事だろ?」

 

「もしかしたら、元々魔界に同じ個体がいたのかも」

 

 と、ぼたんは自分の考えを口にする。

 

「えーと、つまり最初、魔界に1体、人間界に1体ずつヘーミッシュがいたってこと?」

 

 そうノエルが訊ねると、ぼたんは頷く。

 

「魔界に着くまで、私たちは人間界のヘーミッシュを追ってた。けど、魔界に着いてから、入れ替わったんだ。私たちは魔界にいたヘーミッシュを追い、人間界のヘーミッシュは駅でスメラギを待っていた」

 

「なるほど。そう考えれば辻褄は合うけれど…何の為に?」

 

「さぁ…アンドロイドの考える事はイマイチ…」

 

 

 

 

 

(ね、ヘーミッシュは何をしようとしてるのかな)

 

(分からない。てっきり、私たちと同じくあの子達を使ってスメラギを殺させるのかと思ってたけど…)

 

 ノエルとぼたんは〈思念通信(リークス)〉で密かに話す。

 

 ノエル達は、ヘーミッシュの目的がとあるリストの「対象」を集める事だと知っていた。だから魔物の襲撃がその「対象」を炙り出す為である事は、先程共闘した彼女らを見て何となく予想できた。

 

 しかし、ではスメラギと協力関係を結ばせるのは逆ではないか? リストに載ってた各地の「対象」達を集めるのは、自分だけでは倒せないスメラギを倒す為ではなかったのか。

 

(まだまだ分からない事だらけ…か)

 

(でも、やれる事はある。あの子達を守らなきゃ)

 

 あやめを始めとした5人の少女達。それは、ヘーミッシュのリストに載っていた「対象」でもある。

 

(うん。彼女達を、あんな奴の道具にさせちゃいけない)

 

 

 

 

 

「それで…依頼の内容は僕を殺す事だろ? なら何故彼は暗殺者じゃなく君達を選んだんだ?」

 

 それについてはうっすらと自分の中で仮説は立っている。が、それを言語化させたくはなかった。できればそうではない答えが見つかる事を願って、スメラギはそう尋ねた。

 

「さあね。何でアンタを殺せと言われたのかも分からないし、赤の他人でフリーの私達がどうして集められたのかも、聞かされてない」

 

 対してぼたんは淡白にそう返す。相手はさっきまで殺そうとしていた男だ。簡単に手の内を明かすべきではない。

 

「…ヘーミッシュは、キミのこと知ってるみたいだった。だからこそ、自分の手ではなく私達を使ったんだと思う。キミはいったい何者? 何でヘーミッシュはキミを殺そうとしたの?」

 

(何も知らない…? アレはブラフだったのか…?)

 

 しかしそれについて答える気も、増してや真相を話す気などスメラギには全くなかった。それはヘーミッシュと、その先にいる存在とを倒してしまえば不要なものだ。

 

「…なるほど。ヘーミッシュが何も知らせていないのは分かった。残念だけど、僕は彼を知らない。何故狙われているのか、全く心当たりはないよ」

 

 

 

(あやしー…)

 

(わざとでしょ。隠し事はこっちだって同じ)

 

 だからこそ、スメラギはそういう態度を取ったのだろう。

 

(今はとりあえずヘーミッシュの確保に専念しよう、ノエル)

 

(う〜…分かった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、『私』があともう一体いれば、単純な行動じゃなく、もっと()()()()()振る舞わせることができたのに」

 

 渦中の人物はベルナバイドがよく見える丘の上に立っていた。

 

「でもまぁ、目的は達成したし及第点ではあるかしら。では」

 

 第2フェーズが終了した。今のところスメラギは計画に気付くこともなく、順調に進んでいる。次は第3フェーズだ。

 

「『彼』を逃すとしましょうか」




尽きぬ疑問、それはいつ解明するのか…?
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