【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~ 作:らっくぅ
「着いたぞ。あれが図書館だ」
レゴラスは目の前にそびえ立つ、建物と大樹が融合したような巨大な建造物を指さす。
中に入ると、膨大な数の本棚が整然と並べられていた。その外見にも増して内部は3次元的に広がっており、端から端まで見渡すのが困難なほどだった。
「ここにはエルフがこの森に住み着いて以来の記録が保管されている。部外者の貴様に見せられるものはほんの一部だが、存分に調べていくといい」
「ありがとう、レゴラス。これだけの文献があれば見つかりそうだ」
「逆にこれだけあったら、見たい資料がどこにあるのか分からないぺこね…」
ぺこらがげんなりしながらそう呟くと、
「本の位置は大体記憶してる。何を調べたいか言ってくれれば場所を教えてやるよ。んで、探し物ってなんだい?」
ラルクはスメラギに訊ねる。あまり気乗りはしなかったが、言わざるを得なかった。
「…ゼノクロスという兵器だよ。異世界大戦期に開発された兵器さ」
スメラギの答えに、ぺこらは疑問を投げかける。
「あれ? ゼノシリーズって都市伝説じゃなかったぺこ? 実在なんてするのぉ?」
「それをこれから調べるのさ。実在するかどうか調査するのが依頼だからね」
スメラギは自然に嘘をついた。アルヴィアスであることをぺこらには既に明かしているので、依頼と言っておけば信憑性は出る。
「なるほどねぇ。依頼とは言え、あんたも大変ぺこだねぇ」
案の定、ぺこらはその言葉に納得し、それ以上は追及してこなかった。
「ふんふん。じゃあそれに関係しそうなジャンルの所へ案内してやろう。レゴラスが」
「何故ここで私が出てくる⁉︎貴様が案内しろ!」
*
ラルクとレゴラスの案内で借りて来た、「異世界大戦」「兵器」関連の本をAPRILの協力で解読していると、気が付けば日が暮れていた。ここの本はどれも古く、全てエルフが用いる言語で書かれている。その為、自力で読むことができず、APRILにリアルタイムで翻訳してもらいながら読み進めていた為、かなりの時間がかかった。
「君まで手伝ってくれなくても良かったのに」
スメラギは申し訳なさそうに言うと、ぺこらは気前よく答える。
「今さら水臭いこと言うなぺこ。ぺこーらはエルフの言葉は分からないけど、本を持ってったり片付けたりするくらいならできるぺこ! んで、どうだったぺこ?」
「うーん、ぼちぼちってとこかな」
スメラギは立ち上がり、大きく伸びをする。
かなりの文献を読み漁った結果、それなりに収穫はあった。分かったことは、異世界大戦期にこの世界で「戦局を一変させる決戦兵器」を開発していたらしいことと、その兵器が突如姿を消したことだ。
(ゼノクロスはこの世界で開発された…。ならこの世界のどこかにゼノクロスを建造した工廠があるはず。そこに行くことができれば、居場所も掴めるかもしれない…)
「日が暮れちゃったぺこだねぇ。そろそろ森を出て休むぺこ?」
ぺこらがそう提案した時、
「よぉお前ら。せっかくここに来たんだから、一晩くらい泊めてやるぜ。どうだ?」
遠くからラルクがやってきて、そう持ちかける。
「それはありがたいけど、どうして?」
「ウチの仲間のケンカを仲裁してくれたからな。俺とレゴラスからのささやかな礼ってわけさ」
「僕はいいけど…ぺこらはどう?」
自分は宿が無いためこの提案には賛成だったが、ぺこらは自分の家の方がいいかもしれない。スメラギはそう懸念したが、
「全然問題ないぺこよ。むしろエルフの宿、泊まってみたいぺこ〜!」
どうやら杞憂だったようだ。
「決まりだな。ついて来い。まぁ、あんまり豪勢にもてなす事はできねぇけどな」
*
「宿かどこかに泊まるものだと思っていたけど…」
「客の来ねぇとこに宿屋なんか作らんさ」
小さな食堂で夕食を済ませた後、レゴラスはすぐにどこかへ行ってしまった。
「アイツ潔癖症でさぁ、他人を家に上げないんだよな」
そんな訳で、スメラギはラルクの家に泊まることになった。とはいえ、ラルクの住むこの家は木造でありながらかなり立派だ。1人で暮らしているようだが、部屋がいくつかあり、スメラギはそのうちの一室を借りることになった。
「そういえばあんたら、旅の途中だったのか?」
唐突にラルクはそんな事を聞いてくる。
「どうして?」
「あのうさぎの嬢ちゃんが、自分は行商人だと言ってた。だが、あんたはどう見ても行商人には見えない。んで、あんたらはたまたま一緒に行動してんじゃないかとね」
確かに、スメラギの格好は明らかに行商人のそれではない。と言うか、アルヴィアスの制服を着ているので傭兵以外無いのだが。ぺこらもスメラギが言うまで気付かなかったあたり、この世界でアルヴィアスの知名度は低いのかもしれない。
「あぁ、彼女に助けてもらってね。お礼にギエルデルタという街まで護衛役をやってるんだ」
「なるほど。街に行く途中だったのか。じゃあ、明日は早いのか?」
「そうだね、日中に着きたいから早めにここを出ないとね」
だがこのままこれで終わったと、やる事はやったと割り切っていいのだろうか。
「……フレアのことなら気にしなくていいさ」
ラルクは、スメラギがフレアのことで考え込んでいることを察して、軽い調子でフォローする。
「フレアは頑固だが、仲間思いのいいヤツだ。ラミィとの間にできた亀裂をそのままにはしないよ。お前が出張らなくても元通りになるさ。……さて、明日早いんならもう寝とけよ、ガードマン」
「…あぁ、分かった。そうするよ」
ラルクに言われスメラギは寝室へ向かうが、心は軽くならなかった。
(違うんだ…僕が心配していたのは…)
「ぺこーら、知らない人の家に泊まるのぉ…?」
「あ〜、ぺこらさんもう寝ちゃうんですかぁ? ラミィと一緒に晩酌しましょうよ〜」
「しかも酔っ払いの家!! こんなのってないぺこじゃん…」
一方、ぺこらはラミィの家に泊まることになった。同じ女性の家に泊めた方が良かろうという配慮からだったが、ぺこらが家に入った時から、何故か既にできあがっていたこのスノーエルフはやたらとだる絡みしてくる。メンドくさい。
「ほらほらぁ、せっかくだし飲みましょうよぉ〜」
(…はっ! 寧ろここでお酒を飲んで仲を深めたら、ノリでエルフの秘蔵の品を頂けるのでは⁉︎)
「しょうがないぺこだねぇ〜。少しだけぺこだよ〜?」
「ひゅー! ノリいいね〜! どんどん飲みましょ〜」
「あんた、そんな性格なの…?」
*
『だから、生きて……っ! 私たちの、この世界の、分まで……っ』
『はっ。相変わらずの優等生ぶり…いや、臆病ぶりだな。だから世界一つ守れねぇ』
『僕は……やらなきゃ……っ!』
「…っっ‼︎」
はぁはぁと息を荒くして飛び起きる。あの時の夢を見ていた。思い出したくもない、悲しみと無力感に苛まれたあの戦いを。
「……」
スメラギはベッドから出て、玄関へ向かう。外に出て少し散歩したい気分だった。じっとしてると、また思い出してしまいそうだった。
ヴヴッとバイブ音が聞こえ、デバイスを見てみると、APRILが起動していた。
『マスター。夢を見ていたのですか?』
「…怖いんだ。僕は…また、彼女たちを巻き込んでしまうんじゃないかって…」
前の世界でスメラギは、ココやフブキ、ノエルにあやめ、他にも多くの人と共にゼノクロスに立ち向かい、そして全員失った。もうそんな経験はしたくない。
ぺこらやラミィにゼノクロスの事を教える事やフレアとラミィに会う事を躊躇ったのも、またあの時の悲劇を繰り返してしまうのではという恐怖からだった。
『しかし、その恐怖はいずれ乗り越えねばならないものです。人は、信頼し合ってこそ真の力を発揮するものですから。』
APRILは相変わらず無機質に、だが力強くそう言った。
「信頼……」
『ですがあまり責任感を持ちすぎぬよう。あなたには自分の背負ったものを必要以上に重くしてしまう傾向が見られます。』
「あはは…手厳しいなAPRIL。…肝に銘じておくよ」
スメラギがそう言うと、APRILはスリープモードに入った。
外に出て少し歩いていくと、開けたところにフレアが夜空を見上げながら座っていた。
スメラギの心とは裏腹に、空はこんなにも澄み、満点の星が夜空を飾っていた。
「……。信頼、か…」
あの夢がチラリと脳裏をよぎる。
だがこのままフレアと話さずこの森を去ってしまう事だけはしたくなかった。身勝手な考えかもしれないが、排他的になってこの森に居続けるのは彼女にとって、多分良くないことだ。
スメラギはフレアに近づき、声をかける。
「寝なくていいのかい?」
「…またお前か。話す事はないと言っただろ」
フレアは振り向くことなくつぶやく。しかし殺気は放っていない。戦う気は無いようだ。
スメラギはフレアから少し距離を離して同じように座った。
「…あの時、本気で戦ってなかったよね? もちろん全力を出す事はなかっただろうけど、本気で戦ってもいないって事は、君はどこかで…」
「やめろ。…全部この森の為だ」
フレアはその先を聞きたくないとばかりに、スメラギの言葉を遮る。
「君の優しさは、ラミィにも伝わってるよ。…でも自分に対しては? 誰かのため、何かのために君は掟を重んじているけど、君自身はどうなんだい?」
「そんなの…分からない。でも、私の故郷を守るために、お前たち外の存在が入ってきちゃダメなんだ」
この世界のフレアは掟を守る余り、排外的な側面が見られる。
でも。それでも。
「そうやって外部を拒絶していたら、君の優しさはいつか誰かを傷つける凶器になる。…君に、そんな人にはなって欲しくないんだ…」
「不知火フレア」という本質は変わらないはずだ。
彼女の仲間を想う優しさを、こんな形で腐らせてしまってはいけない。
沈黙が続いた。
やがてフレアがふぅ、とため息をつき、
「…お前、本当にお節介焼きなんだな」
「それが取り柄だからね」
スメラギが冗談めかして言うと、
「…私さ、ハーフエルフなんだ。人間とエルフのハーフ。だから、本来的にはこの森のエルフじゃないんだ」
相変わらずそっぽを向いたまま、フレアはぽつりぽつりと話し始める。
「だから本当は、私こそ掟なんかいらない、そんなもの時代遅れだって主張するべきなんだ」
「でもそれはできなかった。もちろん、森を守りたいっていうのはある。でも、なにより仲間から外されるのが怖かったんだ」
レゴラスは、掟は森と共に生きるための術だと言っていた。しかしフレアにとって、掟は仲間と生きていくために守らねばならないものでもあった。
「フレア…」
「だから、同じハーフエルフのラミィが掟に囚われず自由に暮らしてるっていうのが、気に食わなかった。…あぁ、多分そうだ」
フレアがどうして自分にこんな話をしたのか分からない。でもスメラギは、自分がすべき事はうわべだけの同情ではなく、ありのままの思いをぶつける事だと分かっていた。
「…フレアが優しいってこと、みんな知ってる。今さら、掟を守らないから、ハーフエルフだからって君を仲間じゃないって思う人なんかいないよ。だから、もっと仲間を信じてあげて欲しい…」
スメラギは複雑な表情を浮かべながらそう言った。あるいは、自分に対しての言葉だったかもしれない。だがその顔は、ちょうど反対を向いているフレアには見えなかった。
「………お前、名前は?」
「スメラギ。スメラギ・カランコエだ」
スメラギは名前を聞かれ、そう答えると、フレアは初めてこちらを向いた。
「スメラギ、お前は優しいんだな。お陰で少し、軽くなった気がする…」
フレアは少し笑った表情を見せた。初めて会った時の、どこか余裕のない顔とは違って緩んでいた。
「そっか…。それなら良かったよ」
「じゃ、私はもう寝るよ。お前ももう休んだほうがいい」
「あぁ、そうだね。おやすみ、フレア」
フレアは立ち上がり、森の中へ歩き去っていく。
仲間の信頼に、信頼をもって応える。APRILの言葉を聞いたときから、自分がどうあるべきか分かっていた。だからあの言葉は、願望であり願いでもあった。
(でもそれを叶えることはできない……。だって僕は…)
実は課題だけではなく、ヒロアカ一気見してたので遅れました()
まぁそれはさておき、じっくり書いたほうがいいかなーと感じたので、1週間くらいで今後書いていきたいなと思っております
こらそこ!思っただけかよとか言わない!!