【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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16話 合流

「傭兵様、待たせたな」

 

 その時、部屋の扉がバンッ! と勢いよく開く。

 

「む、取り込み中だったかな?」

 

 生徒会室に入ってきたのは、赤い目と薄い紅のグラデーションのかかった銀髪の鬼娘──百鬼あやめだ。

 

 彼女の纏う黒を基調とした和装は肩が大きく出す上、丈が短い為に太もももよく見える造りになっており色々とアブナイ。るしあやちょこもこんな感じの服だったし、魔族は露出する事に何の抵抗もないのだろうか? 

 

「いや、大丈夫だよ。それより、どうだった?」

 

「うむ。どうやら、魔物はナノマシンで何者かに操られていたようだ。ただ、ナノマシンが注入されていたのは一部の魔物だけだったが」

 

「人為的に…でも、いくら全てではないとはいえ、あれだけの魔物を暴れさせるのは並の人間では無理だ」

 

 スメラギの言葉に、あやめは頷く。

 

「これを見てくれ」

 

 あやめは〈遠隔透視(リムネト)〉でとある映像を映し出す。

 

「あやめちゃん、これは?」

 

「魔物の大群が現れたのが街の南東部、そこから少し離れたところにある丘だ。これは襲撃が起こる数十分前の映像だ」

 

「あ、誰かいる」

 

 ぼたんが指を指す。その先、丘の上に人がいた。そして、それは手のひらから何か粒子のようなものを放射していた。

 

「うむ。何をしているかは分からんが場所が場所だからな、恐らくコイツが実行犯だろう」

 

「これ、ヘーミッシュ…?」

 

 映像をよく見ると、その人物はヘーミッシュに似ていた。

 

「やはり、ヘーミッシュは2体いたんだ…」

 

「この人物について知っているのか? 傭兵様たち」

 

 ノエルとスメラギの言葉に疑問を持ったあやめがそう訊ねる。

 

「私たち、コイツを追って魔界に来たんだ」

 

 3人はあやめにこれまでのことを説明した。

 

 ただし、依頼の話は少し濁して伝えた。あまり『スターク』の名を出すのは良くないと思ったからだ。世の中には『スターク』と疑いをかけられた人物を問答無用で殺害する者もいる。あやめもそうではないとは言い切れなかった。

 

「ふむ…ヘーミッシュというアンドロイドが魔物を暴走させたと言うのか……」

 

「あやめ?」

 

「実は、これとほぼ同時刻にベルナバイド政府に犯行声明が届いていたんだ」

 

「犯行声明? 襲撃の?」

 

「そうだ。『暗部』の中でも幅を利かせてる破滅派によるものだ」

 

 破滅派というのはその名の通り、世界を破滅しようとするテロリストのことで、彼らは市街地でのテロ行為も躊躇なく実行することで知られている。

 

 そんな連中が、わざわざ犯行声明を出すなんて不自然だ、とスメラギは思ったが、それよりも気になることがあった。

 

「ヘーミッシュはテロリストと繋がっているのか…?」

 

「それは分からん。だが、魔物以外に破滅派の攻撃はなかったようだし、犯行予告は魔物の襲撃に対するものだと考えていいだろうな」

 

 

 

「とりあえずベルナバイドと魔界学校で、犯行予告を出した破滅派を逮捕する事が決定した。だが破滅派についてはベルナバイドの警察に任せようと思う。魔界学校(余たち)はそのヘーミッシュというアンドロイドを追跡しようと思うのだが…」

 

 と、あやめは急に改まる。

 

「傭兵様たち。そいつの捜索に協力してもらえないだろうか。あなた達はあのアンドロイドについて知っている。きっと、あなた達がいれば捜索がしやすくなるだろう」

 

「もちろん。目的は同じだし、協力するよ」

 

「正直、私とノエルだけじゃ厳しいかな〜と思ってからありがたいな」

 

「なにおうっ? まぁ正論だし仕方ないんだけど…。それはそうと私も全然良いよ! 一緒にとっ捕まえよう!」

 

 あやめの申し出に、3人は快諾する。むしろ、別々に捜すより、大人数で組織的に捜した方が効率がいい。

 

 それに、とノエルは考える。

 

 本当は自分かぼたんの片方が魔界学校に留まって彼女達を守るつもりだったが、それではヘーミッシュの捜索の方が厳しくなる。むしろ捜索に同行してもらった方が、いざという時、ヘーミッシュから守ることができる。

 

「よし、決まりだな! ありがとう、傭兵様! じゃあ、早速捜索に…と行きたいところだが、少し休息を取ってからにしよう。組織だった犯行ならば、万全の準備で挑まねばならんだろうしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳であやめに案内されたのは学生寮の空き部屋だ。ちなみに、しっかり男子寮と女子寮は分けられておりスメラギは前者へ、ノエルとぼたんは後者へ充てられている。

 

「ヘーミッシュは何故ベルナバイドを襲ったんだろうね」

 

 スメラギはぽつりと、天井を向いたまま話しかける。

 

 すると、ヴヴッとポケットの中からバイブ音が鳴り、抑揚のない電子音声がそれに応じた。

 

『ヘーミッシュはマスターとの戦いの直前、自分の使命はマスターの殺害だと言っていました。ヘーミッシュが犯人であるならば、今回の件もそれに準じたものであることは明白です。』

 

「けど、僕個人ではなく街を襲うなんて…」

 

「あくまで推測ですが、ヘーミッシュとの直接戦闘が、魔物襲撃への感知を遅らせる為であり、魔物の襲撃によって現れたあやめ様達とマスターを引き合わせる目的だったのではないでしょうか。』

 

 と、意外な推理をするAPRILにスメラギは、しかしふと思い出す。

 

「親切でかつての仲間に会わせている訳ではない、か…」

 

 それはヘーミッシュが言っていた言葉だ。おそらく、何か目的があってヘーミッシュはわざわざ彼女達をスメラギに接触させている。その意図は不明だが、今回の件がその一環であるのは間違いないようだった。

 

「…ヘーミッシュを破壊したのはちょっとまずかったかもしれないな…」

 

 彼を野放しにすべきではないとはいえ、撃ってしまった。しかも頭部を。胸部などを攻撃して動力を停止させれば、頭部に内蔵されているメモリから何かしら情報は入手できたかも知れなかったのに。

 

『いえ、どちらにせよ、セキュリティ対策は施してあったでしょう。我々が必要な情報を得られる可能性は低かったと思われます。』

 

「抜け道はなしか…。あくまで思い通りに進めるつもりか…」

 

 相手の計画の終着点を知っていながら、それを止めるきっかけを掴めないのは、中々に苦しい。その上、自分の意図とは反して「かつての仲間達」が徐々に集められてきているのは、精神的にストレスだった。

 

 また、アレを繰り返すのかもしれないと思うと。

 

「…いや、そうはさせない。何があっても、みんなを守ってみせる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、魔界学校は、魔物の襲撃も終わり、生徒の無事も確認したところで今日は解散となった。

 

「やっほーるしあちゃん!」

 

「あ、メル先輩」

 

 H R(ホームルーム)が終わり、教室から出ようと席を立ったところで、メルが教室の入り口で呼んでいるのに気づいた。

 

 メルはるしあより2年先輩なのだが、入学当初から良くしてくれていて、現在でも良好な関係が続いている。

 

「一緒に寮に戻ろ〜!」

 

 授業がなく早帰りとはいっても、あんな事があってすぐだ。街中はまだ危険だということでしばらくの間、全生徒が寮に泊まることになっていた。

 

「あ…はい」

 

 メルの誘いを受け、るしあは2人で寮へ向かう。

 

「るしあちゃんどうしたの? ぼーっとして」

 

「え、いや…なんでもないのですよ、メル先輩。寮に行きましょうっ?」

 

 るしあは慌てて取り繕うが、実際HR中、あまり先生の話が頭に入ってきていなかった。

 

「…もしかして、」

 

「?」

 

「るしあちゃん、さっきの傭兵さんのこと考えてた? スメラギって人、強くてかっこよかったもんね〜」

 

「な⁉︎違うのです! るしあをそんな軽い女だと思わないでください! …そうじゃなくてっ! スメラギって、なんか聞き覚えのある名前だなぁって…。メル先輩は何か心当たりないですか?」

 

「ふーん? 私は特に何も…」

 

 メルには思い当たる節がないようで、ふるふると首を横に振る。

 

「多分、ふぁんでっどさん達から聞いたんじゃない? あの子達色んなこと話してくれるじゃん」

 

 ふぁんでっど──るしあが呼び出した死霊のことをそう呼んでいる──から聞いた名前かとるしあも思っていたが、そうではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん〜、なんか表現しづらいのですが、根源が覚えている…ような感じがするのです…」

 

「なんか素敵な表現だねぇ。あ、もしかして前世の記憶とかっ? るしあちゃんとスメラギさんは前世で深い関係にあった!?」

 

 と、メルは目を輝かせながら変な方向へ推察するが、

 

「転生はターミナル03の限定秩序なんだからそんな事はあり得ないのです」

 

 るしあは淡白に否定する。

 

「も〜、つまんないなぁるしあちゃんは…」

 

 全く、このヴァンパイア先輩は頭の中がキラキラしすぎているのだ、と呆れつつもるしあはすっかり元の調子に戻っていた。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、2人は寮に着く。寮は学年で分けられていて、るしあとメルの部屋はそれぞれ別の階だった。

 

「またねるしあちゃんー……ってメール?」

 

「るしあにも来たのです」

 

 別れようとした時、2人のデバイスから同時に着信音が鳴った。

 

 開いてみると、それはあやめからのメールだった。

 

「えーと、『また出撃するから今のうちに休んどけ』? 魔物は撃退したんじゃ…」

 

「学校からじゃなくて、あやめちゃん個人からだから、もしかしたら別のことかも。何にせよ、早く戻って休んどいた方がいいね」

 

「むー、もっとお話ししたかったのに…また会いましょう、メル先輩っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分のパーティにメールを送ると、あやめはふぅ、と息をつき生徒会長の席に座る。

 

 今回魔界学校として派遣するパーティはあやめ達一組のみ。生徒達の疲労状況と、追跡する対象の数とを鑑みて、これが妥当だろうと判断した。最も、犯行予告を出した当のテロリスト達は警察が追ってくれるというのだから、アンドロイド(こちら)の方は全力を出さずとも良いだろう。

 

「さて…」

 

 次の出撃までいくばくかある。その間に少し仕事を片付けておくか。休息など、30分もあれば済ませられることだし…

 

「あやめ、またここにいる」

 

「ワーカホリックだねぇ」

 

「…入る時はノックくらいしろというのに」

 

 ガチャッとドアを開け入ってきたのはちょことシオンだ。

 

「あやめしかいないのは魔眼()で見れば分かるわよ」

 

「そんなことより。あたし達に出撃があるから休んどけって言っておきながら、どうせ自分は休まないんだろうと思ったよ」

 

「なに、ちゃんと休むつもりだったぞ? 生徒会室(ここ)で」

 

「ちゃんとベッドで寝ないと疲れは取れないわよ。まったくもう…」

 

「というか、そんなこと言って机の上の書類の山隠してるの、バレてるし」

 

 

 

 ──あやめ、ちょこ、シオンは魔界学校に入る前から親しい関係だった。家が近所だったというわけではなく、3人は幼い頃、とあることがきっかけで仲良くなり、以降友人として一緒に過ごしてきた。今でこそ、シオンは魔界学校に入らず、ちょこも魔界学校の保健医を勤めており、3人別々の道を歩んでいるものの、その関係は今でも続いている──

 

 

 

 

 

 そんな2人には、あやめの考えていることはお見通しだった。

 

「む…やはり、シオンの魔眼()は誤魔化せないか…」

 

 観念したように、あやめは〈幻影擬態(ライネル)〉を解除する。すると、彼女の後ろの机の上に、大量の書類の山が姿を表した。

 

「でも! 寮には戻らないからな! 校内で何かあっては、寮からでは間に合わんからなっ」

 

「はいはい、そう言うだろうと思って…ちょこ先!」

 

「おっけー。はい〈水球寝台(リライム)〉」

 

 ちょこは魔法で大きな水の球を生み出す。それは、あやめを優しく包み込む。

 

「ちょっ…熟睡してしまってはここで寝る…意味が…」

 

 と、文句を言い終わる前にあやめは水球の中で意識を手放してしまう。

 

「さて、私たちも休むとしましょうか」

 

「あれ、このまま放置?」

 

「出撃の2時間前に解けるようにしてあるから大丈夫よ」

 

「そっか。じゃあ寮に戻るかぁ」

 

 ぐーっとシオンは伸びをして、生徒会室から出る──シオンは魔界学校の生徒ではないため、本来寮に自分の部屋はないのだが、勝手にあやめの部屋を使っているのだ。

 

 

 

 

 

 たった1体のアンドロイドの捜索。それだけ聞くとあまり危険な任務であるとは思われないが、相手は魔物を操る能力を持つ。加えて、破滅派なるテロリストとも繋がっている可能性も浮上してきた。

 

 一筋縄ではいかない。スメラギは何とはなしにそう確信していた。

 

 

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