【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
1話 絶望の夜明け
それは、地を裂くようにして現れた。MEMAの格納庫にいなかったのは、その存在を徹底的に秘匿するためなのかもしれなかったが、その必要はもう無くなってしまった。
それは、数百メートルもあろうかという巨大兵器でもなかった。外見に全くの邪悪さもない、むしろ世界を守るヒーローのような印象すら与えるフォルムだった。
それは、圧倒的な力を有していた。全身に搭載されたビーム砲やレーザー砲。何物も通さない鉄壁の装甲。世界を跨ぐ転移機構。味方からすれば頼もしい事この上ないが、自分達が敵対してしまった時、守護神は破壊神へと姿を変えるだろう。
そして、それは今だった。
ゼノクロス。それがこの世界を滅ぼした兵器の名だ。
*
「くっ……戦力は以前よりも多いはずなのにっ…⁉︎」
スメラギはナノマシンで形成したエネルギーカノンを撃ちながら、思わず口に出した。
スメラギ達だけではない。シュテッフェン・マイスフィールドの私設兵団、宝鐘海賊団、白銀聖騎士団、桐生会組員、エルフの戦士。これだけの戦力があってなお、ゼノクロスには傷一つついていない。むしろ、その圧倒的な火力の前に、こちら側が徐々に削られてすらいる。
「あくあマリン号を前衛に! 出力をバリアに絞れば盾にはなるでしょ‼︎……スメラギ君! シュテッフェンがベクターキャノンを撃つから時間稼ぎを、って!」
「マリンか…わかった!」
ゼノクロスが戦略的敗北を覆し圧倒的に優位に立てているのは、その頑強なバリアによるものが大きかった。バリア自体の性能もさることながら、潤沢なエネルギーと高い冷却機構により、その強固さはほぼ無敵のものとなっていた。
唯一の対抗策としてそのバリアを唯一破れるのが、ベクターキャノンであった。ベクターキャノンはメタトロン鉱石の空間圧縮を利用したエネルギー兵器で、空間断層・歪曲式のバリアを貫通できる。ただし、その発射には時間を要するのが難点であった。
『ロボ子様、ベクターキャノンの準備は私が行います。照準をお任せしてもよろしいでしょうか?』
「うん、わかった。…ごめんね、APRIL。もうボロボロなのに…」
かつては鉄壁の装甲と膨大な火器を有していたミーレ・センチュリオンも、ゼノクロスの攻撃により今やスクラップ寸前と化していた。今はもう、人力では発射させることができないMEMA用のベクターキャノンを起動させ、トリガーを引く事しかできない。
『いえ。私は人間を支え導くために作られました。その為に私のすべてはあります。たとえ全ての機能が停止しようとも、私は人間のために行動します。』
それでもAPRILはセンチュリオンを動かし、ベクターキャノンの発射準備に入る。それが、終わらない悪夢に終止符を打つ一手となる事を信じて。
『ベクターキャノンモードへ移行』
『エネルギー、全段直結』
「一点集中だ! てぇいッッ!!」
ベクターキャノンから少し離れた所で、シュテッフェン率いる兵団がおよそ100門の〈
「〈
「〈
そこへすかさず、ココとシオンが追撃する。
通常の兵器ならバリアがあったとしても間違いなく粉砕されるはずの集中砲火を、ゼノクロスは全て受け止める。何のダメージも与えられなかったが、注意はそちらに向いた。
『ランディングギア、アイゼン、ロック』
「わ、わ、目合ったぁ…⁉︎」
「そりゃこれだけの攻撃浴びせたらこっち向くでしょぉ!」
「シオン、ココ! 下がるんだ!」
標的にされたシオンとココの前に、スメラギは飛び込んだ。そして間髪入れず頭部のセンサーに向けてビームキャノンを放つ。
「スメラギさんナイス!」
「あったけぇなオイ! 借りは後で返しますから!!」
一瞬の隙を狙い2人が後退するのを確認すると、スメラギはパワードアーマーのスラスターを噴かし空中へ飛んだ。
「追ってきた…! 僕を優先したのか…⁉︎」
大した攻撃でもないのに、ゼノクロスはスメラギの方を追い始めたのだ。
まるでそちらの方が脅威であると認識したかのように。
疑問に思った瞬間、脳裏に声が響く。
「…まさか、」
考えている間にも、ゼノクロスは畳み掛けるようにビームを連射している。スメラギは脅威的な身体能力でその全てを回避しながら、エネルギーカノンを放つ。だが、
「くっ…追いつかれる…!」
ゼノクロスはいとも簡単に、逃げるスメラギを至近距離に捉え、ブラストビーム──爆発という特性を備えた近距離用のビームである──を放つ。
「ぐぅっ……‼︎」
シールドで何とか防いだものの、爆発の衝撃に耐え切れずそのまま落下していく。
幸運なことに、落ちた先は宝鐘海賊団のあくあマリン号甲板であった。
『チャンバー内、正常加圧中』
「御大将が落ちてきたぞ!? おい、あのデカブツから守れ!」
「わぁっ⁉︎ス、スメラギさん大丈夫⁉︎あたし、治療しようか…⁉︎」
落下してきたスメラギを見て、あくあが慌てて駆けつけてきた。明らかに対人を想定していない桁外れの火力を前に、スメラギは無事であった。しかし一方で、彼を守り抜いたパワードアーマーは吹き飛ばされ、スメラギは殆ど生身となっていた。
「っ…大丈夫、この程度の傷なら問題はないよ。それより、ナノマシン・パッケージを貰えるかな? 予備が無くなってしまったんだ」
「わ、わかった! ちょっと待っててねー!」
ゼノクロスはホーミングレーザーでスメラギを追撃しようとするが、あくあマリン号のシールドがそれを防ぐ。
「今のうちに! 皆様、攻撃を!」
スメラギに気を取られている隙にちょこ、フレア、シオン、ココ、かなた、るしあは魔法で攻撃を加える。
が、
「………!」
スメラギを叩き落としたゼノクロスが目を向けたのは彼女ら、ではなく。
さらにその奥。
「あいつ、こっち向かないのです⁉︎」
「もしや虎の子がバレたっ⁉︎」
新たな脅威を感知し、ゼノクロスはベクターキャノンへ突進してくる。
「各員! 砲撃の手を緩めるな‼︎」
「畜生! こちとら〈
「駄目だ! 奴は動きを止めない!!」
ベクターキャノンの護衛部隊が集中砲火を浴びせるも、一向に止まる気配がない。
「チッ…! 無謀だったか…!」
このままでは唯一の突破口が閉ざされてしまう。シュテッフェンの心の中で諦めの2文字が浮かび上がろうとしていたその時。
「…しょうがないですねぇ、私が行くとしますか」
「ちょ、ココ?」
ココは一歩踏み出す。
「私が時間を作る。かなた、おめぇのパワーならあのデカブツを破壊できんだろ」
「無茶だよ! やられるだけだよっ⁉︎」
かなたは必死に制止するも、ココの歩みは止まらない。
「安心しろって。私はつよつよげぼかわドラゴンだぞ?」
そう言うと、ココは山吹色の魔法陣を展開する。
「〈
竜の力が形となり、ココの身体に武装となって纏われる。
「……おい天使公、さっさと下がっとけよ。お前は後でたっぷり働いてもらうんだから」
「ココを1人にはしておけないな。君には僕がいないと」
かなたはココの隣に並ぶ。
正直、1人だけでは犠牲覚悟でなければろくに時間も稼げないだろうと思っていたから。
ココは嬉しくなると同時に勇気づけられた。
「そうだな。私とかなたが揃えば、出来ないことは」
「そう、何もないっ!!!」
「〈
「〈
向かってくるゼノクロスに、竜の形をした黒炎と聖なる光の砲弾が発射される。〈獄炎殲滅砲〉の何十倍もあろうかという威力の魔法が直撃するも、しかしゼノクロスのスピードは衰えない。そのスピードをもって2人ごとベクターキャノンのある本陣に突進する気だ。
「ッ! ココ、アレを使うよ!」
「おう!」
「「〈
竜と天使の力が合わさった無数の光鱗が2人の魔法陣から発射される。それらは突進してくるゼノクロスを覆い、巨大な結界を構築した。
バチィィッッッッッッ!!!!!!!! と。
結界とバリアが拮抗する激しい音が周囲を打つ。その直後、結界の中が目を灼くほどの光で満たされる。
天の加護を受けた竜の炎がゼノクロスを焼き尽くさんとしているのだ。あまりの光と熱量に、ゼノクロスのセンサーは異常をきたし、その動きを止める。
『ライフリング開始』
「ココちゃん、かなたん! もう下がって! あとはるしあ達が何とかするから!」
「まだです、るしあパイセン。あと、もう少し…!」
先の一撃で既に魔力は尽きかけていたが、それでも2人は退かず、ゼノクロスを迎え撃とうとする。
光が収まると、しかしゼノクロスは健在であった。これだけの攻撃を受けてなお、バリアが剥がれる事はなかった。とは言え、今までとは明らかにレベルの違う攻撃を受け、ゼノクロスはその行使者たちを標的に加える。
「まずい、彼女たちが…!」
『撃てます』
ちょうどその時、ベクターキャノンの発射準備が整った。
ロボ子は精密に照準を定める。
「狙いは腰。バリア装置は構造上、必ず外に露出させなきゃいけない。カモフラージュしてても、僕には分かる…‼︎」
だが、
轟ッッ!!!! と、大地を揺るがすほどの轟音が鳴り響いた。
ゼノクロスが胸部のビームキャノンを照射したのだ。ビームはココとかなたごと、ベクターキャノンを焼き尽くそうとしていた。
「2人とも!!」
「彼女たちを守れ! 〈
「応! 〈
と、背後にいた白銀聖騎士団とシュテッフェンの兵士達が二重の結界を展開する。複数人で発動された魔法は、通常よりも強固になっていた。しかし、それでもなお高出力のビームは結界に弾かれるどころか、逆にミシミシと結界にヒビを入れている。
「今だっ! ロボ子さん!」
「……!」
結界に阻まれ標的を破壊できないことが分かると、ゼノクロスはビームの照射をやめ、スラスターに点火する。
「奴が逃げるッ! 拘束弾をっ!」
しかしマリンは見逃さない。瞬時に船員に指示を飛ばす。
「おうよ船長! 野郎ども、ぶちかませぇぇ!!!!」
そして熟練の連携によって、ゼノクロスが飛び立つその瞬間、あくあマリン号から拘束弾を放たれた。それはちょうど大地から浮かびかかっていた脚部に向かって発射され、特殊な素材のワイヤーがゼノクロスを地面に縫い付ける。
「撃つよッ!!」
同時に、ロボ子はトリガーを引いた。
ッッヅバシュッッッッ!!!!!!! と、膨大なエネルギーの塊が空を裂き、ゼノクロスに肉薄する。瞬時にゼノクロスは避けようとするも、拘束弾によって身動きが取れない。
必中の一撃であるはずだ。
そしてそれは確かに命中した。
ただし。
「やられた…‼︎
エネルギー弾がバリアを破り着弾する直前、ゼノクロスは右腕で装置を庇ったのだ。見ると、右腕が何かに抉られたように肘から消えていたが、一方でバリア発生装置は無傷のままだった。
そして、
『マスター、皆様。あとは任せました。』
ベクターキャノンの反動に耐えきれず、ミーレ・センチュリオンは崩壊していき、完全に機能を停止させた。
「…彼女を無駄死にさせるな! 撃て!!」
シュテッフェンの号令と共に、夥しい程の砲撃がゼノクロスに浴びせられる。
装置を破壊できなかったとはいえ、あれほどのエネルギー量とかち合ったのだ。シュテッフェンらの攻撃に対してバリアを張らない辺り、装置が一時的にオーバーロードしているのは明白だ。
「みんな! 接近して足を破壊するぞ!」
APRILが、ココが、かなたが。みんなが作ってくれた隙を逃す訳にはいかない。
スメラギの言葉と同時に、フブキ、ミオ、あやめ、シオン、ちょこ、ノエル、ぺこら、かなたがゼノクロスに向かって走り出す。
そこへゼノクロスがホーミングレーザーを発射するも、
「みこち! 同時に障壁を!」
「おっけいフレア! やるで!!」
陰陽術と魔法の二重障壁がその全てを防ぐ。
「マリン!」
「おっけ! マリるしの力、見せてやらぁぁ!!!」
「「〈
桃色の光と紫の闇が入り混じった火球が2人の発動した魔法陣から射出される。
ゼノクロスはその攻撃をよけようとするが、
「ちょこ先! ぺこらちゃん!」
「生徒のくせに人使いが荒いわよ、シオン様!」
「ぺ、ぺこーらも…やったるぺこ!!!」
シオンが〈
直後、ドゴォッッ!!!! と爆炎球がゼノクロスの頭部に直撃した。装甲に阻まれ、ダメージは与えられなかったが、膨大な熱量によりセンサーが無効化された。
「行くよ、あやめ! …
「うむ、斬り飛ばす!
それぞれの渾身の一太刀がゼノクロスの右足を斬り刻み、装甲にいくつも亀裂ができる。
「よーし、団長がちゃーんと粉砕してやるからね~!!」
そこへ、ノエルがありったけの力を込め、メイスを亀裂へと振り下ろす。ノエルの並外れた膂力ならば、亀裂から叩き込んだ打撃で、内側から破壊することは容易であった。
そのはずだった。
「がッ…!!?」
亀裂にメイスが当たった直後、ノエルは逆に衝撃に全身を叩かれ、全身から血を噴き出しながら吹き飛ばされる。
「ノエルッ!!!?」
「
「フブキ! あやめ! 君たちも危ない! シオン達に!」
「それしかないかな…! スメラギくん、ノエルを頼むよ!」
スメラギは頷き、倒れたノエルを抱え後退しようとする。
「衝撃を反射するのか、道理でこれだけ殴っても壊れないわけだ…! かなたちゃん、魔法で攻撃を…っ!?」
ミオがそう言いかけたとき、ゼノクロスの脚部からホーミングレーザーが放たれる。
「ッッ!!!! みんな、逃げろ!!」
ホーミングレーザーは、誘導性を持ったレーザーだが、貫通力が高く、デコイが通用しない。更には主に対機動兵器向けの武装であるため、人間にとって火力・誘導性ともに圧倒的な脅威となっていた。
「スメラギ! ノエルを落とすんじゃないよ!」
フレアは無線でスメラギにそう伝えつつ、〈
「ヤバ…!? あたし達も逃げようっ!」
ゼノクロスを拘束していた3人も、魔法を解除し、急いでレーザーから逃げる。
「くっ…!」
レーザーが一向に消える気配がない。どうやら長距離に対応しているもので、その分長く敵を追い続けるようだ。
「フブキっ!」
レーザーに追い詰められ、灼かれようとしていたフブキを、あやめとミオが寸前で救う。ミオが結界を張り、あやめがフブキを抱えて本陣へ向かう。
「わわ! ありがとう、2人ともっ…」
「くぅ…全力で結界張らなきゃヤバいなぁっ、これ!」
「またっ…僕たちではこいつを倒すことは出来ないのか…っ⁉︎」
後退中のスメラギの脳裏に、再び声が響いた。自分とは相反する思考が巡る。その考えに従えば、少なくとも今の窮地は脱する事ができるはずだった。
「ダメだ…っ! 君が出たら、僕は…! 世界を滅ぼす力で、世界を救うことはできないんだ…ッ!」
スメラギはそれでも、脳裏に響く声を否定する。
フブキやあやめ、ミオ、それに他のメンバーが回避に専念している間も、絶え間なく兵士やエルフ、騎士達が攻撃を加えていたが、バリアが消失してもなお、ゼノクロスにはさしたるダメージもないようだった。
「なんなんだあいつは…! 化け物か!?」
「今度は総員で近接へ持ち込む! 態勢を立て直せ!」
しかし。
「待て! ……何かがおかしい! なぜ奴は攻撃してこない!?」
スメラギたちの間に疑念が走る。未だ、夥しいほどの砲撃が放たれており、轟音が戦場を包み込んでいるのに、不気味な沈黙がスメラギたちの間に流れる。実際、両足を攻撃されたのちに一度ホーミングレーザーを撃ったきり、ゼノクロスは攻撃の手をぴたりと止めている。
「まさか…!!?」
スメラギはふと気づいた。心当たりがある。この光景は、以前にも見たことがある。その直後に何が起こるかも。
疑念が焦りへ変わった瞬間、
ッッッッッッッ!!!!!!!!!! と、もはや音を置き去りにしたすさまじい衝撃と圧倒的な光がこの場にいる全員の視界を、いや、
全身の火器を最大出力で一斉射するゼノクロスの切り札。たった一撃ですべてを屠るこの攻撃を、ゼノクロスはあえて最初から使わないでいた。兵力を削り、撃てる状況になったから撃ったのではない。遊んでいたら敵が思った以上に粘ったから本気を出した、とでも言うような。
そのくらいの軽い調子で。ゼノクロスは簡単に切り札を切った。
*
「く……かはっ……」
何とか意識を取り戻したスメラギは、顔を上げ、立ち上がろうとする。
「っ…」
惨憺たる光景だった。空は、まるで「空」という概念が破壊されたように、雲も太陽もない、ただ黒い空間が広がっていた。大地には、大きな亀裂がいくつも生じ、そこからマグマが噴き出していた。そして周りを見渡すと、ほとんどが死体すらなく、一瞬で蒸発していた。しかしそれ以外でも、死体があるだけで生きている者など全くいなかった。
あの時と同じだ。また、同じ結末をたどってしまった。
スメラギは、全身が黒焦げになり、機能の全てを停止したパワードアーマーを着込んだまま、こんな終末の世界に悠然と立っているゼノクロスに、這いつくばりながらも近づこうとする。
「まだ……だ……っ」
だが、その行く手を誰かが止める。
「ス、メラギ、さん…っ、もう、やめて……」
「るしあっ……‼︎」
「もう、この世界は、終わり。でも、あなたは……あなた、だけは……っ!」
生きているだけでも不思議なくらいの傷を負っているるしあは、最期の魔力を振り絞り、魔法陣を構築する。それはるしあが、異世界へ迷い込んだスメラギの為に作っていた別世界への転移魔法だった。
「るしあ…君が逃げるんだ……! 僕が生きていたって……っ」
「るしあ、は、あなたの過去を、見ました……悲しい、過去を……。でも、だからって、卑屈になっちゃ、だめなのです」
「たとえ、あなたの正体を、知らなくても、みんなはあなたを、受け入れてくれた……あなたは、独りなんかじゃ、ないっ…!」
「だから、生きて……っ、私たちの、この世界の、分まで……っ!」
魔法陣が完成し、転移魔法が発動する。
「るしあ……ッ!!」
思わず手を伸ばすスメラギに、るしあは微笑みながら何かを伝える。
「─────」
まばゆい光に飲み込まれ、スメラギは目をつぶる。
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目を覚ますと、見知らぬ平原が目の前に広がっていた。先ほどの阿鼻叫喚な光景とは真逆に、人の往来もなく、一面に草が生えている静かなところだった。
転移は成功したのだ。
「…っ!!!」
ガツン、とスメラギは地面をたたくが、静寂に何も変化はない。別世界にただ一人放り出されたスメラギには、なすすべもなかった。
(だから言ったじゃねぇか。俺を戦わせろって)
と、そこへ脳裏に声が響く。
「…ダメだ。君の力を使ってしまったら、世界が滅ぶ。ゼノクロスじゃない。僕が滅ぼすことになるんだ」
(ハッ、相変わらずの優等生ぶり…いや、臆病ぶりだな。だから世界一つ守れねぇ)
「……」
(で? いつまでも逃げ回ってる臆病者は、次はどうするんだ?)
「決まってるさ…。ゼノクロスを探す。今度こそ倒す」
(今のテメェにゃそんな大役無理だよ)
「できるかできないかじゃない…やるんだ。僕は世界を託されたんだ」
(はいはいそうですか。責任感だけはいっちょまえに持ちやがって)
そういうと、脳裏に響く声は消え去った。
「まずは、街を目指さない、と……っ」
スメラギは立ち上がろうとしたが、うまく力が入らず、その場に倒れこむ。
「僕は……やらなきゃ……ッ」
そのまま力が抜けていき、スメラギは意識を失った。
展開もさることながら、よくわからん人名や単語ばかりで訳分らんことになってると思います。こいつらはまた出てくるので、その時に・・・!
1話から激重展開となりましたが、次からは優しめになるかと思います笑
ちなみに、この回で出てきたメンツ、お察しの方もいるかと思いますが、ホロライブ・オルタナティブ公式PVに出てくるメンバー(全員じゃないですが)となっております。この話についても、また後程できれば。