【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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いよいよ再会です。成長したスメラギくんはホロメンに受け入れられるのか…?


ちなみにサブタイトルはカフカさんの「サンカショウ」という歌のワンフレーズです。今回の話に合ってるなぁいい歌詞だなぁホッコリと思い、使わせていただきました。
この曲めちゃくちゃいいから聞いてくれ…ッ!という宣伝も含まれているのは内緒。


34話 死んでもいいと笑うより、生きていくって泣いていたい

「…ッ!」

 

 ノエル達の背筋に悪寒が走る。

 

「今のは…っ!」

 

「うん。あっちだ。行こう」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

「そぉら、やって来た」

 

「スメラギさん…いや、オーガストか」

 

「ハッ! これから殺す相手の名前をわざわざ覚えてるとは、律儀な女だな!」

 

「殺す…か。余達は少なくとも、あなたを殺す為だけにここに来たわけではない」

 

「ほう?」

 

 その言葉を聞き、オーガストは片方の眉を吊り上げる。

 

「君が本当に倒すべき敵なのか、それとも世界を守る味方なのか。それを確かめに来たの」

 

「……僕を殺さない余地があると?」

 

「あなたは確かに『スターク』だ。しかし、世界を守るために戦ってもきた。仲間を何度も救ってきた。……あなたは一体、何者なんだ? 何故『スターク』が世界を守る?」

 

 正体がバレてしまえば途端に牙をむくような。そんな薄っぺらい世界を。

 

「…僕は、凶悪な力を持った。世界の脅威になったのが怖くて、隠れるように、他人の目を気にしながら生きてきた」

 

 スメラギは目を閉じる。

 

『スターク』になってしまった事実を受け入れられずオーガストを生み出し、そして贖罪のために戦ってきた。

 

「だけど、僕は世界を恨んだことなんて一度もないよ」

 

 何故守るのか? そんなの愚問だ。

 

 思えば、答えは初めから持っていたのだ。

 

「僕は、それでも僕を支えてくれた仲間のために戦いたい。みんなの生きる、この世界を守りたい」

 

 

 

 

 

「そうか」

 

 あやめはそれだけ言うと、腰に提げていた刀に手をかける。

 

「覚悟を決めたようだな。だったら付き合ってもらおうか」

 

 続けて、ノエルがメイスを取り出す。

 

 ぼたんが背負っていたスナイパーライフルを構える。

 

 シオンとちょこが魔法陣を構築する。

 

「あぁ。いいよ。君たちがそれを望むなら」

 

「…スメラギ?」

 

「大丈夫。ロボ子さんは下がってて。…あと、オーガストも。今回は僕だけで十分だ」

 

(おいおい、お前だけでアイツらを相手取ろうっていうのか?)

 

「勿論。僕を誰だと思っているんだい?」

 

(ハッ! 言ってくれるじゃねぇか『エース第3位』‼︎いいぜ! 今回はテメェに任せてやるよ!)

 

「ありがとう」

 

 そう言うと、スメラギは胸のナノマシン・パッケージを軽くタップする。ナノマシンが全身を覆い、強固な装甲を構築していく。

 

 

 

「じゃあ、仲直り(ケンカ)しようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、あやめが弾丸のように飛び出し、スメラギとの距離を一気に詰める。

 

「妖刀羅刹、秘奥が壱」

 

 あやめは抜刀し、攻撃を仕掛ける。ただし、恐るべき速さで。

 

「〈白南風(しらはえ)〉ッ!」

 

 あやめの使う技の中でも、最速の一撃がスメラギに迫る。

 

 だが、それは事前に予測していた。

 

 あやめの剣術は明らかに並はずれて強い。それは、大型の魔物を一刀のもとに両断してしまうほどだ。そんな彼女の攻撃に対し、防御という手段で立ち向かうのはあまりに無謀と言えた。

 

 よって。

 

「ッ!!」

 

 スメラギはあやめが地面を蹴った直後、真横に転がり刀の軌道から逃れていた。

 

「つ…っ!」

 

 スメラギは間一髪避けると、あやめが追撃するより早く、リパルサーレイを放って持っている刀を弾き飛ばす。

 

 だが、あやめが持っている刀は一本ではない。

 

 あやめは素早く2本目の刀──鬼神刀阿修羅を引き抜き、構える。

 

「余達は『スターク』は倒すべきだと学んだ。そう信じていた! どうしようもなく強大な力はその善悪以前に、多大なリスクを抱えているのだから!」

 

「…!」

 

 と、アーマーのコンピュータが背後を警告する。シオンとちょこがそれぞれ、黒い火球を放ってきたのだ。

 

「確かに強大な力は存在するだけで危険なものだ。だけど、人は心があるからそれだけの力を制御できる! 大事なのは力の善悪でも強さでもない! 心の力だ!」

 

 

 

 2人はあえてスメラギを狙わず、むしろスメラギの背後を黒炎で囲い、退路を断つ。

 

 だが、そんなのは気にしない。元より、避けようとも思ってない。スメラギは直進してあやめを迎え撃つ。

 

「そんなものは信頼に値しない! 世界は、そんなに優しくはないんだっ!」

 

 あやめは刀を構え、真っ向から斬りかかる。

 

 対するスメラギは退路を塞がれ、その上防御しようにもあやめはそれごと斬り伏せてしまう。

 

 ならば。

 

「信じさせてみせるさ…! 僕はもう、誰かを信じる事を恐れたりはしないッ!」

 

 攻撃自体を封じればいい。

 

 スメラギは空気圧ハンマーを両腕に形成し、地面に思い切り叩きつける。

 

「っ!!?」

 

 その衝撃は、あやめの足元を大きく揺るがし、さらには地面すら粉砕させる。

 

 勢いを削がれ動きを止めている間に、スメラギは地面に強力なマグネットアンカーを射出し、あやめの持っていた刀を地面に縫い付けてしまう。

 

 あやめの戦闘能力を奪うと、スメラギは流れるようにノエルの方へシフトする。

 

 

 

 

 

 

 

「スメラギ君、あんなに早くあやめちゃんを…!」

 

 わざとあやめとワンテンポずらして駆け出したが、これでは各個撃破の良い見本だ。

 

 ノエルは胸目掛けてメイスを突き出す。

 

「私は君の存在を許せないっ! 『スターク』は世界を滅ぼす。だからその前に『スターク』を滅ぼさなきゃいけないのっ!」

 

 対してスメラギは身体を捻ってそれを回避する。

 

「確かにそれが最適解かもしれない。それはこのヒステラルムに生きる人々にとっての〈使命〉かもしれない。だけど、だからといって僕はそれに従うつもりはない!」

 

 反撃とばかりに拳を握り、ノエルに向けてそれを飛ばす。

 

「そんなのエゴでしょ! 世界の為に戦うんなら、世界の為に命を使い切ってよ!」

 

 それに応戦するように、ノエルも空いた手でパンチを繰り出す。

 

「ぐっ…!」

 

 拳と拳が激突する。

 

 パワードアーマーを装着してもなお、ノエルの膂力に敵わず、スメラギは大きく吹き飛ばされる。

 

「そんな事を繰り返していたら、誰も何も救われない! 誰だって、運命に命を使い潰されたくはないはずだ! 僕は僕の願いの為に生きる! それは誰にとっても当たり前の事じゃないのか⁉︎」

 

「っ…‼︎」

 

 すぐさま起き上がり、ノエルに接近しようとしたところで、

 

「ぐぅっ…‼︎」

 

 

 

 再び大きな衝撃がスメラギを襲う。ぼたんの衝撃弾だ。

 

「でも、あんたはいずれ滅ぼされる。私たちを退け、ゼノクロスを倒しても、いつかあんたを『スターク』と知った誰かがあんたを殺しに来る。それでも、あんたは戦うの?」

 

「勿論。たとえ僕の進む先が絶望だったとしても。それが避けられない悲劇だとしても」

 

 ぼたんが2発目を撃つのと同時に、スメラギもリパルサーレイを放つ。

 

「抗うさ。矛盾を孕みながらも存在し続ける。それが、生きるということだ!」

 

 高出力のレーザーは迫り来る弾丸を蒸発させ、逆にぼたんを襲う。

 

「ッ!」

 

 ぼたんは慌てて倒れ込み、それを回避する。が、ライフルの方は庇いきれずに銃身が溶けてしまった。

 

 

 

 そこへ再びノエルが迫ってくる。

 

「破砕鎚、秘奥が壱…〈轟崩打連(ごうほうだれん)〉!!」

 

 刹那の間に2度の打撃を加える技だ。それに対し、スメラギは瞬時に多重構造のシールドを展開する。

 

 ただし、前回と同じものではなく、衝撃を拡散させやすい円状に加え、内部をハニカム構造を取ったもので迎え撃つ。

 

 一撃目を完全に防ぎ切り、続く二撃目で盾を粉砕されるものの、スメラギは無事だ。

 

「防いだ…っ⁉︎」

 

「ぐっ…、強引だけどねっ!」

 

 ノエルの一撃を防ぐと、スメラギは掌のリパルサーレイをノエルの顔面に突きつける。

 

「チェックメイトだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私たちの負けだよ」

 

 そう言うと、ノエルはすっと構えていたメイスを下ろす。だが、その声に悔しさや怒りはこもっていない。むしろどこか、すっきりしたような声色だった。

 

 他の4人も、武器を収める。それに合わせるように、スメラギもリパルサーレイをノエルから離し、アーマーを解除する。

 

「負けとか勝ちじゃないよ。仲直り、だろう?」

 

「…そっか。そうだね」

 

 へへっ、とノエルは小さく笑う。

 

「みんな。今まで騙しててごめん。本当のことを言えなかったのは、僕が弱かったせいだ。僕はみんなのことを怖がっていた。安易に信頼して、本当のことを話して。それで裏切られるのが怖かったんだ。でも、だからってまず僕が信頼しなければ、される事もない。自分から動かなきゃ、何も始まらなかったんだ」

 

 スメラギは周りを見渡す。もう後ろめたさなんかない。仲間の顔を、今はもう真っ直ぐ見ることができた。

 

「ふふっ…お前、私に同じ事言っておいて、今更気付いたのか」

 

「あはは…情けない事にね」

 

 だが、今回はできもしないことを願った訳じゃない。これは紛れもなく現実だ。

 

「スメラギさんっ、おかえりなさい!」

 

「うん。ただいま、るしあ。…君には、迷惑をかけたね。辛いものを見せてしまって…」

 

「いえ、いいのです。スメラギさんはそんな辛い過去を背負って、それでも生きようとしている。だったら、それを支えるのが仲間、なのではないですか?」

 

 その意味で、スメラギにとってるしあは最も近しい存在であった。それ故に、彼女を信頼することができなかった。それは依存でしかないと。

 

「そうだね。僕は君たちを守りたいという思いだけが強くなってしまって、君たちのことを見ていなかった。だからこそ、今は素直にみんなと向き合えるよ」

 

「まったく…ぺこちゃんのお陰ぺこねっ! ぺこーらがみんなを説得してなかったらどうなってたことか…」

 

 すっかりいつもの調子を取り戻したぺこらがそう嘯く。

 

「なぁんでぺこらさんだけなんですかっ! ラミィも貢献したでしょうが!」

 

「そうだよ〜! 一応メルもちょっとは活躍したんだけどっ⁉︎」

 

「うるさいよあんた達! 細かいことはどーでもいいのっ!」

 

「あはは…3人ともありがとう。僕のことを信じてくれて」

 

 3人のやり取りに苦笑しながらも、スメラギは感謝を述べる。

 

「やれやれ…余達も、あれくらいぐいぐい行った方が良いのか?」

 

「あれは単に無邪気なだけよ…私、あんなに元気よくできないわ」

 

「ま、わだかまりは消えたし、いいんじゃない? またテキトーによろしくね、スメラギさん」

 

「うん。あともう少しだけよろしく。あやめ、ちょこ、シオン」

 

 そして、ノエルとぼたんの方に視線を向ける。

 

「…私、今まで悪い人はみんな非道い人なんだって思ってた。でも、スメラギくんを見てたら、そうじゃない気がする。…私、騎士失格だなぁ。悪者と戦う為に騎士になったのに、悪者が誰か、なんて基本的な事すら間違ってたんだもん」

 

「誰だって最初から正しい判断をできるわけじゃないよ。大事なのは違う判断を否定せず認めて、2つの考えを吟味していくことじゃないかな?」

 

「そうそう。反省できるだけマシじゃない? 私はノエルのこと、もうちょっと頭の堅い子だと思ってたけど」

 

「もーっ言わないでよぉ! ……でも、スメラギくんのおかげで誰を守るべきか分かったよ。そして…誰を倒すべきかも」

 

 ノエルは振り返る。誰もいないはずの、その背後にはいつの間にか1人の男──否、アンドロイドが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ」

 

 無機質な、だが驚きと苛立ちを含んだ声がした。

 

「俺はお前の死体を見に来たはずだ。お前はかつての仲間に命を狙われ、応戦することもできず、無惨に死んでいくはずだった!!!!」

 

「あのままだったら、そうなっていたかも知れない。だが僕は過去と、仲間と向き合った。だからこうしてここにいる」

 

「『スターク』は世界にとって看過できない脅威であるはずだ!!!! 誰であろうと、この世界に生きる者は世界を守るために『スターク』を倒すのが自然だ‼︎」

 

「確かにそうかもね」

 

 ノエルは否定しなかった。彼女は最後までスメラギの殺害を踏みとどまることができなかった。今だって、『スターク』は滅ぼすべきだという考えの根本は変わっていない。

 

 しかし。だからと言って。

 

「世界を守ろうとしているのに、邪悪な力を持ってるからって敵対するのもおかしな話だよね。そんなのは正義の押し付けだよ」

 

「あぁ。生徒会長ともあろう者が情けない話だが、余はどうも焦っていたようだ。冷静に考えれば、実害を引き起こしたのはどちらかなど、火を見るより明らかなのにな」

 

 再び、彼女らは戦闘体制に入る。ただしその敵は、世界の災厄たる「黒幕」ではない。

 

「これだから人間は度し難い…ッ! イレギュラーさえなければ全てが終わり、平和な世界を実現できたはずなのだ‼︎」

 

「お前の計画なら、楽に平和を実現できたかも知れない。でも、誰かを犠牲にして得た平和は、幸せであるはずがない」

 

 ヘーミッシュの怒りを、フレアは一蹴する。

 

 平和を求めるなら、どれだけ犠牲を払おうと問題ではない。それだけの犠牲を払うだけの価値が、それにはあるのかもしれない。だが、犠牲の上に成り立つ平和は、果たして人々を幸福にするのだろうか? 喜びを分かち合いたい人が隣にいないのは、とても悲しいことではないだろうか? 

 

「僕も戦うよ、スメラギ。世界はアイツが言うほど冷たいものじゃないってこと、見せつけてやろう」

 

 スメラギの隣にロボ子さんが立つ。

 

「アンドロイドが俺の邪魔をするのかッ? お前ならどちらが正しいか分かるはずだろうッ!」

 

「生憎だけど、君が正しいとは思えないな。人の未来は、人が創り出すものだ」

 

「僕は人柱になるつもりはない。もうこの世界で、誰かを犠牲にしたくはないんだ。だから」

 

 両腕にブレードを構築し、ゆっくり歩き出す。

 

「ヘーミッシュ。君を倒す」




今回は各所に色んな作品の台詞が散りばめられてます。パクリではないです。ないです(固い意思)

まず、「仲直り(ケンカ)」はまんま「新約 とある魔術の禁書目録」からですね。こういう真逆の意味をルビにするのすこすこ侍

次に「大事なのは力の善悪や強さでなく心の強さ」というセリフ。これは「トップをねらえ2!」のラルクのセリフをちょいアレンジしたもの。あのラルクが努力と根性を語るシーン、グッときますよね

そして「矛盾を孕みながらも存在し続ける」は、「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」のグラハム・エーカーのセリフです。グラハムさん大好きなので入れてみました

最後にロボ子さんのセリフ「人の未来は人が創り出すものだ」。これは「機動戦士ガンダムUC」の主人公バナージ君のセリフです。ユニコーンは名言揃いなのでつい使いたくなっちゃいますね〜

そしてそして、待ちに待ったタイトル回収。というより、あの陰鬱なタイトルを見事打ち破ったというのが正しいですかね?こういうタイトルをちょこっと改変して意味を大幅に変えちゃうやつ、めちゃくちゃエモいですよね。別物かもしれないけど「天気の子 -weathering with you-」とか、初めてサブタイの意味を知った時鳥肌立ちました笑
ちなみにここ、今回のサブタイトルにしようかなーと思いましたが、どうしてもサンカショウの宣伝がしtこのフレーズが頭に残ってしまったので、タイトル回収の方は本編でしました。

何気にスメラギとホロメンがちゃんと戦ってるのを書くのは初めてですね。覚醒したスメラギくん、つよぉい!(小並感
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