【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
デバイスからけたたましい音が鳴り響く。
『……スター。マスター。起きてください。起床予定時刻を6分超過しています。』
「ぅっ…。え、APRIL…?」
目を覚ますと、澄み渡る青空──ではなく、白色の天井が目に入ってきた。
「APRIL、無事だったのか…!」
スメラギは身体をベッドから起こしながら、デバイスに話しかける。周りを見渡すと、そもそも自分が外ではなく、どこか建物の中にいることに気づいた。
『否定します。残念ながら無事ではありません。ミーレ・センチュリオンは先の戦いで消失しました。
APRILは淡々と自身の状況を伝える。
「ここは…?誰かが運んでくれたのか?」
それについて、APRILは直接答えることはせずとある人物を呼ぶ。
『報告します。マスターが起床しました。』
すると、奥からバニーガールのような奇抜なファッションをしたうさ耳少女が顔を出した。
「おぉ!起きたぺこか!いや〜、あんなに血だらけだったのに。人間って強靭ぺこなぁ」
「っ……⁉︎えっと、君は?」
「ぺこーらは兎田ぺこらぺこ!あんたは?」
「僕はスメラギ・カランコエだ。…助けてくれてありがとう、ぺこら。ところで、ここは…?」
スメラギはベッドの近くの窓を覗く。気を失う前に見たのと似た光景が見える。
「ここはぺこーらの移動式マイハウス!の中ぺこ。あんたが倒れてたとこからそう離れてないぺこよ」
「君の家だったのか。なんだか悪いな…」
「まー正直あんたを家に上げるかどうかほんの一瞬だけ迷ったけど、困った時はお互い様ぺこだからね。気にする事ないぺこ!」
世界が変わっても、相変わらずなんだかんだ思いやりのあるぺこらを見て、スメラギは懐かしさを感じたが、すぐにそれを引っ込める。自分の目の前にいるぺこらは、自分の知らないぺこらだ。記憶の中にある人物とは違う。
気を取り直して、スメラギは話を変える。
「でも、よく僕を見つけたね。人が来るような場所ではなかったと思うけど…」
「まあねー。ぺこーら、行商人でさ。ちょうど品物を仕入れてきて、街に行く所だったぺこよ。あんたのAIの声が聞こえなかったら、ぺこーらも通り過ぎてたかもぺこだねぇ」
『肯定します。私とぺこら様のお陰で、マスターを助ける事ができました。』
「あ、あぁ…!APRILもありがとう…!」
なんだか言葉に圧を感じたので、スメラギは慌ててAPRILに礼を言う。彼女はAIのくせに、妙に自己主張をしてくるタイプなのだ。こういう時、そっけなく振る舞うとしばらく拗ねてしまうというのもセットで。
「まぁ、何であそこで倒れてたかなんて野暮なことは聞かないぺこ。それよりあんた、これからどうするぺこ?」
「そうだね…。とりあえず、街に行くつもりだよ。少し野暮用があってね」
次の目的地を聞かれ、そう答えると、ぺこらは目をキラキラさせて身を乗り出してきた。
「おぉ〜!ってことはギエルデルタぺこか⁉︎」
「あ、あぁ…分からないけど多分そうなるかな…」
「いやぁ〜、ぺこーらもちょうどギエルデルタに行く途中でさぁ。でも、こーんなか弱い美少女が1人で辺境を歩くのも危ないぺこでしょ?だからさぁー…?ね?」
あえて皆まで言わずに、にっこりこちらを微笑んでくる。また圧を感じた気がした。
「うっ…。まぁその、ギエルデルタ?までなら同行しようかな…。僕も道案内をして欲しかったからね」
ここまで1人で来たんじゃないのか?などとは絶対に言わないスメラギであった。何故なら紳士だから。女心は分からないが、空気を読む事は上手いのだ。
「じゃあ決まり!早速向かうとしよう〜!」
*
ぺこらの移動式住居は、〈
「楽をしてたらつまんないぺこでしょ?旅は歩いてなんぼよ!あと運動しないと、兎なのに足遅いって言われちゃうでしょ」
なんだか体面を気にしているらしい。うさ耳あるのに人間と同じ耳もある時点でおかしいだろうが。
「ところで、スメラギは普段何してるぺこ?旅人には見えないぺこだけど」
「僕は傭兵だよ。アルヴィアスの」
「アルヴィアスって、傭兵組織の最大手ぺこじゃん!あんたよく入れたぺこだねぇ」
「あはは……。運が良かったんだよ」
なんかディスられた気がする、というのは忘れておこう。
アルヴィアスは、傭兵業界の中でも、名実共にトップの組織である。様々な世界に進出しており、このターミナル02 ha-01にも支部が置かれていた。
「ん…?アルヴィアス……スメラギ……。なんか聞いたことあるような」
「え゛っ。き、気のせいだよ!聞き間違えとか、人違いとかだと思うな…⁉︎」
スメラギは慌ててごまかす。別に大した隠し事ではない。ただ単に気恥ずかしいだけだ。知人に似た赤の他人とは言え、この事はあまり知られて欲しくないのだ。
「ふ〜ん…?」
『ご歓談のところ申し訳ないのですが、報告します。調べたところギエルデルタにアルヴィアスの支部はありません。しかし、そこから北へ行ったアイゼオンという街には存在します。』
APRILはデバイスでアイゼオンの位置を表示する。
「なるほど…。途中で一泊しないといけないから、どちらにせよギエルデルタには寄る必要があるね」
「アイゼオンかぁ。ギエルデルタの方が海に面してて、交通の便も良さそうぺこなのに」
疑問に思うぺこらに、スメラギは説明する。
「多分、「回廊」があるんじゃないかな。アルヴィアスには異世界の傭兵も来るし、何かと都合が良いんだよ」
「回廊」とは、世界と世界をつなぐ文字通り回廊だ。異世界の窓口以外にも、新現代では、「回廊」を通じたネットワークも形成されている。時差や時間の流れが世界ごとに違うため、伝達速度にばらつきはあるものの、場所の制限からは逃れることができていた。
「なるほどねぇ。というか、あんたはアルヴィアスの支部に用があるぺこなんだ?」
「ああ。この世界に来るのは初めてだからね。色々と知っておかなきゃと思って」
これは嘘ではないが、隠していることがある。アルヴィアスの支部で、とあるものについて調べることが、スメラギの本当の目的であった。しかし、これをぺこらに言うことはない。言いたくはなかった。
そんな思いをよそに、ぺこらは(何故か)自慢げに応じる。
「へぇ〜、あんた別世界の人間だったぺこなんだね!じゃあ、しょうがないから道すがらちょっと教えてやるぺこっ!この世界はねー…