【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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41話 たくさんの小さな思い出

「今ならやれるはず…! オーガストっ‼︎」

 

「分かってるよ! こいつを壊せねぇのは残念だが…いくぜッッ!!!!」

 

 上空へ飛んだゼノクロスを、スメラギは追尾する。

 

 

 

 

 

 

 

「ええと…マイスフィールド卿! スメラギくんの援護を!」

 

「スメラギの? …何か策があるということだな。了解した。各員、スメラギ・カランコエを援護せよ!」

 

「みんな! ゼノクロスの足を止めるのらっ」

 

 今まで絶え間なく放たれていた砲火がぴたりと止み、代わりにゼノクロスに対してワイヤーアンカーが複数繋がれる。

 

 

 

 ガクンッ!!! と、シュテッフェン達から距離を取ろうとしていたゼノクロスは、それ以上上昇することができなくなる。

 

「──!!!!」

 

 だがそれをビーム砲で焼き切ると、スメラギに対し拡散ビームを放って牽制する。

 

「チッ!」

 

 それを邪神の力で相殺するが、その間にゼノクロスはさらに後退する。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、それは彼女らにとっては大きな隙だった。

 

「頭は狙うなよっ! 肩のビーム砲を!!」

 

「分かってる! 行くぞノエルッ!」

 

「おーけーフレア!」

 

 いつの間にか背後を取っていたあやめ達に気づき、ゼノクロスはビームを放つが、もう遅い。

 

「〈光矢嵐翔(こうしらんしょう)〉!!」

 

 フレアの弓から1本の光の矢が放たれる。それは無数に分裂し、あやめ達に迫るビームを全て相殺した。

 

 

 

「妖刀羅刹、鬼神刀阿修羅。秘奥合一」

 

「破砕鎚、秘奥が壱」

 

 あやめとノエルはそれぞれのビーム砲の目の前まで接近する。その2人を焼き払わんと砲塔が、光を帯びる。

 

「〈光風霽月(こうふうせいげつ)〉ッ!!!!」

 

「〈轟崩打連(ごうほうだれん)〉!!!!」

 

 しかし彼女達が一瞬早く、一方は光り輝く斬撃によって綺麗に切り落とされ、もう一方は刹那に2度放たれる強力な衝撃によって粉々に粉砕される。

 

「よしっ! これで大分ラクになったはず!」

 

 

 

 現状の最大火力であった肩のビーム砲を失い、ゼノクロスはすぐさま戦場から離れようとスラスターを噴かす。

 

「逃さないっ!」

 

 スメラギがそれを追うが、パワードアーマーと機動兵器ではあまりに推力が違った。スメラギは徐々にゼノクロスに引き剥がされていく。

 

「くっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「スメラギさん、掴まって!!」

 

 と、メルが手を差し伸べる。

 

 メルの手を取ると、ぐん、と更にスピードが加算された。メルはありったけの魔力を振り絞り、ゼノクロスとの距離を少しずつ縮めていく。

 

「わあっ!!?」

 

 と、2人を狙ってレーザーが放たれた。メルはそれを避ける為にスメラギから離れてしまう。

 

 だが、もう一度近づく事もできない。4本のレーザーがスメラギに向けて照射され続けているからだ。

 

「ッ!!」

 

 4本が巧みにスメラギを追い詰める。スメラギは逃げ場がなくなり、

 

 

 

 

 

 

 

「〈薊蓮華(あざみれんげ)〉!!!」

 

 しかし灼かれる事はなかった。

 

 るしあが寸前で結界を張ったのだ。

 

「スメラギさん! 終わらせてくださいっ! この悲劇をっ!!」

 

「っ! あぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 さらに、かなたはスメラギの横につくと、秩序魔法〈輝光加速(ジオロイア)〉をかける。

 

「頼んだよ『スターク』っ!」

 

 神の加護を受け、スメラギは更なるスピードを得る。ゼノクロスとの距離が、十数メートルにまで縮まる。

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!」

 

 スメラギに向けてレーザーが放たれる。

 

 それを寸前で避けるが、しかしあまりに高速であった為に背面のスラスターに被弾してしまう。

 

 脚部にもスラスターはあるが、それだけでは加速は愚か飛行すらできない。スメラギは重力に引っ張られ落下していく。

 

「もうっ! 何してんのさスメラギさん! …うわ重⁉︎」

 

 と、落ちていくスメラギの両手をシオンとちょこがキャッチする。

 

「飛ばすわよスメラギさん!」

 

「思いっきり……行ってらっしゃい!!!」

 

 身体増強魔法をかけた2人によって、スメラギは大砲から発射されたように滑空する。

 

 

 

 

 

 

 

「〈清霜凍結壁(シーラ・ヴェイザド)〉!!」

 

 予めゼノクロスの後退ルートへ先回りしていたラミィは、地面から巨大な霜を無数に発生させ、氷の壁でゼノクロスの足を止めようとする。

 

 が、

 

「逃したっっ!!?」

 

 ゼノクロスは半ば強引に、背面のスラスターを半壊させつつ壁を突破する。

 

 

 

 

 

 

 

 いや。

 

「ばっちぐーだよエルフっ!」

 

「あとはウチらで食い止めるッ!」

 

 そこへ新たな2人の()()がやって来た。

 

 ピンク髪の巫女少女とオオカミ少女はそれぞれ陰陽符を掲げ、術を発動する。

 

「「符術・封力符!!!」」

 

 2人の間に大きな結界が展開されると、直後、そこへ機動力を大いに削られたゼノクロスが飛び込んできた。

 

「──!!!!!??」

 

 バヂバヂバヂバヂッッッッッ!!!!!!!!!!! と。

 

 半透明の結界とゼノクロスとが激しくぶつかり、凄まじい音が周囲を打ち鳴らす。

 

「みこ、ミオっ!」

 

「行って、スメラギ!! 君の力でみんなを救うんだよっ!!」

 

 みことミオの2人がかりで張った結界は強固で、使えるスラスターを全力で噴かすゼノクロスを、しかし完全に止めている。

 

「あぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 そこへロボ子がスメラギの元へ跳躍する。

 

「スメラギ。セトを、救ってあげて」

 

「もちろん。信じてくれ。僕たちと、彼のことを」

 

 減速し、高度が落ちかけていたスメラギは、トランポリンのように編み込まれたロボ子のワイヤーを、思い切り蹴ってゼノクロスへ飛び込む。

 

 

 

 

 

 

 

 対して、ゼノクロスは最後の抵抗を見せた。結界で動きを封じられながらも、腰部からレーザーを放ったのだ。

 

「!!!」

 

 スメラギを狙った一撃は、しかし巨体によって防がれた。

 

『マスター。』

 

「分かってる」

 

 追い越す瞬間、スメラギはセンチュリオンと視線を交わす。何だかんだ1番共にした時間が長い相棒だ。言葉は要らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 もう障害はない。完全にゼノクロスの攻撃範囲から外れ、懐に飛び込んだ。

 

「オーガスト!!」

 

「分かってるよ! 一か八か、やってやろうじゃねぇか!」

 

 オーガストはゼノクロスの頭部を捉えると、右手に邪神の力を集中させ、

 

「目ぇ覚ましなァ! セトォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!」

 

 ゼノクロス──否、()()()()()()『力』を解き放った。

 

 滅紫の波動が、辺り一帯に拡散する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日は最終評価試験か…。調子はどうだ? セト」

 

『各機能に異常はない。明日のテストも問題なくクリアできるだろう。』

 

「そうか、それは何より。…それが終われば、いよいよ実戦だな。セト、緊張するか?」

 

『センチメント・サーキットを搭載しているとはいえ、私が緊張することはない。与えられたプログラムと記憶(メモリー)に従って行動するのみだ。』

 

「ははは。確かに、機械に対して緊張するか、などと尋ねる方がおかしかったな。……だが最後に1つ、覚えておいてほしいことがある」

 

教授(レクチャー)すべきことが?』

 

「うん。…世界には、ただあるだけで大きなリスクとなってしまう、強大な力を持つ者が存在する。例えば君、ゼノクロスが身近なものだが、敵世界の強力な魔法使いもそうだ。あるいは、我々を創りたもうた神々も、ある意味では人間では扱いきれない強力な存在と言える。だが、そんな者たちのことを、強大で危険な存在だからと言って敵と認識してはいけないんだ」

 

『しかし滅ぼさねば、それらはいつか世界に多大な被害を及ぼしうる。そのような強大な力は平和な世界に必要ないのでは?』

 

「確かにそうだ。けど、実際にそれらが世界に危害を加えるどうかは分からないはずだ。私が言いたいのはね、セト、そのような者をこそ、その者自身の善悪という観点から倒すべきかどうか判断してほしいという事なんだ。もし力の強さ、数値だけで敵と味方を区別してしまったら…それは今までのAIや人間と何ら変わりはしない。私たちは過去を学び反省し、そんな悲劇から抜け出さなければならないんだ。そうだろう、セト──? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂が辺りを包んだ。

 

 シュテッフェンの私兵組織や、ルーナの騎士達はこれが世界の命運を賭けた戦いであるという事すら忘れ、その静けさを破るまいと、ひたすらスメラギとゼノクロスをじっと見つめていた。

 

「上手く…いったのか…?」

 

 あやめは思わずポツリと呟く。

 

『力』は確かに発動した。これはつまり、「奪われたものを返せた」という事だ。

 

 そのせいなのか、ゼノクロスはぴたりと動きを止めてしまった。

 

「やっぱりセトは記憶(メモリー)を失っていたんだ…。それが戻ったってことは、もう…」

 

 ロボ子が言い終わる前に、

 

「ッ! 奴が動き出した…!」

 

 

 

 半壊のゼノクロスはゆっくりとした動作で目の前に滞空しているスメラギを見つめる。

 

『そうか。私は忘れていた。世界を守るとは、危険因子を根絶することではなかった。それを思い出させてくれたのが、まさかお前だとは。』

 

「信じていたからね。君と、そしてみんなを」

 

 

 

 

 

 

 

 そのやり取りを見て、彼女達は戦いの終わりを悟った。

 

「和解した…ってことかな」

 

「そうですね、シオン先輩。…本当に、良かった」

 

「はぁ〜…終わったーって思ったら急に疲れが出てきちゃったよ〜!」

 

「ここで寝ないでよ? メル様。魔界に帰るのは後にするとして、とりあえず近くの宿にでも寄らないと」

 

「そうだな…。流石の余も少しは休みたいぞ…」

 

「ねぇねぇ。明日になったら都市部に行って遊ぼーよっ! 一度人間界でお買い物したかったんだ〜!」

 

「どーぞ。僕は先に天界に帰ろっと」

 

「何言ってるのです。かなたんも行くのですっ」

 

「えっ」

 

「もちろんフレアも来るよね? 私が美味しい牛丼屋教えてあげるから!」

 

「ぎ、ギュードン…? まぁ、ノエルが言うなら着いて行こうかな」

 

「じゃあじゃあっ、ラミィには美味しいお酒を教えてほしいですっ!」

 

 

 

「ししろーん、今度サーカス開催するから来てくれよな〜」

 

「なになに? おまるんが大道芸すんの? まぁちょうど依頼(タスク)もないし行ってあげるよ」

 

 

 

「それにしてもあくたん、よく頑張ったのらね〜。ルーナの為に戦ってくれたこと、褒めて遣わすのらっ!」

 

「ぅえっ⁉︎る、ルーナちゃんの為…ではないよ…?」

 

「なにか?」

 

「な、なんにもっ⁉︎ルーナちゃんありがとう…‼︎」

 

 

 

「あーっ! お前がさっきのクソガキか‼︎」

 

「え? あっ、さっきのコスプレの人じゃん。おつおつ〜」

 

「馴れ馴れしいなぁ〜。今時のティーンってこんなのなん? てかコスプレじゃねぇし! こちとられっきとした海賊ですがぁ⁉︎」

 

「うわ海賊なんだぁ、こわ〜近寄らんとこ〜」

 

「ああああクソガキすぎる〜〜っ‼︎真っ当な反応なのになんかムカつく!!」

 

「もうっ、シオン先輩もマリンもやめるのですっ。せっかく戦いが終わったのに」

 

「あはは! るしあちゃんごめんね〜」

 

「おい! 私にも謝れよっ! …てか、何この美少女かわいすぎるっ!? ねぇ何で私の名前知ってるの? もしかしてどこかで会ってて一目惚れしちゃった系?」

 

「…マリンってどこの世界でもやかましいのですね…」

 

 

 

「…んー? なんかそういえば忘れてるような」

 

「何が?」

 

「うーん…ま、いっか! 明日になれば思い出すっしょ!」

 

「ばかたれがぁーーっ!! ぺこーらのこと忘れてんじゃないぺこだよっ!」

 

「あっ、ぺこらっちょお帰り〜! 今とりあえずどこかで一泊してから都市部で遊ぼうって話になったんだけど、来る?」

 

「軽いし早ッ⁉︎…ま、まぁ、このメンツでなら大丈夫そうだし、行くぺこだけど…」

 

「やった! じゃあ観光案内はよろしくね!」

 

「いやアンタの方が詳しいぺこでしょっ⁉︎アンタがやりなさいよ‼︎」

 

 

 

 

 

 先ほどまで命懸けの戦いをしていた事を忘れさせるくらいの平常運転で彼女達は賑やかに談話している。

 

 それを、少し遠くからスメラギとセトが見つめる。

 

『あの様子を見ては、彼女達が滅ぼすべき存在だとは、とても認定できないな。そしてお前も。』

 

「……僕は、どこまでいっても『スターク』であることに変わりはない。けど、今は『スターク』で良かったと思っているよ。救いたいと思うものを、救うことができたのだから…」




ゼノクロス戦、終了です…!
最終決戦でみんな登場するの、めちゃくちゃアツくて好きです。本作にもそれを取り入れてみました。
ただ人数多くなると、書き分けが難しい上に、それぞれの活躍が薄くなってしまうのがネックですね…。今回はスポット参加を含めると17人ものホロメンが登場しているので、かなりキツかったです。多分、僕が見返しても誰が喋ってるんだか分からないセリフが何個かあります。マジで申し訳ない。
あと、1対多を描くのフツーにむずいですね…。実際、ワンピースやドラゴンボールなんかを見ても基本1対1なので、そういうものなのでしょう。てことで、次回作ではこの反省を生かしてちゃんと1対1になるように調整していきます。


ゼノクロス戦について、実はシナリオ作ってる段階では本当にゼノクロスを倒すつもりでした。それが変わったのは、「敵」を倒して、それでハッピーエンドにするのは安直というか、その「敵」は本当に敵なのか?と思ってしまったわけです。

スメラギにとってゼノクロスが「敵」なのは、あくまで自分の命を狙うからというのが核であり、その点で言えば人類悪である『スターク』を倒そうとするゼノクロスは悪ではないんですよね。
なので彼をラスボスとして倒してしまうと「悪と戦っていたはずなのに、その悪に倒されてしまった」という構図になり、ゼノクロス側から見たらすごい後味の悪い結末となってしまいます。
さらに、創造神リヴァイエラはスメラギが死の螺旋から脱する「唯一」の方法を「ゼノクロスを倒す事」だとしました。それを踏まえた上でスメラギがゼノクロスを倒してしまうと、結局リヴァイエラの言う通りになってしまい、本当の意味で運命から解放されてはいない事になってしまいます。

…と、色々考え、1番良い終わり方はゼノクロスを倒さない事なのではないかという結論に達しました。
まぁ僕自身、そもそも勧善懲悪ものはそれほど好きではなくて、敵にも事情があって、それを汲み取ってやるのが主人公でありヒーローの役目だと思っています。



ちなみに、手記を使ってゼノクロスを救うというシナリオは、「あるアイテムを取るとトゥルーエンドになる」というフリーゲームでよくあるシステムを参考にしました。
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