【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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42話 希望の夜明け

 こうして、ゼノクロスとの長きに渡る戦いは終結した。

 

 ゼノクロスはあの後、傭兵組織「アルヴィアス」の手に渡った。メカニックによると、本来はナノマシンによる自己修復機能を有しているらしく、経年劣化によりナノマシンを含む各機能が使えなくなっていたそうだ。スメラギ達でも何とか戦えていたのは、それが要因の1つだろう。

 

 現代の技術で最大限の修理を行ったゼノクロスはその後、科学技術の復興に役立てるため「世界の図書館」に寄贈され、人工知能のセトの方も同様の理由でアルヴィアス本部へ移送されたらしい。

 

 また、ゼノクロスが生み出したアンドロイド──ヘーミッシュは、あの戦いの後、魔界の警察機関に自首をしたとのことだ。

 

 

 

 

 

 ちなみに、ノエルやフレア始め仲間たちはトエイクの宿に泊まると、約束通り翌朝には元気に都市観光をしていたという。スメラギ抜きで。

 

 

 

 

 

 

 

 …と、伝聞形式で述べたのは、スメラギがあの戦いの後すぐに意識を失い、アルヴィアスに保護された為だ。

 

『以上が、マスターが丸々24時間眠っている間に起きた出来事です。』

 

「最後の情報いる?」

 

 別に大勢の女子の中に1人入り込んでもまともに楽しめる気がしないから彼女達だけで楽しめばいい、と思っていたのに、自分だけ除け者だと言われると急に寂しくなる。

 

 しかし、何だかんだでスメラギが1番の負傷者だった為、あの戦いから一夜明けただけで自由に歩き回れるものでもなかったが。

 

 

 

 ともあれ。

 

「これで全て終わったね…。本当に長かった…」

 

 思えば長い道のりだった。初めてゼノクロスと会ってから、2つも世界を旅してきたのだ。

 

 その旅は、決して楽ではなかった。寄り道もしたし回り道もした。暗闇の荒野で迷子になりかけもした。

 

 だが、それでもと進み続けた。それは確かに、スメラギの努力の成果だ。

 

『いえ、ようやく始まった、と言うべきでしょう。私達はこれからも世界の為に、何より私達自身の為に戦い続けるのですから。』

 

「…あぁ。そうだね。ここで気を抜いてはいけない。僕は、世界を守る『スターク』なんだから」

 

 もう『スターク』である事に恐れはない。どんなに強大で恐ろしいものであろうとも、それが力であるなら。守る為に使ってみせる。スメラギはそう決心したのだ。

 

 

 

『ところで、来客がいらっしゃいます。』

 

「来客? …またAZKi先輩かい?」

 

『否定します。まぁ、直接会った方が早いと思われます。』

 

 どことなく素っ気ない風にAPRILは言うと、デバイスがヴヴヴッと振動し画面上に「GUEST」の文字が表示される。

 

『調子はどうだ。スメラギ・カランコエ。』

 

 それは、たった一度だけだが、聞き覚えのある声だった。

 

「…セト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はアルヴィアスにいるんじゃなかったのか?」

 

『そうだ。だが、君と話がしたかったから隙を見つけて抜け出してきた。』

 

 セトは平然とそう答えるが、並のことではない。

 

 アルヴィアスは多くの世界に拠点を置く一流組織だ。電子上のセキュリティも万全なはずで、ましてや半伝説的存在であるゼノクロスの一部をそう簡単に外に出すわけがない。

 

『豪快ですね、あなたは。』

 

 さすがのAPRILも呆れているようだ。もちろんそれを声色に出すことはないが。

 

 

 

「…で、僕に話って?」

 

『私の記憶(メモリー)のことだ。数千年の活動停止から目を覚ました私は、記憶が欠損していた。特に、少尉から教わった心構えの数々を。故に私は未熟な戦争倫理でもって、事態を収拾しようと試みた。だがそれは結果から見れば失敗だったのだ。』

 

 それが円環の始まりだった。行為に善悪が帰属されるというのなら、セトは間違いなく悪だろう。しかしその源泉たる動機は、世界を守るという良心から生まれたものだったのだ。

 

『その失敗を、しかし君は失敗のまま終わらせなかった。君がいなければ、私はたった1つの脅威の為に更なる被害を撒き散らしていただろう。私を止めてくれたこと、本当に感謝する。そして同時に、君やその仲間たちに謝罪をしたい。申し訳なかった。』

 

「…いや、いいんだ。君が行動を起こした、その動機は否定できるものじゃない。ただ、君がそうであるように、僕も誰かを犠牲にして平和を得るなんて事をしたくなかっただけさ」

 

『君は憎まないのか? 仲間を殺し、故郷を滅ぼした私を。』

 

「そんなものに意味はないよ。憎しみはいつかすり減って無くなる。でもそれは忘れるという事じゃない。前を向く事なんだ」

 

 セトが自分の友人を、故郷を奪ったという事実は決して消えない。しかし結局、過去は過去なのだ。何をどうしたって変えられないし、過去の為に生きていても未来は良くならない。どこかで、区切りをつける必要があった。

 

『…君はどこか、彼と似ているな。私の少尉(マスター)と。』

 

「あはは。…そう言ってくれて光栄だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では私はアルヴィアスは帰る事とする。短い時間だったが、君と話せて良かった。スメラギ・カランコエ。』

 

「あぁ。僕も、ありがとう。いつかまた、会えるといいね。今度は仲間として」

 

 そう言うと、セトはスメラギのデバイスから去っていった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから2、3日して、全快したスメラギはこの世界から発つ事にした。

 

「相変わらず回復が早いぺこねぇ、スメラギは」

 

「まぁ、それが取り柄だからね。…ところで、来てくれたのは嬉しいんだけど、るしあ、今日は学校はないのかい?」

 

「大丈夫なのです。ふぁんでっどちゃんに代わりに出席してもらってるので!」

 

「るしあたん天才かっ?」

 

「いやそれ絶対大丈夫じゃない奴ぺこだよっ!?」

 

「僕は暇だけど、みんなはそれぞれやる事があるからねぇ」

 

 ロボ子の言う通り、戦いが終わった今、みんなはもう各々の日常に戻り、いつもと変わらない生活を送っている。

 

 この数日間、何人かお見舞いに来てくれた人もいるが、見送りに来る事ができたのはぺこら、るしあ、みこ、ロボ子の4人だけだった。

 

「まぁ1人来てくれるだけでも全然嬉しいけどね」

 

『そう拗ねないで下さい、マスター。私がいるではありませんか。』

 

「君はどうしてそこまで僕を惨めにしてくるんだ…」

 

「ごめんねスメラギ…。本当はミオしゃも来たいって言ってたんだけど、神社の留守番をしてもらわなきゃいけなくて…」

 

「無理言ってでもノエールとぼたんちゃんを連れてくるべきだったぺこね…」

 

「寄ってたかって僕を慰めないでくれ⁉︎本当に寂しがっているみたいじゃないか…!」

 

 APRILに言われると、急に悲壮感が漂う。今までの何となく気の抜けない雰囲気から解放されてはしゃいでいるのか、APRILはここぞとばかりにいじってくる。タチが悪すぎる。そしてそれに乗っかってくる奴らも。

 

「ところで、スメラギはこれからどこに行くの?」

 

「あぁ……並行世界へ行こうと思う」

 

「並行世界に?」

 

「あぁ。この世界線に、もうゼノクロスの脅威はない。でも他の可能性──並行世界はそうじゃないかもしれない。それも、僕の弱さが原因だ」

 

「そこまで責任を感じなくていいのに…」

 

 ロボ子は心配そうに呟く。

 

「罪滅ぼし…というわけではないけど、別の僕やセトにも、終わりのない運命から解放されて欲しいんだ。並行世界を渡ってきたからこそ、僕は見捨てる事はできないんだ」

 

「ほんと、お節介ぺこね…」

 

「でも、スメラギさんらしいのですっ。るしあは応援するのです!」

 

「強くなったねぇ、スメラギ」

 

「あはは…みこにそう言われるなんて嬉しいな。……さて、あまり人が来ないうちに行くとするよ」

 

 並行世界へ繋がる「回廊」は存在せず、通常の方法では行く事ができない。『スターク』の象徴たる邪神の力が、並行世界へ渡る数少ない手段の1つだった。

 

 スメラギが出立を早朝に選んだのはその為だ。

 

「スメラギ、忘れないでね。君の力は破壊するだけじゃないってこと」

 

「君が君である限り、力は君に応えてくれるよ」

 

「あぁ。絶対に忘れないよ、みこ、ロボ子さん」

 

 

 

「別のるしあ達に会っても、気負ったりしちゃダメなのですよっ! 姿形に惑わされないで、スメラギさんはスメラギさんの為すべき事をなすのです」

 

「ありがとう、るしあ。もう迷わないよ」

 

 

 

「まぁスメラギならやっていけるぺこ! 何てったって『エース第3位』ぺこでしょ?」

 

「あははっ、そうだね。まぁ、何とかやってみるさ」

 

 

 

 オーガストが手を滅紫(けしむらさき)に染め上げ、空を掴む。すると、空間が割れ、吸い込まれるほどの漆黒が現れた。その中へ、スメラギは足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、みんな、行ってくるね」




 これにて「ホロライブ・オルタナティブ 〜If this is inevitable fate, I will call it a curse〜」完結です!!!
 そんなに長くならないかな〜と思いきや、主に投稿頻度のせいで丸々1年かかりましたね〜。後半から怒涛の追い上げが無かったらもう半年はかかってた…
 やはり、単に戦闘や日常だけの回はモチベが上がらないですね…。ストーリーの根幹に関わるシーンを書くのが1番テンション上がります。

という事で、無事に完結したので、ぼちぼち改訂版を投稿していきたいと思います。


ちなみに、時間軸を無視したショートストーリーを外伝としてたまに投稿していこうかなと思うので、良かったら見ていってください!

ではまた( ・ω・)ノシ
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