とある姉達の心理感応(メンタルリンク) 作:絶対能力進化ver1.3
第01話 『フレンダ・セイヴェルン』
9月26日――。
大覇星祭終了直後の学園都市、とある工業区の一角では1人の小柄な金髪の少女が携帯をいじっていた。
少女の名はフレンダ・セイヴェルン――学園都市の暗部組織『アイテム』の一員だ。
「はぁ~~~退屈ぅ~~~」
フレンダはこの日、とにかく退屈していた。
「前の仕事、お前のせいでケチが付いたから、オ・シ・オ・キが必要ね♪」
リーダーの麦野沈利にそう告げられたのが先日のこと。そしてお仕置きという名目で「重要施設の警備」という、いかにも面倒な仕事を押し付けられ、貴重な休日をひたすら施設で待機するという女子高生にあるまじき休日を過ごしていた。
そして幸か不幸か、侵入者が乱入してくるとかそういう事にはならなかった。
「あーー、ヒマぁ~~~!」
あと2時間もすれば無事に仕事も終わり、担当者が受領書にサインすればこの苦行から解放される。
「つーか、こーゆー雑用はもっと下っ端にやらせろってワケよ!」
ちなみに浜面仕上がアイテムに加入してくるのは、もう少し先の事になる。
「まぁ、あと少しで終わるし。ちょっと散歩でもしてこようっと」
見回りもかねて、フレンダは控室を出てその辺をぶらぶらと歩くことにした。
どうせ問題が見つかれば監視カメラかセンサーが警告してくれるし、携帯電話にすぐ位置情報まで送信される。
なので見回る必要もあまりないのだが、控室に常駐する必要も特にない。あくまでフレンダの存在は保険のようなものだ。
控室を出て、その辺を歩いていると何人もの研究者にすれ違う。
容姿には自信があるのでチラチラと男性研究者の視線を感じるが、むしろフレンダは「どうだ」と言わんばかりに自慢の脚線美を見せつけていく。
リーダーの麦野には「暗部なんだから目立つな」とよく注意されるが、貴重な青春を研究に捧げて女性免疫に乏しい男どもが挙動不審になるを眺めるのは悪い気分ではなかった。というか、そのぐらいしか退屈しのぎがない。
「あれ?」
そんな中、フレンダの注意を引いたのはとある部屋の前にいる、自分と同じぐらいの少女の存在だった。
身長は自分よりやや高く、ふんわりした茶髪に青い瞳、スタイルも悪くない。白衣の研究者たちばかりの中で、場違いな学生服を着ているから異様に目立つ。
(しかも手にはアサルトライフルって……)
流石のフレンダでも違和感を感じる明らかに怪しい少女。
だが、そんなことでは怯まないのがフレンダ・セイヴェルンという少女だ。むしろ好奇心を掻き立てられる。気づけば、フレンダは少女の前に立っていた。
「あのー、ちょっとそこの人。前にどこかで会った事あったっけ?」
チャラ男がナンパで使う定型文のような挨拶で、とりあえず相手の懐に飛び込んでみるフレンダ。とにかく話せば分かる、が陽気な彼女のポリシーだ。
「否定します。どなたか存じませんが、ミサキが貴女とお会いするのは今回が初めてです」
「へぇ~、ミサキちゃんって言うんだ。アタシはフレンダ、よろしくね」
目の前にいる怪しい少女に興味が沸いたのか、フレンダは気になっていたことから聞き始めた。
「あなた、ここで何してんの?」
「回答します。ミサキは現在、この部屋の警備をしています」
「じゃあ、私と一緒だ」
アサルトライフルを持っていた理由にも納得がいく。もちろん通常であれば、施設警備といった仕事は10代の少女が行うものではないのだが、それを言ったらフレンダだって普通ではない。
(この子も暗部の人間なのかな……?)
学園都市の暗部組織は、特に一枚岩で統制されているわけではない。フレンダの知らない暗部組織だって沢山あるし、知らない間に壊滅していたり新組織が発足するのもよくある話だ。
「警備ってさ、なに守ってんの?」
「黙秘します。守秘義務により、その質問にお答えすることはできません」
「ふぅん」
予想通りといえば、予想通りの反応だった。フレンダとて本気で答えてくれると期待していたわけではない。ただ、まるで機械のような少女の受け答えが少し彼女の気を引いた。
「ミサキって人間のくせに、ロボットみたいな話し方するんだね」
「人間……」
それまで淡々としていたミサキの声に、少しだけ困惑の色が混じった。
「部分否定します。人間に必要とされる条件を、ミサキは一部満たしておりませんので、先ほどの表現は不適切です」
「そうなの? まぁ、たしかにこの街じゃ“人間”の定義なんて曖昧なんだけどさ」
フレンダとて、伊達に暗部に長くいるわけではない。サイボーグやクローン、感情をロボットに与える系のイカれた研究ならいくらでも見てきた。
恐らく目の前の少女もそういう意味では、“普通の人間”という常識の範疇からどこかしたら逸脱した部分があるのだろう。
「まぁ、なんとなく言いたいことは分かったけどさ。じゃあ、結局のところミサキは何なの?ってのが聞きたいわけよ」
「……」
フレンダの質問に、再び少女は押し黙ってしまった。
「おーい、聞こえるー?」
「肯定します。ミサキの聴覚はいたって正常です」
「そっか。なら良かった。んで、結局ミサキはどういう存在な訳よ?」
あくまでフレンダにとっては暇つぶし。質問にそう深い意図がある訳では無かった。クローンであればクローン、サイボーグであればサイボーグだと分かればそれでいい。その上でさらに深掘りする気はないし、それ以上の興味もない。
「困惑……ミサキは自己の再定義に試行錯誤しております」
「なんか根が深そうだね……」
フレンダは段々とバカらしくなってきた。というか、そろそろ飽きてきた。
もともとが暇つぶしなのだし、目の前にいる少女とこの先会うことも多分ないだろう。
「おっと、そろそろ時間が迫ってるってわけよ! 残業なんて死んでもゴメンだし、じゃ私はここで。Ha det bra♪」
「言語を認識しました。何故わざわざノルウェー語に訳したのか理解に苦しみますが、ここは日本なので社交辞令に従って“さようなら”を返します」
「そこまで細かく解説しなくていいからっ!?」
そうツッコミを返すと、フレンダは足早に廊下を後にした。
***
―――ミサキは何なの?
フレンダが去った後、その言葉をミサキは反芻していた。
「悩みます。ミサキは一体……? 人間、の定義を満たしてはいませんが、だとすれば何と定義すれば……? 」
そのつぶやきに気づいたものは、いなかった。
ふと『とある科学の超電磁砲T』を見たら、とても面白かったので「とあるシリーズ」熱が最熱して書いてみました!
ご笑覧いただければ幸いです。