とある姉達の心理感応(メンタルリンク)   作:絶対能力進化ver1.3

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※以前に投稿していた6話です。位置を後にずらしました。


第10話 『幻想御手(レベルアッパー)の亡霊』

  

 初春飾利が異変に気付いたのは、偶然とも必然とも言える。

 

 ハッキングそれ自体はかなり高度なもので、少しでも気を抜いていれば見落としていたかも知れない。

 

 だが、学園都市の能力者、それも高位能力者であるレベル4が次々に昏倒して意識不明となる異常事態ともなれば、総合データベースである「書庫(バンク)」にも何らかのハッキングが行われていると考える方が自然だ。

 

 幸いにもレベル1であった初春は、ミサキネットワークの攻撃対象からは外されていた。

 

「そんな……」

 

 超一流の天才ハッカーであり、風紀委員の採用テストも、ほぼ情報処理の一点突破でくぐり抜けている初春は、ハッカー達や親しい人達の間では「守護神(ゴールキーパー)」と呼ばれているほど。

 

 瞬時にネットワークの構造を分析し、最速かつ安全な近道、裏道を通って最短の作業量で目的の情報に到達する技能を持ち、美琴をして「解析に時間がかかる」という暗号をわずか7秒で解読する。

 

 彼女が構築したセキュリティプログラムは、データを「防護」するというよりも侵入者を「攻撃」する構成になっており(度が過ぎて黒子に怒られることもある)、更に侵入者を誘導してIPアドレスを「警備員」に通報するためのダミーサーバーまで作っている。

 

 

 そんな彼女をして、なぜ今まで気づかなかったのか。

 

 

「初春、何か分かりましたの?」

 

「はい。バンクへの不正アクセスをいくつか辿っていったところ、恐らくですが……」

 

 何か不正の証拠を掴んだのか。それなら喜ぶべきことのはずだったが、初春の表情は硬い。初春は黒子に近づくよう手招きし、耳元でそっと囁く。

 

 

「内部から情報が漏れています」

 

「なっ……!?」

 

 

 蓋を開けてみれば、拍子抜けするほど単純な事実だ。

 

 初春が調べたところ、ここ数時間のうちに行われた怪しいアクセスのうち95%は合法的なものだった。各支部の風紀委員や警備員、教師や研究者が正規ルートでアクセスしたものである。

 

 だが、1つ1つを細かく辿ってみると、引っかかるものがあった。

 

 

 ――例えば、非番のはずの風紀委員が、なぜか深夜まで支部にこもって延々と能力者データベースから能力情報や所属先を調べているとか。

 

 ――例えば、素粒子物理学の権威である教授が、何の前触れも無く脳科学に興味を持ち始め、大学内にある脳科学研究の情報データをダウンロードしていたり。

 

 ――例えば、ベテランで地位は高いが、これまでほとんどネットに触れたことも無かった警備員が、数日前から突然なにかに突き動かされたように、能力開発の研究施設のセキュリティ関係のデータを集めている。

 

 

 それらはすべて、管理者権限でいえば合法の範囲内に留まっている。だが、1人の人格を持った人間の行動という観点からみると、明らかに不自然な点が多い。

 

 

「恐らく、犯人は精神系の能力者……あるいは複数いるのかもしれません。犯人グループはまず風紀委員や研究者といった高度なデータベースにアクセスできる人間から洗脳し、ターゲットを絞って今回の犯行に及んだ可能性があります」

 

「精神系能力者………しかもこれだけ大規模となると、かなり上位の能力者ですわね」

 

 白井黒子の額に皺が寄る。なかなか厄介な状況だ。

 

「被害者についてですが、どうやら犯人はレベル3からレベル4の高位能力者ばかりを、優先的に選んで昏倒させているようです」

 

 高位能力者を妬んだ低位能力者による犯行――という可能性が一瞬だけ頭をよぎるが、すぐに初春はその可能性を振り払う。これだけ大規模な同時多発的な精神攻撃となれば、犯人もレベル4あるいはレベル5に匹敵するだけの能力を持っていなければ実行不可能だ。

 

「それだけじゃありません」

 

 初春が言葉を続ける。

 

「病院に送られた被害者を検査したところ、かつての『幻想御手(レベルアッパー)』と同じ症状がみられるそうです」

 

「なっ―――!?」

 

 今度こそ、白井黒子の表情がフリーズする。

 

 『幻想御手』事件には、黒子も初春も関わりが深い。なにせ、親友の佐天涙子が直接の被害者であり、最終的にケリをつけたのは御坂美琴である。

 

 当初は「能力のレベルを簡単に引き上げる事が出来る道具」という都市伝説の域を出なかったが、木山春生という脳科学者によって音楽ソフトという形で徐々に広まっていった。

 

 

 その正体は共感覚性を利用することで使用者の脳波に干渉し、脳波パターンを統一させて1つの巨大なネットワークを作ることで高度な演算装置をつくるプログラムであった。例えるならば「複数のパソコンをネットワーク化して並列処理をさせ、高度な演算能力を持たせる」といった仕組みに近い。

 

 ネットワークを共有することで一時的に演算能力が上昇すること、また同系統の能力者の思考パターンを共有する事でより効率的に能力を扱えること、こうした特性を利用して使用者の能力は一時的には上昇する。

 

 

 しかし同じ脳波ネットワーク(正確には製作者の木山の脳波)を強要され続けるという副作用もあり、最終的には使用者1万人近くが意識不明となる大事件となった。

 

 

「また懐かしい名前が出てきましたわね……」

 

 白井黒子は直接の被害者ではなかったが、あまり良い思い出ではない。

 

「ですが、もしレベルアッパーの模倣犯ということなら、誰の脳波か特定すればすぐ犯人は見つかるはずではなくて?」

 

「はい。そのはずなんですが……」

 

 パソコンをカタカタとタイプしながら、初春が難しい顔をする。

 

「先ほどから学園都市のデータベースにある全ての脳波パターンと照合しているんですが、完全に一致するパターンはありませんでした」

 

 少しぼかしたような言い方だった。

 

 ‟完全に”一致するパターンはない、と初春は言う。逆にいえば、ある程度なら一致するパターンがあったということ。

 

「どなたですの?」

 

「一番近い脳波パターンでしたら、彼女です」

 

 初春がクリックすると、画面いっぱいに中学生離れしたナイスバディの金髪美少女が映し出される。

 

 それは白井黒子もよく知っている相手だった。いや、彼女でなくとも学園都市に住む人間だったほぼ全員が知っていると言っても過言ではない。

  

 

「レベル5の第5位・食蜂操祈……?」

 

 




 
「食蜂操祈がその気になったら、心理掌握(メンタルアウト)で無理矢理に他の能力者の脳波を調律して、レベルアッパー的な感じで能力を奪えるんじゃね?」という発想です。
 細かいところは大目に見て頂ければ・・・(汗)。
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