【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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なかなか書くのに時間かかりました( ´・ω・`)



4話 掟

 ゴゥゥゥン……‼︎‼︎

 

 森の中に入ると、外からは聞こえてこなかった轟音が耳を叩いた。森に結界が張られており、それが中からの爆音を留めていたようだ。

 

「ひえぇ⁉︎」

 

「えぇと、これは…?」

 

「あまり聞くな……ただの小競り合いだ」

 

 レゴラスは撫然とした様子で答える。どうやら、あまり追及して欲しくないようだ。

 

「小競り合い?」

 

 そう聞き返すと、代わりにラルクが答える。

 

「フレアとラミィ…古参と新入りがケンカしてるんだよ」

 

「……!」

 

 フレアにラミィ。聞き覚えのある名前を耳にするだけでなく、よりによって彼女達が争っているとは。

 

 何事もなくここを去ろうとしていたスメラギの思惑は、早速崩れてしまった。

 

「あんたら、悪いタイミングで来ちまったな。まぁ、飛び火はして来ないと思うから、ゆっくりしてくんな。と言っても、こんな爆音の中じゃ落ち着かねぇか?」

 

 ハッハッハ、とラルクと呼ばれた男は呑気に笑う。

 

「まったく…! ラルク、貴様は節度を弁えろ!」

 

 レゴラスはラルクを叱りつけ、道案内へ戻ろうとする。

 

「何故そんな事に?」

 

 スメラギはラルクにそう訊ねる。同一人物ではないため、一概には言えないが、彼女たちはそれほど喧嘩っ早い性格ではなかったはずだ。

 

「あぁ、新入りが機械を使っていたらしくてな。『エルフは機械を用いるべからず』ってオキテを破ったからさ。まぁ今の時代、人間の老人だって機械を使ってんだから、時代遅れにも程があるがな」

 

「掟というのは未開文明の因習だ、と人間は言うが、エルフの掟は自然と共に生きる為の術だ。時代が変わっても不要なものは何一つない」

 

 どうやらエルフの中でも、掟を捨て人間界に溶け込むべきとする派閥と、掟を守り独自の文化と自然を守るべきとする派閥に分かれているらしい。

 

「なんだか大変そうぺこねぇ。……スメラギ?」

 

 ぺこらの時は不可抗力だったが、今回は会わないという選択肢もできる。もちろん、その方が今後巻き込む可能性が低くて済む。

 

 しかし。だからと言って。

 

「…なぁ、レゴラス。僕に、彼女たちを仲裁させてくれないか」

 

 彼女たちが争っているのを放っておくことは出来なかった。

 

「ちょ、スメラギ⁉︎」

 

「なに…?」

 

 スメラギの提案に、レゴラスは訝しむ。

 

「これは我らの問題だ。貴様に手出しさせる訳にはいかん。第一、〈契約(ゼクト)〉を交わしている以上、貴様が干渉することはできんぞ」

 

「なんだ、それくらい解除してやれよレゴラス」

 

 ラルクは軽い調子でレゴラスに提案する。

 

「ラルク…?」

 

 それはレゴラスだけでなく、スメラギにとっても意外だった。

 

「ラルク! 貴様何をっ!」

 

「放っておいてはいるが、ずっと暴れさせる訳にもいかんだろう? コイツに任せたらどうだ?」

 

 と、そこへぺこらがラルクに加勢する。

 

「え、えと……喧嘩は良くないと思うぺこ! それにアンタ達に止める気がないなら、スメラギが止めるしかないじゃん!」

 

「むぅぅ…」

 

 2人に援護され、レゴラスは唸り声を上げる。

 

「必ず止めてみせる。頼む」

 

 スメラギはレゴラスの目を真っ直ぐ見据える。

 

「…今回だけだ。そこまで言ったからには必ず止めてみせろよ!」

 

 レゴラスは渋々ながらスメラギとの〈契約(ゼクト)〉を解除する。レゴラスは頭は固いが、悪い性格ではないらしい。

 

「ありがとう、行ってくる」

 

 スメラギはレゴラスの人の良さと擁護してくれた2人に感謝しつつ、音のする方へ駆け出していった。

 

 

 

 

『マスター。パワードアーマーはもちろんですが、マスター自身も万全ではありません。あまり無理はなさらず。』

 

「大丈夫。やりようはあるさ…」

 

 予備のナノマシンで何とか使えるようにしたとは言え、先の戦いでのダメージがまだ残っている。

 

 増して、ラルクの言っていたように相手はフレアとラミィだ。彼女たちが本気で戦っているとしたら、止めるのはまず無理だろう。APRILには強がってみせたが、実際のところ本気で戦っていない事を祈るばかりであった。

 

 

 

 

 

 樹々の間を縫うように走っていくと、少し開けた所で金髪に褐色のエルフ──フレアと、青髪に白い肌のエルフ──ラミィが戦闘を繰り広げていた。

 

「機械は自然を滅ぼすものでしかないって、何で分からないんだ‼︎」

 

「それはあなたの偏見でしょうがっ‼︎」

 

 2人は口論しながらも、魔法や矢を撃ち合っている。

 

(大丈夫…これは喧嘩だ。本気の殺し合いじゃない)

 

 その攻撃に殺意がない事が分かるや否や、スメラギは駆け出した。そして両腕にナノマシンを纏わせ、そのまま大型のシールドを形成する。

 

「2人とも、もう止めるんだ…‼︎」

 

 2人の間に割って入り、スメラギは互いを狙った魔法をシールドで防ぐ。

 

 ガキィィンッッ……‼︎‼︎

 

 見た目こそ派手だったが、威力自体はそこまで高くなく、スメラギは難なく魔法を防ぎきる。

 

「ちょっと! あなた何なの⁉︎」

 

「人間…何でここに!」

 

「レゴラスとラルクから聞いたんだ。君たちが喧嘩をしているって」

 

 知った名前を出され、フレアとラミィは攻撃を止める。しかし、まだ戦闘態勢を緩めてはいない。

 

「お前には関係ない。増してや人間なんかに」

 

「そうやって古い掟ばかり気にして。時代遅れだって何で分からないんですか?」

 

「2人とも! 喧嘩はやめてくれって…」

 

 再び口論を始めようとするフレアとラミィに、スメラギは慌てて制止する。

 

「掟の事で喧嘩になったって聞いたんだけど、本当かい?」

 

「…ふん。人間に話す事なんてない」

 

 戦闘態勢を緩めると、フレアは冷たくそう返し、どこかへ去っていった。

 

 

 

「……。えっと、ラミィ…だったよね。君は話してくれるかい?」

 

 これ以上フレアに話を聞くのは無理だと思い、スメラギは今度はラミィに訊ねる。

 

「あ、はい…。そうですよ。ラミィはユニーリアってとこから来たんですけど、そこでは機械を使うな、なんて掟は無かったから…。デバイスでお母様と電話しようと思ってたんだけど、それを見たフレアさんが怒り出しちゃって。それでつい応戦しちゃったと言うか…」

 

「なるほど。大体分かったよ、ありがとう」

 

 同じエルフの土地でも文化の違いはあるようだ。その違いから生じる衝突はなかなか避けられない。

 

 だがその衝突は、争いによってではなく、もっと平和的に解決できるはずだと、スメラギは思う。

 

「…ラミィ。どうかフレアを悪者だって思わないでほしい。彼女は掟を守る事を大事に思ってたんじゃなくて、本気でここの自然を大事にしてたんだと思うから…」

 

 知り合うどころかまだ話したことすらない自分がフレアを擁護するなんておかしいのだが、それでもスメラギは伝えたかった。

 

「分かってます…フレアさんが優しい人だって事は。でも、それを他人に強制して自由を奪うのはいけない事ですよ。それにそんな生き方…。息苦しいだけじゃないですか…」

 

 ラミィは伏目がちにそう語る。

 

「すみません…この為にこの森に来た訳じゃないでしょうに」

 

「構わないよ。それに、君たちには争って欲しくないから…」

 

 ラミィはその言葉に少しの違和感を感じたが、それ以上気には留めなかった。

 

「あ、そういえば、えっと…」

 

「あぁ、名前がまだだったね。僕はスメラギ。スメラギ・カランコエだ」

 

「雪花ラミィです。スメラギさん、よろしくね」

 

 互いに短く自己紹介を済ますと、ラミィがそういえば、と話を切り出す。

 

「スメラギさんは何をしにこの森へ?」

 

 最もな疑問だ。ラミィはこの森に移住してからそう時間は経っていないが、それでも人間がエルフの地に入るなんて普通あり得ない。

 

 そう考え、スメラギは素直に答えることにした。

 

「探し物をしててね。エルフ(きみたち)なら何か知ってるかなと思って」

 

「探し物? 何を探してるんです?」

 

 ラミィはスメラギに訊ねる。話の流れからして訊ねられるのは当然なのだが、実際に聞かれると再び不安がスメラギを襲った。

 

 もし嘘をついたら、彼女を巻き込まずに済むのだろうか。

 

 そんな思いが頭によぎるが、ラルクやレゴラスには本当のことを言わなくてはならない。どっちみち、ラミィもフレアも知る事になるだろう。

 

「…ゼノクロスという兵器があるんだ。それを探してる」

 

「ゼノクロス? うーん…聞いたことないなぁ。それってどんなのなんですか?」

 

 名前に心当たりがなかったラミィは、その詳細を訊ねる。

 

「標準的なサイズの人型機動兵器さ。異世界大戦の時に造られたものだよ」

 

「んー……。ちょっと、知らないですね…。すみません、助けて頂いたのに。ご期待に沿えなくて…」

 

 細長い綺麗な指を頬に当て、記憶を辿るもやはりゼノクロスという兵器に心当たりがなく、ラミィは申し訳なさそうに謝る。

 

 一方、スメラギは内心でほっと胸を撫で下ろす。少なくとも彼女は巻き込まなくて済みそうだ、と淡い希望を交えながら。

 

「いや、いいんだ。アレはそう簡単に見つかるものじゃないからね。…っと、そうだ。連れを待たせているんだ。僕はもう行くね。ありがとう、ラミィ」

 

「いえ、こちらこそ。スメラギさん」

 

 ラミィの元を去る寸前、フレアが消えていった方をちらりと見る。が、そこには当然人影はなかった。

 

(フレア……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元来た道を戻ると、ぺこらとレゴラス達が見えた。

 

「おぉ〜、あんだけやばそうなケンカだったのに止められたのぺこか。流石ぺこねえ」

 

「あんた、やるじゃないか。これで静かになったな」

 

「礼はしよう。感謝する」

 

 3人は口々にスメラギを迎える。

 

「あぁ、ありがとう。でも、まだ解決はしていないんだ。フレアとまだ話をできていなくてね…」

 

「フレアか…アイツ、頑固だからなぁ。ま、後は時間が解決してくれるだろ。元々アンタには仲裁だけしてもらえれば良かったしな」

 

 スメラギは申し訳なさそうに話すが、ラルクは相変わらず軽い調子で返す。

 

「……ラルク、もしかして最初から僕たちに彼女たちの仲裁をさせるつもりだったのかい?」

 

「なんだ、バレていたのか。俺たちだけで解決できると言えばまぁそうなんだが、ちょうどお客が来たからな。第三者に止めてもらった方がいい時もあるだろ?」

 

 ラルクは悪びれもせず、あっけらかんと答える。

 

「貴様…そういう事だったのか…ッ!」

 

 まんまと騙された屈辱から顔を歪め、レゴラスは叫んだ。

 

「何というか…ズル賢い奴ぺこね…」

 

「頭が回るって言ってもらいたいもんだね。ま、結果的にケンカは止められたし、あんたらも森に入れたし、ウィンウィンじゃないか。それより、図書館に行くんだろ? ついて来なよ」

 

「おい、貴様何故勝手に仕切っている? 案内役は私だぞ!」

 

「はいはい。一緒に行こうぜ、レゴラスさんよ」

 

 そんな事を言い合いながら、レゴラスとラルクはスメラギとぺこらを図書館へ案内する。

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