【本編完結済】ホロライブ・オルタナティブ~If this is inevitable fate, I will call it a curse~   作:らっくぅ

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6話後半です


6話 ギエルデルタへ⑵

 レンバスのおかげで休む事なく歩き続け、昼下がりにはギエルデルタに着く事ができた。

 

 

 

 都市ギエルデルタ。人間界の中でも有数の都市で、街の中央部に進めば高層ビル群が立ち並ぶ。海に面している事から港も発展している上、辺境にも接している為にあらゆる物資の中継地点となっている。つまりは交通の要衝だ。

 

「着いたぁ〜〜!! たった一日だけだったのに忙しい旅だったぺこなぁ」

 

「あはは…でも無事に辿り着けて良かったよ」

 

「ぺこーらはこれから商売活動に勤しむけど、スメラギはどうするぺこ?」

 

「とりあえず、パワードアーマーの修理かなぁ。それと、今夜はここに泊まることになるから宿を探さないと」

 

「なるほど。まず宿を探さないとぺこだね。こっちの方にいいのがあるぺこだよ!」

 

 そう言い、ぺこらは街の大通りを歩く。

 

「ぺこらはこの街に詳しいのかい?」

 

「まぁねー。ここは商業が栄えてるから、ぺこーらもここでよく商売してるぺこ。だからこの街の地理には詳しくぺこよ」

 

 

 

 大通りを外れ、建物と建物の間を抜けていくと、少し寂れたアパートのような建物が見えた。

 

「ここがその?」

 

「そう! 独立して間もない頃にお世話になったホテル、「ヒプノシス」ぺこ!」

 

「アパートメントホテル?」

 

「とはちょっと違うぺこね。自炊もできるけど、居酒屋みたいな共同の飲食スペースもあるぺこよ。ぺこーらは殆ど使った事ないけど。それに、部屋は家電完備! 長期滞在もばっちりぺこね」

 

「なるほど。確かに便利な所だね」

 

「でしょ〜? …よいしょっと、おっすおっちゃーん!」

 

 ぺこらはエントランスらしき所の扉を開け、元気よく挨拶する。

 

「おう、いらっしゃい。誰じゃ君たちは?」

 

「おっちゃん、この人一晩泊めてよ。ぺこーらの紹介で!」

 

 オーナーらしき人物のボケも気にせず、ぺこらは話を始める。

 

「なんじゃ、ここは学習塾と違ってお友達割引などないぞ」

 

「このけちんぼ! 万が一ぺこーらが友達紹介したら半額にしてやるーとか前言ってたぺこじゃん! 録音してたから言質取ってるぺこだよ!」

 

「全く…。そんなケチだと、年老いたとき特売品と値引きシール貼ったもんしか買わなくなるぞ?」

 

「うるさいっ! 安ければ何でもいーの!」

 

 などと2人の間でやり取りが交わされ、完全に蚊帳の外のスメラギは、それでも何とか声をかける。

 

「えぇと、泊まっても大丈夫でしょうか…?」

 

「おぉ、構わんよ。半額で泊めてやろう。こやつの紹介なんて珍しいからな」

 

「良かったぺこだね、スメラギ!」

 

「ありがとう、ぺこらにオーナー」

 

 別に金に困ってるわけではないので普通に全額払うつもりでいたのだが。とはいえ、厚意はありがたく受け取っておくべきだと思い、スメラギは素直に感謝した。

 

「じゃー色々と用事もあるだろうから、夜ご飯の時間にまたここで!」

 

「分かったよ」

 

 

 

 ぺこらと一時別れた後、スメラギはミリタリーショップに行き、パワードアーマーを修理してもらった。ゼノクロスとの戦いで大破したパワードアーマーは、現在予備のナノマシンのみで稼働させており、その修復状況はどうにか武器を構築する程度しか完了していなかったのだ。()()()()()()()()()()、まずは手下がスメラギを襲ってくるはずだ。早い段階から武装は万全である方がいい。

 

 スメラギのパワードアーマー、──『タクティカル・アーマー Ver.5.17.3』は標準的なパワードアーマーだ。スペックこそ圧倒的に異なるが、基本構造や武装は西暦時代のヒーロー「アイアンマン」が使用していたそれをベースにしている。

 

 唯一異なるのが動力源で、T・A(タクティカル・アーマー)は基本的に魔力エンジンを採用しているが、スメラギは()()()()()()()ので、独自のカスタマイズを施し『超電磁砲』によって生み出す電力を動力としている。元々、応急処置としてエネルギー伝達回路を電気系に変えただけだったが、バッテリーを搭載するよりずっと軽量でスメラギが好んだ為に、そのまま改修せず今に至っているということなのだ。

 

 動力源を外部に完全依存している反面、内部機器の簡略化が為されたため、整備性は向上し、今回の修理も早く終えることができた。

 

 

 

 その後、スメラギは公共のネットワークスペースへ向かった。APRILにこの世界の情報を学習させるのもあるが、何よりゼノクロスについて調べたかった。

 

 とはいえ、

 

(やはり目撃情報も何もないか…)

 

 分かってはいたのだが、既に見知った2人にゼノクロスについて話してしまったという焦りから、どうにかして早く見つけ出したいという気持ちが先行してしまう。

 

『マスター。ゼノクロスの居場所を直接特定するのは困難を極めます。ゼノクロスが前の世界と同じ手法を取っているのならば、まずは「彼ら」を探し、撃破する必要があると提言します。』

 

 いつの間にかラーニングを終えたAPRILはヴヴッとデバイスを震わせ、スメラギにそう助言する。

 

「見てたのか、君は…。そうだね。「彼ら」は僕を狙っている。こっちから探っていくよりも、向こうが仕掛けるのを待っていた方が効率的ではある…」

 

 と、そこでスメラギはふと考える。

 

『いかがなさいました? マスター。』

 

「…ゼノクロスは何故自分から攻撃してこないのだろう。手下を使うより早く済むと思うけど…」

 

『最初の世界では、ゼノクロスは単体で襲撃していました。しかし二度目は、まずアンドロイドに襲わせ、彼らが撃破されてからゼノクロス本体が現れました。この事から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のではないかと考察します。』

 

「不都合…?」

 

 ゼノクロス。2度も対峙した相手とは言え、その謎は一向に明らかにならなかった。

 

 それでも。奴を倒すのが最優先ですべき事だ。でなければ、世界がもう一つ滅びることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 APRILのラーニングが思ったより時間を食ったのか、ネットワークスペースを出る頃には日が暮れていた。スメラギは急いでホテル・ヒプノシスへ向かった。今更だが、ホテルの名前が「催眠(ヒュプノシス)」などという物騒な名前でいいのだろうか。西暦時代の言葉のいくつかは意味が変容し、あるいは忘れられ原義とかけ離れた使用が少なからず見られるのは事実ではあるのだが。

 

 スメラギは首を捻りつつも、待ち合わせの時間前にホテルの入り口に辿り着き、ぺこらを待った。

 

「よーっす! 待ったぺこか?」

 

「いや、少し前に着いたばかりだよ。じゃあ、行こうか」

 

 ホテルの飲食スペースに入ると、騒音という程ではない賑やかさと熱気が、スメラギを包んだ。なるほど、確かに居酒屋らしい所だ。

 

「ぺこーら、こういうのあんま好きじゃないぺこ」

 

 そう言い、ぺこらはとことこ受付の方へ行き、そのまま中へ入っていく。

 

「やっぱ特等席はここぺこね。誰からの邪魔も無くご飯を楽しめる…」

 

「お前また来たのか。お相手がいるんならあっちの席に座ればよかろう」

 

「あんな人の多い所で食べても窮屈で美味しくないぺこ! どうせもうピーク過ぎたしおっちゃん暇ぺこでしょ。ちょっとここ貸してよ」

 

「しょうがねぇなぁ。ほら、あんたもここで食いな」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 そう言われ、スメラギも受付の中の、ちょっと大きなテーブルを囲むように置かれたパイプ椅子に座る。

 

「従業員にこっちに持ってくるように言っとくから、注文決めな」

 

 ぽいとオーナーはメニュー表を投げる。何だかんだ、オーナーはぺこらに優しい。長い付き合いなのだろう。

 

「こいつの親御さんと知り合いでな。そのよしみさ」

 

「なるほど。…じゃあ、僕はソーセージとポテト、あとパンを頼みます」

 

「ぺこーらはにんじんハンバーグで!」

 

「オッケー。ちょっと待ってな」

 

 

 

 少し待って、従業員が料理を持って受付へやって来た。

 

「ぺこらちゃん、料理ここに置いとくよー!」

 

「きたきた、ありがとぺこ〜!」

 

 ぺこらはカウンターに置かれた料理をテーブルまで持っていき、早速食べ始める。

 

「ぺこら、そのハンバーグは一体…?」

 

 スメラギも同様にテーブルまで料理を運びながら、ぺこらの頼んだ「にんじんハンバーグ」なるものを見つめそう呟く。

 

「見たまんま、にんじんハンバーグぺこよ。ぺこーらの好物!」

 

 いやそのまんますぎないか。茹でてあるにんじんが丸々一本ハンバーグの中央にそびえ立っている。なんかもう、ビジュアルの暴力だ。

 

 スメラギは気を取り直し、持ってきたパンにかじりつく。

 

「そういえばぺこら、商売の方はどうだった?」

 

「そりゃあもう、バカ売れぺこよ! エルフ製のものは品質が良くて人気ぺこなんだよね〜。他にもゴルトアイゼンで出来た耳飾りとか標準暦以前の書物とか、色々売れたぺこよ」

 

「珍しいものばかり持ってたんだね」

 

「薬とか魔装とか、ありふれた物は今じゃどこでも買えるぺこ。だから、ぺこーらみたいな1人でやってる行商人なんかは、そういう珍しいものを売っていかないと生き残れないぺこなんだよねぇ」

 

「意外と世知辛いんだね…」

 

 とは言え、都会ではネットを使えば何でも手に入る時代だ。ここまで文明が退化し、都市ごとのネットワークが完全に構築されていないこの世界だからこそ、ぺこらが行商人として生計を立てることができたという見方もある。

 

「そういえば、ぺこらはこの街に住んでるの?」

 

「いや、ここは人が多くて辺境にも近いからよくいるだけぺこ。元々ここに住んでたぺこだけどね。一応、移動住居を置く為の土地も借りてるぺこ。そう言うスメラギはこの世界の住人じゃないぺこだよね? どこの出身ぺこ?」

 

 何気なく投げられる質問は、スメラギの心をちくりと刺した。しかし悟られまいとスメラギは表情を抑え、何事もないかのように答える。

 

「ターミナル02系の辺境さ。ここと同じくらいのね」

 

「確かに、都市があるとは言えここもけっこう田舎ぺこよねぇ〜。本元のターミナル02なんかは宇宙規模で人が生活してるぺこでしょ? もうレベルが違うぺこよ」

 

 スメラギの微妙な変化に気付かず、そのまま話を続けるぺこらに、スメラギは安堵した。

 

「まぁ、あそこは色んな世界とつながってるからね。技術はもちろん、統治機構も数段進んでるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食を終え、スメラギとぺこらは再びホテルの入り口へ向かった。

 

「やー、もうお別れとか早いぺこねぇ。1日しか一緒にいなかったのに、長くいた感じがするぺこ」

 

「僕を拾ってから少し忙しかったからね」

 

「まー、なんだかんだ楽しかったぺこだけど。じゃあまた明日ここで! 見送りするから先行くなぺこだよ?」

 

「分かってるよ。ありがとうぺこら。おやすみなさい」

 

「おやすみぺこ〜」

 

 スメラギはぺこらを見送り、ホテルの自室へ行く。

 

「故郷…か」

 

 スメラギは思い出す。業火に灼かれた自分の故郷を。無惨な姿で倒れていく仲間たちを。

 

(そうさ。僕にはここしかない。だからここだけは、絶対に…)




ぺこらとはここで一時お別れ。次回からはスメラギの一人旅になります

ホロメンも出るよ!
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