【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
翌朝のことだ。
まだヘーミッシュはやって来ない。あちらも相当な準備をしているようだ。
「みんな、少しいいかな?」
「スメラギさん? 改まってどうしたのです?」
スメラギはみんなにこう切り出した。
「…ゼノクロスを倒すのは、やめにしないか?」
「えっ…?」
「スメラギさん、いきなりどうしたんだっ⁉︎」
あやめは驚いてその真意を尋ねる。
「もちろん、戦わないという訳じゃないよ。ただ…彼を破壊する以外に、選択肢があるんじゃないかなと思って」
そう言ってスメラギは、デバイスからとある画像を投影する。
「…これは?」
「大昔のパイロットの手記だと思う。とある神社から持ってきていたのをすっかり忘れていたよ」
スメラギはみんなに見えるようにパラパラと目を通す。
あの時はただの日記としか見ていなかったが、今はそれだけではないように思える。
「…これ、ゼノクロスに関係があるの?」
「っ! ハウワー少尉……」
「ロボ子ちゃん、心当たりあるの?」
ロボ子が手記の最後に記された著者の名に息を呑むのを見て、メルがそう尋ねる。
「ハウワー少尉はゼノクロスのパイロットだよ…。元々ゼノクロスは有人操作式で、操縦するパイロットがいたんだ。それが、この手記を書いた人」
「そ、そんな偶然が…」
「この手記の『彼』というのがゼノクロスのAI──セトだとしたら、彼があんな行動を許すとは思えないんだ」
誰も犠牲にすることなく平和を実現したいというハウワーの想いを受け取ったセトならば。『スターク』の殲滅の為に世界まで破壊するなんてことは絶対にしないはずだ。
「じゃあ、今ゼノクロスを操っているのは別人?」
「どうだろう…数千年前の機体を操れる人間がいるとも思えないな」
あるいは、実はパイロットごと封印されていて、数千年の時を超えて今再び目覚めた……というのはいささか荒唐無稽だ。
「その…セトってやつがゼノクロスを操縦してる、とかないぺこ…?」
「だが、セトはあくまでサポート用だったのだろう? 彼に操縦ができるのか?」
ぺこらの推測を聞き、あやめはそんな疑問を投げかけるが、ロボ子は予想に反した答えを出した。
「……いや、出来るかも。セトはハウワー少尉との対話で心を、自我を持った。操縦支援を行う機能があるセトなら、パイロットがいなくてもある程度自由にゼノクロスを操ることができる」
「だとすると、余計分からないわ。どうして良心を持っていたはずのセトが世界を滅ぼすの?」
それに対し、スメラギはこんな予想を言った。
「彼が
「どうやって記憶を取り戻させるのさ?」
「この手記が彼の記憶の一部なら、これを『返す』事ができるはず」
オーガストの『力』──『奪う力』は単にあるものを奪うだけではない。それが奪われたものならば、他人に与えることもできる。
「てことは、成功するかどうかは分からないって事だよね? 失った記憶が奪われたものじゃなきゃいけないんでしょ?」
かなたが懸念を口にする。それはスメラギも最も懸念していた事だった。
「あぁ。けど、やってみる価値はあると思う。…誰かを犠牲にして平和を得る、なんてのはもう終わらせたいんだ」
「スメラギさん…」
『報告します。彼らが来ました。』
「…!!」
彼女達の間に緊張が走る。
「僕の言葉…心の片隅にでも留めておいてくれ」
「いいけど…君ってホントお節介だねぇ」
ノエルが呆れたように応える。だが、嫌がる様子はない。
「あはは…臆病なだけさ。…だけど、今はそれで良かったと思っているよ」