【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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37話C

「スメラギ」は平原のど真ん中に1人、佇んでいた。

 

「どこにいる、ゼノクロス。俺は貴様を殺さなければならない。俺という存在を確立する為に。このクソッタレな運命から抜け出す為に」

 

 仲間? 世界? そんなのは最早どうでも良かった。自分が暴走する兵器を食い止めるだけの楔に過ぎない事が、その為だけに生み出された虚な存在である事が、許せなかった。

 

「だから…さっさと出て来やがれゼノクロスゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 瞬間。

 

 パリィィィン!!!!! と、空が裂ける。

 

 亜空間から這い出る様にして、巨大な人形の機動兵器──ゼノクロスが現れた。

 

「ハハハ! ようやく来やがった! 俺は貴様を倒して、スメラギを超える。そして俺は、俺になる!」

 

 名もなき人形はそう叫ぶと、全身に破滅の力を纏わせる。

 

 

 

スターク(災厄)』とゼノクロス(守護者)との戦いが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……っ⁉︎」

 

「天の柱」から降りて来たあやめ達は、放たれた『力』の波動の元へ駆け付ける。

 

 そこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っスメラギくん…!」

 

 

 

 

 

 

 

 原型を想像できないほどにバラバラになったゼノクロスと、その前には全身を滅紫に染めた「人間」が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、遅かったな。見ての通り、ゼノクロスは破壊した。これで俺はスメラギを超えた…! もう模造品なんて言わせない。俺は俺だ! ようやく運命から解き放たれたんだ!!」

 

「これから、どうするの?」

 

「俺にとってこの世界は呪縛そのものだ。この世界から抜け出し、俺は本当の自由を手に入れる」

 

「そんなのっ…どうだって良いじゃないですか!! ゼノクロスを倒したんだから、るしあ達と一緒にこの世界で平和に過ごしたって…!」

 

「黙れ! 造られた者の絶望を知らない能天気が! この世界にいる限り、俺は永遠に縛られ続ける! 俺は自由になるんだ。過去の呪縛を打ち破り、俺が俺を手に入れた時、ようやく真の自由が手に入る! その為に俺は、このクソッタレな世界から抜け出すッ!」

 

「もう一度よく考えろ! 私たちがお前と過ごした日々は、偽りなんかじゃない! 生まれや思い出が造られたものだとしても、私たちとの記憶は本物のはずだっ!」

 

「それはスメラギとお前達との記憶だ! 空虚な俺には記憶などない!! だからこれから作るんだ。新たな世界で、俺という存在が!!」

 

「スメラギっ…!」

 

「これ以上は無駄だ、フレア。……残念だが、貴方をここから出すわけにはいかない。今の貴方は危険すぎる。このまま外へ出れば、世界を滅ぼすやも知れん」

 

 あやめはゆっくりと腰に提げている刀へ手をやる。

 

「止めるというのか、この俺を? お前ら如きが? 無駄だ。ヒトでは『スターク』には勝てない」

 

 人形はせせら笑う。

 

 が、ノエルやフレアも武器を構える。彼女達は本気だ。

 

「前とは違う。殺すのではなく、止める。世界の為ではなく、貴方の為に!」

 

「間違った道を歩みそうになったら、殴ってでも止める。それが仲間だよ、スメラギくん」

 

「俺に仲間などいらない! 自分さえいればいい! そして、俺の行動の良し悪しを決めるのはこの俺だ! お前達に指図されるつもりはないっ!!」

 

「だったら正しい行動をしてみてくださいよっ! あなたのその自分探しは、誰も幸せにしないって言ってるんです!!」

 

「黙れ!! たとえお前達でも邪魔をするというのなら…」

 

 人形は破滅を宿した右腕を引き、

 

 

 

「殺すッ!!!」

 

 思い切り薙ぎ払う。それは、斬撃となって彼女達を襲った。

 

「ッ!」

 

 ノエル達は左右に分かれてそれを避ける。

 

 1人、あやめは体勢を低くして回避しつつ、そのまま人形へと駆ける。

 

「妖刀羅刹、秘奥が壱」

 

 あやめは羅刹に手を掛け、脱力する。

 

「〈白南風(しらはえ)〉ッ!!」

 

 瞬間、力を込め、神速の抜刀で人形に斬りかかる。

 

 が、

 

「通らない…ッ!?」

 

 疾風の一撃は、しかし甲高い音を立てる事なく人形の肩で止まった。

 

「俺の『力』を忘れたのか鬼女ァ!」

 

 邪神の力で、刀から「斬れ味」を奪ったのだ。

 

 人形は全身からオーラを噴き出し、あやめを吹き飛ばす。

 

「チッ…!」

 

 そこへあやめと交代するように、今度はノエルが人形に仕掛ける。

 

「はぁッッ!!!」

 

 両手持ちしたメイスを振り下ろす。ノエルなら、防御されたとて強引に押し込んで動きを封じる事ができる。

 

 

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

「なっ……⁉︎」

 

 人形は片腕でメイスを掴み、攻撃を防いだ。そこまでは想定内だった。

 

 だがあろうことか、人形は押し込まれるどころか、逆にノエルを押し返したのだ。

 

「この程度の腕力で俺を止めようと言うのか!!」

 

「だったら…これでどうっ⁉︎」

 

 ノエルを救い出そうと、側方からフレアは光り輝く矢を放つ。それを、人形は飛び退いて避ける。

 

「身体、浮いたな…!」

 

「スメラギさん…大人しくしててください!」

 

 そこへぼたんやるしあ達が一斉に攻撃を加える。回避の瞬間を狙った上、複数の種類の魔法と弾丸を放った為、『力』をもってしても防ぎ切るのは困難なはずだ。

 

 

 

 が、

 

「甘いんだよッ!!」

 

 人形の姿がコマ撮りを間違えたかのように突然消える。

 

 否、シオンの後ろに瞬間移動していた。

 

「こういう使い方があるのを忘れたか!!」

 

「ッ〈斬烈絶水刃(リオ・シェイド)〉!」

 

 シオンは瞬時に水の刃を形成し、振り向きざまにそれを薙ぎ払う。

 

 ギィィィィィン!!!!!!!!! と甲高い音が鳴り響き、肉薄していた滅紫の手を防御する。

 

 

 

 その時、宙で何かがきらめいたかと思うと、人形の全身が何か糸のようなもので雁字搦(がんじがら)めにされる。

 

 ステルス機能で背後に近づいたロボ子が金属製のワイヤーで拘束したのだ。

 

 その隙にシオンは後退する。

 

「スメラギ! 過去を否定することは未来を築く事じゃない! こんな事しても君が望む君は生み出せないよっ!」

 

「俺という存在をゼロから始めるのだ! その為には過去の一切から解き放たれなければならないッ!」

 

 人形は全身から『力』を放出し、拘束していたワイヤーを塵にする。

 

「つぁっ!!?」

 

 ロボ子はその波動に圧され、吹き飛ばされてしまう。

 

「前に戦った時よりも強い! これが本気の『スターク』…!」

 

 だが怯んでもいられない。彼を止められるのは仲間(自分達)だけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スメラギ…もう止められないぺこっ…?」

 

 ぺこらは遠くの物陰からそっと、戦いを眺める。

 

 戦闘の素人であるぺこらから見ても、ノエル達は全く手を抜いていない。だというのに、「スメラギ」は圧されるどころか逆に圧倒している。

 

 このままでは「スメラギ」を止められず、ノエル達もやられてしまう。

 

「どうにかなんないぺこかっ…⁉︎」

 

 

 

 と、そこで思い出す。

 

 確か、創造神はこんな事を言ってなかったか。

 

 人形は邪神の力と共に、スメラギの記憶も受け継がれたと。

 

 

 

 

 

 そうだとしたら、邪神の力は肉体ではなく、魂──根源の方に宿るということだ。

 

 そして、リヴァイエラが根源に宿っていたものを移植したのだとしたら。

 

 

 

 

 

 確証はなかった。だが、この状況を打破するにはやるしかない。

 

「どんちゃん! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼神刀阿修羅、秘奥が参…〈神立(かんだち)〉ッ!!」

 

 あやめは雷を纏った一撃を繰り出す。が、当たり前のように人形は真っ向からそれを受け止める。『奪う力』により斬撃は全く通用しない。ならば属性を付与した攻撃であればと思い放ったが、雷は『力』のオーラによって阻まれた。

 

「まずは貴様だ! 百鬼あやめッッ!!!」

 

「ッ…‼︎」

 

 

 

 が、

 

「⁉︎」

 

 突如後ろから、細長いうさぎのようなものが人形に向かって飛んでくる。完全に意識外からの奇襲に、人形は対応することができない。

 

「キュー‼︎」

 

 うさぎ──精霊ポンポリナは勢いを削ぐ事なく人形の元へ飛び込み、

 

「中へ入った⁉︎」

 

 そのまま人形に吸い込まれていった。

 

「何だこいつは…⁉︎」

 

 何も起きることはなかったが、人形の注目があやめから逸れた。

 

「ッはぁっ!!」

 

 その隙にあやめは空いた手で妖刀羅刹を引き抜き、人形に斬りかかる。が、それはまたもオーラに防がれた。強化された『力』は、あやめの斬撃すら受け付けない程に強力になっていた。

 

「小賢しいんだよ…‼︎」

 

「ぐっ…!」

 

 人形はオーラを放ち、あやめを吹き飛ばす。

 

「これ以上俺の邪魔をするなァッ!!!」

 

 あやめに迫り、滅紫に染まった拳を振り上げる。

 

(まずいっ…‼︎)

 

 だが。

 

 

 

「スメラギ」が不自然に止まり、よろめく。

 

「ぐっ……うぅッ…!!!!! ()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ……何だと言うのだ…」

 

 戸惑いながらも、あやめは受身を取り、「スメラギ」から距離を取る。

 

 

 

 

 

 頭を抱え、体勢を崩す。人形の中で、何かが起きていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんな事をしても虚しいだけだよ』

 

「スメラギ・カランコエ…‼︎貴様さえ、貴様さえいなければ俺は!」

 

『僕を否定し、過去を拒絶しても、君という存在は何も変わらない。分かっているんだろう?』

 

「そんな事はない! 俺を手に入れるには貴様を、生まれを捨て去らなければならない!」

 

『みんなは真実を知り、それでも君のことを救おうとしているというのに? それは同情からじゃない。君が仲間だからなんだよ』

 

「仲間だと…‼︎俺に仲間などいない…! 目の前にいるのは全て貴様の痕跡だ‼︎」

 

『確かに君は僕を演じてきたかもしれない。でも、この世界で結ばれた絆は、間違いなく君と彼女達のものだ。みんなと歩んできた道を思い出せ! こんな事をしなくても、もう君は君だ!』

 

「ぐっ……、黙れ…、黙れよ! お前の言う事を聞く気はない…! 俺は、変わるんだ…! 俺は人形なんかじゃない……俺は俺だ…俺なんだ…っ」

 

『心を閉ざしてはダメだっ! ───!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……喋るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

「ッ!!」

 

 ラミィやメルに向けて放たれた滅びの一撃を、るしあの〈薊蓮華(あざみれんげ)〉が防ぐ。

 

「スメラギさんが…抑えてくれているんだ…!」

 

 るしあは何とはなしに、そう確信していた。ぺこらの賭けは成功したのだ。

 

「今だ!」

 

 ノエルは「スメラギ」に肉薄し、メイスを振り下ろす。

 

「くっ…! どいつもこいつも…!」

 

 人形は片手でノエルのメイスを受け止める。が、それは織り込み済みだ。

 

 間髪入れず、ロボ子が「スメラギ」のもう片方の腕を抑える。

 

「スメラギ! 目を覚ましてっ!」

 

「黙れ…! 俺は、俺を…‼︎」

 

「スメラギ」の身体が、滅紫のオーラを纏っていく。しかし「スメラギ」を拘束しているノエルとロボ子は避けることができない。至近距離で食らえば無事では済まないだろう。

 

「スメラギッ…!」

 

 

 

 

 

 

 

『みんな、彼を討ってくれ…』

 

 と、どこからか声が聞こえた。

 

「スメラギさん⁉︎」

 

『彼はもう正気を失っている。もう僕の声も届かない。倒すしか、彼を止める方法はないんだ』

 

「けどっ…! そんなの!」

 

 るしあは、しかしその言葉を否定する。そうならない為に、そうしたくなかったから、戦っていたのに。

 

『君たちには、辛い経験をさせてばかりだね…。でも、僕にはこれを伝える事しかできない。僕が残してしまった罪を、災禍を止められるのは君たちしかいないんだ』

 

 スメラギは優しく声をかける。

 

『君たちとは会ったことがないけれど、僕は信じてるよ。君たちが世界を救ってくれる事を』

 

 そうして、スメラギの声は聞こえなくなった。

 

 

 

「そんなっ…!」

 

 やるしか、なかった。

 

「…さようなら、スメラギ」

 

「フレアっ…!」

 

 フレアはありったけの魔力を込め、神速の矢を放つ。それは邪神のオーラを突き破り、「スメラギ」の胸を穿つ。

 

 

 

 

 

「がッ……」

 

 根源のど真ん中を撃ち抜かれ、「スメラギ」はだらりと力を失う。

 

 抵抗を感じなくなったロボ子とノエルがそっと離れると、人形はその場に崩れ落ち、頭を垂れる。

 

 

 

「お、れは…死ぬべき、存在なのか…」

 

「ごめんね…君を助ける事が、私達の役目だったのに…」

 

「何も持たないまま…」

 

「あなたには、るしあ達がいるのです」

 

「何も為せないまま…」

 

「ゼノクロスを倒しただろ。お前、すごいよ」

 

「おれは…俺で、あれたのか…?」

 

「君はもうスメラギじゃないよ。それは君が1番よく分かってるでしょ?」

 

「は、はは……こんな、馬鹿な話があるか…。こんな………」

 

「あなたはもう十分頑張った。だから、もう休んで良いんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ゼノクロスと『スターク』を発端とした一連の事件は終結した。

 

 事件の詳細は後にリヴァイエラによって明るみにされ、ノエル達はゼノクロスと『スターク』の双方を倒したとして、大いに賞賛された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は平和になった。人形と兵器を犠牲にして。

 

 そしてこれからも世界は平和であり続ける。新たに生まれる「災厄」を滅ぼし続ける事で。

 


 

 Cエンド

 

収束する運命(トゥルーエンド)




Cルートの分岐点はかなり前で、「もしゼノクロスとの最初の邂逅の時点でスメラギが滅びていたら?」という分岐です。

ifルートはバッドエンドにしようと前から決めていたので、最後の方でもしかしたら救えるかも、と思わせといてやっぱ無理という感じにしました。君のことは必ず救うから、待っててな。
さらに言えば、バッドエンドなのは「スメラギ」の方だけでなく。
「スメラギ」を滅ぼしたということは、邪神の力が解き放たれ新たな『スターク』が生まれるという事なんですね。犠牲を払ってようやく平和になったかと思いきや、その平和を維持する為に誰かを滅ぼし続けなければばならないという…


てか、実は創造神リヴァイエラが1番の悪役では?と、今回書いてて思いました。まぁ彼(?)も彼で世界を守る為にやれるだけやったって感じなので、完全悪ではないんですが。
とはいえ、わざと「スメラギ」のアイデンティティを崩し、暴走させる事でゼノクロスを倒させるというのは、流石に書いてて「コイツエグすぎだろ…」と引いてしまいました()
ちなみに「トゥルーエンド」というのは、リヴァイエラにとってのトゥルーエンドだったりします。
何だかんだ言っても、『スターク』は世界にとって脅威に他なりません。危険因子を潰すなら、両方とも潰しておきたい、という事で、この世界からゼノクロスと『スターク』のいなくなった結末こそ、主神たるリヴァイエラの望んだ未来なんです。
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