【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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17話 追跡⑴

 日も落ち、漆黒が空を覆い始めた頃。

 

「揃ったな。疲れているところ悪いが、先に伝えた通り、出撃だ。具体的には、魔物の襲撃の犯人と思しき者を捕らえる」

 

 〈水球寝台(リライム)〉のおかげか、幾分かキリッとした姿であやめは説明する。

 

 集まったのはシオン、ちょこ、メル、るしあ、ノエル、ぼたん、そしてスメラギ。たった8人だが、今回の任務に至ってはむしろ多いとも言える人数だ。

 

「もう犯人見つかったの?」

 

 とメルは訊ねる。

 

「うむ。犯人は破滅派と呼ばれるテロリストだ。魔物の襲撃が来てすぐ魔界と人間界との境界は閉じてあるから、奴らは必ず魔界にいるはずだ。…だが、テロリストの捕獲はベルナバイドに任せる」

 

「あれ? じゃあメル達は何をするの?」

 

「彼らと別行動を取っている実行犯がいるんだ」

 

 あやめは〈遠隔透視(リムネト)〉によってその人物──否、アンドロイドを写し出す。

 

「ヘーミッシュというアンドロイドだ。余達はコイツを捕らえる」

 

「実行犯ってことは、たった1体であんなにたくさんの魔物を操ったのですか?」

 

 と、死霊を操るるしあは驚きを交えながら訊ねる。それもそうだ。どんなに多くとも、数十体が限界のるしあにとって、数千体かそれ以上の魔物を使役するというのは考えられないことだ。

 

「ナノマシンを使っていたそうだ。全てというわけではないが、3分の1くらいは操っていただろうな。何にせよ、危険な相手には変わりない。だから余達がコイツの捕獲にあたる」

 

 いたずらに数を増やすよりも、少数精鋭で短期決戦を。

 

 あやめはそう考えたのだった。

 

「そういうことなら、頑張っちゃうよ!」

 

「まぁ、超過勤務手当稼ぐとしますか…」

 

「ちょこ先いつも保健室にいるだけだし出ないんじゃない? まぁあたしも新しい魔法試したかったし、ちょうどいいや」

 

「るしあも、お父様とお母様から魔剣もらったし試してみたいなぁ」

 

 決して疲労が回復しているわけではないのに、彼女達は軽い調子で承諾する。連携の上手さや編成のバランスなど様々な要因があるが何より、この余裕が最強のパーティたる所以かもしれなかった。

 

「傭兵様達も、準備はいいか?」

 

「ああ。できてるよ」

 

「牛丼食べたし、大丈夫!」

 

「私も弾丸の補充は済んだし、いつでも」

 

 スメラギ達も準備は出来ている。

 

「では、向かうとしよう」

 

 愚かにも魔族の街を襲った無法者を縛り上げに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スメラギさんは〈飛行(フレス)〉使わないの?」

 

 ノエル達は今、アンドロイドのいた丘に向かっている。ただし、何も徒歩で向かっているのではない。

 

 魔界では、補助魔法の使用は特に禁じられていない。〈飛行(フレス)〉で空を飛ぶことに何も問題はないのだ。

 

 そうメルに問われ、スメラギは少し躊躇うが答えた。

 

「僕は幼い頃に超能力を開発されたんだ。だから、魔法を使う前に魔力腺が退化してしまったんだよ」

 

 魔力腺とは、魔力を生み出す器官の事だ。魔法を使えば使うほど、魔力腺はより多くの魔力を生み出し貯めることができる。

 

 しかし魔力腺が発達する前に超能力を始めとした別の異能力を会得してしまうと、魔力腺が退化してしまい魔法が使えなくなるのだ。

 

「なるほどねぇ。魔法が使えないと色々苦労しない?」

 

 と、シオンは訊ねる。魔法の扱いに長けている彼女からしたら、魔法のない生活など不便で仕方ないだろう。

 

「まぁね。でも、意外と何とかなるよ。このパワードアーマーだって超能力で動かしてるし」

 

「え、じゃあ念動使い(サイコキネシスト)ってこと?」

 

 隣で聞いていたノエルが今度は訊ねる。

 

「詳しいね。でも違うな。僕は電撃使い(エレクトロマスター)だよ。生み出した電力でパワードアーマーを動かしているんだ」

 

「へぇー。なんで電撃使い(エレクトロマスター)にしたの? 念動力(サイコキネシス)の方が使いやすくない?」

 

 何とも身も蓋もない質問だ。スメラギは思わず返答に窮する。

 

「な、何でだろうね…。超能力は相性があるから、開発できる能力は生まれつき決まってるんだよね」

 

 これは超能力に限った話ではない。スメラギにとっては特に。

 

「難儀な話だな。生まれつき能力が決まっているというのは…」

 

 

 

 

 

「そう言えば、人間界にいた方のヘーミッシュはどうしたの?」

 

 と、ぼたんがスメラギに訊ねる。ぼたんはヘーミッシュの目的が世界各地に散らばる「戦力」の収集である事を知っていた。今は魔界と人間界の境界が閉じられていて身動きが取れないはずだから、ヘーミッシュを捕まえればそれも終わる。関係のない人々を巻き込まないためにも、彼の行方は知りたかった。

 

「あぁ…破壊したよ。無力化したとはいえ、野放しにしておくわけにはいかないからね」

 

「あ、壊したんだ(まぁそっちの方がアンタにとっては安全か…)」

 

「え?」

 

「ん、何でもない。何か情報は抜き取れた?」

 

「いや、頭部を破壊してしまったから何も…」

 

(じゃあこの子達が意図的に集められていることはまだ知らない、か。スメラギ本人ならあのリストについて何か知ってるかもしれないけど、流石に直接聞くのは厳しそうだな)

 

 何にせよ、これで当面のうちはもう一体のヘーミッシュに注意を向けていればいいことになる。ぼたんとしても、それはやりやすかった。

 

 

 

「着いたぞ。ここが奴のいたところだ」

 

 あやめ達の少し先に丘があった。何の変哲もない所だが、〈遠隔透視(リムネト)〉にあった映像ではここに件のアンドロイドがいた。

 

 ノエルは丘に降り立ち、草木に〈追憶(エヴィ)〉をかけてみる。すると、確かにヘーミッシュがこの丘に立っていた。が、

 

「あれ、消えちゃった…」

 

「多分、ステルス迷彩をかけているんだ」

 

「対策されてるのかー。厄介だなぁ」

 

「ここはシオンちゃんに任せなさいっ。〈追跡(エノイ)〉」

 

 シオンは辺りに〈追跡(エノイ)〉をかける。すると、周囲から粉のようなものが宙に浮かび、線のようにある方向へ伸びていく。

 

「ナノマシンに〈追跡(エノイ)〉ね。考えたわね、シオン」

 

「なのましん? があっちに伸びていってるのです!」

 

「シオンちゃんやるねぇ〜」

 

 ちょこ、るしあ、メルは口々にシオンを褒めると、

 

「でっしょ〜? シオンちゃん冴えすぎてて自分でも怖いなぁ〜」

 

 ちっこい魔女っ娘はドヤ顔でそれに応じる。ない胸を反らせて。

 

「おい、早く行かないと置いてくぞ」

 

「うわっ冷た。これが幼馴染の友情かようっ」

 

「ちょっくっつくなって! 飛びづらいというにっ…!」

 

 

 

 

 

 そうして、紐のように伸びていくナノマシンを追っていると、

 

「あ、ナノマシンが…」

 

 それまで宙に浮かんでいたナノマシンが、突然前から順に、重力に従って地面へ落ちていった。

 

「〈追跡(エノイ)〉の範囲から出たのね。ここから先は誘導なしで進まなきゃいけないわね…」

 

『問題ありません。周囲にアンドロイドの痕跡があればお伝え致します。』

 

 と、ちょこの言葉にヴヴッとAPRILがデバイスから応じる。

 

「うわっ!? なになに⁉︎誰かいるのっ⁉︎」

 

「あぁ、紹介が遅れたね。彼女はAPRIL。人工知能で僕の相棒だよ」

 

『初めまして皆様。マスターことスメラギ様の相棒、APRILです。以後お見知り置きを。』

 

「なんかAIの割には機械ぽくないね?」

 

 ノエルはAPRILの自己紹介に少し驚く。と言うのも、感情を司る「センチメント・サーキット」は全ての人工知能に搭載されているわけではなく、特にAPRILのような戦闘用の人工知能には搭載しないのが殆どなのだ。

 

『戦闘補助の人工知能は、感情の必要性が無いと言われていますが、私は必要であると考えます。こうしてあなた方と話せるのですから。』

 

「…APRIL、久しぶりに会話するからってうわついてないかい?」

 

『とんでもございません。そのような事はありませんよ、マスター。』

 

 相変わらず無機質な電子音声だが、心なしか声がいつもより高い気がしたのは、いつも一緒にいるスメラギだけだろう。

 

「ええと…とりあえず、何かあったら教えて」

 

『かしこまりました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予測以上に追跡の速度が早いわね。少し罠を張っておくとしましょう」

 

 無論、彼らならどんな魔物であれ大した時間稼ぎにはならないと思うが、それでも構わない。()()()はこれから来る襲撃に全く対応できないはずだから、鎮圧はきっとすぐ終わる。むしろ()()()()()がちょうどいいのだ。

 

「『駒』より早くても、遅くてもいけない。同時に()()()()()()()()()()()なんて、なかなか面倒だけれど」

 

 中性的な容姿のアンドロイドはまさに自分に襲い掛からんとしている魔物に、ナノマシンを流し込む。すると、魔物は不自然にその動きを止める。そして今の今まで攻撃しようとしていた獲物なぞ振り返りもせず、どこかへと向かっていってしまった。

 

「少しくらいならネタばらしをしても良いと彼は言っていたけれど…フフっ。勢い余って全て言わないようにしないとね」

 

 




この回のために何個かネタを考えたのに、今回1個しか使わなかったので、前半と後半に分けることにしました
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