【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
「なんか…一気に色んなこと聞いたからまだ頭が追いつかないよぉ…」
「無理ないわ、メル様。私もまだ上手く整理がつかないもの」
メルとちょこは頭を抱える。だが、それはこのメンツの半分以上が同じ気持ちだろう。
だから、その説明にぼたんが買って出た。
「ししろん、あの人の話よく分かったねぇ〜! 僕、最後の方しか頭に入らなかったよ〜」
…ロボのアンタは理解しておけよと思わずツッコミたくなったのはご愛嬌。
「……まとめると、まずスメラギは死ぬ度に転生する運命を与えられていて、過去に一度死んだことがある」
それは、永久にゼノクロスに殺され続けるという呪いでもあった。
「だからるしあはスメラギさんの記憶を見れたのですね…」
しかしこの呪いのおかげでるしあが過去を知り、それがスメラギと和解する糸口となったのは皮肉であろう。
「そして、それはゼノクロスをこの世界に閉じ込める為の策だった。ついでに、この世界をヒステラルムから隔絶したのもその為」
ゼノクロスは世界を守る為に世界を滅ぼそうとしている。しかしゼノクロスは強大すぎる故にそれを止める手段がなかった。だから、リヴァイエラは自身の世界を犠牲にしてまでヒステラルムを守ろうとした。
「まさか他世界と連絡が取れないのが、他ならぬ主神のせいだったとはね…」
「最後に、私たちがスメラギと出会ったのは、ゼノクロスをスメラギが倒す可能性を見出す為に創造神が仕組んだもの」
リヴァイエラはこの死の円環の中で、たった1つの可能性を見出した。彼女達の運命を操ってまで、彼はそれを実現しようとした。
「確かに、見知らぬ異世界なのに出会うのが揃って昔の仲間っていうのはできすぎてるぺこね…」
そしてそれは、まさに現実となった。
「結局、私たちは誰かに操られてばっかだね…。今までの選択は、本当に私たちがしたものだったのかな…」
ノエルは弱々しい声でそう呟く。
スメラギは少なくとも、自分の意志でゼノクロスを倒す旅に出て、そしてゼノクロスを倒すと決めた。
だが、自分達はどうだろう。ヘーミッシュらにはスメラギを殺すための戦力として集められ。その計画を阻止したかと思えば、そんな行動すらも創造神の手の内だったのだ。
「たとえ自由意志が無かったとしても。あなた達の行動が全て仕組まれたものだとしても。あなた達が何かを為そうと思ったということだけは、誰にも操れない。それでいいんじゃないかな? 天使がこんな事言うのも変だけど、想いは神ですら干渉できない。それこそが、人が人たる所以だからね」
ただの付き添いだったかなたはそう答える。
人間界へ降りる為に一緒にいるだけのはずだった。今回の件に全く関係しておらず、その意味ではずっと外野だった。
それでも。
「主神様が僕を使いにやった理由、今なら分かる気がする。僕も、あなた達と同じだったんだね」
彼女もまた、運命を仕組まれた者だったのだ。だが、それに悲観することはなかった。
「かなた…」
「僕も一緒に行くよ。主神様がそうせよと仰るなら、ううん、僕がやりたいと思ったから。この世界を守ってみせる!」
*
スメラギ達は天の柱を降り、人間界へ到着した。
「あれ、さっきのところと違う?」
「そりゃ、邪神の力の発信源に降ろしたらえらい騒ぎになるでしょ? ここは、えーと…ゼボイムから南西に行ったところだよ」
かなたは神眼で辺りを見回しながらそう答える。
「それで、ゼノクロスをどう見つけるのだ?」
「あぁ。1つ手がかりがある。というより、これしかないんだけどね」
その言葉に、ぼたんとノエルはピンときたようだ。
「やっぱり、アイツら?」
「あぁ。ヘーミッシュ達ならゼノクロスの所在を知っているはず。彼らを見つけよう」
「でもどうやって見つけるのです? さっき破壊したヘーミッシュから何か情報を得られないかな」
だが、ノエルは首を振る。
「もっと手っ取り早い方法があるよ。彼らは自力じゃスメラギくんを殺せないから、私たちを使おうとした。けど、それは失敗に終わった」
妙に自信ありげに、腰に手を当て説明を始める。
「じゃあ、他に使えそうな戦力を探す…? スメラギさんの正体を世間にバラすとか」
「ありそうだけど、それだと時間がかかるし、何よりゼノクロスが世界を滅ぼしたという事実が明るみになったら、彼らだって危ない」
じゃあどうするの、とメルは尋ねる。
「待つ! 奴らは後がない。手持ちといえば自分自身の戦力だけ。だったら必ず奴らの方から攻めてくるはず!」
ノエルの考察を聞き、感心したようにるしあは拍手する。
「おぉ〜! ノエル頭良いのです!」
「まさかノエルがそんなちゃんと考えてるとはね」
「ふふ〜ん、私だって騎士団の長なんだから当然よ! あっそうだ、シェラード君達にも連絡しとかないとっ」
と、そこであることに気付いたシオンは恐る恐る尋ねる。
「え〜と…つまり、今日はここで野宿すか…?」
「あまりうろつくのも得策ではないし、まぁそうなるね」
スメラギは平然とそう答えるが、シオンは明らかに嫌そうな顔だ。
「えぇー⁉︎虫とか怖いし普通に嫌なんですけど⁉︎」
「うーん確かに…寝心地も悪そう」
メルもあまり乗り気ではなさそうだ。
「ほら、不満垂れてないで準備するわよ。持っておいて良かったでしょ? テント」
「まさか本当に使う事になるとはなぁ…。ちょこ、これどうやって開くんだ?」
そんなサバイバル未経験の一般魔族達をよそに、ぺこらは1人いそいそと準備を始める。
「? ぺこらさん、何してるんですか?」
それに気がついたラミィは、何気なくぺこらに尋ねる。が、それに対しぺこらはびくゥッ!!!? と明らかに普通じゃない反応をする。
「い、いや、なん、何でもないぺこだよ?? ただちょっと、寝る時は1人がいいかな〜…なんて……ハハハ…」
「まぁ良いんじゃないんですか? ただ、あんまり離れるといざって時守れないので、そこだけ気をつけて下さいね?」
だが、そこでノエルは気づいてしまった。
「……あ〜、ぺこらっちょ『家』持ってるでしょ? そこで1人だけ野宿から逃れようとしてない?」
ぎくぅっ!!! と、再び身体を飛び上がらせるぺこら。
そういえば、とスメラギは思い出す。自分が介抱してもらった時、ぺこらが使っていたような…
「そうなのぺこらちゃん?」
「えっ…え〜? 何のことだか…」
「このキャリーケースみたいなの何? 見せてよ」
「え゛っ⁉︎これは商売道具で見せられなっ…⁉︎」
近づいてくるメルに、ぺこらは持っていたキャリーケースのようなものに覆いかぶさるように隠す。
「はい<
「わっ、わっ⁉︎」
ぼたんはぺこらだけを浮かせ、隠していたものを取り上げる。
「おっ、良いものもってんじゃ〜ん」
「なにこれ、ミニチュア?」
「いや、これがぺこらの『家』だよ。今はサイズを縮小してるけど、ちゃんと人間が住めるサイズに戻るはずだよ」
「スメラギ⁉︎バラすなぺこっ‼︎」
空中でジタバタするぺこらをよそに、住居の存在を知ったノエル達が寄ってくる。
普通に考えれば、彼女達だって強いだけで中身は普通の女の子だ。キャンプ好きでもない限り、ちゃんとした所で夜を過ごしたいだろう。
とはいえこの光景だと何となくチンピラのようにも見えてしまうのだが。
というわけで。
「うぅっ……この家だってそんな広くないのに…!」
「まぁまぁ。ベッドはぺこらっちょに譲ったんだから文句言わないのっ!」
「譲ったも何も元々ぺこーらのものでしょぉっ!!?」
「というか、天使も寝るんですね」
「そりゃ不老不死じゃないしっ。エルフこそ不老不死なのに休みを取るの?」
「まぁ精神的な疲れは溜まりますし、何より夜明けまで暇ですもん!」
「えぇ…そんな理由で…?」
元々一人暮らし用なのに10人近くを寝泊まりさせるということで、殆どの部屋に布団やら寝袋やらが敷き詰められてしまった。窮屈極まりないが、これでも外で寝るより遥かにマシだ。
そして。こういう時、大抵は修学旅行よろしくテンションが上がって女子会が始まるものだ。
「あはっ! かなたちゃんもるしあと同類だねぇ! まな板まな板っ!」
「はぁぁ!!? るしあさんみたいな壁じゃないんですけどぉ⁉︎こちとら少しはありますけどぉ!!?」
「あんまり天使ちゃんのこと虐めちゃうダメだよるしあちゃん。いくら同族見つけたからって…ぷぷっ」
「いや…笑ってるけどあなたも同類よシオン」
「はぁ〜? あ、ごめ〜ん、あたし<
「まったく…胸ごときで何いがみ合ってるんだか…」
「うるさぁい! おっぱいでかい子には分かんないんだよっ! るしあ達の悲しみは! そもそもエルフにおっぱいなんて要らないでしょ! るしあにちょーだいよ!」
「るしあちゃん⁉︎色んな意味で過激な発言…」
「人の胸がそんなつけ外しできる訳ないだろ…⁉︎てか、胸の大きさで言ったら、ノエルが1番だろっ。ノエルに言いなよ!」
「えぇっ⁉︎何で私に振るのさフレアぁ⁉︎」
一方。
『マスターは入らないのですか?』
「…分かって言ってるよね? 僕があんなハチャメチャな空間に入れる訳ないじゃないか…」
もちろん、追い出された訳ではない。ただ、みんなの白い目がすごく痛かっただけなのだ。
「まぁ…1人は慣れてるさ」
『そう不貞腐れないでください。私たちがいるではありませんか。』
「そんな事ないって⁉︎……ただ、気持ちを集中させておきたいだけさ」
そう言うと、持っていたデバイスがヴヴッと鳴る。
「じゃあ、私もお邪魔かな?」
「えっ……」
デバイスの画面には、本来この場には、いや、
すなわち。
「…あ、AZKi、先輩……」
*
「やっほ。久しぶり、スメラギくん。君を探すのに手間取っちゃった」
「な、どう、して…」
その姿も、その口調も、あの頃と変わらなかった。彼女は、スメラギの知るAZKiだったのだ。
色々と言葉が湧き上がってきて、どれを言ったらいいか分からない。
ややあって、スメラギはようやく、膨大な質問から1つを選び取った。
「AZKi先輩は、無事だったんですか?」
「うん。ちょうどあの時、別の世界に行ってたから。だから帰る場所が無くなったってわかった時、すごくショックだった。そらちゃんもすいちゃんもいなくなっちゃって…とても悲しかった」
「……」
でも、とAZKiは続ける。
「落ち込んでばかりもいられない。いつかは前を向いて歩み出さないといけない。そう思って、私は立ち直った」
「…強いですね」
スメラギは素直に感想を述べた。
自分はすぐには立ち直れなかった。
彼女たちを巻き込みたくない。世界を守りたい。そんな身勝手な願いだけ抱えてうじうじしていた。
そんな自分と比べると、AZKiの強さには感心した。
「君も、だよ。だから今、みんなとここにいるんでしょ?」
「……はい。僕は、生きます。例え世界が僕を拒絶しても、帰る場所がなくても。生き続けます」
それを聞きAZKiは満足したように、あの頃と同じ、優しい笑顔をスメラギに向ける。
「ふふっ。強くなったね、スメラギくん。昔とは大違い」
「えっ…僕、学生時代そんなに頼りなかったですか…っ⁉︎」
「あはは! じょーだんっ! でも良かった。もう心配いらないね」
その言葉を聞き、スメラギは悟った。AZKiは、同じ境遇の自分に会いに来たのではない。立ち直れなかった自分のことを、慰めに来たのでもなかった。
「…ありがとうございます、AZKi先輩」
この人には敵わないなぁ、と。
スメラギは眩しく感じた。その光は、暖かかった。
最後の登場メンバーはあずきちでした!ただ彼女はスポット参加みたいな感じなので、第二部でもう一度登場させるつもりではあります。
さて、ラストリゾートというタイトル通り、次回から最終決戦に入ります。果たしてスメラギ達はゼノクロスを倒せるのか?もう一度滅び、死の円環を繰り返すのか?それとも…?