【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
「ほら、この先だよ」
かなたが指差した先は、明らかに周りと違う雰囲気を放つ神殿のような巨大な建物だ。
「『スターク』とその仲間を連れてきました、主神リヴァイエラ」
その最奥にてかなたは跪き、何もないだだっ広い白い空間に向けて言い放つ。
「…?」
『来たか、運命に囚われし者達よ』
それに対しどこからともなく声が聞こえる。と共に、かなたの目の前に、インクが紙に滲むようにその姿が顕になる。
「ぅわっ…⁉︎アレが…⁉︎」
「わ、のっぺらぼうだ」
それは神と呼ぶには、あまりに単純な外見だった。「白い影」と形容するのが1番適切だろう。全身が白く、顔もなければ胸や腹筋などといった身体の起伏すら存在しない。神体を縁取る黒だけが、この白の空間と隔絶された1つの存在であることを証明していた。
「あなたが創造神か」
『然り。我が汝らを喚んだのはこの世界の未来、つまるところゼノクロスについてだ』
「何故このタイミングなのだ? もっと早くに教えてくれてもよかっただろうに」
あやめが抗議するが、リヴァイエラは静謐な声でそれに応じる。
『否。今という時でなければ、明かすことはできなかった。スメラギ・カランコエが己が弱さを認め、『スターク』として生きることを受け入れる必要があったからだ。スメラギ・カランコエ。汝がゼノクロスと戦うという確固たる覚悟を持たねばならなかったのだ』
「…それは、ゼノクロスの狙いが僕だからかい?」
『それについては本筋と関わる故、簡潔に答えるというよりは、これから話すことの中でその答えを述べていくとしよう。
事の発端はゼノクロスの目覚めだ。それはいくつかの遠因があったが、最も直接的な要因はスメラギ・カランコエによる邪神の力の発動だ。その脅威を感知しゼノクロスは目覚め、そして世界に牙を向いた』
「そうして、僕だけが生き残り、世界は滅びた…」
しかし、リヴァイエラはそれを否定する。
そして告げる。
『結果的に見ればそうなるが、真実は異なっている。
つまり、汝はその時に一度死んでいるのだ』
「なっ………」
スメラギは驚きのあまり、一瞬絶句する。
「僕が、既に死んでいた…⁉︎では、何故僕は今生きているんだっ?」
『結論から言えば、それは我の権能によるものだ。
『
ここで汝を完全に失ってしまえば、彼はこの世界を離れ他世界までも滅ぼすであろうと我は予測した。故に、スメラギ・カランコエという存在が滅びる前に、汝を運命の円環に閉じ込めた。分かりやすく言うならば、汝はその身が滅びる度に並行世界へそのままの姿で転生するということだ。
邪神の力を持つ汝が生きていればゼノクロスがこの世界から離れることはなく、また仮に並行世界が滅びたとしても、いくらでも創世することは可能である故、汝がこの世界から抜け出さない限り、ゼノクロスの隔離は完全なものになった』
その言い方に、スメラギははたと気が付く。
「……そうか。この世界が他世界と切り離されたのは、あなたの仕業だったのか」
『然り。今、汝がこの世界から抜け出さない限り、と我は条件付けた。汝が異世界へ渡る余地が十分にあった為だ。故に我はさらに、全ての並行世界を含めたこの世界をヒステラルムから隔絶した。そうしてこの世界をゼノクロスの贄とすることで、ヒステラルムの平和を守ったのだ』
「それが、今回の事件の、真実…」
るしあは愕然とする。
あの記憶は、ゼノクロスを止める為に立ち上がり、スメラギと共に戦ったるしあやその仲間たちは、ヒステラルムを守る為の生け贄に過ぎなかったのだ。
「そんなのっ…!
「そんなのお前の独善じゃないかっ!! どうしてゼノクロスを止めようとしなかったんだ⁉︎」
「フレア…」
「スメラギは世界を救おうとした。別世界の私たちだって! その思いを、お前は踏みにじったんだぞ!!?」
『ゼノクロスは何者にも倒せぬ。奴の力は我々創造神すら超える。それほどの存在を前にして、倒すという選択肢を取るのが最良であり最善であると判断するのか?』
「……っ!」
『だがしかし、滅びの螺旋に終わりが生まれた。幾万、幾億の時間軸を観測し、我はたった1つの可能性を認識した。何の犠牲も必要としない、最良の選択が。それが
スメラギがオーガストを認め、決裂した仲間と向き合ったこの世界線こそ、滅びを終わらせる唯一の希望なのだ』
*
「僕が、みんなと共に歩むことが…?」
「ハッ、つまり『スターク』の力なら、あのデカブツをどうにかできるって話だろ」
『然り。だが滅びの螺旋に終止符を打つには、スメラギだけでも、オーガストだけでも不十分なのだ。仲間が汝を支え、成長させることで、ただの人間でもあり『スターク』でもある「スメラギ・カランコエ」として汝を完成させなければならなかった』
だから
つまり。
「
『然り。赤の他人より関係の深い仲間を用いるのが適切であると判断した我は、全ての並行世界における汝の仲間達に、スメラギと出会い協力させるよう運命を改変した。そしてそれは今、実を結んだのだ』
「私たちの出会いが、決められたもの…」
「ぺこーらがスメラギを見つけて、手当てしたのも運命だったってこと…⁉︎」
全てはリヴァイエラの計画通りに過ぎなかった。
何一つとて、例外なく。
「そんな……」
一同はその真実に上手く言葉が出ない。
自分達のやっていた事は、自分の意志で選んでいたと思っていた行動は、全て目の前の白い影によって決められた事だったのか?
自分達は、彼の道具に過ぎなかったのか?
「……なるほど。つまりテメェは俺を、いや俺たちを駒として使ってたって事だよなァ? テメェの手を汚さず! 大した犠牲を払う事なく! 世界を救おうってのか!!!」
オーガストは右手から滅紫の『力』を放出させる。
『我が奴と戦ったとして、万が一我が滅びればこの世界も滅びる。何があっても、我はこの世界のために存在していなければならないのだ』
「だったらテメェを滅ぼして、俺が代わりに創造主になってやるよッ!」
『我の権能を奪ったとて、人間では耐えられぬ。ましてや既に神の力を有している汝では』
「ハッ! 試してやろうか⁉︎」
「オーガスト…! やめてくれ」
そこで、スメラギが表へ出て止めに入る。
(チッ…! テメェは受け入れるのか⁉︎このクソッタレな真実を! 馬鹿げた運命をひっくり返したくてゼノクロスと戦おうとしたんじゃねぇのか⁉︎)
「あぁ、そうさ。……だけど、過ぎたことは変えられない」
だからこそ。
『ならば希望を現実とするか? 人間であり『スターク』でもある汝が、仲間と共にゼノクロスを倒すという未来を』
スメラギはリヴァイエラを見据える。迷いのない、確かな視線を向ける。
「もちろん」
未来は。これから起こることだけは。
眠れる奴隷は、主神に対しこう言い放った。
「僕も世界を守りたい。だけど真実を知った今、あなたの言いなりにはなるつもりはないし、あなたの望む未来を実現するつもりもない」
「僕達の未来は、僕達が作り出してみせる」
ようやく…ようやく、「神様転生」タグを付けた意味が出てきました…!神様転生と聞くと、突如死んで神様と会って異世界に転生するっていうのがテンプレかなーと思うんですが、逆張りオタクらっくぅは「そんなありきたりなの嫌だ!」ってことでアレンジしてみました。何気に作品に転生要素を入れたのはこれが初めてなんです。僕、実は転生より転移の方が好きなんですよね。あんまり安易に人殺したくないというか。転移だと色んな世界と繋がりを持てるので、使い勝手が良いかなぁと思っております。
そしてさらに、あらすじも無事回収できましたね。「運命に囚われた者達」はスメラギくんだけじゃなくホロメンも入ってたんですね〜。これに関しては、「登場するキャラがことごとくホロメンなの、普通に考えておかしくない?ご都合展開だろ!」ってことで作られた設定です。なかなか強引な気もしますが笑
さて、ここまでのストーリーの大半が白いのっぺらぼう(神)によって仕組まれたものだった上、さらにスメラギの成長、ホロメンとの和解すらも神様がお膳立てしていたということで、中々夢も希望もない感じではあります。でも、スメラギとホロメンが同じ苦しみ・絶望を共有できてるの、良いですね…
やられっぱなし、流されっぱなしの一行ですが、けどこれで終わる訳ないよなぁ!?ってことでスメラギくんが打開の糸口になりそうです。成長したね本当に…