【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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春の陽気に当たってると、センチメンタリズムを感じずにはいられませんね。この感情をエネルギーにして書いてます


27話 虚ろいの牙

 ブルーブラッドの痕跡はほんの数分前につけられたものであるようで、少し急いで追いかけていると、すぐにその主は見つかった。

 

「ん、見えた」

 

 ぼたんが数キロ先にいるヘーミッシュを見つける。

 

「あっちも察知したっぽい。動きが止まってる」

 

 

 

 そして、スメラギ達でも肉眼で見えるくらいに近づくと、

 

「おいおい、こちらから招待した覚えはないが?」

 

 立ち止まっていたヘーミッシュがこちらを振り返り、呼びかける。どうやら逃げるつもりはないらしい。

 

「ここで君を破壊する」

 

 スメラギは四肢にパワードアーマーを纏い、リパルサーレイを構える。手を抜くつもりはない。ここが正念場だ。

 

「なるほど、よほど待ちきれないらしいな。…だが、ほう。「対象」を二分させたか。考えたな、これでは貴様を殺し切ることができない」

 

 ヘーミッシュはおどけたように両手を上げ、口の端を吊り上げる。

 

(コイツ…何か策があるの? それかこの個体は囮?)

 

 戦力的に圧倒的不利なはずなのに余裕を見せるその態度に、ノエルは疑問を抱いた。が、今はコイツを倒すことが最優先だ。ノエルは腰に提げていたメイスを手に取る。

 

「手負いのあんたじゃ私たちを倒すどころか、逃げることすらできない。覚悟しといた方がいいよ」

 

「さぁ、それは…どうかなッ!!」

 

 

 

 ギュンッッッ!!!! とヘーミッシュは弾丸のように加速し、スメラギ達との距離を一気に詰める。

 

「ひっ⁉︎」

 

「ぺこらさんは後ろに下がってて!」

 

「ッ!!」

 

 スメラギは瞬時にリパルサーレイを放つも、軽い身のこなしで回避される。懐に潜り込んだヘーミッシュは右腕のブレードで逆袈裟に斬りかかる。

 

「そんな攻撃…!」

 

 が、左手のアーマーでそれは弾かれる。

 

 直後、ヘーミッシュが横に吹き飛ばされる。ぼたんが打撃に特化した弾丸を放ったのだ。

 

 そこへフレアが矢を放ち、同時にノエルも突進する。

 

 放った矢は光と共に8つに分かれ、その軌道を大きく曲げながら、側背からヘーミッシュに迫り来る。

 

 矢を避けようとすれば前方にいるノエルに叩かれ、ノエルを避けようとすれば光の矢に貫かれる。初めて戦ったはずなのに、完璧な連携だった。

 

「チッ!」

 

 ヘーミッシュはあえて前へ飛び出し、向かってくるノエルに肉薄する。

 

 ノエルは近づいてくるヘーミッシュに突きを繰り出そうとするが、それよりも早く機械の拳が顔面に迫る。

 

「つッ…!」

 

 寸前で首を捻ってそれを躱すと、ノエルは空いた左手でヘーミッシュの腕を掴む。

 

「ちょっと迂闊なんじゃないッ⁉︎」

 

 そのまま脇腹目がけてメイスを振り抜く。

 

「ぬうぅっ!!」

 

 あまりの衝撃に、掴まれた腕を千切ってヘーミッシュの身体は大きく吹き飛んだ。

 

 そこへスメラギが飛び出し、追撃にかかる。

 

「ふッ!」

 

 両脚にバタリングラムを形成し、勢いのままヘーミッシュに突撃する。

 

 空中で体勢を立て直したヘーミッシュはそれを防御する。が、腕一本でその衝撃を防ぎ切ることはできず大きく腕がひしゃげてしまう。

 

「まだだッ!」

 

 ナノマシン機能を破壊され、ブレードを形成できなくなったヘーミッシュは、それでも回し蹴りを繰り出しスメラギにダメージを与えようとする。

 

 だが、スメラギは突撃の反動で宙を一回転し蹴りを避ける。さらに避ける瞬間にエナジーブレードを形成し、逆に脚を斬り飛ばす。

 

「終わりだヘーミッシュ」

 

 

 

 回転力を殺し切れず、ブルーブラッドを撒き散らしながらヘーミッシュはバランスを崩し倒れる。

 

 もはや戦闘不能状態だというのに、しかしヘーミッシュは未だ余裕を崩さない。

 

「おいおい、まだ終わってはいないさ。俺がわざわざ痕跡を残して貴様らに追わせるなんてヘマをすると思うか?」

 

「やっぱりあんたは囮ってこと?」

 

 と、そこへノエル達が近付いてくる。

 

「無論だ。こんなところで計画を阻止される訳にはいかんのでな」

 

「スメラギを倒すために?」

 

 ぼたんが尋ねる。

 

「俺の()()は既に最終準備を進めている。スメラギ・カランコエ。貴様を殺すためにな」

 

『信号をキャッチしました。……信号はアンドロイド工場遺跡を示しています。』

 

「…どういうことだ?」

 

「本体の元へ向かい計画を止めたいのならばそうすればいい。どちらにせよ、貴様の死ぬ時間が少し変わるだけのことだがな」

 

「……」

 

 スメラギは憮然とした表情を浮かべ、沈黙する。そして、

 

「ちょ、スメラギ⁉︎」

 

 スラスターを噴かし1人工場遺跡へ向かってしまった。

 

 

 

「あぁそうだな。お前なら行くはずだ。もしかしたらという一縷の希望にさえ縋ってしまうだろうよ」

 

「どういうつもり? あんた達じゃ倒せないから私達をわざわざ集めたんでしょ?」

 

 ノエルは訝しげに尋ねる。

 

「なるほど、やはり計画を知っていたか。ならば、己のなすべき事は分かるはずだ」

 

「あんた達を倒してそのふざけた計画を止めること。それが私たちのすべきことでしょ」

 

「今まではな。だが、お前たちは薄々勘付いているはずだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「そりゃ、スメラギはゼノクロスが世界を滅ぼしたのを知ってる唯一の人間だからだろ?」

 

「……」

 

 フレアは不思議そうにそう答えるが、ノエルとぼたんは黙ったままだ。

 

 元々、彼女達がスメラギに不信感を抱いたのはそこだったのだ。

 

「ハハハ! 奴はそう答えたのか。その場しのぎにはなったのかもしれないがな! だが犠牲など、より多くの平和の為には必要なことだ。世界の滅亡を知られたところで目的さえ果たせれば構わん」

 

「…じゃあ何のために?」

 

「それを知りたいのならば俺の示した場所へ行け。そこで全て明かしてやろう」

 

 そう言うとヘーミッシュは機能を停止させ、完全に動かなくなる。

 

 

 

「…」

 

 ノエルは黙り込む。その表情は険しい。

 

「どういう事です? 全て明かしてやるって…」

 

「さぁ。ただ、スメラギはまだ隠している。それも重要なことを」

 

「重要なことって……何だよそれ…」

 

 フレアが力なく呟く。得も言えない不安が、彼女たちを襲った。




どうも戦闘シーンが淡々としちゃいますねームツカシイ
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