【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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SS第一弾です。日常回の練習も兼ねてます。



あ、そういえば4thライブの一次抽選当たりました


SS
スメラギ応援隊っ!


 

 -1-

 

「し、しまった……」

 何気なく開いたデバイスを見て、スメラギは愕然とした。

 完全に失念していた。

 いや、何となくそうではないかと思っていたのだ。最近はナノマシンやらセンチュリオンの修理やら色々あったから、少し警戒はしていたのだが、いざ『これ』を見るまで大した危機感も抱いていなかった。

 

 まぁつまりは。

「1ヶ月1万G生活だって……?」

 デバイスに入ってある通帳アプリに表示される『10,146』の数字。これがスメラギの全財産だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター。これからどうなさるおつもりで?』

「…そんなの決まってるよ」

 スメラギはなんとか冷静さを保ち、デバイスを操作する。

 開いたのは、アルヴィアス所属の傭兵専用のサイト。そこには現在受付可能な依頼が数多くリストアップされていた。

「依頼を請けるしかない。来月の生活費の為に」

 傭兵は完全歩合制だ。依頼をこなさなければびた一文も貰えない。実際、今月は色々あって依頼を請けていなかった為に給料はほぼゼロに等しかった。

『しかし現在の貯金では異世界へ渡ることはできません。それに戦闘となると経費がかさみます。現在の残高ではナノマシン1mgも買えませんが。』

「い、移動もままならないか…」

 だが、このままボーッとしていたら間違いなく死ぬ。

 社会的にではなく、物理的に。

『エース第3位』ともあろう者が金欠で苦しんでいるなんて、非常に情けない話だ。だから今月はどうにもならないにしても、何としてでも来月分の食い扶持は稼がねばならなかった。

(なら俺を頼りゃいい話だろうが)

 と、スメラギの脳裏から声が響いた。

「オーガスト」

(アーマーを使わずに戦えば修理費を気にしなくて済むだろ)

 スメラギの裏人格でもあり、彼の『()()()()』を肩代わりしている人物でもあるオーガストは、そう提案した。

「まぁ確かに…でも君が戦うと被害が増えるんだよなぁ…」

 オーガストの『力』は強大だが、それ故に余計な被害を出してしまうのが欠点ではあった。それだけでなく、『力』を使えばそれ相応の代償が付いて回るのだ。

『ここはマスターの技量に賭けるしかないかも知れませんね。』

(チッ…俺を使わねぇんだから甘えた動きすんじゃねぇぞ、スメラギ)

「あはは…。要は被弾しなければいいんだろう? まぁ…何とかしてみせるよ」

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 とは言ったものの。

『被弾3箇所。いずれも軽微な損傷ですが、マスターの欠点は精神状態に戦闘能力が左右されやすい所ですね。』

 人間界、辺境部にてスメラギは小型魔物の駆除にあたっていた。すばしっこく、普通の傭兵なら複数人でやる依頼だが、複数でやると報酬が減るからというケチくさい理由で、スメラギは単独でこの依頼を請けた。

 結果、魔物の巣を撃破し何とか依頼を達成したのだが、その過程で数ヶ所の被弾を許してしまった。

(ハッ、てんでダメじゃねぇか! これじゃ先が思いやられるなぁ⁉︎)

「う、うるさいなぁ……これくらい良いだろ? それに武器とスラスターが使えれば戦えるんだから、問題ないはずだよ。…それより、今日はもう一個だけ請けようかな。APRIL、リストを」

『本日受注できそうな依頼はこちらになります。』

 

 と、スメラギが今日の残りの時間でできそうな依頼を吟味していると、

「あれ、スメラギだ! こんなとこで会うなんて奇遇じゃん!」

「やっほー。君が辺境部にいるなんて珍しいね」

 

「み、みこにロボ子さん……」

 その声に、スメラギは思いっきり憂鬱そうな顔で応じた。知り合いにこんな所を見られるなんてめちゃくちゃ恥ずかしい。

 見つかったのがシオンやマリンとかじゃなくて本当に良かったと、スメラギは思わずにはいられなかった。

「あっ! もしかして依頼? みこ知ってるよ! スメラギは傭兵だったよにぇ!」

 そんな心情も露知らず、みこは無邪気にそう話しかける。

「あ、あぁ…まぁね…」

「そうなんだ〜。でもスメラギ程の実力の持ち主なら、色んな世界を渡って危険な依頼をいっぱいこなしてそうだけど、意外とちまちました依頼が好きなんだね〜」

「うぐっ……ぼ、僕はあんまり異世界へ渡るのが好きじゃないんだ…。ここが好きだからね…」

「こんな田舎世界の依頼なんて安いんじゃないの? みこもちょっとだけやった事あるけど、高級な単発バイトレベルだったにぇ〜あれは」

「うぐぐ……ま、まぁ、お金だけじゃないからね…傭兵の報酬っていうのは…」

『お二人とも、そこまでにしてあげて下さい。マスターが金銭的にだけでなく、精神的にも苦しめられています。』

「フォローの仕方が見当外れすぎるよ⁉︎僕の努力が水の泡なんだけど⁉︎」

 ……前言撤回だ。無邪気な人ほど、追い詰めるのが上手いのだ。そして約1体、この状況を楽しんでる阿呆もいた。最悪だ。

「…スメラギ金欠だったんだぁ…」

「そっか…なんかごめんね…」

「そんな目で僕を見ないでくれ…! いじられるより効くから…‼︎」

 何で自分はこんな羞恥プレイを受けているんだと、スメラギは思わず嘆いた。

「と、とにかく、僕は次の依頼を請けるから、もう行くよ…!」

 スメラギは逃げるように立ち去ろうとするが、

「あっ、待って!」

「?」

「ね、ロボちゃんとみこでスメラギを手伝おうよ!」

「え」

「それいいねみこち! 大丈夫、報酬は君に全部あげるから!」

「あの…さすがにそれは申し訳ないというか、僕がただの情けない奴になっちゃってるんだけど…」

「だって山分けしちゃったらスメラギが損しちゃうでしょ。それに、3人でやった方が絶対効率良いで!」

「そーそー。僕たちは手伝うだけだから。君がメインでこなせば問題ない! ほら、そうとなったら早く請ける依頼決めちゃおうよ。3人だから少し難易度高めでもいけるよ」

「いや、あの」

「やっぱ報酬が良いのは大型モンスターの討伐とかなのかな? 魔界に行けば良いのあるかも!」

『そういう事でしたら魔界の受注可能な依頼を検索します。』

「……」

 

 …と、断る段階をとうに過ぎ、2人(と1体)は依頼の吟味まで始めてしまった。

 

 もはや流されるしかないと、スメラギは悟った。

 


 

 -2-

 

 知らぬ間に魔物討伐クエストを受注していたスメラギは、その犯人であるロボ子とみこと共に魔界にやって来た。

「みこ、魔界来るの初めてかも〜」

「僕もだよ〜。ホントにマナが濃いんだね〜ここは」

「…さっさと終えて帰ろう。ここはろくな場所じゃない…」

「??」

 気怠そうに、スメラギは言う。クエストで指定された場所は街から遠く離れているとはいえ、そこに魔物がいるということは必然的に、『彼女達』もいる可能性があるということだ。

「良いことじゃん! 友達に会えるなんてさぁ〜」

「もしあやめちゃん達もクエストやってたら、一緒にお互いのクエスト手伝うとかもできちゃうよね! それはそれで楽しみかも!」

 当事者じゃないからそんな呑気でいられるのだ、とスメラギは2人を恨めしく思った。『エース第3位』ともあろう人間が、少女2人に魔物討伐を手伝ってもらってる、なんてのが見られたら絶対笑いものにされる。特にシオンなんかは。

「も〜心配性だなぁ。そんな風に見てくる人なんていないよー」

「そうそう! みこ達、そんな弱くないで!」

 

 

 

 ……そんな他愛もない雑談を交えつつ、街から遠く離れたとある廃村にたどり着く。

「ここがクエストの?」

「そうらしいけど…」

 3人は周りを観察するが、魔物らしき姿は見当たらない。

『センサー起動します。警戒を怠らないようにお願いします。』

 

「…うーん、みこの陰陽センサーにも引っかからないにぇ」

「僕も今のところは……って、あっちの方に2つ反応がっ!」

「──ッ!」

『いえ、あれは…』

 3人は視線を交わすと、ロボ子が捉えた反応の元へと走り出した。

 

 

 

『だから止めたではありませんか。』

「止めるならちゃんと最後まで言ってくれAPRIL…」

 いや、早とちりした僕も悪いんだけど…と、ぶつぶつ小さい事を気にしている臆病野郎はさておき。

「るしあたん! それにフレアも! 久しぶりだにぇ!」

「あれ、みこちゃんとロボ子ちゃんなのです⁉︎」

「2人ともどうしてここに? それにあそこにいるの、スメラギか? …何であいつ落ち込んでるんだ?」

「まぁ色々あってね〜。僕の早とちりだったけど、2人に会えてラッキー!」

「僕はアンラッキーだけどね…。まさか君もクエストなのか、るしあ…?」

「は、はい…まぁ一応…」

 悪い予想というのは、どうしていつも当たってしまうのだ。スメラギは思わず頭を抱える。

「でも何でフレアまでここに…」

「外界を知るのは、周り回って森のためにもなる…だとさ。レゴラスは不服気味だったけど。るしあと会ったのは偶然だよ」

 後でラルクにはたっぷり文句を言ってやろう。スメラギはそう心に決めた。

 まぁそれはそれとして。

「反応はるしあたん達だったのかぁ。じゃあ、ここに魔物がいるっていうのは嘘だったのかなぁ?」

「魔物?」

 と、るしあは首をかしげる。

「? るしあちゃんは魔物の討伐をしに来たんじゃないの?」

「いえ、るしあはこの廃村の調査をしに来たのです。時々地震が起こるとか、今までいた生き物達が突然姿を消したとか…そういう噂が、ここではあったんです」

「村で? ということは局地的なもの…」

「どう考えても自然現象じゃないね」

 つまりは魔物の仕業、ということか。

「るしあのクエストとスメラギさんのクエスト、実は同じものを追ってたのです?」

「多分ね。地震を起こすほどの魔物だ、きっと強力に違いない。僕達が請けたクエストも、難易度の高いものだからね」

 という事は、敵はこの廃村の中ではなく、下にいるのかもしれない。

「盲点だったな〜。まさか地中とは」

「灯台下暗しって奴だにぇ!」

「それ、使い方合ってるのか…? …でも、見つけたらどうするんだ? そいつは地中にいるんだろ?」

「どこかに魔物の住処へ繋がる入り口があるのかも。地震を起こすほどの力を持っているなら、地中だけじゃ餌が足りないはずです」

「確かに。じゃあ手分けして探す、か……ッ!!?」

 その時。

 ズズズッッ………!!!!! と、地響きが鳴る。5人はあまりの揺れに、思わずしゃがみ込む。

「こ、これ…、()()()…‼︎」

 直後。

 バガァァァァァァン!!!!! 

 廃屋の1つが地面と共に盛大に弾け飛び、土煙が周囲に撒き散らされる。が、その中から、1つの大きな物体が飛び出してきた。

 ドリルのような印象を与える2本の角と強靭な翼。そして岩でできたハンマーを思わせる巨大な尻尾。

 悪魔の名を冠する種族と近縁にある飛竜種。

「これがクエストの対象…⁉︎」

 暴食竜アヴァリティア──それがこの異変の元凶だった。

 


 

 −3−

 

「ゴガァァァァァァァッッッ!!!!!」

 アヴァリティアは不用意にも縄張りに入り込んできた人間達に対して、つん裂くような咆哮に浴びせる。完全に敵──否、捕食対象と認定したらしい。

「そうか…。地震はヤツが餌を取りに来る合図だったんだ…」

「この魔物…厄介な相手です。一度好みの餌を見つけると、飽きるまでそれを求め続けるのです」

 そして標的を自分達に定めたという事は、恐らくは。

「ここが廃村なのは、こいつが理由か…‼︎」

 この地域に辿り着いては手当たり次第捕食するのみならず、そこに偶然あった村の住民すら食い尽くしたのだ。

「とんでもない化け物だにぇ…! でも、だからこそ」

 みこはバッと上空へ飛び上がり、袖からお札を取り出す。

「解決のしがいがあるにぇッ! 符術・桜花(おうか)符‼︎」

 先手必勝、とばかりにみこは掛け声と共に霊力をお札に込め、その力を解放する。

「え⁉︎」

「何だあの技…!」

 光り輝く桜の花がみこを中心に咲き誇ると、その花びらが光弾となってアヴァリティアに降り注ぐ。だけでなく。

 ズガガガガガガッッッッ!!!!???? と。

「グギャァァァァァゥ!!!!!」

「うわっ…⁉︎」

「ちょ…みこちゃん危ないのですっ!」

 桜の花びらはアヴァリティアの周りやスメラギ達の近くにも舞い落ちていった。

「巫女の陰陽術は派手さが取り柄っ! ()()()()()()()()()()()さ、ロボちゃん達も早く戦うにぇ‼︎」

「…たく、厄介なのはどっちだ…!」

 みこの流れ弾を避けつつ、フレアも弓を取り出し、矢をつがえる。

「〈光陰一矢〉ッ!」

 放たれた矢は、光り輝く一閃となり、アヴァリティアの角へとまっすぐ飛んだ。が、

 ガギギッッッ!!! と、一瞬の抵抗の後に矢が弾かれた。

「何て硬さだ!」

 そして反撃とばかりに、アヴァリティアはフレアに向かって突進をしてくる。

「ッ!!」

「隙ができちゃったんじゃない⁉︎ドラゴンちゃん!」

「弱点は尻尾! で良いんだよねるしあ⁉︎」

「はい! お願いしますっ! 〈重加(デドン)〉‼︎」

 フレアが瞬時に横へ飛び退き回避したのを見届けつつ。

 ガヅンッッッ!!!! と、動き回る尻尾の先端を、〈重加(デドン)〉によって加速を得たスメラギのアームハンマーで捉える。

 そして動きが封じられたところを、ロボ子の特別製ワイヤーが切り裂く。

「ガゥァァァァァッッッ!!!??」

 アヴァリティアは弱点を突かれ苦しむが、尻尾はまだ健在だ。叩きつけたスメラギとロボ子を吹き飛ばすように、アヴァリティアはハンマーのような尾を薙ぎ払う。

「ッ…と、!?」

 それを飛んで避けていると、今度は地面に角を突き刺し、岩盤を捲り上げた。

「やっ…ばッ!!?」

 飛ばされた岩盤は、ちょうど着地したロボ子の元へ襲い掛かってくる。

「符術・結界符!」

 と、すんでのところでみこの結界が展開され、岩盤を食い止める。

「ありがとみこちっ!」

 

「くそっ…決定打に欠けるな」

「流石にここでオーガストを出すわけにはいかないし…どうすれば」

『大物には大物を。私をお喚び下さい、マスター。』

「そうか、APRIL!」

『ただし弾薬節約の為に1発で撃破したいので、時間を稼いでもらえないでしょうか? 具体的には15秒ほど。』

「15秒? 意外と長いにぇ!」

「いえ、守ってみせます! APRILさん、よろしくお願いなのです!」

 るしあはそう宣言すると、魔法陣から漆黒の魔剣──黒蝶獄霊剣(こくちょうごくれいけん)ネクロレンディアを取り出す。

 同時に、ガシャガシャガシャガシャ!!!!!!!!! と、無数の機械が電送され、複雑に噛み合っていく。

『ミーレ・センチュリオン、起動(アクティベート)。同時に7番兵装「スキュラ」のチャージを開始します。』

「──ッッッ!!!!」

「黒蝶獄霊剣、秘奥が壱」

 何か危険を察知したアヴァリティアは、組み上がっていく鉄の塊に向けて突進してくる。

「〈死蝋黒剣(しりょうこくけん)〉!!」

「〈光矢嵐翔(こうしらんしょう)〉ッ」

 それに対し真正面に陣取るるしあとフレアはそれぞれ、ネクロレンディアから死の炎を纏った斬撃と無数に分かたれた光の矢を飛ばす。

「グオォォォォォ!!!!」

 黒炎がアヴァリティアの目を灼き、光の矢が全身を叩くも、なお暴食竜はその足を止めない。

「だったらっ!」

「文字通り足止めするよ!」

 さらに駆け出してきたスメラギとロボ子はそれぞれ、ハンマーとワイヤーで集中して片足に攻撃を加える。

「ギュァッッッ!!?」

 足に強い衝撃を食らったアヴァリティアは体勢を崩し、地面を激しく擦る。

 

『チャージ完了しました。では、発射します。』

 と、いよいよ敗北を悟ったアヴァリティアは特徴的な角で地面を掘り、地中へ逃げようとする。

「符術・封縛符! 悪あがきはよすにぇっ!」

 しかしそれはみこの結界によって封じられる。

 直後。

 

 ズッッグォッッッッッッッ!!!!!!!! と。

 センチュリオンから放たれた超出力のビームがアヴァリティアを真正面から襲った。

 赤と白の光は、鋼よりも硬い竜の皮膚や骨すらも灼き、人間を喰らう暴食竜を確実に滅ぼしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 光が収まると、限界を留めながらもプスプスと焼け焦げたアヴァリティアが、力なく転がっていた。

「ぃよっしゃぁぁぁっ!!! 大勝利だにぇ!!」

「意外とあっけなかったな」

 みこは空中でガッツポーズをあげる。暴食竜アヴァリティアは魔物の中でも上位種にあたるが、フレアの言う通り、この5人で挑めば大した敵にはならなかった。

「スメラギさん達のおかげなのです! ありがとうございますっ」

「やー、これでスメラギのお財布事情も解決だね〜うんうん!」

「あ」

 …しまった。最後まで気を抜くべきではなかった。そういえば戦闘前のるしあ達との会話で、まだ「今回の目的」がバレていなかったのを忘れていたのか。

『肯定。本クエストがこのまま無事に終われば、来月は一日一食の生活からは抜け出せそうです。』

 さらにこの無表情で悪ノリをかましてくる性悪AIがいやがるのもすっかり忘れてしまっていたのか。

「そうなのです?」

「そうそう。実はスメラギ金欠でにぇ、みこ達が手伝ってやってるの!」

「…お前、金無いからって女子2人に生活費稼ぐの手伝ってもらうとか、恥ずかしくないのか?」

 

 グッッサァァァァッッッ!!!??? と。トッピングに白い目というクソ重ダイレクトアタックをもろに食らい、スメラギは思わず身体をくの字に曲げる。こんな状況でも泣かなかったのは成長かもしれない、とスメラギは薄れつつある意識の中でそう思った。

「こ、言葉が強すぎるだろフレア……ち、違うんだ2人はたまたまついてきただけで…」

「なぁんだ、そういう事なのですね! だったら、るしあの分の報酬も少しあげるのです。遠慮しないでいいのですよ、るしあ学生ですのであんまりお金使うこともありませんし!」

 と、追い打ちとばかりにるしあの優しさが無自覚に牙を向いてくる。

「スメラギ」

 連鎖は続き、フレアの視線が一層鋭く刺さる。当たり前だ年下に金をもらう社会人などどこにいるものか。

 スメラギは震える手でるしあの肩をガッ! と掴み、

「るしあ…時には優しくしないことが優しさと呼ばれることもあるんだ……だから分かってくれるね?」

「は、はい…分かったのです…」

 スメラギがあんまり鬼気迫る表情、というよりかは泣きそうな顔をしていたので、るしあは素直に従うことにした。

 

 何はともあれ。これで極貧生活からは抜け出すことができそうだ。2週間ほどは節約して暮らしていかねばならないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ってことがあったんですよ。もう、思い出すだけで胃が…」

「……」

「AZKi先輩? 聞いてます?」

「え!? う、うん聞いてたよ!? みこちとロボ子さんと魔界に行ったんでしょっ?」

「聞いてないじゃないですか……」

「ご、ごめん…でも、そういう事だったのかぁ」

「?」

「この話はみこちとロボ子さんから広まったんだね」

「え?」

 何気ないその一言に、スメラギの体温は一気に下がる。

「私も知ってたんだって。スメラギくんが金欠だったって事だけだけど」

「…は、!? な、ど、誰から!?」

「ちょ、揺らさないで! 酔う! 酔っちゃうから!」

 電話とかじゃなくて本当にデバイスの中にいるのか、という疑問はさておき。

「わ、わためぇに聞いたんだよ」

「わため…!? あ、あのエリートポンコツ先輩が広めたのか…!?」

 と、スメラギのデバイスに一通のメールが届く。

 文面はこうだ。

『ぷぷー! スメラギが金欠とか、超笑えるんですけど~! これでウチらの仲間入りだなぁなぁにが『エース第3位』だこのビ

 

 無言で削除ボタンを押した。

「マリンちゃんから? わ~すっかり広まっちゃったねぇ」

「最悪だ……最悪すぎる…」

「ま、まぁまぁこういうこともあるよ! 大丈夫私はいじったりしないよ! 元気出してスメラギくんっ!」

 そういう問題でもないのだ先輩よ。思わずオーガストに交代しそうなのをグッとこらえつつ、スメラギは彼女たちに対してなけなしの反撃を試みる。

「うぐ……で、でも、今はもう違いますよ! 先月あんなに頑張ったんだし、今月からは別世界の依頼も請けれるは…ず……」

 

 が、開いた通帳アプリに表示された数字は、先月とあまり変わっていなかった。

『どうやら先月に滞っていた請求に対する支払いがなされたようですね。』

「………」

「…元気出してスメラギくんっ!! お金ならまた稼げばいいんだから!!」




今回はスメラギのポンコツっぷりを前面に出してみた回です。いじりすぎていじめられてる気がするのはご愛嬌。

補足として、今回登場したオリジナル魔物、暴食竜アヴァリティアの簡単な説明をしておきます。

暴食竜アヴァリティア→捻じ曲がった2本の角と強靭な翼、そしてハンマーのような巨大な尻尾を持つ。
地中に潜り移動するため、地面を掘り進む用に角や顎が発達している。
翼は飛ぶためのものではなく、角による突進や尻尾攻撃の時などの姿勢制御として機能を果たす。
角竜ディアブロスの近縁種にあたるものの、雑食性で特定の生息地を持たない。一度美味しいと思ったものに対しては味を覚え、執拗に狙う習性がある(飽きたらまた別のものを探しに行く)。好みの食物を求めて各地を放浪し、見つけるとそこを縄張りとして獲物を狙い続ける。さらにその先で新たに好みを更新し、その生態系を食い荒らすというかなり厄介な生き物。
捕食目的以外で戦闘はしないが、一度捕食対象を捉えると傍若無人なまでに暴れまわる。
計算高い側面もあり、捕食の際には地中に潜り獲物を待ち構える。地中に潜るという習性は、空からの敵から身を守るためとも言われている。
作中に出てくるのは人間を襲い、人間の味を覚えてしまった個体。廃村になってから、度々訪れる人間を待ち構えては捕食していた。時々起こる地震はその時のもの。
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