【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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3話 賢者の森へ

「地理くらいは分かったぺこ?」

 

 ぺこらにこの辺の地理を教えてもらい、スメラギは頷く。

 

「ああ。この近くにはエルフの森があるんだね」

 

「そうそう。エルフは人間嫌いが多いぺこだから、近寄っちゃダメぺこ! 噂によると、人を氷漬けにしてコレクションにしてるエルフもいるとか…!?」

 

「ははは…、流石にそれは…」

 

 などと他愛もない事を話しながら、このだだっ広い平野を歩く。

 

 半日ほど歩いたのに景色がほとんど変わらない辺り、本当にここは辺境なのだろう。

 

 

 

 しかしこの辺りの道は比較的舗装されており、この道を歩いていけば街にも着くようだ。

 

 ただし一方で、ここは森に近くもある。気を失った時は襲われなかったが、森には魔物がいるかもしれない。

 

 そう思い、少し警戒しながら歩いていると、

 

『報告します。2時の方向から高速で接近するものあり。距離400m、数は3。形状と魔力パターンからディンゴと思われます。』

 

「!!」

 

 

 

 その予想は的中した。

 

 

 

 デバイスから警告音と共にAPRILがオオカミ型の魔物──ディンゴの接近を報せる。

 

「ぺこら、下がっているんだ」

 

「へ?」

 

「ディンゴだ。こちらに近づいてくる」

 

「ひぃっ⁉︎す、スメラギ! 頼んだぺこ!」

 

 ぺこらは脱兎のごとく遠くへとっとこ走る。

 

「あ、あんまり離れると守りづらいかな…」

 

「ひぃん…」

 

 兎だから捕食者(オオカミ)が苦手なのだろうか。

 

 ディンゴはすばしっこく、接近されると戦いづらい。そのため遠距離から狙い撃つのが定石だ。

 

『マスター。パワードアーマーの修復率は52%。完全装着はできません。』

 

「武装は?」

 

『腕部、脚部およびバックパックは構築可能です。』

 

「それだけ使えれば十分だ」

 

 予備のナノマシン・パッケージで応急処置は施したものの、先の戦いでパワードアーマーが酷く損傷しており、全ての機能は回復していなかった。

 

 とはいえ。

 

 スメラギは並の傭兵なんかじゃない。

 

 胸のナノマシン・パッケージを軽くタップする。すると、パッケージから大量のナノマシンが放出され、両腕を覆う。ナノマシン同士が結合していき、強化装甲(パワードアーマー)を形成していく。

 

 形成が終わると、今度は右腕にエネルギーカノンを形成する。

 

「『超電磁砲(レールガン)』」

 

 そう呟くと、スメラギの身体から大量の電気が放出され、エネルギーカノンに電力を供給していく。

 

「は、はえぇ…。超能力で動力を賄っているぺこねぇ…」

 

 後ろで怖がりながらも、ぺこらはスメラギのパワードアーマーに感心する。

 

「…来る!」

 

 直後、森からディンゴが飛び出てきた。こちらとの距離はおよそ100m。十分射程圏内だ。

 

「ふっ…‼︎」

 

 正確な狙いでスメラギはエネルギーカノンを撃つ。弾は先頭を走っていたディンゴに直撃した。魔物はバランスを崩して地面に激突する。

 

「まずは1体…!」

 

 仲間がやられたからか、2台のディンゴは左右に分かれてスメラギ達に迫る。挟撃を図っているのだろう。

 

 スメラギは冷静に左の方を向き、ディンゴに向けて1発撃つ。ディンゴはそれを避けるが、スメラギはその動きを予測し、偏差でもう1発放つ。避けた先に放ったエネルギー弾は、ディンゴに直撃し、その身体に風穴を開ける。

 

「も、もう1体来るぺこっ‼︎」

 

 残ったディンゴはかなり近くまで迫っていた。今そちらに向き直りエネルギーカノンを撃とうとしても間に合わない。

 

 

 

 だが、そこはもう()()()()だ。

 

 

 

 スメラギは、振り向く事なく背中から雷の槍を生み出し、迫るディンゴに向けて放つ。予想外の攻撃にディンゴは対応できず、雷の槍をまともに食らい、丸焦げになってその場に倒れる。

 

「ふぅ…」

 

『敵の生命反応消失。お疲れ様です、マスター。』

 

 スメラギは武器とアーマーをパッケージに収納し、戦闘態勢を解く。

 

「ひょえ〜! さすが傭兵ぺこ‼︎強いぺこねぇ」

 

 ぺこらは拍手しながら、こちらに近づいてくる。

 

「あ、ありがとう…。照れるな…」

 

「友人」に傭兵としての腕を褒められるのは照れくさい。何度経験しても慣れないものだ。

 

「…あぁ、そうだ。少し寄り道してもいいかな?」

 

 気を取り直して、スメラギはぺこらに提案する。

 

 彼女の話を聞いて、行きたいところが見つかったのだ。

 

「寄り道? まぁいいぺこよ。どこ行くぺこ?」

 

「エルフの森に行きたいんだけど…いいかな?」

 

「えぇ⁉︎あんた、話聞いてたぺこか…⁉︎」

 

 戦闘前にぺこらは、エルフの森が近いと言っていた。一方、ここからギエルデルタまではまだ距離がある。ぺこらと別れてから森に行くのがベストではあったが、パワードアーマーの修復が完全でない以上、移動手段は徒歩しかなく、ギエルデルタから戻って向かうには遠すぎる距離だった。

 

 本当はぺこらには言いたくなかったが、言うしかない。

 

「…実は、僕はとあるものを探していて、その手がかりが欲しいんだ。知識に長けているエルフなら知ってるんじゃないかと思ったんだ」

 

「探し物ぺこか? だったらアルヴィアスで調べればいいぺこじゃん」

 

「色んな情報を聞いておきたいんだ。()()はそうそう見つかるものじゃないからね」

 

「ふーん…まぁ詳しくは聞かないぺこ。でもさっきも言ったように、エルフ達は人を嫌うぺこ。何が起こるか分からないぺこよ?」

 

 それでも行かなくてはならない。危険な旅など、今に始まった事ではない。

 

「大丈夫。何があっても、君だけは守り切ってみせるよ」

 

「カッコいい事言うけど、自分の身も守るぺこだよ?」

 

「もちろん」

 

 1つ懸念があるとすれば、エルフの森ということは、「彼女たち」がいるかもしれないという事だ。もし出くわしてしまったらと思うと。

 不安が脳裏をよぎる。

 

「…歩みは止めないさ。僕は、託されたんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルフの森は昔っから人間とか魔族が住み着かない、エルフだけの神聖なとこぺこ。だから、もう絶滅しちゃった生き物とか、珍しい生き物、それにエルフしか作れない品々があるらしいぺこよ〜? えへへ〜…」

 

 当初エルフの森に行くのを嫌がっていたのが嘘のように、今やウキウキしていた様子でスメラギの隣を歩いている。エルフから工芸品を頂き、それを高額に売り捌こうとしているのだろう。商魂たくましい。

 

 百万長者になってやると、目がそう語っている。

 

「がめついなぁ…エルフの森は神聖なところなんだろう?」

 

「はぁっ…⁉︎別にエルフの珍しいものを貰おうとかそんな邪なこと考えてないし⁉︎ぺこーら、あんたの付き添いに来ただけぺこだしー⁉︎」

 

 

 

 そんなことを言い合いながら平野を歩いていき、ちょうど森の入り口まで来た。ぺこらは後ろを振り返り、スメラギに説明する。

 

「ここからがエルフの森ぺこ。ただ、勝手に踏み入れちゃダメぺこ。エルフの許可が

 

「左様だ。この森へ入るには私の許可が必要だ」

 

「ひいぃぃッ‼︎?」

 

 突如、後ろから声が聞こえて、ぺこらは文字通り飛び上がる。そして驚くほどの速さでスメラギの後ろに回り、身を隠す。

 

 見ると、さっきまではいなかったはずのエルフの男が、森の入り口に立っていた。〈幻影擬態(ライネル)〉で身を隠していたのだろう。武器を持っているように見えないが、いつでも魔法を繰り出せるように魔力を溜めているのが分かる。

 

「この森に何の用だ人間」

 

 屈強な体を持つエルフの男は、鋭い視線でスメラギの方を見る。

 

「えぇと、探し物をしていて…君たちエルフの知恵を借りたいんだ」

 

 スメラギは角が立たないように、できるだけ穏便に話す。

 

「人間などに貸すものがあると思うか?」

 

「君たちにも森にも、何もするつもりはないよ。ただ尋ねたいことがあるだけなんだ」

 

「言語道断。貴様らが森に入るということが、既に我らにとって悪影響なのだ」

 

 が、エルフの男の態度は厳しいままだ。

 

「うぅ…スメラギ、引き返そうよぅ…」

 

「……」

 

 ぺこらに袖を引かれ、引き下がろうとすると、

 

 

 

「まぁ待てよ、レゴラス。久しぶりの来訪者をそう邪険にしていたら、バチが当たるぞ?」

 

 森の方からもう1人、今度は猫のように身軽な印象を与えるエルフがやってきて、先ほどの男に話しかける。

 

「ラルク!」

 

「良いじゃないか、レゴラス。『外との干渉は避けるべし』なんてオキテ、今どき時代遅れだぜ?」

 

「しかしだな…!」

 

 屈強なエルフ──レゴラスは、ラルクと呼んだ男に対して何か言いたげだったが、やがて諦めたようにため息をつき、首を振ると、スメラギ達の方へ向き直る。

 

「…先の言葉、偽りはないな?」

 

「もちろん。〈契約(ゼクト)〉を交わしてもいいよ」

 

「ならばそうさせてもらおう」

 

 レゴラスとスメラギは〈契約(ゼクト)〉を交わし、ほんの少し警戒を緩める。

 

「こっちだ。ついて来い」

 

 

 

「よく分からないけど…なんか入れたぺこね」

 

「あぁ…。何か事情があるのかも」

 

 逆にスメラギ達が警戒しながらも、レゴラスの案内に従って森に入っていく。




次回、ホロメン2人登場します。何となく当たりはつくと思います…笑
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