【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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ifルートはCで最後です。


Cルート
36話C


「ほら、この先だよ」

 

 かなたが指差した先は、明らかに周りと違う雰囲気を放つ神殿のような巨大な建物だ。

 

「『スターク』とその仲間を連れてきました、主神リヴァイエラ」

 

 その最奥にて、かなたは跪き、何もないだだっ広い白い空間に向けて言い放つ。

 

『来たか、運命に囚われし者達よ』

 

 それに対しどこからともなく声が聞こえる。と共に、かなたの目の前に、インクが紙に滲むようにその姿が顕になる。

 

 それは神と呼ぶには、あまりに単純な外見だった。「白い影」と形容するのが1番適切だろう。全身が白く、顔もなければ胸や腹筋などといった身体の起伏すら存在しない。神体を縁取る黒だけが、この白の空間と隔絶された1つの存在であることを証明していた。

 

 

 

「あなたが、創造神…」

 

『然り。我が汝らをここへ導いたのは真実を伝える為だ』

 

「真実…」

 

 スメラギは何となく心がざわめくのを感じた。何かを恐れているような。

 

「それはゼノクロスについてなのか?」

 

『それだけではない、とだけ今は言っておこう。というのも、この一連の事件は、ゼノクロスだけが焦点ではないからだ。

 

 まず話すべき事と言えば、事の発端──つまり、ゼノクロスの目覚めだ。汝らの言う、ターミナル02 ha-03なる世界にて、ゼノクロスは覚醒した。それはある意味では偶然であったのかもしれない。しかし、邪神の力が行使され、それを彼奴が感知したのは、紛れもなく必然であった』

 

「僕の、最初の行使…」

 

 つまり、元々は別の人間が所持していた『超電磁砲』をスメラギが『奪った』瞬間。ゼノクロスはそれを観測し、目覚めたのだ。

 

『目覚めたゼノクロスは、その根源であるスメラギ・カランコエを標的とし、攻撃を始めた。しかし、世界は突如として「市民」に攻撃を加えるゼノクロスと戦った。そうして、世界そのものを脅威と認識したゼノクロスは、世界を滅ぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時にスメラギ・カランコエも死亡することになった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………な、に…?」

 

 呆然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が死んでいた? では今の自分は? 故郷が滅びた後、見知らぬ世界で目覚めたのは? 

 

 スメラギは混乱する思考をどうにか鎮め、尋ねた。

 

「じゃ、じゃあ、なぜ僕は今ここにいるんだ? あなたの権能で生き返ったとでも?」

 

『否。我が世界の1つが滅びたのを観測した時、既にスメラギ・カランコエは滅んでいた。滅びた者を復活させるのは、創造神をもってしても不可能だ。

 

 しかし、このままではゼノクロスが他世界へ渡り、に『スターク』ごと世界を滅ぼすのは目に見えていた。よって私は、スメラギ・カランコエを利用することにした』

 

 その言葉に、しかし動揺を隠し切れないフレアとラミィが疑問を投げる。

 

「で、でも、スメラギはもう死んだんだろ…? どうやって…」

 

「それに、邪神の力は前の持ち主が滅びたら、どこかの世界の住人にランダムで宿るんじゃ…」

 

『然り。故に我は、まず世界に結界を張った。『力』が外に逃げぬようにな。しかしこれだけでは、この世界の誰かが新たな犠牲者となってしまう。

 

 よって、次に我は邪神の力を入れる人形を作る事にした。神の秩序で創り上げられた模造品ならば、犠牲と表現するには値しないからだ。実際、人形に組み込んだ運命の円環の中で邪神の力は他者に宿る事はなく、我の目論みは成功だった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模造品。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、さか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまり。

 

「ぼ、僕は……」

 

 呼吸が乱れる。

 

 眩む目を抑え、「スメラギ」はどうにかふらつく足を止める。

 

 

 

 

 

 

 

『然り。汝はスメラギ・カランコエではない。死亡したスメラギの代わりとして、彼を模して作られた人形だ』

 

「そ、そんなはずはない!! だったらこの記憶はッ…!!! 彼女たちとの思い出は一体!!!」

 

()()()()()()()()()は震えた声で叫ぶ。

 

 るしあにフレア、ノエル、ぺこら、その他にも大勢の仲間や友人と共に過ごしてきたこの記憶は。

 

『それはスメラギ・カランコエの記憶だ。邪神の力を移植した際、記憶も共に受け継がれたのであろう。しかし本来、記憶など必要はなかった。使命から外れてしまう可能性があったからだ。だが記憶を持ってなお、使命は果たされ続けた。スメラギという人格がなせる業でもあったというのはのちに判った』

 

「ならばオーガストはっ⁉︎()が邪神の力を詰め込まれ、ゼノクロスを留める人形だというのなら、何故オーガストまで再現したんだ⁉︎」

 

『汝も知っているであろう。邪神の力は、世界の敵だ。隠し持っていなければ、ゼノクロスを誘き寄せるまでもなく、住人が汝を殺してしまう。それは防がねばならなかった。ゼノクロスのみがその存在を知っているという状況を作るにはな。現に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ……」

 

「スメラギ」は耳を澄ます。しかし、脳裏からもう1人の声が聞こえてくる事はなかった。

 

『スメラギという人格が崩壊した今、オーガストもまた消えていった。汝は邪神の力を自由に使えるはずだ。

 

 

 

 我がこれらの真実を伝えたところの意味は分かるであろう。汝は人柱に過ぎない、空虚な存在だ。それが意味あるものとして見えていたのは、汝が使命を忠実に果たしていたからだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………けるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静かに。

 

 人形は別の()()へ変わっていった。

 

「ふざけるなッッ!!! スメラギを模した人形だと? 空虚な存在だとっ⁉︎それは全て貴様が押し付けたものだろうが!! 何故()を模造品として生み出した!! そうでなかったら、俺は…!!」

 

『人形に全く新しい人格を植え付けるのは危険な事だ。使命を与えたとて、自我を求め思いもやらぬ行動を取ってしまう。ならばスメラギという出来合いの人格を植え付けた方が、従順に使命を果たしやすかろう?』

 

「黙れ…!! 俺は…」

 

 人形の右手が、滅紫(けしむらさき)に染め上がる。

 

「俺は誰にも従うつもりはないッ!!!」

 

 白い影に向かって、滅びの波動が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、

 

「ぐっ…⁉︎」

 

「かなたちゃん!」

 

 すんでのところで、かなたが身を挺してリヴァイエラを守る。

 

 魔法障壁によって致命傷は免れたが、相当なダメージを負った。

 

「スメラギ! あんたは…!」

 

「俺は自由を手に入れる!! 誰に従うこともない、誰に縛られることもない。俺は俺として生きるんだッ!!」

 

 人形は地面に腕を突き刺し、大きな穴を開ける。漆黒というよりは虚無と表現するのが正しかった。

 

 そこへ、人形は飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなたちゃん、大丈夫っ…?」

 

 るしあはかなたに〈総魔完全治癒(エイ・シェアル)〉をかける。が、傷の治りは遅い。邪神の力が、魔法の効果を阻害しているのだ。

 

「だ、大丈夫…。それより、主神様を守れて良かった…」

 

 しかし、あやめはリヴァイエラに近づき、胸ぐらを掴む。

 

「主神リヴァイエラ! どうしてこのような事をスメラギさんに教えたのだ‼︎真実を知らなくても、余達なら…!」

 

『想いこそ、邪神の力すらも制御する人間の切り札だ。人形では人の想いを真似できても、それを生み出す事はできない。例え真実を知らなくとも、そのような模造の想いでは真の力を発揮できず、世界はまた滅びる。

 

 ならば『力』を暴走させれば良い。怒りや憎しみによって増大した『力』は、ゼノクロスを倒し得る強力な矛となろう。故に、我は奴に真実を伝えたのだ』

 

「そこまでしてアンタは…!」

 

 と、それを聞いたノエルも激昂する。『スターク』の存在は許せないが、あの時、確かにノエルはスメラギと仲間になったのだ。

 

 だというのに。目の前の「神」はそれを踏みにじり、彼をあくまで道具として利用したのだ。

 

『ゼノクロスを倒し、世界を救いたいと願ったのは汝らも同じであろう。スメラギ・カランコエが滅びたこの世界は、この方法以外では救われない。

 

 認めよ。これが運命なのだ』

 

 その言葉で、彼女達は押し黙った。

 

 決して抗うことのできない、大きな流れの中にいることを、彼女達は悟った。

 

「…アンタも、ゼノクロスと同じだ。大を生かす為に小を殺す…それがどれだけ残酷なことかも知らずに」

 

 フレアはリヴァイエラを睨みつけながら、そう吐き捨てた。

 

『それが世界を救うということだ。ゼノクロスが戦争を終わらせる兵器として存在するように、我もこの世界を、ひいてはヒステラルム存続させる為に存在している。その為に最善の方法を選択するのが、我々だ』

 

 それを否定したくて、スメラギは戦う事を決めたはずなのに。自分達も、それに同意したはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…スメラギさんは、ゼノクロスを倒すのか?」

 

『おそらくは。だがゼノクロスを倒せば、次なる脅威は奴となる。『力』を暴走させた奴が結界を破り、他世界へ渡ればどのような影響が及ぶかも知らん。汝らで奴を食い止めよ。それが汝らの使命だ』

 

「……それに、あたし達が従うと思う?」

 

『従うか否かではない。そうしなければ世界は『スターク』に滅ぼされる。自分らの世界が無事であればそれで良いのか? 他世界はどうなっても構わないと?』

 

 抵抗は、意味をなさなかった。彼女達もまた、リヴァイエラの道具に過ぎなかった。

 

「…大丈夫。まだ止められるはず。みんな、行こう」

 

 ノエルは静かにそう呟いた。こんな所で終わらせるわけにはいかない。彼との絆を。

 

 こんな不条理なんかで失うわけにはいかない。

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