【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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23話 阻止、失敗

 辺境部の町、ソフォレ。

 

 エルフの森から最も近い町ではあるが、その特徴は全く有利に働いていない。エルフの森は外界を完全に遮断しているからだ。

 

 そのため、ソフォレは本当にただの田舎町でしかない。せいぜい、アンドロイドを生産する工場と、異世界大戦時代の遺物が少々ある程度だ。

 

 そんな町にシェラード達は訪れていた。

 

 もちろん、何の理由もなく来たわけではない。彼らはスメラギの殺害という依頼を放棄したのち、その依頼主の仲間であるマーシェを追ってここまで来ていたのだ。

 

「しっかしよぉシェラード。こんなとこに何があるってんだ? 森に用事があるんじゃねぇのか、奴さんは」

 

「さぁ。何にせよ、奴らの企みは阻止しなければなりません。団長達はまだ到着しそうにないですが、その前にマーシェを破壊しておいた方が良いでしょうね」

 

「ヘーミッシュもまだヤツと合流してないようだしな」

 

 ヘーミッシュはノエル達より早く魔界を発った為、彼女らより早く着くだろうが、まだこの町にはいないようだ。

 

「なら、確かに今のうちにやっちまった方がいいかもな」

 

 とは言え、町中で戦闘するのは流石にまずい。やるにしても、「人払い」などの下準備が必要になってくる。

 

「マーシェの動向次第ですね。奴が屋外に居続けるのなら、もう少し狭いところに誘き寄せなければなりません。どこかに潜伏するというのならそこで破壊すれば良い」

 

「ヘーミッシュと合流しない内に準備しねぇとな…」

 

 シェラード達がそう話し合っていると、

 

「っ! マーシェが動いたぞ」

 

 マーシェがどこかへと歩き出す。

 

「外で戦うことにはならなさそうだな…」

 

「私たちからしたら、むしろ好都合とも言えますが…」

 

 

 

 〈幻影擬態(ライネル)〉と〈秘匿魔力(ナジラ)〉で姿を隠しつつマーシェを尾行していると、やたら巨大な格納庫が見えてきた。

 

「ここは…?」

 

「MEMAの格納庫(ドック)…? いえ、異世界大戦時代の遺物でしょうか…。ここに何が…?」

 

 ノエルから、マーシェ達がゼノクロスの手先であることは聞かされている。シェラード達は、マーシェがその施設へ入っていくのを注意深く観察する。

 

「まさかここにゼノクロスがいるのか?」

 

「…いや、それはないぜ。〈透視(リムノス)〉で見てみたが、あの中に機動兵器はない。ただの遺跡みたいだな」

 

「じゃあ…」

 

「ええ」

 

 シェラード達は互いに頷くと、各々が素早く位置につく。マーシェを確実に破壊するために。今度こそ奴らの企みを阻止してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 シェラードは機能を停止した自動扉を、グッと力を入れ開ける。中は暗く、床や機械の全てが埃を被っていた。その中を、ゆっくりと進んでいく。

 

 やがて、広い場所に着いた。暗闇に目が慣れたシェラードには、ここが機動兵器を格納する場所であると分かった。

 

「やはり来たのね、シェラード・アッシュフォード」

 

「ええ、もちろん。貴女をここで完全に滅ぼしておこうと思いまして」

 

 迷彩を施しているのか、マーシェの姿は見えない。シェラードは声のする方へ向きつつ、魔法陣から収納していた魔剣──断絶剣デルトロズを抜く。

 

「あなたなら、私たちの狙いが分かるでしょう? ()()()()

 

「貴女達の狙いはエルフの森にいる「不知火フレア」と「雪花ラミィ」。そして、彼女達を集めスメラギ・カランコエを殺すこと、でしょう。しかし、その割には貴女方の手元には誰もいない。どうやってその目的を果たそうと言うのです?」

 

「それは」

 

 瞬間。

 

 声のする方とは別の方向から微弱な風を感じ、シェラードは咄嗟に魔剣を薙ぐ。

 

 ギィィィィィィン!!!!! 

 

 それはマーシェが突き出した鋭く長い爪に当たり、高い金属音を響かせた。

 

「…簡単に教えるわけにはいかないわ。例えあなたが計画の本筋にはいない外野だとしてもね!!」

 

「では宣言通り、貴女を破壊するとしましょう。こちらは別に何が何でも情報を求めているわけではない。破壊を惜しむ理由はないのですよ?」

 

 直後、マーシェの爪がバラバラに断ち斬られる。自由になったシェラードはそのままマーシェの元へ飛び込み、首を刎ねようとするも、

 

「ッ!!」

 

 横から文字通り飛んで来た人間サイズもある杭のようなものを寸前で避ける。

 

「ここは言わば機械の集合体よ? 同じ機械の私が操れないとでも?」

 

「暴れるというのなら、存分にして貰って良いですよ。その分、メモリーを壊さずに貴女を滅ぼすという我々の努力目標を達成しにくくなりますから。とは言え」

 

 それを皮切りに、埃を被っていた旧時代の銃器──それも機動兵器用の大型のもの──が火を噴く。

 

「そうも好き勝手されると、滅ぼすどころの話ではなくなってしまいますね」

 

 シェラードは魔法陣からさらにもう一つ、護神剣ローロストアルマを抜き、その全てを弾く。だが、その砲弾や銃弾が格納庫の内壁を破壊することはなかった。

 

「! 結界っ…」

 

 見ると、格納庫の内側に薄い光の膜が張られていた。混乱に乗じて逃げるつもりだったのかもしれないが、その企みは阻止された。

 

 シェラードは自身に向けられた砲撃を弾き、あるいは避けながら、速度を落とすことなくマーシェに突進する。

 

 護神剣で砲撃を弾き、断絶剣でマーシェに攻撃するという器用な戦いをしながら、シェラードはマーシェを追い詰めていく。応戦しようにも、断絶剣の特性により、刀身に触れた武器がことごとく断ち斬られていく為、反撃ができない。

 

「ちっ…!」

 

 マーシェは自らの敗北を悟り、シェラードに向けられた砲撃に自らを晒し、自害しようとするも、護神剣による結界により防がれる。それだけでなく、格納庫自体の電源が切れ、全ての火器が動作を停止する。アレン達による工作だ。

 

「さて、チェックメイトです。あなたに前の個体の記憶があるのかは分かりませんが、今度こそ貴女のメモリーを奪わせて頂きますよ」

 

 シェラードは迷いなく、神速の一撃でマーシェの首を刎ね飛ばす。

 

「ん」

 

 マーシェは何かをしようとしていたようだが、その動作の途中で事切れた。

 

 完全に活動を停止していることを確認すると、シェラードは〈光源(ジア)〉で手のひらから強い光を放つ。

 

「終わりましたよ。照明、点けられますか?」

 

「無理だよ。電源装置を壊しちまったからな」

 

「アレンに任せたからだよ! 機械音痴に出来るのは壊すことくらいなんだから」

 

「お前らなぁ! 結果的に奴さんを倒せたんだからいいだろうが!」

 

「…まぁ、ここから出れば問題はありませんね。皆さん、結界と電源の破壊、助かりました」

 

「おうよ! じゃあ、後は団長達と合流してもう片方のアンドロイドを倒すだけだな」

 

「ええ。問題はヘーミッシュがいつここに来るかという事なのですが…」

 

 マーシェと戦っている間にヘーミッシュが到着していて、既に工作を始めていた、なんて事になっていたら、完全に出し抜かれたことになる。出来るだけ迅速に撃破をしたつもりだが、奴はもう着いたのだろうか…? 

 

 マーシェの頭を抱え、シェラード達は格納庫を出る。

 

「団長達に早めに着いてもらうよう頼んどかないとな…」

 

 そう言った直後、

 

「シェラード! あれは…!」

 

 キースが指差した方向、その先を見ると黒煙が天に向かって立ち昇っていた。明らかに普通ではない。

 

「…少し遅かったようですね」

 

 不幸なことに、悪い予想は当たってしまったようだ。シェラードは(マーシェ)を〈物体縮小(ミニマム)〉で手のひらサイズに小さくし、ポケットにしまう。

 

「急ごう、シェラード!」

 

「ヘーミッシュは私がやります。貴方達は二次災害の阻止を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り。

 

 スメラギ一行は休息と補給を挟んだのち、ギエルデルタを出て少し進んだところを走っている。途中、スメラギからぼたんに交代しながらも(なお2、3回ほど謎の横転危機に見舞われ、あやめがリバースしかけるという事態が発生した)、順調にソフォレ──エルフの森近くの町に近づいていた。

 

「のどかだねぇ、ここ」

 

「何もないねぇ…。人間界ってもっと都会ってイメージあったんだけど」

 

「ま、まぁ…どんなとこにも田舎はあるのですよ、シオン先輩。さっきの街がすごく栄えてただけですよ」

 

「でも、ちょうどさっきのギエルデルタまでが都市部で、ここからは辺境部って言ってこんな風景ばっかなんだよねぇ」

 

 ノエルは退屈そうに言う。

 

「そうなのね…。ねぇ、このクエストが終わったら、みんなでお買い物しない? さっきの街で」

 

「おぉ〜いいねちょこ先! ノエルちゃんとぼたんちゃんに案内頼もうよ!」

 

「いいよー全然。ちなみに、ご飯屋ならノエルの方が詳しいよ」

 

「おうよー! 美味しい牛丼屋なら任せな〜!」

 

「随分ニッチなとこ攻めるのですっ!?」

 

 

 

 …などと、ワイワイ話していると、

 

「みんな…もうすぐソフォレだよ」

 

「お〜、どれどれ…って、あそこっ! 何か黒い煙が…」

 

 ぼたんが指を差した先、よく見ると黒煙が上がっているのが分かった。

 

 車内に緊張が走る。

 

「マーシェがもう始めたのか?」

 

「どうだろう、シェラードくん達なら、何か事が起こる前にマーシェを倒してそうだけど…」

 

「ヘーミッシュのほうがメルたちより先に着いてたのかな? マーシェを囮にしたとか…」

 

「可能性はあるね。しかし、何故彼女たちのいない町を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ…マーシェがあればもう少し上手くできたのだが。スペックの限界、というよりは機能特化モデルでないせいだな。しかし」

 

 ヘーミッシュは黒煙を上げるアンドロイド工場を見上げる。

 

「アンドロイドというものは、よくよく信用されていないのだな。有事の際の自爆装置、人間の居住地から離れた立地。何千年経とうと、機械(われわれ)と人間との溝は埋まらないままか…」

 

 その工場から、続々とアンドロイドが出てくる。その数は数百にものぼる。人間に似せた外装は施されておらず、どれも無機質な素体のままだ。

 

「森へ攻め入るには少ないくらいだが、炙り出すくらいは出来るだろう」

 

 現時点で7人。このフェイズが成功すれば9人になる。

 

「さて、これが最後だ。もうすぐ奴を殺す時が来る。我々の目的、存在意義が達成されるまで、あと少しだ」

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